もてがみっ! 〜神乃坂町の神さまに感謝を込めて〜

獅子丸@K

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第四話 「神さま、なぜか町人には見えない」

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 俺は車の後部座席で、頭を抱えている。
 これまで起きたことが多すぎて、プチパニック状態だ。

 「オーケー、 俺。 話をまとめてみよう」

 「大河! 見よ、 車とはこんなにも速いのだな」

 この少女。俺が住む神乃坂市にいるとされる神様。
 百年に一度、町に降り立って、町の人はこの神様をもてなさなければならない。

 俺、神主の息子は代々、神様を町に案内することになっている。

 「まだ、 なにも案内してねーんだが」

 観光名所すらなく、他の町から来た人も見たことがない。

 こんな田舎に、なにをどう案内すればいいのかわからなかった。

 「もてなすって意味もわからねーよ、 団子でもくれればいいのか?」

 アバウトすぎるこの町の行事は、すべてが謎だ。

 まったくといっていいほど、話がまとまらない。

 そんな俺におかまいなく、おっちゃんはひたすら車を運転していた。

 操られているにしか、思えないおっちゃんは、ただ神様のいいなりだ。

 「いのりちゃん、 あの術みたいなのってなに?」

 俺やおっちゃんにした、非現実な術。
それも気になった俺は、尋ねてみる、

 「うむ? あれか、 わらわが持つ神の力の一つで…… って、 いのりちゃんとはなんじゃ!」

 いのりちゃんは、説明しかけたところで声を荒げる。

 「いやあ、 神乃坂祈ノ神って言いにくいじゃん? だから、いのりちゃんって」

 シンプルで言いやすい、身近にいる神様って感じでいいと思った俺は、そう話した。

 「なにが、 いのりちゃんじゃ! わらわは神じゃぞ! そのような呼び名は好かん」

 呼び方が気に入らないのか、いのりちゃんはほっぺたを膨らませている。

 「そうだぞ大河! きちんと名前で呼ばないか!」

 おっちゃんはルームミラー越しに、俺をにらみつけている。

 ーーつまりあの術って、神様を信じていないような人を従わせるみたいなもんか。

 おっちゃんは、いのりちゃんの命令には忠実だ。
 その姿を見た俺は、そう考える。

 「けど、おっちゃんもいのりちゃんを見えてはいたっけ……」

 自分にしか見えないようなものだと思っていた俺は、さらに頭を悩ませた。

 「うむ…… そうじゃな! わらわにも、 なぜ見えていたのかわからぬ」

 いのりちゃんも理由がわかっていない。

 「まあいいや! 後で親父にでも聞いてみるか」

 考えるのをやめた俺は、とりあえずこれからどうするかを考えることにした。

 しばらく車が走っていると、通学路に行き着く。

 時刻はちょうど、学校へ向かう時間で、学生服を着た人たちが歩いている。

 「そういえば、 この時間はみんな駅に向かっていくんだったな」

 いつもなら、俺も学校へ向かって走っていただろう。

 わけがわからない行事のために、学校を休んでしまったことに、俺はため息をつく。

 「みなは、 どこへ向かうのじゃ?」

 いのりちゃんは物珍しそうに、聞いてくる。

 「え? 学校だよ、 この町には高校がないから駅まで行かなきゃならねーんだよ」

 神乃坂には、小中学校までしか校舎はない。子供の数が、日に日に少なくなってきている。

 俺たちの年齢の学生は、隣町や離れた街の学校へ行かなければならなかった。

 「学校? それはなんじゃ?」

 「勉強をするような場所だよ、 百年前にもあったろう?」

 初めて聞いたような素振りをするいのりちゃんに、俺はそう話した。

 「うーむ、 名前だけは聞いたことがあるが…… あのような衣服を着ていたじゃろうか?」

 百年前の神乃坂市は、俺は知るはずもない。

 いのりちゃんは、思い出すように頭をひねっている。

 「まあよい! 学ぶことは、良いことじゃ。 どれ…… 今の子供らが、わらわを信じておるか見てやろう」

 いのりちゃんは、おっちゃんに車を止めさせて、ドアから外へ出る。

 「いやあ…… 多分、 誰も信じてねーだろ。 行事があることすら知らないはず」

 人の話を聞かずに、いのりちゃんは歩いている学生に向かって走っていった。

 「おい! 話を聞かずに飛び出すな」

 俺も車から降りて、いのりちゃんを追う。

 いのりちゃんは、学生たちの前に立ち止まると、大声をあげる。

 「わらわは、 神乃坂祈ノ神じゃ! 百年に一度、 わらわがこの町に降り立ったのじゃぞ」

 そう高らかに叫ぶも、学生たちはいのりちゃんを素通りしていく。

  「こら! わらわの話を聞かぬか!」

 何人かの学生に話しかけるも、誰も気づきもしない。

 話を聞いていないというより、姿が見えていないようだった。

 「どうなってんだ? おっちゃんは見えていたのに、 こいつらは見えてねー」

 町の人間ならば、見えるはずだと思っていた俺は、その様子におどろく。

 「なあ、 ちょっといいか?」

 俺は、歩く学生に声をかけた。

 「はい? ……って、 里山君か。 どうしたの?」

 俺の声に振り返ってたのは、小学生の時の同級生だった。

 「いや…… 今さ、 女の子の声とか聞こえなかった? なんとかなのじゃ! みたいな」

 そう尋ねてみるも、同級生は聞いていなかったと話す。

 俺はいのりちゃんを引っ張って、同級生の前に連れてくる。

 「ここに女の子がいるんだけど、見えてるか?」

 いのりちゃんを指差して、また尋ねてみた。

 「なに言ってるの? 君しかいないじゃないか。 里山君…… 大丈夫?」

 変な目で俺を見て、走り去っていく。
やはり、見えてはいなかった。

 「やっぱりか……」

 それからも道を歩く学生たちに、同じようなことを聞いてみる。

 しかし、返ってくる言葉は先ほどと同じだった。

 「……ぐすっ、 ぐす」

 いのりちゃんは、今にも泣きそうな顔をしていた。まさかここまで、誰からも見えていないとは思わなかったのだろう。

 「大丈夫だって! いのりちゃん、 おっちゃんには見えていただろう?」

 俺はなんとか励ますが、いのりちゃんは黙っている。

 ーーうわあ、 こんな時、なんて言えばいいのかわからねぇ。

 こういう状況に慣れていない俺は、どう言っていいかわからなかった。

 「ぐすっ、 なぜ…… 若者は、 ひっく。 わらわを見てくれぬのじゃ」

 「それは…… あれじゃね? みんな、いのりちゃんを知らないからじゃない? はは……」

 ーーしまったあああ! 余計に傷つけてしまうパターンな返しだ!

 案の定、俺の言葉を聞いた、いのりちゃんはさらに泣き顔になった。

 「うわーん! わらわを知らぬとか、あんまりではないかあああ」

 とうとう泣き出してしまい、完全に俺はやらかしてしまった。

 「ちょっと大河! 女の子を泣かせて、 なにやってるのよ!」

 「大河ちゃん……」

 いきなり後ろから、怒鳴る声が聞こえる。
振り向くと、二人の女の子が俺をにらんでいた。
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