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挑戦状(1)
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『橘 零 という女はいらっしゃる?!』
急に教室の扉がバンッ!と開き、お昼休みのガヤガヤした教室が一瞬で静かになった。零はキョトンとしていたが持っていた箸を置き、扉の方へ歩いていった。
扉には背が低めで、長い明るめの茶髪を上で二つ結び…俗に言うツインテールにした可愛らしい感じの女の子がいた。零はその子に
『橘 零 は私の事ですが…なにか御用でしょうか?』
と少し腰をかがめてきいた。零の身長は確か百六十五を越えていたはず…つまりその様子は小学生と大人のようだった。するとその女の子は
『私の名前は 西条 麗奈!貴女!私と勝負なさい!』
とビシィ!とでもいうように腰に手を当てながら、零に向かって指をさした。零はポカンとし
『えっと…それはまたどうしてでしょうか…?』
と珍しくタジタジとしていた。西条さんは頬を膨らませ怒りながら
『貴女よりも私の方が優れていると証明するためです!…そうすればあの先輩も…。』
と最後の方は聞き取れなかったがそう言った。零はあんまり理解が出来ていないようで
『あの、どうして私なんです?私なんかより優れた方はこの学校にいくらでもいると思うのですが…。』
と言った。零の言葉にクラス全員が心の中で思った。
(いや、いないだろ。)
と。
西条さんはムッとしながら
『ともかくっ!私と勝負して頂きますっ!勝負の内容はいたって簡単。勉強・料理・運動・裁縫・歌の五つで勝負を行い、より優れている方が勝ちです!』
と言った。零は諦めたのか静かに話を聞いていた。するとそこにサキが向かっていき
『しつもーん。そのどっちが優れてるってどうやって決めるの?自分たちじゃ無理でしょ?』
と西条さんにきいた。ニコッと微笑みながらきくサキの顔を見て西条さんは少し顔を赤らめたが、そのまま
『もちろん、第三者が必要なのでお互いに自分の事をよく知っている人を三人用意しなければなりません。まぁ、私はファンクラブがありますからその中から好きに選びますが。』
と自慢げに言った。サキはその態度に少しイラついたのか
『へー、西条さんファンクラブなんてあるんだ。知らなかったなー。零のファンクラブがあるのは知ってるけど。』
と煽るような口ぶりで言った。サキの言葉に西条さんは
『なっ、貴女にもファンクラブが?!』
と零に詰め寄った。零は嫌なことを思い出したのか顔をしかめながら
『あぁ、ありましたね。そんなもの。…迷惑極まりなかったですけど。』
と呟いた。するとサキが零に
『零は誰を選ぶの?もちろん、俺は選んでくれるよね?』
とニコニコときいた。それに零は
『えぇ、もちろん。私の事、よく知っているでしょう?』
とフワリと微笑んで言った。自分から仕掛けたはずのサキはその笑顔にやられ
『…今、顔見ないでね…。』
と耳まで赤くし、手で自分の顔を隠していた。花ちゃんはそれを見てニヤニヤと笑っていた。完全に空気にされていた西条さんは
『ちょっと!私を空気にしないで下さる!?まったく…。ともかく!勝負は五日間行います。勝負の時間は放課後。一週間後に。一つ目の勝負は数学のテストで勝負です。テストは先生に協力して頂いて、問題は当日先生から受け取ります。場所は図書室。では、せいぜい頑張って下さい。』
と言ってからフンッとそっぽを向き、歩いていってしまった。僕は零に
『なんかすごい人だったね…。零大丈夫?』
と声をかけた。零は少し楽しげな顔をして
『えぇ、大丈夫ですよ。可愛らしい方でしたねぇ。勝負なんて久しぶりですから、ちょっと楽しみです。』
と言った。ウキウキと機嫌が良さそうな零は少し幼くて可愛らしく見えた。すると花ちゃんが
『サキくんを選ぶのはわかってたけど私は!?零ちゃん!私は!?』
と零の手を掴んで問いただすようにきいていた。零はクスクスと笑いながら
『もちろん花も選びますよ。当たり前じゃないですか。一番私のことを知っているでしょう?』
と言った。その言葉に花ちゃんは顔が緩みきっていた。二人をボーッと見ていると急に零に手を握られ
『蓮もですよ!勝負、一緒に楽しみましょう?』
と言われた。思ったより近い零の顔に僕は
『う、うん!わかった!わかったから!ちょーっと顔が近いかな?!』
と顔を熱くしながら言った。零は
『あら、すいません。楽しくって。』
とニコニコ顔で離れていった。
なんやかんやとまたガヤガヤしてお昼休みが終わった。そして眠い授業を終えて放課後になった。今日は零がバイトの日なのでみんなでカフェに行くことにした。
カフェで今日は珍しくみんなカウンターに座り、零と今日の勝負について話をした。
『零ちゃん。ホントに勝負するの?』
花ちゃんはオレンジジュースを飲みながらきいた。するとサキが
『どうしたの?花ちゃん。零が負けるかもって心配してるの?』
とチョコケーキをフォークで刺しながら言った。花ちゃんは眉間に皺を寄せながら
『何言ってるの?そんな訳ないじゃん。そうじゃなくて、絶対零ちゃんが勝つに決まってるのにホントに勝負するの?意味なくない?っていう意味で言ってるの!』
と言った。僕とサキは
(あ、揺るぎない零信者魂…。)
と思いながら花ちゃんから目を逸らした。零はその光景を笑いながら見ていた。
『数学のテストって言ってたけど…どんな内容なんだろうね?』
僕は零にきく。零は
『さぁ…?範囲も何もわかりませんからねぇ…とりあえず中学一年生から大学四年生くらいまでの数学を片っ端から解いておきましょうかね。』
と薄く微笑みながら、さも簡単のように言う。その言葉に花ちゃんとサキは呆然とする。
『ちょっと、本気で言ってんの?零。』
サキは信じられないという風にきく。零はニヤリと妖しく微笑み
『えぇ、もちろん。勝負ですから、本気で挑まねば…相手に失礼でしょう?』
と言う。その笑みにサキは乾いた笑いを漏らしながらケーキを口に運んだ。
急に教室の扉がバンッ!と開き、お昼休みのガヤガヤした教室が一瞬で静かになった。零はキョトンとしていたが持っていた箸を置き、扉の方へ歩いていった。
扉には背が低めで、長い明るめの茶髪を上で二つ結び…俗に言うツインテールにした可愛らしい感じの女の子がいた。零はその子に
『橘 零 は私の事ですが…なにか御用でしょうか?』
と少し腰をかがめてきいた。零の身長は確か百六十五を越えていたはず…つまりその様子は小学生と大人のようだった。するとその女の子は
『私の名前は 西条 麗奈!貴女!私と勝負なさい!』
とビシィ!とでもいうように腰に手を当てながら、零に向かって指をさした。零はポカンとし
『えっと…それはまたどうしてでしょうか…?』
と珍しくタジタジとしていた。西条さんは頬を膨らませ怒りながら
『貴女よりも私の方が優れていると証明するためです!…そうすればあの先輩も…。』
と最後の方は聞き取れなかったがそう言った。零はあんまり理解が出来ていないようで
『あの、どうして私なんです?私なんかより優れた方はこの学校にいくらでもいると思うのですが…。』
と言った。零の言葉にクラス全員が心の中で思った。
(いや、いないだろ。)
と。
西条さんはムッとしながら
『ともかくっ!私と勝負して頂きますっ!勝負の内容はいたって簡単。勉強・料理・運動・裁縫・歌の五つで勝負を行い、より優れている方が勝ちです!』
と言った。零は諦めたのか静かに話を聞いていた。するとそこにサキが向かっていき
『しつもーん。そのどっちが優れてるってどうやって決めるの?自分たちじゃ無理でしょ?』
と西条さんにきいた。ニコッと微笑みながらきくサキの顔を見て西条さんは少し顔を赤らめたが、そのまま
『もちろん、第三者が必要なのでお互いに自分の事をよく知っている人を三人用意しなければなりません。まぁ、私はファンクラブがありますからその中から好きに選びますが。』
と自慢げに言った。サキはその態度に少しイラついたのか
『へー、西条さんファンクラブなんてあるんだ。知らなかったなー。零のファンクラブがあるのは知ってるけど。』
と煽るような口ぶりで言った。サキの言葉に西条さんは
『なっ、貴女にもファンクラブが?!』
と零に詰め寄った。零は嫌なことを思い出したのか顔をしかめながら
『あぁ、ありましたね。そんなもの。…迷惑極まりなかったですけど。』
と呟いた。するとサキが零に
『零は誰を選ぶの?もちろん、俺は選んでくれるよね?』
とニコニコときいた。それに零は
『えぇ、もちろん。私の事、よく知っているでしょう?』
とフワリと微笑んで言った。自分から仕掛けたはずのサキはその笑顔にやられ
『…今、顔見ないでね…。』
と耳まで赤くし、手で自分の顔を隠していた。花ちゃんはそれを見てニヤニヤと笑っていた。完全に空気にされていた西条さんは
『ちょっと!私を空気にしないで下さる!?まったく…。ともかく!勝負は五日間行います。勝負の時間は放課後。一週間後に。一つ目の勝負は数学のテストで勝負です。テストは先生に協力して頂いて、問題は当日先生から受け取ります。場所は図書室。では、せいぜい頑張って下さい。』
と言ってからフンッとそっぽを向き、歩いていってしまった。僕は零に
『なんかすごい人だったね…。零大丈夫?』
と声をかけた。零は少し楽しげな顔をして
『えぇ、大丈夫ですよ。可愛らしい方でしたねぇ。勝負なんて久しぶりですから、ちょっと楽しみです。』
と言った。ウキウキと機嫌が良さそうな零は少し幼くて可愛らしく見えた。すると花ちゃんが
『サキくんを選ぶのはわかってたけど私は!?零ちゃん!私は!?』
と零の手を掴んで問いただすようにきいていた。零はクスクスと笑いながら
『もちろん花も選びますよ。当たり前じゃないですか。一番私のことを知っているでしょう?』
と言った。その言葉に花ちゃんは顔が緩みきっていた。二人をボーッと見ていると急に零に手を握られ
『蓮もですよ!勝負、一緒に楽しみましょう?』
と言われた。思ったより近い零の顔に僕は
『う、うん!わかった!わかったから!ちょーっと顔が近いかな?!』
と顔を熱くしながら言った。零は
『あら、すいません。楽しくって。』
とニコニコ顔で離れていった。
なんやかんやとまたガヤガヤしてお昼休みが終わった。そして眠い授業を終えて放課後になった。今日は零がバイトの日なのでみんなでカフェに行くことにした。
カフェで今日は珍しくみんなカウンターに座り、零と今日の勝負について話をした。
『零ちゃん。ホントに勝負するの?』
花ちゃんはオレンジジュースを飲みながらきいた。するとサキが
『どうしたの?花ちゃん。零が負けるかもって心配してるの?』
とチョコケーキをフォークで刺しながら言った。花ちゃんは眉間に皺を寄せながら
『何言ってるの?そんな訳ないじゃん。そうじゃなくて、絶対零ちゃんが勝つに決まってるのにホントに勝負するの?意味なくない?っていう意味で言ってるの!』
と言った。僕とサキは
(あ、揺るぎない零信者魂…。)
と思いながら花ちゃんから目を逸らした。零はその光景を笑いながら見ていた。
『数学のテストって言ってたけど…どんな内容なんだろうね?』
僕は零にきく。零は
『さぁ…?範囲も何もわかりませんからねぇ…とりあえず中学一年生から大学四年生くらいまでの数学を片っ端から解いておきましょうかね。』
と薄く微笑みながら、さも簡単のように言う。その言葉に花ちゃんとサキは呆然とする。
『ちょっと、本気で言ってんの?零。』
サキは信じられないという風にきく。零はニヤリと妖しく微笑み
『えぇ、もちろん。勝負ですから、本気で挑まねば…相手に失礼でしょう?』
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