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昔の彼女(2)
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病院で私は先生から今後のことについて説明を受けました。事故でしたから警察の方もいました。病院の先生からは両親の遺体を火葬するにあたっての説明、警察の方からは私に慰謝料が払われるという話でした。正直その時はまだ実感が湧いてなくてあまり真剣に話を聞いてはいませんでしたけどね。
数日後に両親のお葬式が行われました。式には両親の仕事仲間の方達や個人的なお友達も来てくれていました。私は皆さんに
『悲しいよね。』『辛かったね。』
と言われましたけど何故かその時は涙は一粒も流れませんでした。自分でも驚く程何も感じなかったんです。
式や両親の荷物の整理など色々する事があって両親が死んだという実感があまり湧かないまま日々は目まぐるしく過ぎていきました。
そんなある日。する事も粗方終わり休憩をしている時に真琴さんが
『…零ちゃん、俺と一緒に住まない?』
『へ?どうして?』
私はすぐに理解は出来ませんでした。
『零ちゃんなら一人暮らしでも大丈夫だと思うけど中学生の女の子の一人暮らしはやっぱり少し危ないから…。それに一人でいるのは寂しいでしょ…?』
『……。』
真琴さんの言葉に私はすぐに言葉を返せませんでした。そして実感しました、もう一人なんだと…。そこで私は泣いてしまいました。もう両親に二度と会う事が出来ない、もう家族で出掛けたり、ふざけ合ったりすることが出来ない。私は自分の全てだったものが無くなってしまったのだとようやく理解しました。急に泣き出した私に真琴さんは
『ご、ごめんね!?えっと…泣かせるつもりはなかったんだけど…。』
『ごめんなさい…。違うの…。真琴さんのせいじゃない…。』
私は首を振りながら答えました。
『急にこんな話してごめんね?びっくりしたよね?この話は俺がそうしてくれたら安心だなって思っただけだから…。ごめんね…嫌だよね…思い出が詰まった家を離れるなんてしたくないよね…。この話はおしまいにしよっか!パイ作ってあげるよ!うんと美味しいやつね!』
真琴さんは私に気を遣って優しく頭を撫でてからキッチンへ向かっていきました。
真琴さんがパイを作ってくれている間私の頭の中で真琴さんの話がグルグルと巡っていました。
(確かに一人で生活することは出来る、お金もお母さん達が遺してくれたから心配はない。思い出のある家を離れたくはない…。でも、真琴さんの言う通り中学生の一人暮らしは危ないかも知れない…。それに…一人は寂しい…。)
そんな考えで頭がいっぱいでした。
真琴さんがパイを持ってキッチンから戻ってきました。
『は~い、お待たせ~。真琴さん特製アップルパイだよ~。召し上がれ~。』
『…ありがとう。頂きます。』
私は真琴さんの作るアップルパイが大好きでしたから真琴さんがアップルパイを作ってくれてとても嬉しかったです。
私は真琴さんとアップルパイを食べている時にさっきの話をしました。
『…真琴さん、さっきの話だけどね…。』
『!無理にとは言わないからね?』
『うん。無理はしてないよ。だから真琴さんと一緒に住んでもいい?』
『…え!?いいの!?この家から離れることになるんだよ!?いいの!?』
真琴さんは一瞬動きが止まってから驚いていました。でも私の考えは変わりませんでした。
『だからだよ。きっとこの家にいたら私は前に進めない。…変わらなくちゃいけないから。』
真琴さんは驚いた顔から安心した顔をして
『そっか…。でも無理して決めたわけじゃないのはわかったけど変わる必要はないんじゃない?どうして変わらなくちゃいけない。なんて思ったの?』
『だって…。もうお母さん達はいないのに今のまんま好きでいたら辛くなっちゃうから…。嫌いになりたい訳じゃないけど、今よりは好きっていう気持ちを無くさなきゃいけないなって…。』
『う~ん?そっちの方が辛いんじゃない?』
『どうして?』
『だって、凛さん達のこと好きなんでしょ?忘れたくないでしょ?』
『それはもちろん!絶対に忘れたくない!』
『なら好きな気持ちはとっておこうよ。好きっていう気持ちを無くそうとするのは忘れようとしてるのと同じだよ。そんなの凛さん達が泣いちゃうよ?』
『…でも、このままじゃ前に進めないよ…。悲しいままじゃ何も出来ない…。』
『じゃあ悲しい気持ちだけ忘れようよ!』
『へ!?そんなの出来ないよ!』
『出来るよ~。「凛さん達がいなくなった」と思ってるから悲しいんでしょ?』
『うん…。』
『いなくなってなんかないよ。ずっと見ててくれてる。そばに居てくれてるよ。そう思ったら少しは悲しい気持ち忘れられない?』
『…少しなら忘れられるかな。悲しいは悲しいけどね。』
『急がなくてもいいんだよ。ゆっくりのんびり過ごしていけばきっと悲しい気持ちは無くなってくれるだろうから。』
『そうなればいいな…。』
私達はそういいながらパイを食べ終えました。
『あ、そうだ。俺の家に住むんだったら準備しないとね?』
『あぁ、そうだね。持っていく物と捨てるもの分けないと…。』
『まぁ、ゆっくりやっていこっか?そんな急ぐことでもないしね~。』
『真琴さんはのんびり過ぎる気もするけど?』
『そんな事思ってたの!?』
そんな風に真琴さんと話をしているといつの間にか私は今まで通りに笑えるようになっていました。
数日後に両親のお葬式が行われました。式には両親の仕事仲間の方達や個人的なお友達も来てくれていました。私は皆さんに
『悲しいよね。』『辛かったね。』
と言われましたけど何故かその時は涙は一粒も流れませんでした。自分でも驚く程何も感じなかったんです。
式や両親の荷物の整理など色々する事があって両親が死んだという実感があまり湧かないまま日々は目まぐるしく過ぎていきました。
そんなある日。する事も粗方終わり休憩をしている時に真琴さんが
『…零ちゃん、俺と一緒に住まない?』
『へ?どうして?』
私はすぐに理解は出来ませんでした。
『零ちゃんなら一人暮らしでも大丈夫だと思うけど中学生の女の子の一人暮らしはやっぱり少し危ないから…。それに一人でいるのは寂しいでしょ…?』
『……。』
真琴さんの言葉に私はすぐに言葉を返せませんでした。そして実感しました、もう一人なんだと…。そこで私は泣いてしまいました。もう両親に二度と会う事が出来ない、もう家族で出掛けたり、ふざけ合ったりすることが出来ない。私は自分の全てだったものが無くなってしまったのだとようやく理解しました。急に泣き出した私に真琴さんは
『ご、ごめんね!?えっと…泣かせるつもりはなかったんだけど…。』
『ごめんなさい…。違うの…。真琴さんのせいじゃない…。』
私は首を振りながら答えました。
『急にこんな話してごめんね?びっくりしたよね?この話は俺がそうしてくれたら安心だなって思っただけだから…。ごめんね…嫌だよね…思い出が詰まった家を離れるなんてしたくないよね…。この話はおしまいにしよっか!パイ作ってあげるよ!うんと美味しいやつね!』
真琴さんは私に気を遣って優しく頭を撫でてからキッチンへ向かっていきました。
真琴さんがパイを作ってくれている間私の頭の中で真琴さんの話がグルグルと巡っていました。
(確かに一人で生活することは出来る、お金もお母さん達が遺してくれたから心配はない。思い出のある家を離れたくはない…。でも、真琴さんの言う通り中学生の一人暮らしは危ないかも知れない…。それに…一人は寂しい…。)
そんな考えで頭がいっぱいでした。
真琴さんがパイを持ってキッチンから戻ってきました。
『は~い、お待たせ~。真琴さん特製アップルパイだよ~。召し上がれ~。』
『…ありがとう。頂きます。』
私は真琴さんの作るアップルパイが大好きでしたから真琴さんがアップルパイを作ってくれてとても嬉しかったです。
私は真琴さんとアップルパイを食べている時にさっきの話をしました。
『…真琴さん、さっきの話だけどね…。』
『!無理にとは言わないからね?』
『うん。無理はしてないよ。だから真琴さんと一緒に住んでもいい?』
『…え!?いいの!?この家から離れることになるんだよ!?いいの!?』
真琴さんは一瞬動きが止まってから驚いていました。でも私の考えは変わりませんでした。
『だからだよ。きっとこの家にいたら私は前に進めない。…変わらなくちゃいけないから。』
真琴さんは驚いた顔から安心した顔をして
『そっか…。でも無理して決めたわけじゃないのはわかったけど変わる必要はないんじゃない?どうして変わらなくちゃいけない。なんて思ったの?』
『だって…。もうお母さん達はいないのに今のまんま好きでいたら辛くなっちゃうから…。嫌いになりたい訳じゃないけど、今よりは好きっていう気持ちを無くさなきゃいけないなって…。』
『う~ん?そっちの方が辛いんじゃない?』
『どうして?』
『だって、凛さん達のこと好きなんでしょ?忘れたくないでしょ?』
『それはもちろん!絶対に忘れたくない!』
『なら好きな気持ちはとっておこうよ。好きっていう気持ちを無くそうとするのは忘れようとしてるのと同じだよ。そんなの凛さん達が泣いちゃうよ?』
『…でも、このままじゃ前に進めないよ…。悲しいままじゃ何も出来ない…。』
『じゃあ悲しい気持ちだけ忘れようよ!』
『へ!?そんなの出来ないよ!』
『出来るよ~。「凛さん達がいなくなった」と思ってるから悲しいんでしょ?』
『うん…。』
『いなくなってなんかないよ。ずっと見ててくれてる。そばに居てくれてるよ。そう思ったら少しは悲しい気持ち忘れられない?』
『…少しなら忘れられるかな。悲しいは悲しいけどね。』
『急がなくてもいいんだよ。ゆっくりのんびり過ごしていけばきっと悲しい気持ちは無くなってくれるだろうから。』
『そうなればいいな…。』
私達はそういいながらパイを食べ終えました。
『あ、そうだ。俺の家に住むんだったら準備しないとね?』
『あぁ、そうだね。持っていく物と捨てるもの分けないと…。』
『まぁ、ゆっくりやっていこっか?そんな急ぐことでもないしね~。』
『真琴さんはのんびり過ぎる気もするけど?』
『そんな事思ってたの!?』
そんな風に真琴さんと話をしているといつの間にか私は今まで通りに笑えるようになっていました。
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