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嫉妬(2)
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零さんは最近ある人から告白をされているらしい。『高嶺の花』と呼ばれている零さんに告白するなんてどんな勇者だ?と思ったら確かにお似合いの人だった。カッコよくて、人気で。そんな人からの告白なら零さんも『はい。』って言ってしまうのかと思ってたけど、そんな心配は要らなかった。零さんと雨宮さんの会話から零さんは告白を迷惑がっているのがわかった。凄く安心した…。そりゃ、好きな人が自分じゃまるで適わないような人に告白されてたら不安になるに決まってる…。いや、まぁ、零さんに告白する勇気なんて僕にはないんだけど…。
まぁ、その話は置いといて…。零さんが雨宮さんがいないうちに女子三・四人から呼び出されて教室から出ていった。僕は嫌な予感がして駄目だとは思ったけど隠れてついて行った。
ついた先は体育館の倉庫だった。僕からしたら悪い思い出しかない場所だ…。零さんを先に倉庫に入れ呼び出した女子たちが零さんと対立するように立った。するとその中の一人、『岡崎 理緒』さんが零さんに向かって言った。
『ねぇ、アンタさぁ…。調子乗ってない?』
『はい…?』
嫌な予感は的中してた。この女子たちは人気の『岩波 快斗』くんのことが好き、もしくはファンでそんな岩波くんからの告白を毎日断ってる零さんを妬んでいるんだろう。でも、零さんは
『?一体なんの話をしてるんですか?』
『っ!しらばっくれないでよ!アンタあの「岩波くん」からの告白断ったでしょ!』
『あぁ、その事ですか。はい、そうですね。断りました。ですが、それが貴女になんの関係があるんですか?』
さすが零さん臆することなく淡々と話してる…。
『関係大ありなの!岩波くんはみんなの物で、アンタなんかが独り占めなんて出来ないんだから!』
『はぁ、そうですか。独り占めとかする気ないですよ。あと、さっき貴女自分で言ってじゃないですか、私は告白を「断って」いるんですが。別に私は岩波くんに好意を抱いてなんてないですし。』
『そういうところが腹立つの!いかにも「自分は興味ありません」っていう態度が!』
『いや、ですから、ホントに興味ありませんから。というか、最初に告白された時に初めて岩波くんのこと知りましたし…。』
零さん大変そうだな…。話が通じてない感じがする…。大丈夫かな…。
『ホント腹立つ!自分がちょっと美人だからってそうやって!岩波くんが可哀想なんだけど!毎日告白してんのに毎回断ってさぁ!』
『はぁ…、話が通じませんね。いい加減にしてくださいよ…。まず、落ち着きなさい。人の話をちゃんと聞いてないのに、自分の中だけで完結させないでください。』
『聞くもなにも私の言ってることが正しい…。』
『いいから、黙りなさい。』
零さんの怒りを含んだ声に岡崎さんは黙らざるを得なかった。
『はぁ…。最初に、私が「調子に乗ってる」という話ですが、完全な貴女の思い込みです。私は一切何も変わってません。調子に乗るような出来事も起きてませんしね。』
『だからっ!』
『最後まで黙って聞きなさい。そんなことも出来ないのですか?』
零さん怒ってるな…。口調が強い…。
『次に、私が岩波くんからの告白を毎回「断ってる」という話ですが、確かに事実ですよ。そして、岩波くんに恋愛的興味がないのも事実です。私が告白を断ってる理由はそれが一つと、もう一つは断らなければ岩波くんに「失礼」だからです。』
『は?』
『岩波くんが本気で告白してくれているのはすぐに伝わりますから。本気で想いを伝えてくれている相手に「軽い気持ち」で応えるなんて失礼極まりないじゃないですか。自分に「その気」が無いのなら誠意をもって断らなければ、それこそ相手が「可哀想」です。なので、私は岩波くんに何度告白されようと私にその気が無い限り誠意をもってハッキリと断らせて頂きます。私の話は以上です。他に何かありますか?』
零さんの「嘘だ」と言えないくらい淡々とした「真実の言葉」に岡崎さんは口を開けないでいた。
『…ホント腹立つ。そんなの自分を正当化して、相手に自分の考えを押し付けてるだけじゃん!』
『貴女も先ほどまで同じ様なことをしてたじゃないですか。された事を仕返しただけですよ?それに貴女が怒るのは少し見当違いでは?』
『うるさい!アンタみたいなヤツなんて大っ嫌い!』
『嫌っていただいて構いませんよ。私も貴女みたいな自分の意見が通らないと気が済まないような人に好かれたいとは思いませんから。』
零さんそうとう不機嫌なんだな…。めちゃくちゃ煽ってる…。
『…っ!その澄ました顔!ホント腹立つ!』
岡崎さんは手を振りかぶって零さんの顔を叩こうとした。僕は
『零さん!』
気付いたら零さんの前に出て、岡崎さんに叩かれていた。
『蓮くん!?』
零さんは驚いていたが何より自分で驚いてる。岡崎さん達はいきなり現れた僕に驚いたのか、さっきまでの出来事を見られていた事に「まずい」と思ったのか走って何処かに行ってしまった。零さんは僕に向かって怒っていた。
『何無茶なことしてるんですか!』
『いや、その、心配で着いてきてたんだけど零さんが叩かれそうになってるの見たら体が勝手に動いてて…。えっと、その、ごめんなさい…?』
『…蓮くんにまで心配をかけてしまっていたんですね。いいえ、謝るのはこちらの方です。巻き込んでしまってごめんなさい。ですが、心配は有難いのですが、それで蓮くんが怪我をしては意味が無いじゃないですか…。女の子に叩かれたところで私は平気ですよ…。』
『いや、うん。零さんなら避けるか防ぐくらい簡単に出来るってわかってたんだけどね…。昔の事思い出して…、今度は僕が零さんを助けたいなって思っちゃって…。全然零さんみたくカッコよくなんて出来なかったけどね…。』
苦笑いしながら答えると僕は驚いた。零さんが泣きそうな顔ををしていたのだ。
『そんな事思わなくていいんですよ…。昔の私がしたのはただの自己満足でしかなかったんですから…。』
泣きそうな零さんに戸惑いながらも僕は
『零さんが「ただの自己満足」だと思ってても僕はあの時助けられたから。自分でそう思ったから今回零さんを「助けたい」って思ったんだよ。…僕のもただの自己満足だから。零さんはきにしないで?…僕は大丈夫だから、だから、泣かないでよ、零さん。』
僕が話してる間に零さんは涙を流していた。凄く綺麗に、とても悲しそうに。
『…ごめんなさい。泣いてしまって…。泣く気は無かったんですが…。すぐ止めますから…。』
「すぐ止める」と言いながらも涙は一向に止まらなかった。
『大丈夫だよ、零さん。ゆっくりでいいよ。今は好きなだけ泣きなよ。あ、泣いてるの僕のせいか…。ご、ごめんね、零さん。強くないくせに守ろうとなんてしちゃって…。』
情けないことを言う僕を見て零さんは言った。
『…ふふっ、蓮くんは変わってませんね。謝らないで下さい。善意だったのでしょう?たしかに、怪我をするくらいなら助けに来てくれない方が良かった、と思いましたがそれは私の都合ですもんね。それに助けないのは蓮くんの昔からある「強い意思」に反しますもんね?…改めてありがとうございました。助かりました。』
そういいながらまだ少し赤い涙の残った瞳で微笑むから僕は顔が一気に赤くなった気がした。
『そ、そんな全然かっこよくなかったし、助けれたかも微妙だから!お、お礼とかいいよ!全然!大丈夫!』
そんな風にテンパってこたえる僕を見ながら零さんはクスクスと笑っていた。もう涙は止まったらしい。
『あ、蓮くん。頬は大丈夫ですか?結構な勢いだったと思うんですが…。』
『え、あ、うん。大丈夫だよ。赤くなってるかもしれないけど大して痛みはないから。』
『そうですか、安心しました。もう無茶なことはしないでくださいね?いつか大怪我しそうで心配です…。』
『はは…。』
零さんは呆れたような顔をしながらそういった。
『…そうだ、蓮くん、一つ提案です。』
零さんが突然言い出した。
『?なに?どうしたの?』
『蓮くんのこと「蓮」と呼んでも構いませんか?』
突然の呼び捨てに僕の心拍数は急上昇した。
『!?え?そ、それはいきなりどうして?』
驚き過ぎて返事より先に理由を聞いてしまった。すると零さんは
『だって、蓮くんの方が「花」より先に知り合っているのに「くん付け」なんておかしいでしょう?なので蓮くんが嫌じゃなければ「蓮」とお呼びしたいのですが…。嫌ですか?』
凄く零さんらしい理由だ…。嫌なわけない。好きな人に名前でしかも呼び捨てで呼ばれるなんて嬉しいに決まってる!
『全然いいよ!嫌じゃないよ!』
少し大きい声になった僕の返事に少し驚きながらも零さんは
『それは良かった!私の事も「零」と呼び捨てで呼んでください!』
と言った。零さんのその発言にも驚いたが、そういっている零さんの顔がいつもの「綺麗な笑顔」じゃなくて子供みたいな「無邪気な笑顔」なことに一番驚いた。僕はその顔を見てつい
『…かわいい…。』
と口から出てしまった。ハッとして口元をおさえるが零さんには聞こえてないようだった。
『?どうしました?』
『な、なんでもないよ!大丈夫!』
『?それじゃあ、「蓮」教室に戻りましょうか。あ、それより保健室にいって冷やすものを貰ってからにしましょうか?』
慣れない名前呼びに少し緊張しながらも 僕は平静を装いながらこたえた。
『いや、大丈夫だよ。教室戻ろっか。』
『そうですか?では、戻りましょう。』
教室まで二人で話しながら歩いていると前から雨宮さんが息を切らしながら向かってきた。
『零ちゃぁぁぁん!!』
零さん…もとい、「零」は驚いていた。
『は、花?大丈夫ですか?』
『だ、大丈夫…。それより!零ちゃんどこいってたの!?心配したんだよ!』
『すいません、色々ありまして…。でも、「蓮」が助けてくれましたから、ね?』
そういいながら僕の方をみた「零」はいたずらっ子のような顔をしていた。
『…!?れ、蓮!?い、いつからそんな仲良しになったの!?』
『いや、別に、雨宮さんと「零」の方がずっと仲良しだよ…。』
『れ、零って言った!零ちゃんのこと呼び捨てにした!れ、零ちゃん!か、神崎くんと、ど、どんな関係なの!?』
雨宮さんの激しい「零ちゃん愛」が伝わってくる…。ホントに大好きなんだな…。…僕だって「零」大好きだし…!先に知り合ってるし!…なに、張り合ってんだろ…。そんな雨宮さんに「零」は
『どんな関係でもありませんよ。ただの昔馴染みです。』
子供をあやす母親のように「零」は雨宮さんに言った。
『そうだったんだ…。うぅ、ごめんね、一人で騒がしくしちゃって…。』
しょぼんとしてしまった雨宮さんに「零」は
『ふふっ、大丈夫ですよ。私は花のそういう「元気」なところ好きですから。』
そういわれ雨宮さんは嬉しそうにしていた。
『そうだ、零ちゃん!今日は神崎くんと一緒に三人で帰ろうよ!』
いきなりの発言に僕はびっくりした。
『え、いや、そんな、二人で帰る予定だったんでしょ?悪いよ…。』
『私は全然構いませんよ?もしかして誰かと帰る約束してましたか?』
『いや、特にして無いけど…。』
『じゃあ決まり!一緒に帰ろうよ!』
『…いいの?じゃあ、お言葉に甘えて…。』
そんな話をしながら教室に戻って荷物を持って笑い合いながら三人で帰った。
その後の話
雨宮さんとも仲良くなって「花ちゃん」呼びになりました。
零さんをいきなり「零」って呼ぶことになるので明日の周りからの視線が怖いです。
まぁ、その話は置いといて…。零さんが雨宮さんがいないうちに女子三・四人から呼び出されて教室から出ていった。僕は嫌な予感がして駄目だとは思ったけど隠れてついて行った。
ついた先は体育館の倉庫だった。僕からしたら悪い思い出しかない場所だ…。零さんを先に倉庫に入れ呼び出した女子たちが零さんと対立するように立った。するとその中の一人、『岡崎 理緒』さんが零さんに向かって言った。
『ねぇ、アンタさぁ…。調子乗ってない?』
『はい…?』
嫌な予感は的中してた。この女子たちは人気の『岩波 快斗』くんのことが好き、もしくはファンでそんな岩波くんからの告白を毎日断ってる零さんを妬んでいるんだろう。でも、零さんは
『?一体なんの話をしてるんですか?』
『っ!しらばっくれないでよ!アンタあの「岩波くん」からの告白断ったでしょ!』
『あぁ、その事ですか。はい、そうですね。断りました。ですが、それが貴女になんの関係があるんですか?』
さすが零さん臆することなく淡々と話してる…。
『関係大ありなの!岩波くんはみんなの物で、アンタなんかが独り占めなんて出来ないんだから!』
『はぁ、そうですか。独り占めとかする気ないですよ。あと、さっき貴女自分で言ってじゃないですか、私は告白を「断って」いるんですが。別に私は岩波くんに好意を抱いてなんてないですし。』
『そういうところが腹立つの!いかにも「自分は興味ありません」っていう態度が!』
『いや、ですから、ホントに興味ありませんから。というか、最初に告白された時に初めて岩波くんのこと知りましたし…。』
零さん大変そうだな…。話が通じてない感じがする…。大丈夫かな…。
『ホント腹立つ!自分がちょっと美人だからってそうやって!岩波くんが可哀想なんだけど!毎日告白してんのに毎回断ってさぁ!』
『はぁ…、話が通じませんね。いい加減にしてくださいよ…。まず、落ち着きなさい。人の話をちゃんと聞いてないのに、自分の中だけで完結させないでください。』
『聞くもなにも私の言ってることが正しい…。』
『いいから、黙りなさい。』
零さんの怒りを含んだ声に岡崎さんは黙らざるを得なかった。
『はぁ…。最初に、私が「調子に乗ってる」という話ですが、完全な貴女の思い込みです。私は一切何も変わってません。調子に乗るような出来事も起きてませんしね。』
『だからっ!』
『最後まで黙って聞きなさい。そんなことも出来ないのですか?』
零さん怒ってるな…。口調が強い…。
『次に、私が岩波くんからの告白を毎回「断ってる」という話ですが、確かに事実ですよ。そして、岩波くんに恋愛的興味がないのも事実です。私が告白を断ってる理由はそれが一つと、もう一つは断らなければ岩波くんに「失礼」だからです。』
『は?』
『岩波くんが本気で告白してくれているのはすぐに伝わりますから。本気で想いを伝えてくれている相手に「軽い気持ち」で応えるなんて失礼極まりないじゃないですか。自分に「その気」が無いのなら誠意をもって断らなければ、それこそ相手が「可哀想」です。なので、私は岩波くんに何度告白されようと私にその気が無い限り誠意をもってハッキリと断らせて頂きます。私の話は以上です。他に何かありますか?』
零さんの「嘘だ」と言えないくらい淡々とした「真実の言葉」に岡崎さんは口を開けないでいた。
『…ホント腹立つ。そんなの自分を正当化して、相手に自分の考えを押し付けてるだけじゃん!』
『貴女も先ほどまで同じ様なことをしてたじゃないですか。された事を仕返しただけですよ?それに貴女が怒るのは少し見当違いでは?』
『うるさい!アンタみたいなヤツなんて大っ嫌い!』
『嫌っていただいて構いませんよ。私も貴女みたいな自分の意見が通らないと気が済まないような人に好かれたいとは思いませんから。』
零さんそうとう不機嫌なんだな…。めちゃくちゃ煽ってる…。
『…っ!その澄ました顔!ホント腹立つ!』
岡崎さんは手を振りかぶって零さんの顔を叩こうとした。僕は
『零さん!』
気付いたら零さんの前に出て、岡崎さんに叩かれていた。
『蓮くん!?』
零さんは驚いていたが何より自分で驚いてる。岡崎さん達はいきなり現れた僕に驚いたのか、さっきまでの出来事を見られていた事に「まずい」と思ったのか走って何処かに行ってしまった。零さんは僕に向かって怒っていた。
『何無茶なことしてるんですか!』
『いや、その、心配で着いてきてたんだけど零さんが叩かれそうになってるの見たら体が勝手に動いてて…。えっと、その、ごめんなさい…?』
『…蓮くんにまで心配をかけてしまっていたんですね。いいえ、謝るのはこちらの方です。巻き込んでしまってごめんなさい。ですが、心配は有難いのですが、それで蓮くんが怪我をしては意味が無いじゃないですか…。女の子に叩かれたところで私は平気ですよ…。』
『いや、うん。零さんなら避けるか防ぐくらい簡単に出来るってわかってたんだけどね…。昔の事思い出して…、今度は僕が零さんを助けたいなって思っちゃって…。全然零さんみたくカッコよくなんて出来なかったけどね…。』
苦笑いしながら答えると僕は驚いた。零さんが泣きそうな顔ををしていたのだ。
『そんな事思わなくていいんですよ…。昔の私がしたのはただの自己満足でしかなかったんですから…。』
泣きそうな零さんに戸惑いながらも僕は
『零さんが「ただの自己満足」だと思ってても僕はあの時助けられたから。自分でそう思ったから今回零さんを「助けたい」って思ったんだよ。…僕のもただの自己満足だから。零さんはきにしないで?…僕は大丈夫だから、だから、泣かないでよ、零さん。』
僕が話してる間に零さんは涙を流していた。凄く綺麗に、とても悲しそうに。
『…ごめんなさい。泣いてしまって…。泣く気は無かったんですが…。すぐ止めますから…。』
「すぐ止める」と言いながらも涙は一向に止まらなかった。
『大丈夫だよ、零さん。ゆっくりでいいよ。今は好きなだけ泣きなよ。あ、泣いてるの僕のせいか…。ご、ごめんね、零さん。強くないくせに守ろうとなんてしちゃって…。』
情けないことを言う僕を見て零さんは言った。
『…ふふっ、蓮くんは変わってませんね。謝らないで下さい。善意だったのでしょう?たしかに、怪我をするくらいなら助けに来てくれない方が良かった、と思いましたがそれは私の都合ですもんね。それに助けないのは蓮くんの昔からある「強い意思」に反しますもんね?…改めてありがとうございました。助かりました。』
そういいながらまだ少し赤い涙の残った瞳で微笑むから僕は顔が一気に赤くなった気がした。
『そ、そんな全然かっこよくなかったし、助けれたかも微妙だから!お、お礼とかいいよ!全然!大丈夫!』
そんな風にテンパってこたえる僕を見ながら零さんはクスクスと笑っていた。もう涙は止まったらしい。
『あ、蓮くん。頬は大丈夫ですか?結構な勢いだったと思うんですが…。』
『え、あ、うん。大丈夫だよ。赤くなってるかもしれないけど大して痛みはないから。』
『そうですか、安心しました。もう無茶なことはしないでくださいね?いつか大怪我しそうで心配です…。』
『はは…。』
零さんは呆れたような顔をしながらそういった。
『…そうだ、蓮くん、一つ提案です。』
零さんが突然言い出した。
『?なに?どうしたの?』
『蓮くんのこと「蓮」と呼んでも構いませんか?』
突然の呼び捨てに僕の心拍数は急上昇した。
『!?え?そ、それはいきなりどうして?』
驚き過ぎて返事より先に理由を聞いてしまった。すると零さんは
『だって、蓮くんの方が「花」より先に知り合っているのに「くん付け」なんておかしいでしょう?なので蓮くんが嫌じゃなければ「蓮」とお呼びしたいのですが…。嫌ですか?』
凄く零さんらしい理由だ…。嫌なわけない。好きな人に名前でしかも呼び捨てで呼ばれるなんて嬉しいに決まってる!
『全然いいよ!嫌じゃないよ!』
少し大きい声になった僕の返事に少し驚きながらも零さんは
『それは良かった!私の事も「零」と呼び捨てで呼んでください!』
と言った。零さんのその発言にも驚いたが、そういっている零さんの顔がいつもの「綺麗な笑顔」じゃなくて子供みたいな「無邪気な笑顔」なことに一番驚いた。僕はその顔を見てつい
『…かわいい…。』
と口から出てしまった。ハッとして口元をおさえるが零さんには聞こえてないようだった。
『?どうしました?』
『な、なんでもないよ!大丈夫!』
『?それじゃあ、「蓮」教室に戻りましょうか。あ、それより保健室にいって冷やすものを貰ってからにしましょうか?』
慣れない名前呼びに少し緊張しながらも 僕は平静を装いながらこたえた。
『いや、大丈夫だよ。教室戻ろっか。』
『そうですか?では、戻りましょう。』
教室まで二人で話しながら歩いていると前から雨宮さんが息を切らしながら向かってきた。
『零ちゃぁぁぁん!!』
零さん…もとい、「零」は驚いていた。
『は、花?大丈夫ですか?』
『だ、大丈夫…。それより!零ちゃんどこいってたの!?心配したんだよ!』
『すいません、色々ありまして…。でも、「蓮」が助けてくれましたから、ね?』
そういいながら僕の方をみた「零」はいたずらっ子のような顔をしていた。
『…!?れ、蓮!?い、いつからそんな仲良しになったの!?』
『いや、別に、雨宮さんと「零」の方がずっと仲良しだよ…。』
『れ、零って言った!零ちゃんのこと呼び捨てにした!れ、零ちゃん!か、神崎くんと、ど、どんな関係なの!?』
雨宮さんの激しい「零ちゃん愛」が伝わってくる…。ホントに大好きなんだな…。…僕だって「零」大好きだし…!先に知り合ってるし!…なに、張り合ってんだろ…。そんな雨宮さんに「零」は
『どんな関係でもありませんよ。ただの昔馴染みです。』
子供をあやす母親のように「零」は雨宮さんに言った。
『そうだったんだ…。うぅ、ごめんね、一人で騒がしくしちゃって…。』
しょぼんとしてしまった雨宮さんに「零」は
『ふふっ、大丈夫ですよ。私は花のそういう「元気」なところ好きですから。』
そういわれ雨宮さんは嬉しそうにしていた。
『そうだ、零ちゃん!今日は神崎くんと一緒に三人で帰ろうよ!』
いきなりの発言に僕はびっくりした。
『え、いや、そんな、二人で帰る予定だったんでしょ?悪いよ…。』
『私は全然構いませんよ?もしかして誰かと帰る約束してましたか?』
『いや、特にして無いけど…。』
『じゃあ決まり!一緒に帰ろうよ!』
『…いいの?じゃあ、お言葉に甘えて…。』
そんな話をしながら教室に戻って荷物を持って笑い合いながら三人で帰った。
その後の話
雨宮さんとも仲良くなって「花ちゃん」呼びになりました。
零さんをいきなり「零」って呼ぶことになるので明日の周りからの視線が怖いです。
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