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努力と不安と
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ある日僕達、零、花ちゃん、サキは普段通りに次の授業のために教室を移動しようと準備をしていた。
『花?顔色が悪いですよ?大丈夫ですか?』
少しボーッとしていた花ちゃんに零が顔を覗き込みながらきいた。すると花ちゃんは
『…大丈夫だよ!早く行こ!』
と無理しているような少し不自然な笑顔で言った。
『…そうですね。行きましょうか。』
無理にきくのは違うと思ったのか零は少し眉を下げながら微笑んだ。
四人で教室を出て、少し歩くと花ちゃんがふらふらとし始め、サキにぶつかった。
『ご、ごめんね!サキくん!』
明らかに様子のおかしい花ちゃんにサキも心配になったのか
『大丈夫なの?さっきからふらふらしてるけど…。保健室、連れていこうか?』
と花ちゃんを支えながら言った。零も不安そうな顔をして二人を見つめていた。でも花ちゃんは
『大丈夫大丈夫!昨日ちょっと夜更かししちゃって…。それで寝不足なだけだよ!心配してくれてありがとう。』
とまたさっきと同じ笑顔で言った。サキと零は納得がいってないみたいだったけど、本人が大丈夫だと言うならそれ以上何も言えない、とまた歩き始めた。すると急に
ダンッ
と後ろから音がした。驚いて僕らが振り向くとそこには倒れている花ちゃんがいた。一瞬みんな驚いて動けなかったが一番に零が動き出し花ちゃんに駆け寄った。
『花!しっかりして下さい!花!』
珍しく零は慌てていて声を荒らげていた。やっと動けるようになった僕は
『と、とりあえず保健室!保健室連れていこう!僕がおんぶして!…は、ちょっと、出来ない、から…。…サキ、花ちゃんおんぶして保健室連れて行ける?』
と情けないことを言っていた。サキはまだ少し驚いて放心状態だった。
『あ、うん、行けるよ。零、ちょっとよけて?俺がおんぶしていくから…。ってちょっと!』
僕が自分の情けなさに少し落ち込んでいるとサキが声を上げた。どうしたのかと零の方を見ると軽々と花ちゃんを横抱き…俗に言うお姫様抱っこしていた。
『零!腕辛いでしょ!?俺が連れていくから!無理しないで!?』
というサキの声が聞こえていないのか零は
『サキ、蓮、私は花を保健室に連れていくので!お二人は先生に次の授業に私と花は出席出来ないと伝えて下さい!』
ともう既に動き出しながら言った。
『『あ、はい…。』』
僕らが返事をする頃には零は遥か遠くを走っていた。
『…とりあえず二人の荷物持って授業行こっか。先生に俺らも出れないって言って保健室行こう。流石に心配だし。』
『そ、そうだね…。そうしよっか…。』
恐らく二人とも同じ意味であろうため息を一つついてから僕らは歩き出した。
(( 俺/僕の好きな人がカッコよすぎる。 ))
先生に伝えて、僕らも保健室に向かう。
コンコンコンッ
とノックしてから保健室に入っていった。すると一つだけカーテンのしまったベッドから零が出てきた。
『花ちゃん大丈夫そう?何かあったのかな…。』
と零に声をかける。零は
『先生が言うには過労と睡眠不足らしいです。すぐに目を覚ますだろう、と…。』
と不安そうな心配そうな声で言った。今にも消えそうな零にサキは
『大丈夫だよ、零。すぐ目を覚ますって先生言ったんでしょ?ならそんな顔しないで、いつもの零の顔を見せて?ね?』
と零の頭を撫でながら優しい声で言った。そんな事考えてる場合じゃないのはわかっていても、僕は二人を見てられなくなって
『そういえば先生は?』
と保健室の中をキョロキョロと見ながら言った。
『私が来た時はいたんですが、今日は用事があるそうで、暫く戻れないと言ってました。』
『そうなんだ…。』
いつもと変わらない様子に戻った零はため息をついて言った。
『先生はいてもいなくても別にいいけど、今問題なのは、花ちゃんが何をそんな倒れるほどしてるのかだよね。』
『そうですね…。』
三人で唸っているとベッドのカーテンが開いた。零はすぐに反応して
『花っ!』
と駆け寄った。花ちゃんはまだ少し青白い顔で
『心配かけてごめんね?ただの寝不足だから!』
と笑顔を作って言った。するとサキが
『ねぇ、なんでそんな倒れるほど寝不足になってるの?何してるの?』
と真剣な顔で聞いた。花ちゃんは少し目を泳がせながら答えた。
『えっと、その、テレビだよ!テレビ!夜にやってるやつで面白いのがあってハマっちゃって…。』
『それ、毎日やってるの?タイトルは?』
サキは花ちゃんを追い詰めるように言う。
『えっと…。』
俯いて言葉に詰まる花ちゃんに零がポツリと呟いた。
『花。私は、私たちは、頼りないですか?』
『え?』
悲しそうな寂しそうな顔で零は花ちゃんを見つめた。
『花が何をしていたとしても、私はとやかく言う気はありません。ですが、倒れた、というなら話は別です。花、貴女が何をしているのか私に教えてくれませんか。…無理に、とは言いませんが。…心配なんです。怖いんです…。また大切な人を失ってしまいそうで…。』
零は後半になるにつれて消えてしまいそうな声で呟いた。その顔は今にも泣きだしそうで見ているこっちの方が辛い程だった。
すると花ちゃんの瞳から涙が零れた。
『ごめん、ごめんね、零ちゃん…。話すよ、ちゃんと話すから、そんな顔しないで…。』
と零の顔を両手で包み込みながら言った。
花ちゃんは涙が止まると同時に話し始めた。
『私ね、最近夜遅くまで勉強してるんだ。』
『どうしてそんな夜遅くまでやってるの?眠たいでしょ?』
サキが花ちゃんに問う。花ちゃんの瞳に少し影が差した。
『最近、不安だったんだ。私、零ちゃんの友達でいていいのかなって。』
『そんなの!当たり前じゃないですか!』
花ちゃんの言葉に零は少し声を荒らげた。でも、花ちゃんは少し冷たい声で
『ありがとう、零ちゃん。でもね、私はそう思えなかったの。私は勉強は平均くらいだし、運動は苦手であんまり出来ない。見た目だって零ちゃんの隣で歩くには全然釣り合ってない。零ちゃんは気にしてないかもしれないけど私はすごく気になるんだ。私のせいで零ちゃんの評価が下がったらどうしようって、零ちゃんの邪魔をしちゃったらどうしようって。』
淡々と悲しげな声で言う花ちゃんに僕らは何も言えなかった。
『だから、せめて勉強くらいは頑張って、零ちゃんに近づこうと思って…。それで夜遅くまで勉強してるんだ。』
自嘲気味に笑う花ちゃんに零は
『そんなことしなくても花は私の大切な友達です。周りの評価なんて関係ありませんよ。』
と言ったが花ちゃんは
『零ちゃんには!わかんないよ!なんでも出来る零ちゃんには、私みたいな平凡な人のことなんて!』
と声を荒らげた。驚いている僕達に花ちゃんは続けて
『私みたいな平凡な人はさ、零ちゃんみたいな凄い人に追いつくには頑張って頑張って頑張らないとダメなんだよ。それでもね、追いつけないことの方が多いんだよ。でも、私は零ちゃんに少しでも追いつきたいの。だから、頑張って、頑張って、頑張り続けなきゃいけないの。』
と、涙をポロポロと零しながら小さく叫ぶように言った。
すると零は花ちゃんの手を取り、
『頑張らなくていいんですよ。』
と言った。花ちゃんは泣きながら少し怒ったような声で
『話、聞いてたでしょ?諦めろって言いたいの?私には無理だって言いたいの?』
と言った。零は花ちゃんの手を包み込むように優しく握りながら
『そうではありませんよ。…これは、私の勝手な考えですが。私は「頑張らない」には二つの種類があると思うんです。』
とポツリと言った。零の言葉に花ちゃんは
『二つ?』
とまだ少し涙の残る瞳で零を見つめながら言った。
『はい。…一つは、よく使われる方。投げやりになり、やる気をなくし、物事を適当に済ます事。もう一つは、自分の出来る限りでのみ活動する事。あくまで無理をせず自分の出来る範囲でだけ、物事を行うんです。「頑張る」は基本的に自分の力を超えて無理に物事を行おうとする事ですから、後者は「頑張っている」事にはなりません。つまり「頑張っていない」。ですが、投げやりになっていますか?適当に済ましていますか?いませんよね。自分で出来る限りの事を精一杯やっただけ。それは悪い事ですか?それではダメなんですか?そんなこと、絶対にありません。「頑張る」ことが悪い事だとは思いません。ですが、良いことだとも私は思いません。頑張る事と無理をする事は紙一重です。頑張る事も限度を超えれば無理をするのと同じ。それでは意味はありません。体を壊しては何にもならない。だから…花、貴女は「頑張らないで」下さい。無理をしようとしないで下さい。私に追いつこうとして努力する姿はとても素敵です。ですが、そんなこと必要ないんですよ。私は、花を置いて行ったりはしないんですから。花が追いつきたいと思うのなら私はいつまでも待ちます。花がどんなに自分を「平凡だ」と言おうと「頑張らなきゃ」と言おうと私はそれを否定しましょう。「そんなことはない」と、何度でも。花、私は貴女が隣で笑っていてくれるのが一番嬉しいんです。そして、花から笑顔が消えるのが一番、悲しいんです…。花が私に追いつこうと思うのなら、まずは、私の隣で笑顔でいれるようにして下さい。花が笑顔でいてくれるのなら私は花を全力でサポートしましょう。勉強でも運動でも、花が望むのならどんな事でも手伝いましょう。ですから、無理をしないで下さい…。倒れてしまう程頑張ろうとなんてしないで下さい…。お願いです…。』
零は眉を下げ、不安そうな顔で微笑みながら言った。そんな零に花ちゃんは
『ごめんね、零ちゃん。私勝手だった。私、零ちゃんと離れたくないって思ってたはずなのに、自分から離れていこうとしちゃってたんだね。大切な人がいなくなる寂しさは、怖さは、零ちゃんが一番よく知ってるって、私、知ってたのに…。零ちゃん、私、もう頑張らない!零ちゃんの隣でずっと笑っていられるように!』
涙を零しながらも本当の笑顔で笑って零の手を握り返した。零は安心したようで、穏やかに目を細めて微笑んだ。
一日は安静にしていた方がいい、と零が花ちゃんに言い、花ちゃんは渋々早退した。早退する直前まで
『やだー!零ちゃんの隣にいるー!』
と子供のように駄々をこねていたけど、零が
『私は、一日しっかり良く寝て元気になった花に隣にいてほしいですねぇ。』
と言うと速攻で
『バイバイ!明日ね!』
と帰って行った。
花ちゃんが帰り、僕達も授業を終えて帰路についた時、零は急に立ち止まり、ポツリと呟いた。
『私は花と一緒にいたら花の負担になってしまうんでしょうか…。』
初めての零の自分を否定するような発言に僕とサキは目を丸くした。僕らの様子に気付いてないのか零は続けて
『私が花に「友達になってほしい」と言っていなかったら、花は私に追いつきたいだなんて思うことはなくて、倒れるほど無理をしてしまう事はなかったんじゃないでしょうか。』
と言った。零の手は少し震えているようだった。
『そんなことなっ…』
『そうかもしれないね。』
サキの言葉を遮って僕は告げた。サキは驚いた顔をして僕を見た。僕は
『たしかに零が花ちゃんに関わってなかったら今日みたいな事は起こらなかっただろうね。』
と続けた。サキは僕を何言ってんだ、というような目で見ていた。でも、零は僕の目をハッキリと見つめていた。
『でもね、零。全部そうだよ。』
零は意味が分かってないようだった。
『今日花ちゃんが倒れた事も、喫茶店でハルちゃんやサキに出会ったことも、僕と零が出会ったのも、みんなで楽しく話してるのも、全部零が始めたことなんだよ。…零があの時僕を助けてくれたから今の関係がある。零が、花ちゃんと友達になったから、喫茶店でハルちゃんやサキを救ったから今の関係が出来てる。零は今の僕達との関係は嫌?無理をしてる?』
僕は自分でも驚くほど饒舌に零に問う。零は僕の問いに食い気味に
『そんなこと、絶対にありません!今私はとても楽しくて、幸せです。』
と答えた。
『そうでしょ?でもね、さっき零が言った「私が友達になってほしいと言わなかったら」っていうのは今の関係を全部否定するのと同じだよ。そしてそれは僕達を否定してるのとも同じ。零は僕達を否定したいの?関係を否定したいの?…僕達と関わったことを、後悔、してるの…?』
僕は自分で言ってて少し悲しくなり下を向いてしまった。すると
『…んて…せん…。』
零の声が小さく聞こえた。
『え?』
『後悔なんてしてません!』
僕が聞き返すと零は声を張り上げた。顔を上げた先にある零の瞳には一切の迷いがなく、吸い込まれそうなほど澄んでいた。
『後悔なんてするわけがありません!今の私は!蓮がいたから!花がいたから!サキや、ハルがいたから!ここにいるんです!私は変われました。今まで学校生活なんて退屈で孤独なものだと思って、笑うことも声を荒らげることもありませんでした。でも!皆さんが、蓮が、花が、サキが、ハルがいてくれたからこんなに楽しく、笑って過ごせているんです。そんな素敵な出会いを否定だなんて、後悔なんてするはずがないでしょう?』
そう告げる零はまるで小さな子のような、初めて見るような顔で。多分、その顔に言葉を当てはめるなら、きっとそれは
「満面の笑み」
という言葉しかないだろうな、なんて。そんな顔で僕とサキを見つめた。何も言わない僕らに零は
『すいませんでした。』
と頭を下げた。突然のことに僕ら言葉に詰まった。零は頭を上げてから続けて
『たとえ、迷いの思いから出てしまった言葉だったとしても、二人を、皆さんを否定するような言葉を言ってしまってごめんなさい…。言い訳のようですが、私は花はもちろん、皆さんに嫌われるのが…とても怖いんです。』
とさっきの笑顔が嘘のように力なく笑いながら言った。
『怖くて、不安で、皆さんに嫌われて、離れられてしまうくらいなら、自分から離れてしまえば…なんて考えてしまったんです。馬鹿げてますね。』
苦笑しながら力なく言う零にサキが
『それはみんな一緒だよ、零。みんな、人に嫌われるのは怖いし、不安だし、零の言うようなことを考える人なんていっぱいいる。』
と真剣な顔で零をみつめながら言う。そして目を細めて優しげに微笑みながら
『…だからさ、単純に生きようよ。変に色んな事考えないでさ、思ったこと言って、言われて、喧嘩して、仲直りしてって単純なことして生きようよ。隠し事なんてしないで、全部さらけ出して、それで嫌われたり、離れられるなら、それはその人と相性が悪かっただけの話。気にする必要なんてない。きっとその方が、色々考えて、人の顔色伺って、心配しながら生きるよりずっと楽しいよ?零、零は俺らとそんな風に過ごそうよ。少なくとも俺はそうしたい!…何か異論はある?』
最後にはニヤッとイタズラっ子のように笑って零に問いかけた。すると零は
『…いいえ?大賛成です!』
とまた、「満面の笑み」でこたえた。その笑みが向けられているのが僕じゃないのが少し悔しいけど、今はそれでいい。今は零が笑顔でいてくれるならそれが一番だと思うから。
そして僕らはいつものように喋って、笑って、ふざけながら帰っていった。
────後日談
花ちゃんが倒れた時のことをあんまり覚えてないと言うので教えてみた。
『花ちゃん、零にお姫様抱っこされて保健室連れていかれたんだよ。』
そう言うと花ちゃんはボンッと効果音が付きそうなほど顔を真っ赤にしていた。そして赤みが少し落ち着くと嬉しそうに零の元へ駆けていった。その光景を微笑ましいなぁ、と眺めてるとサキがトントンッと肩を叩き
『蓮、花のことお姫様抱っこ出来る?』
と聞いてきた。僕は
『もちろん、出来ない。サキは?』
と開き直りながら言う。僕の問いかけに
『いや、抱っこするだけなら出来るけど…零のあのスピードで抱っこしながら走ったり、階段降りるのはちょっと…厳しいかな…。』
と苦々しい顔をしながら言った。そこで僕はある提案をした。
『ねぇ、サキ。一緒に筋トレしよっか。』
『そうだね、しよっか。一時休戦で。』
『…絶対負けない。』
『こちらこそ…。』
お互いにニヤッと笑い、男同士の友情が深め、宣戦布告をしました。…絶対負けないし。
『花?顔色が悪いですよ?大丈夫ですか?』
少しボーッとしていた花ちゃんに零が顔を覗き込みながらきいた。すると花ちゃんは
『…大丈夫だよ!早く行こ!』
と無理しているような少し不自然な笑顔で言った。
『…そうですね。行きましょうか。』
無理にきくのは違うと思ったのか零は少し眉を下げながら微笑んだ。
四人で教室を出て、少し歩くと花ちゃんがふらふらとし始め、サキにぶつかった。
『ご、ごめんね!サキくん!』
明らかに様子のおかしい花ちゃんにサキも心配になったのか
『大丈夫なの?さっきからふらふらしてるけど…。保健室、連れていこうか?』
と花ちゃんを支えながら言った。零も不安そうな顔をして二人を見つめていた。でも花ちゃんは
『大丈夫大丈夫!昨日ちょっと夜更かししちゃって…。それで寝不足なだけだよ!心配してくれてありがとう。』
とまたさっきと同じ笑顔で言った。サキと零は納得がいってないみたいだったけど、本人が大丈夫だと言うならそれ以上何も言えない、とまた歩き始めた。すると急に
ダンッ
と後ろから音がした。驚いて僕らが振り向くとそこには倒れている花ちゃんがいた。一瞬みんな驚いて動けなかったが一番に零が動き出し花ちゃんに駆け寄った。
『花!しっかりして下さい!花!』
珍しく零は慌てていて声を荒らげていた。やっと動けるようになった僕は
『と、とりあえず保健室!保健室連れていこう!僕がおんぶして!…は、ちょっと、出来ない、から…。…サキ、花ちゃんおんぶして保健室連れて行ける?』
と情けないことを言っていた。サキはまだ少し驚いて放心状態だった。
『あ、うん、行けるよ。零、ちょっとよけて?俺がおんぶしていくから…。ってちょっと!』
僕が自分の情けなさに少し落ち込んでいるとサキが声を上げた。どうしたのかと零の方を見ると軽々と花ちゃんを横抱き…俗に言うお姫様抱っこしていた。
『零!腕辛いでしょ!?俺が連れていくから!無理しないで!?』
というサキの声が聞こえていないのか零は
『サキ、蓮、私は花を保健室に連れていくので!お二人は先生に次の授業に私と花は出席出来ないと伝えて下さい!』
ともう既に動き出しながら言った。
『『あ、はい…。』』
僕らが返事をする頃には零は遥か遠くを走っていた。
『…とりあえず二人の荷物持って授業行こっか。先生に俺らも出れないって言って保健室行こう。流石に心配だし。』
『そ、そうだね…。そうしよっか…。』
恐らく二人とも同じ意味であろうため息を一つついてから僕らは歩き出した。
(( 俺/僕の好きな人がカッコよすぎる。 ))
先生に伝えて、僕らも保健室に向かう。
コンコンコンッ
とノックしてから保健室に入っていった。すると一つだけカーテンのしまったベッドから零が出てきた。
『花ちゃん大丈夫そう?何かあったのかな…。』
と零に声をかける。零は
『先生が言うには過労と睡眠不足らしいです。すぐに目を覚ますだろう、と…。』
と不安そうな心配そうな声で言った。今にも消えそうな零にサキは
『大丈夫だよ、零。すぐ目を覚ますって先生言ったんでしょ?ならそんな顔しないで、いつもの零の顔を見せて?ね?』
と零の頭を撫でながら優しい声で言った。そんな事考えてる場合じゃないのはわかっていても、僕は二人を見てられなくなって
『そういえば先生は?』
と保健室の中をキョロキョロと見ながら言った。
『私が来た時はいたんですが、今日は用事があるそうで、暫く戻れないと言ってました。』
『そうなんだ…。』
いつもと変わらない様子に戻った零はため息をついて言った。
『先生はいてもいなくても別にいいけど、今問題なのは、花ちゃんが何をそんな倒れるほどしてるのかだよね。』
『そうですね…。』
三人で唸っているとベッドのカーテンが開いた。零はすぐに反応して
『花っ!』
と駆け寄った。花ちゃんはまだ少し青白い顔で
『心配かけてごめんね?ただの寝不足だから!』
と笑顔を作って言った。するとサキが
『ねぇ、なんでそんな倒れるほど寝不足になってるの?何してるの?』
と真剣な顔で聞いた。花ちゃんは少し目を泳がせながら答えた。
『えっと、その、テレビだよ!テレビ!夜にやってるやつで面白いのがあってハマっちゃって…。』
『それ、毎日やってるの?タイトルは?』
サキは花ちゃんを追い詰めるように言う。
『えっと…。』
俯いて言葉に詰まる花ちゃんに零がポツリと呟いた。
『花。私は、私たちは、頼りないですか?』
『え?』
悲しそうな寂しそうな顔で零は花ちゃんを見つめた。
『花が何をしていたとしても、私はとやかく言う気はありません。ですが、倒れた、というなら話は別です。花、貴女が何をしているのか私に教えてくれませんか。…無理に、とは言いませんが。…心配なんです。怖いんです…。また大切な人を失ってしまいそうで…。』
零は後半になるにつれて消えてしまいそうな声で呟いた。その顔は今にも泣きだしそうで見ているこっちの方が辛い程だった。
すると花ちゃんの瞳から涙が零れた。
『ごめん、ごめんね、零ちゃん…。話すよ、ちゃんと話すから、そんな顔しないで…。』
と零の顔を両手で包み込みながら言った。
花ちゃんは涙が止まると同時に話し始めた。
『私ね、最近夜遅くまで勉強してるんだ。』
『どうしてそんな夜遅くまでやってるの?眠たいでしょ?』
サキが花ちゃんに問う。花ちゃんの瞳に少し影が差した。
『最近、不安だったんだ。私、零ちゃんの友達でいていいのかなって。』
『そんなの!当たり前じゃないですか!』
花ちゃんの言葉に零は少し声を荒らげた。でも、花ちゃんは少し冷たい声で
『ありがとう、零ちゃん。でもね、私はそう思えなかったの。私は勉強は平均くらいだし、運動は苦手であんまり出来ない。見た目だって零ちゃんの隣で歩くには全然釣り合ってない。零ちゃんは気にしてないかもしれないけど私はすごく気になるんだ。私のせいで零ちゃんの評価が下がったらどうしようって、零ちゃんの邪魔をしちゃったらどうしようって。』
淡々と悲しげな声で言う花ちゃんに僕らは何も言えなかった。
『だから、せめて勉強くらいは頑張って、零ちゃんに近づこうと思って…。それで夜遅くまで勉強してるんだ。』
自嘲気味に笑う花ちゃんに零は
『そんなことしなくても花は私の大切な友達です。周りの評価なんて関係ありませんよ。』
と言ったが花ちゃんは
『零ちゃんには!わかんないよ!なんでも出来る零ちゃんには、私みたいな平凡な人のことなんて!』
と声を荒らげた。驚いている僕達に花ちゃんは続けて
『私みたいな平凡な人はさ、零ちゃんみたいな凄い人に追いつくには頑張って頑張って頑張らないとダメなんだよ。それでもね、追いつけないことの方が多いんだよ。でも、私は零ちゃんに少しでも追いつきたいの。だから、頑張って、頑張って、頑張り続けなきゃいけないの。』
と、涙をポロポロと零しながら小さく叫ぶように言った。
すると零は花ちゃんの手を取り、
『頑張らなくていいんですよ。』
と言った。花ちゃんは泣きながら少し怒ったような声で
『話、聞いてたでしょ?諦めろって言いたいの?私には無理だって言いたいの?』
と言った。零は花ちゃんの手を包み込むように優しく握りながら
『そうではありませんよ。…これは、私の勝手な考えですが。私は「頑張らない」には二つの種類があると思うんです。』
とポツリと言った。零の言葉に花ちゃんは
『二つ?』
とまだ少し涙の残る瞳で零を見つめながら言った。
『はい。…一つは、よく使われる方。投げやりになり、やる気をなくし、物事を適当に済ます事。もう一つは、自分の出来る限りでのみ活動する事。あくまで無理をせず自分の出来る範囲でだけ、物事を行うんです。「頑張る」は基本的に自分の力を超えて無理に物事を行おうとする事ですから、後者は「頑張っている」事にはなりません。つまり「頑張っていない」。ですが、投げやりになっていますか?適当に済ましていますか?いませんよね。自分で出来る限りの事を精一杯やっただけ。それは悪い事ですか?それではダメなんですか?そんなこと、絶対にありません。「頑張る」ことが悪い事だとは思いません。ですが、良いことだとも私は思いません。頑張る事と無理をする事は紙一重です。頑張る事も限度を超えれば無理をするのと同じ。それでは意味はありません。体を壊しては何にもならない。だから…花、貴女は「頑張らないで」下さい。無理をしようとしないで下さい。私に追いつこうとして努力する姿はとても素敵です。ですが、そんなこと必要ないんですよ。私は、花を置いて行ったりはしないんですから。花が追いつきたいと思うのなら私はいつまでも待ちます。花がどんなに自分を「平凡だ」と言おうと「頑張らなきゃ」と言おうと私はそれを否定しましょう。「そんなことはない」と、何度でも。花、私は貴女が隣で笑っていてくれるのが一番嬉しいんです。そして、花から笑顔が消えるのが一番、悲しいんです…。花が私に追いつこうと思うのなら、まずは、私の隣で笑顔でいれるようにして下さい。花が笑顔でいてくれるのなら私は花を全力でサポートしましょう。勉強でも運動でも、花が望むのならどんな事でも手伝いましょう。ですから、無理をしないで下さい…。倒れてしまう程頑張ろうとなんてしないで下さい…。お願いです…。』
零は眉を下げ、不安そうな顔で微笑みながら言った。そんな零に花ちゃんは
『ごめんね、零ちゃん。私勝手だった。私、零ちゃんと離れたくないって思ってたはずなのに、自分から離れていこうとしちゃってたんだね。大切な人がいなくなる寂しさは、怖さは、零ちゃんが一番よく知ってるって、私、知ってたのに…。零ちゃん、私、もう頑張らない!零ちゃんの隣でずっと笑っていられるように!』
涙を零しながらも本当の笑顔で笑って零の手を握り返した。零は安心したようで、穏やかに目を細めて微笑んだ。
一日は安静にしていた方がいい、と零が花ちゃんに言い、花ちゃんは渋々早退した。早退する直前まで
『やだー!零ちゃんの隣にいるー!』
と子供のように駄々をこねていたけど、零が
『私は、一日しっかり良く寝て元気になった花に隣にいてほしいですねぇ。』
と言うと速攻で
『バイバイ!明日ね!』
と帰って行った。
花ちゃんが帰り、僕達も授業を終えて帰路についた時、零は急に立ち止まり、ポツリと呟いた。
『私は花と一緒にいたら花の負担になってしまうんでしょうか…。』
初めての零の自分を否定するような発言に僕とサキは目を丸くした。僕らの様子に気付いてないのか零は続けて
『私が花に「友達になってほしい」と言っていなかったら、花は私に追いつきたいだなんて思うことはなくて、倒れるほど無理をしてしまう事はなかったんじゃないでしょうか。』
と言った。零の手は少し震えているようだった。
『そんなことなっ…』
『そうかもしれないね。』
サキの言葉を遮って僕は告げた。サキは驚いた顔をして僕を見た。僕は
『たしかに零が花ちゃんに関わってなかったら今日みたいな事は起こらなかっただろうね。』
と続けた。サキは僕を何言ってんだ、というような目で見ていた。でも、零は僕の目をハッキリと見つめていた。
『でもね、零。全部そうだよ。』
零は意味が分かってないようだった。
『今日花ちゃんが倒れた事も、喫茶店でハルちゃんやサキに出会ったことも、僕と零が出会ったのも、みんなで楽しく話してるのも、全部零が始めたことなんだよ。…零があの時僕を助けてくれたから今の関係がある。零が、花ちゃんと友達になったから、喫茶店でハルちゃんやサキを救ったから今の関係が出来てる。零は今の僕達との関係は嫌?無理をしてる?』
僕は自分でも驚くほど饒舌に零に問う。零は僕の問いに食い気味に
『そんなこと、絶対にありません!今私はとても楽しくて、幸せです。』
と答えた。
『そうでしょ?でもね、さっき零が言った「私が友達になってほしいと言わなかったら」っていうのは今の関係を全部否定するのと同じだよ。そしてそれは僕達を否定してるのとも同じ。零は僕達を否定したいの?関係を否定したいの?…僕達と関わったことを、後悔、してるの…?』
僕は自分で言ってて少し悲しくなり下を向いてしまった。すると
『…んて…せん…。』
零の声が小さく聞こえた。
『え?』
『後悔なんてしてません!』
僕が聞き返すと零は声を張り上げた。顔を上げた先にある零の瞳には一切の迷いがなく、吸い込まれそうなほど澄んでいた。
『後悔なんてするわけがありません!今の私は!蓮がいたから!花がいたから!サキや、ハルがいたから!ここにいるんです!私は変われました。今まで学校生活なんて退屈で孤独なものだと思って、笑うことも声を荒らげることもありませんでした。でも!皆さんが、蓮が、花が、サキが、ハルがいてくれたからこんなに楽しく、笑って過ごせているんです。そんな素敵な出会いを否定だなんて、後悔なんてするはずがないでしょう?』
そう告げる零はまるで小さな子のような、初めて見るような顔で。多分、その顔に言葉を当てはめるなら、きっとそれは
「満面の笑み」
という言葉しかないだろうな、なんて。そんな顔で僕とサキを見つめた。何も言わない僕らに零は
『すいませんでした。』
と頭を下げた。突然のことに僕ら言葉に詰まった。零は頭を上げてから続けて
『たとえ、迷いの思いから出てしまった言葉だったとしても、二人を、皆さんを否定するような言葉を言ってしまってごめんなさい…。言い訳のようですが、私は花はもちろん、皆さんに嫌われるのが…とても怖いんです。』
とさっきの笑顔が嘘のように力なく笑いながら言った。
『怖くて、不安で、皆さんに嫌われて、離れられてしまうくらいなら、自分から離れてしまえば…なんて考えてしまったんです。馬鹿げてますね。』
苦笑しながら力なく言う零にサキが
『それはみんな一緒だよ、零。みんな、人に嫌われるのは怖いし、不安だし、零の言うようなことを考える人なんていっぱいいる。』
と真剣な顔で零をみつめながら言う。そして目を細めて優しげに微笑みながら
『…だからさ、単純に生きようよ。変に色んな事考えないでさ、思ったこと言って、言われて、喧嘩して、仲直りしてって単純なことして生きようよ。隠し事なんてしないで、全部さらけ出して、それで嫌われたり、離れられるなら、それはその人と相性が悪かっただけの話。気にする必要なんてない。きっとその方が、色々考えて、人の顔色伺って、心配しながら生きるよりずっと楽しいよ?零、零は俺らとそんな風に過ごそうよ。少なくとも俺はそうしたい!…何か異論はある?』
最後にはニヤッとイタズラっ子のように笑って零に問いかけた。すると零は
『…いいえ?大賛成です!』
とまた、「満面の笑み」でこたえた。その笑みが向けられているのが僕じゃないのが少し悔しいけど、今はそれでいい。今は零が笑顔でいてくれるならそれが一番だと思うから。
そして僕らはいつものように喋って、笑って、ふざけながら帰っていった。
────後日談
花ちゃんが倒れた時のことをあんまり覚えてないと言うので教えてみた。
『花ちゃん、零にお姫様抱っこされて保健室連れていかれたんだよ。』
そう言うと花ちゃんはボンッと効果音が付きそうなほど顔を真っ赤にしていた。そして赤みが少し落ち着くと嬉しそうに零の元へ駆けていった。その光景を微笑ましいなぁ、と眺めてるとサキがトントンッと肩を叩き
『蓮、花のことお姫様抱っこ出来る?』
と聞いてきた。僕は
『もちろん、出来ない。サキは?』
と開き直りながら言う。僕の問いかけに
『いや、抱っこするだけなら出来るけど…零のあのスピードで抱っこしながら走ったり、階段降りるのはちょっと…厳しいかな…。』
と苦々しい顔をしながら言った。そこで僕はある提案をした。
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