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美貌の侍従による淫らなレッスン♡
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ザファールに言われて思い出す。
以前、リョウ兄さまと隠れん坊をして遊んでいた時に、“リョウ兄さまに絶対に見つからない場所”として僕が隠れたのが、レイ兄さまの書斎の壁際にあるクローゼットだった。
本当は、レイ兄さまに『リト、書斎には重要な書類が沢山あるから、勝手に入ってはいけないよ』と言われていたけれど、遊びに夢中だった僕は、そんな事はすっかりと忘れて、リョウ兄さまの追いかけてくる足音から逃げるようにして、誰もいない薄暗い書斎の、壁際に取り付けられた小さな納戸に飛び込んだ。
そこは、レイ兄さまの来客応接用の黒いエナメルの靴と赤いベルベットのシガージャケットが数着かけられている狭い空間で、そこで息を潜めて隠れていると、不意に書斎の入口のドアがガチャリと音を立てて開き、誰かが入って来る気配がした。
(リョウ兄さまが来た!)
僕はクスクスと笑い出しそうになるのを堪えて両手で口を覆う。
けれど、入ってきたのはレイ兄さまだった。
その瞬間、僕の心臓はドキン!と跳ねる。その時になって、やっとこの部屋に入ってはいけないことを思い出したのだ。
(どうしよう……。今出ていったら絶対に怒られる……)
僕は息を殺して、扉の隙間から部屋の様子をそっと伺う。
そこにはレイ兄さまとザファールが立っていた。
「ザファール、この度はよくやってくれた。ロキサリーニ大司法長官も大変喜ばれていた。あの気難しい長老が件の案件を通してくれたのも、お前の働きのお陰だ。感謝する」
レイ兄さまはそう言うと、書斎に置かれていた緋色の猫足のソファーに腰掛け、優雅に足を組む。
「お褒めの言葉ありがとう存じます」
ザファールは胸に手を当てると、レイ兄さまに向かって、恭しくお辞儀をする。
「来いザファール。褒美を取らす」
レイ兄さまが右手をすっと前に出すと、ザファールは跪いて、レイ兄さまのその真っ白な手の甲にそっとキスをする。
それから立ち上がり、「頂戴する機会を頂き光栄です。レイモンド様。それでは、失礼します」と言って一礼すると、静かにレイ兄さまの上に覆い被さった。
僕はゴクリと唾を飲み込むと、“これから一体何がはじまるんだろう?”と、必死で隙間から部屋の様子を窺う。
けれど、何もそこでは起こっていないように見えた。
レイ兄さまとザファールは、猫足の長椅子の上で寝そべって、二人でお昼寝でもしているかのように静かに動かなかったからだ。
でも、次の瞬間に僕はドキっとする。
ザファールの表情が今までに見たこともないものだったから。
レイ兄さまの上に覆い被さっていたザファールは、いつもの澄まし顔ではなく、今はその整った顔の眉間にシワを寄せ、何かを堪えるように少し苦しそうに息を吐いて、小さく腰を動かしていた。
ここからレイ兄さまの表情は見えなかったけれど、兄さまは一言も言葉を発していなくて、身動きも一つしていなかった。
部屋には、ザファールが時折漏らす吐息だけが響いていた。
そして、「っく!」と小さくザファールの身体が弾んだ次の瞬間には、ザファールはすぐさまレイ兄さまの体から離れ、胸元のポケットから真っ白なハンカチーフを取り出すと、レイ兄さまの身体を拭いて清め、兄さまの衣服を整えてから、自分のトラウザーズを引き上げて、前を留める。
レイ兄さまはゆったりと体を長椅子から起こすと、気怠げにその金色の髪をかきあげ、胸元のネクタイの位置を直し
「相変わらずお前のは素晴らしいな」
とそう言いながら椅子から立ち上がって
「午後のスケジュールは?」
と、ザファールに尋ねた。
その声は、つい今行われた “行為” など何も無かったかのような、いつものレイ兄さまの声だった。
「15時より貴族院議長ご夫妻とのお茶会が入っております」
ザファールもいつもの澄まし顔に戻っていた。
「分かった。では食堂で次の議会の資料を読みながら軽い昼食を取るので、準備を頼む」
そう言いながら、レイ兄さまは部屋を出て行った。
ザファールもその後に続き、部屋を出る直前に、一瞬、僕の隠れている納戸の方にチラリと視線を寄越し、クスっと笑みを浮かべてから、静かに書斎の扉を閉めて出て行った。
二人の足音が聞こえなくなってから、僕はふーっと深く息を吐いて、ノソノソと納戸から這いずり出る。
さっきの二人の行為は、まるで二匹の美しい蝶がひらひらと一輪の花に一緒に舞い降りて蜜を吸い、またすぐに別の花へと移るために、さっと舞い上がる。そんな一瞬の光景だった。
それはあまりにも美しく、僕の記憶にハッキリと焼き付いていた。
以前、リョウ兄さまと隠れん坊をして遊んでいた時に、“リョウ兄さまに絶対に見つからない場所”として僕が隠れたのが、レイ兄さまの書斎の壁際にあるクローゼットだった。
本当は、レイ兄さまに『リト、書斎には重要な書類が沢山あるから、勝手に入ってはいけないよ』と言われていたけれど、遊びに夢中だった僕は、そんな事はすっかりと忘れて、リョウ兄さまの追いかけてくる足音から逃げるようにして、誰もいない薄暗い書斎の、壁際に取り付けられた小さな納戸に飛び込んだ。
そこは、レイ兄さまの来客応接用の黒いエナメルの靴と赤いベルベットのシガージャケットが数着かけられている狭い空間で、そこで息を潜めて隠れていると、不意に書斎の入口のドアがガチャリと音を立てて開き、誰かが入って来る気配がした。
(リョウ兄さまが来た!)
僕はクスクスと笑い出しそうになるのを堪えて両手で口を覆う。
けれど、入ってきたのはレイ兄さまだった。
その瞬間、僕の心臓はドキン!と跳ねる。その時になって、やっとこの部屋に入ってはいけないことを思い出したのだ。
(どうしよう……。今出ていったら絶対に怒られる……)
僕は息を殺して、扉の隙間から部屋の様子をそっと伺う。
そこにはレイ兄さまとザファールが立っていた。
「ザファール、この度はよくやってくれた。ロキサリーニ大司法長官も大変喜ばれていた。あの気難しい長老が件の案件を通してくれたのも、お前の働きのお陰だ。感謝する」
レイ兄さまはそう言うと、書斎に置かれていた緋色の猫足のソファーに腰掛け、優雅に足を組む。
「お褒めの言葉ありがとう存じます」
ザファールは胸に手を当てると、レイ兄さまに向かって、恭しくお辞儀をする。
「来いザファール。褒美を取らす」
レイ兄さまが右手をすっと前に出すと、ザファールは跪いて、レイ兄さまのその真っ白な手の甲にそっとキスをする。
それから立ち上がり、「頂戴する機会を頂き光栄です。レイモンド様。それでは、失礼します」と言って一礼すると、静かにレイ兄さまの上に覆い被さった。
僕はゴクリと唾を飲み込むと、“これから一体何がはじまるんだろう?”と、必死で隙間から部屋の様子を窺う。
けれど、何もそこでは起こっていないように見えた。
レイ兄さまとザファールは、猫足の長椅子の上で寝そべって、二人でお昼寝でもしているかのように静かに動かなかったからだ。
でも、次の瞬間に僕はドキっとする。
ザファールの表情が今までに見たこともないものだったから。
レイ兄さまの上に覆い被さっていたザファールは、いつもの澄まし顔ではなく、今はその整った顔の眉間にシワを寄せ、何かを堪えるように少し苦しそうに息を吐いて、小さく腰を動かしていた。
ここからレイ兄さまの表情は見えなかったけれど、兄さまは一言も言葉を発していなくて、身動きも一つしていなかった。
部屋には、ザファールが時折漏らす吐息だけが響いていた。
そして、「っく!」と小さくザファールの身体が弾んだ次の瞬間には、ザファールはすぐさまレイ兄さまの体から離れ、胸元のポケットから真っ白なハンカチーフを取り出すと、レイ兄さまの身体を拭いて清め、兄さまの衣服を整えてから、自分のトラウザーズを引き上げて、前を留める。
レイ兄さまはゆったりと体を長椅子から起こすと、気怠げにその金色の髪をかきあげ、胸元のネクタイの位置を直し
「相変わらずお前のは素晴らしいな」
とそう言いながら椅子から立ち上がって
「午後のスケジュールは?」
と、ザファールに尋ねた。
その声は、つい今行われた “行為” など何も無かったかのような、いつものレイ兄さまの声だった。
「15時より貴族院議長ご夫妻とのお茶会が入っております」
ザファールもいつもの澄まし顔に戻っていた。
「分かった。では食堂で次の議会の資料を読みながら軽い昼食を取るので、準備を頼む」
そう言いながら、レイ兄さまは部屋を出て行った。
ザファールもその後に続き、部屋を出る直前に、一瞬、僕の隠れている納戸の方にチラリと視線を寄越し、クスっと笑みを浮かべてから、静かに書斎の扉を閉めて出て行った。
二人の足音が聞こえなくなってから、僕はふーっと深く息を吐いて、ノソノソと納戸から這いずり出る。
さっきの二人の行為は、まるで二匹の美しい蝶がひらひらと一輪の花に一緒に舞い降りて蜜を吸い、またすぐに別の花へと移るために、さっと舞い上がる。そんな一瞬の光景だった。
それはあまりにも美しく、僕の記憶にハッキリと焼き付いていた。
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