56 / 67
愛と裏切りとお仕置きと
12
しおりを挟む
コンコン……
「レイ兄さま、僕です」
レイ兄さまの書斎の重厚な扉をノックすると、中から
「入りなさい」
と兄さまの声が響いた。
その声を聞いた僕は、ギギギと重い扉を全身で押し開ける。
「何の用だ。リト」
レイ兄さまは、顔も上げずに手元の書類に羽ペンを走らせながら、少し不機嫌そうな声で尋ねる。
「あ、あの……兄さま……これ……」
僕は恐る恐るレイ兄さまの机に近づくと、伯爵から預かった手紙を投げるようにしてレイ兄さまに渡し、クルリと踵を返すと、急いで逃げ出すようにドアまでダッシュする。
あと、少しで扉のノブに手がかかるその直前に、
「待ちなさい! リト!」
レイ兄さまの大きな声が響く。
次の瞬間、ビクッと僕の足は震えてその場で動けなくなった。
「こっちに来なさい」
重々しいレイ兄さまの声。
(伯爵に会った事が知れたら、僕また叱られるっ…!)
この間のベッドの上でされたお仕置きの痛みが蘇り、冷や汗が浮かぶ。
「リト、早くするんだ」
本当は早くこの部屋から逃げ出したかったけれど、レイ兄さまの声には逆らえず、僕はビクビクしながら、兄さまの方へと戻る。
「もっと、こっちだ」
レイ兄さまの机の前に立つと、レイ兄さまは険しい顔で、僕を手招きする。
僕は心臓をバクバクさせながら、机の向こうに回り、レイ兄さまの目の前に立つ。
「リト」
レイ兄さまの手が僕の体へと伸びてきて、
(また、お仕置きされる!)と思わず目を閉じた瞬間、
「ああ、リト! リトが私に手紙を書いてくれたなんて!」
レイ兄さまは感激しながら腕の中に僕をギュッと抱き込む。
薔薇のように甘く華やかなレイ兄さまの香りが僕を包んだ。
「れ、レイ兄さま?!」
「最近、リトには厳しくしていたのに、リトはそんな私に手紙を書いてくれただなんて、リトはなんと優しい子なんだろうか」
そう言ったレイ兄さまの美しい瞳には、うっすらと涙が浮かんでいた。
(ま、マズい!レイ兄さま、何か勘違いしてる?!)
と、とにかく、この状況を抜け出さなくちゃ!
この手紙が伯爵からだと知られたら、僕は八つ裂きされちゃうっ!
「に、兄さま、その手紙は一人で読んで!」
「何を言ってるんだリト。私はお前と一緒に読みたいのだ」
そう言うと、レイ兄さまは僕を「よいしょ」と、お膝の上に抱きかかえ、手紙を銀のレターオープナーで開ける。
「どれどれ、リトはどんな事を書いてくれたのかな?」
レイ兄さまは嬉しそうに弾んだ声で手紙を広げる。
もう逃げられなくて、絶対絶命だった。
せめて、伯爵が余計な事を書いていないことを祈るしかない。
「“親愛なるレイモンドへ"……リトは随分と大人びた文章を書くんだね」
クスリとレイ兄さまは笑って、続きを声に出して読み始める。
「"私のお前への愛がどれほどのものか、お前は本当は気がついているはずだ……"………?」
そこまで読んで、やっとレイ兄さまはこの手紙が僕が書いたものでない事に気がついたのか、急に無言になり、それから険しい表情で手紙を読み進めてゆく。
その手が暫くして、ワナワナと震えだした。
「リトっ! この手紙は!」
ぐしゃり、と手にしていた手紙をレイ兄さまが握りつぶした瞬間、一瞬、レイ兄さまの手が緩み、その隙に僕はレイ兄さまのお膝の上から飛び降りると、猛ダッシュでドア目掛けて走り出す。
「待ちなさい! この手紙をどうしたんだ! リト!」
「し、知らないっ! 屋敷に届いてたのっ!」
そう叫ぶと、重い扉を力いっぱいに開ける。
「待て! リト! 待ちなさい!」
レイ兄さまの声が背中に響いたけど、僕は振り返らずに、レイ兄さまの書斎から逃げ出した。
「はあっ……はあっ……」
レイ兄さまの部屋から逃げ出した僕は、屋敷の長い廊下を、自分の部屋目掛けて全力疾走する。
あの角を曲がれば、すぐに僕の部屋だ!
心臓をバクバクさせながら、角を曲がろとしたところで、不意に廊下の脇の小部屋から、ヌッと手が伸びてきて、不意に僕の身体は薄暗い小部屋に引きずり込まれた。
「レイ兄さま、僕です」
レイ兄さまの書斎の重厚な扉をノックすると、中から
「入りなさい」
と兄さまの声が響いた。
その声を聞いた僕は、ギギギと重い扉を全身で押し開ける。
「何の用だ。リト」
レイ兄さまは、顔も上げずに手元の書類に羽ペンを走らせながら、少し不機嫌そうな声で尋ねる。
「あ、あの……兄さま……これ……」
僕は恐る恐るレイ兄さまの机に近づくと、伯爵から預かった手紙を投げるようにしてレイ兄さまに渡し、クルリと踵を返すと、急いで逃げ出すようにドアまでダッシュする。
あと、少しで扉のノブに手がかかるその直前に、
「待ちなさい! リト!」
レイ兄さまの大きな声が響く。
次の瞬間、ビクッと僕の足は震えてその場で動けなくなった。
「こっちに来なさい」
重々しいレイ兄さまの声。
(伯爵に会った事が知れたら、僕また叱られるっ…!)
この間のベッドの上でされたお仕置きの痛みが蘇り、冷や汗が浮かぶ。
「リト、早くするんだ」
本当は早くこの部屋から逃げ出したかったけれど、レイ兄さまの声には逆らえず、僕はビクビクしながら、兄さまの方へと戻る。
「もっと、こっちだ」
レイ兄さまの机の前に立つと、レイ兄さまは険しい顔で、僕を手招きする。
僕は心臓をバクバクさせながら、机の向こうに回り、レイ兄さまの目の前に立つ。
「リト」
レイ兄さまの手が僕の体へと伸びてきて、
(また、お仕置きされる!)と思わず目を閉じた瞬間、
「ああ、リト! リトが私に手紙を書いてくれたなんて!」
レイ兄さまは感激しながら腕の中に僕をギュッと抱き込む。
薔薇のように甘く華やかなレイ兄さまの香りが僕を包んだ。
「れ、レイ兄さま?!」
「最近、リトには厳しくしていたのに、リトはそんな私に手紙を書いてくれただなんて、リトはなんと優しい子なんだろうか」
そう言ったレイ兄さまの美しい瞳には、うっすらと涙が浮かんでいた。
(ま、マズい!レイ兄さま、何か勘違いしてる?!)
と、とにかく、この状況を抜け出さなくちゃ!
この手紙が伯爵からだと知られたら、僕は八つ裂きされちゃうっ!
「に、兄さま、その手紙は一人で読んで!」
「何を言ってるんだリト。私はお前と一緒に読みたいのだ」
そう言うと、レイ兄さまは僕を「よいしょ」と、お膝の上に抱きかかえ、手紙を銀のレターオープナーで開ける。
「どれどれ、リトはどんな事を書いてくれたのかな?」
レイ兄さまは嬉しそうに弾んだ声で手紙を広げる。
もう逃げられなくて、絶対絶命だった。
せめて、伯爵が余計な事を書いていないことを祈るしかない。
「“親愛なるレイモンドへ"……リトは随分と大人びた文章を書くんだね」
クスリとレイ兄さまは笑って、続きを声に出して読み始める。
「"私のお前への愛がどれほどのものか、お前は本当は気がついているはずだ……"………?」
そこまで読んで、やっとレイ兄さまはこの手紙が僕が書いたものでない事に気がついたのか、急に無言になり、それから険しい表情で手紙を読み進めてゆく。
その手が暫くして、ワナワナと震えだした。
「リトっ! この手紙は!」
ぐしゃり、と手にしていた手紙をレイ兄さまが握りつぶした瞬間、一瞬、レイ兄さまの手が緩み、その隙に僕はレイ兄さまのお膝の上から飛び降りると、猛ダッシュでドア目掛けて走り出す。
「待ちなさい! この手紙をどうしたんだ! リト!」
「し、知らないっ! 屋敷に届いてたのっ!」
そう叫ぶと、重い扉を力いっぱいに開ける。
「待て! リト! 待ちなさい!」
レイ兄さまの声が背中に響いたけど、僕は振り返らずに、レイ兄さまの書斎から逃げ出した。
「はあっ……はあっ……」
レイ兄さまの部屋から逃げ出した僕は、屋敷の長い廊下を、自分の部屋目掛けて全力疾走する。
あの角を曲がれば、すぐに僕の部屋だ!
心臓をバクバクさせながら、角を曲がろとしたところで、不意に廊下の脇の小部屋から、ヌッと手が伸びてきて、不意に僕の身体は薄暗い小部屋に引きずり込まれた。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
ハンターがマッサージ?で堕とされちゃう話
あずき
BL
【登場人物】ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ハンター ライト(17)
???? アル(20)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
後半のキャラ崩壊は許してください;;
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる