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第六章 悪女
安らぎの時間
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事件から五日が経った。洪姉弟は獄に繋がれた。
旬果は本心としては二人を逃がしたかったが、逃げれば逃亡犯となり、一生逃げ回ることになるだろう。
そんな目には遭わせられなかったし、玄白が連れてきた兵士たちが、辺り一帯の大規模捜索に入っていたこともあった。
どのみち、あの場で二人を見逃していても、遅かれ早かれ捕まっていただろう。
それならば――と、思ったのだ。
※※※※※
旬果の私室では、泰風が上半身を裸にして、旬果から手当を受けていた。
包帯を替えるのは、旬果の大切な仕事だ。最初はそんなことは畏れ多いと恐縮していたが、「黙って」と無理矢理やっているうちに抵抗はしなくなった。
旬果が母から習った何種類もの薬草を混ぜ合わせた特製軟膏《なんこう》を塗りつけ、包帯を巻き直す。
(確かに魁夷は人間ほど、柔じゃないわね)
普通の人間ならまだ高熱にうなされているか、命の危険に瀕していたはずだ。
剣による傷に加え、重度の火傷を全身に負い、化膿《かのう》までしていたが、旬果の寝ずの看病もあって、ここまで回復した。
「泰風。傷の具合はどう?」
「旬果様のお陰でもう、大丈夫です」
消毒すると、締まった背中がかすかに震える。
「嘘付かないの。大丈夫大丈夫って言っておいて、都に帰るなり高熱を出して倒れたのは、どこの誰?」
泰風は見るからに、しゅんとしてしまう。
「……申し訳ありません」
もし彼が顕現していれば、狼の三角耳がしゅんとしおれてしまっているのだろうか。
そんなことをこっそり考えて、微笑んでしまう。
「責めてる訳じゃないから。ただ正直になって欲しいだけ。辛いって言っても笑ったりはしないから」
「……少し痛い時が」
「よろしい。――じゃあ、服を着て良いわ」
泰風は大人しく従い、袍《ほう》を着直す。
「……旬果様、行かれるのですか」
「当然よ」
「お供いたします。戦うことは出来ませんが、お側にいることは出来ます。これは無理をしている訳ではありませんから」
「ありがと」
旬果は本心としては二人を逃がしたかったが、逃げれば逃亡犯となり、一生逃げ回ることになるだろう。
そんな目には遭わせられなかったし、玄白が連れてきた兵士たちが、辺り一帯の大規模捜索に入っていたこともあった。
どのみち、あの場で二人を見逃していても、遅かれ早かれ捕まっていただろう。
それならば――と、思ったのだ。
※※※※※
旬果の私室では、泰風が上半身を裸にして、旬果から手当を受けていた。
包帯を替えるのは、旬果の大切な仕事だ。最初はそんなことは畏れ多いと恐縮していたが、「黙って」と無理矢理やっているうちに抵抗はしなくなった。
旬果が母から習った何種類もの薬草を混ぜ合わせた特製軟膏《なんこう》を塗りつけ、包帯を巻き直す。
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剣による傷に加え、重度の火傷を全身に負い、化膿《かのう》までしていたが、旬果の寝ずの看病もあって、ここまで回復した。
「泰風。傷の具合はどう?」
「旬果様のお陰でもう、大丈夫です」
消毒すると、締まった背中がかすかに震える。
「嘘付かないの。大丈夫大丈夫って言っておいて、都に帰るなり高熱を出して倒れたのは、どこの誰?」
泰風は見るからに、しゅんとしてしまう。
「……申し訳ありません」
もし彼が顕現していれば、狼の三角耳がしゅんとしおれてしまっているのだろうか。
そんなことをこっそり考えて、微笑んでしまう。
「責めてる訳じゃないから。ただ正直になって欲しいだけ。辛いって言っても笑ったりはしないから」
「……少し痛い時が」
「よろしい。――じゃあ、服を着て良いわ」
泰風は大人しく従い、袍《ほう》を着直す。
「……旬果様、行かれるのですか」
「当然よ」
「お供いたします。戦うことは出来ませんが、お側にいることは出来ます。これは無理をしている訳ではありませんから」
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