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仕事(1)
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今日は花ちゃんに三人で一緒に帰ろうと誘われていた。帰りのホームルームが終わり、二人のもとへ行くと花ちゃんが驚きの声をあげていた。
『えっ!零ちゃん今日一緒に帰れないの!?』
そんな声に僕も続いて
『えっ…。』
と声を出してしまった。そんな僕らに零は更に驚かせるような事を言った。
『一緒に帰れるはずだったんですけどね…。バイト先から急に休みの人が出て、人手が足りないと連絡が来たものですから…。でも、明日は一緒に帰…』
零が言い終わる前に僕と花ちゃんは声が揃った。
『ちょっと待って!バイトしてたの!?』
そんな僕らに零は
『おや、言ってませんでしたっけ?私駅近くのカフェでバイトさせてもらってるんです。』
とキョトンとした顔で言った。そんな零に僕は(知らなかった…気付かなかった…。仲良くなってきたし、零の事わかってきたと思ってたのに…。)と少しショックを受けていた。そんな僕を気にすることなく花ちゃんは興奮気味に
『零ちゃん!も、もし良かったら零ちゃんの働いてる姿見にいっていいかな!』
と聞いていた。零は特に気にすることなく
『はい、勿論いいですよ。ただ私は店員として行くのであまり二人とお話はできませんよ?それでもいいですか?』
と答えていた。ショックから立ち直った僕と花ちゃんの答えは一つだった。
『いいです!行きたいです!』
と声を揃えて言えば零はクスクスと笑いながら
『仲良しですねぇ、それじゃあ、行きましょうか。』
と足を進めた。
学校から少し離れた場所にある駅。その近くの少し裏道に入った静かな場所。零の働いてるカフェはそんな落ち着いた雰囲気の場所にあった。
僕らが零に着いていくと零は
『ここですよ。私が働かせて頂いてるお店は。』
と言って「喫茶 ノワール」という看板のあるお店の前で足を止めた。木で出来ていてアンティークな雰囲気が素敵なお店だった。二人してお店にみとれていると
『私は裏口から行きますから二人は先に入っていて下さい。』
と零が裏口に向かいながら言った。僕は返事をしつつ、普段入ることの無い雰囲気のお店に躊躇していた。花ちゃんも同じだったようで
『わ、私たちみたいな学生が入っても大丈夫なのかな…。イチゲンさんお断り!みたいな感じじゃないよね!?』
とわたわたしていた。二人してお店の前で少しわたわたしていたらお店から喫茶店の制服をかっこよく着こなしたお爺さんと呼ぶには少し若い男性が出てきた。その男性は僕らに向かって
『外で話しているのもなんでしょう、若い人には馴染みが無いかもしれないけれどウチで少しお茶でもどうです?』
と声をかけてくれた。お店の前で邪魔になってしまってて怒られると思った僕らは少し呆けていたが男性に勧められようやくお店の中に入っていった。
『お、お邪魔しまーす…。』
と少し遠慮がちに扉を開けると扉に着いていた小さなベルがチリンッと綺麗な音で鳴った。お店に入るとコーヒーの香りがフワッと僕らを包んだ。お店の中は外観と同じくアンティークな雰囲気でとても大人な感じがした。僕らの他にもお客さんがチラホラいて、コーヒーを飲みながら読書をする人、お菓子と紅茶を楽しみながら談笑する人、カウンター席で店員さんと話をする人、中には僕らと同じくらいの歳の人もいて勉強をしていた。そんな雰囲気に少しほっとしながら二人席の場所に座った。まだ零はいなかった。
メニューを眺めて少しすると聞き慣れた声がした。
『ご注文はお決まりですか?お客様?』
と少しからかうような声色で微笑みながら零が僕らに声をかけてきた。メニューから目を逸らし零の方を見た僕らは一瞬固まってしまった。何故なら喫茶店の制服に身を包んだ零がなんというか綺麗と言うよりもかっこよかったからだ。いつも下ろしている綺麗な黒髪を上で一つにくくり、カジュアルなスーツのような制服は零にとても良く似合っていた。リボンじゃなくネクタイという所が更にかっこよさを際立たせていた。
『?どうかしましたか?』
という零の声で我に返った僕らはコーヒーのセットと紅茶のセットを頼んだ。
『かしこまりました。少々お待ち下さい。』
と少し微笑みながら言う零に僕は心臓を鷲掴みにされたような感覚がした。零がお店の奥に行った瞬間に僕らは向かい合い喫茶店の制服姿の零の感想を言い合った。
『花ちゃんどうしよう。零がかっこよすぎて僕男として自信なくなってきた。』
と僕が言うと
『零ちゃんに勝つのは無理だよ。諦めよ。』
と花ちゃんがバッサリ切り捨てた。若干落ち込む僕を気にすることなく花ちゃんは続けた。
『そんなことより零ちゃんかっこよすぎじゃない?惚れるかと思った。零ちゃん男だったら絶対惚れてるよ。いや、零ちゃんなら女でもいいかな…。』
後半ちょっと怪しげなことが聞こえたけど聞かなかったことにして僕は零の向かったお店の奥を眺めていた。すると零が出てきて目が合った。零はキョトンと首をかしげながら僕らが注文したものを運んできた。もうそろそろ僕の心臓が持たない気がしてきた。
僕らの席まで来た零は
『お待たせしました。コーヒーのセットと紅茶のセットです。』
とテーブルに置いてくれた。僕らの前にいい香りのするコーヒーと紅茶、美味しそうなケーキが並んだ。僕らが目を輝かせていると
『ご注文は以上でお揃いででしょうか?では、ごゆっくり。』
と嬉しそうな顔をしながら零は言いカウンターへ向かった。穏やかな雰囲気が流れていた。
...でも、長くは続かなかった。
『えっ!零ちゃん今日一緒に帰れないの!?』
そんな声に僕も続いて
『えっ…。』
と声を出してしまった。そんな僕らに零は更に驚かせるような事を言った。
『一緒に帰れるはずだったんですけどね…。バイト先から急に休みの人が出て、人手が足りないと連絡が来たものですから…。でも、明日は一緒に帰…』
零が言い終わる前に僕と花ちゃんは声が揃った。
『ちょっと待って!バイトしてたの!?』
そんな僕らに零は
『おや、言ってませんでしたっけ?私駅近くのカフェでバイトさせてもらってるんです。』
とキョトンとした顔で言った。そんな零に僕は(知らなかった…気付かなかった…。仲良くなってきたし、零の事わかってきたと思ってたのに…。)と少しショックを受けていた。そんな僕を気にすることなく花ちゃんは興奮気味に
『零ちゃん!も、もし良かったら零ちゃんの働いてる姿見にいっていいかな!』
と聞いていた。零は特に気にすることなく
『はい、勿論いいですよ。ただ私は店員として行くのであまり二人とお話はできませんよ?それでもいいですか?』
と答えていた。ショックから立ち直った僕と花ちゃんの答えは一つだった。
『いいです!行きたいです!』
と声を揃えて言えば零はクスクスと笑いながら
『仲良しですねぇ、それじゃあ、行きましょうか。』
と足を進めた。
学校から少し離れた場所にある駅。その近くの少し裏道に入った静かな場所。零の働いてるカフェはそんな落ち着いた雰囲気の場所にあった。
僕らが零に着いていくと零は
『ここですよ。私が働かせて頂いてるお店は。』
と言って「喫茶 ノワール」という看板のあるお店の前で足を止めた。木で出来ていてアンティークな雰囲気が素敵なお店だった。二人してお店にみとれていると
『私は裏口から行きますから二人は先に入っていて下さい。』
と零が裏口に向かいながら言った。僕は返事をしつつ、普段入ることの無い雰囲気のお店に躊躇していた。花ちゃんも同じだったようで
『わ、私たちみたいな学生が入っても大丈夫なのかな…。イチゲンさんお断り!みたいな感じじゃないよね!?』
とわたわたしていた。二人してお店の前で少しわたわたしていたらお店から喫茶店の制服をかっこよく着こなしたお爺さんと呼ぶには少し若い男性が出てきた。その男性は僕らに向かって
『外で話しているのもなんでしょう、若い人には馴染みが無いかもしれないけれどウチで少しお茶でもどうです?』
と声をかけてくれた。お店の前で邪魔になってしまってて怒られると思った僕らは少し呆けていたが男性に勧められようやくお店の中に入っていった。
『お、お邪魔しまーす…。』
と少し遠慮がちに扉を開けると扉に着いていた小さなベルがチリンッと綺麗な音で鳴った。お店に入るとコーヒーの香りがフワッと僕らを包んだ。お店の中は外観と同じくアンティークな雰囲気でとても大人な感じがした。僕らの他にもお客さんがチラホラいて、コーヒーを飲みながら読書をする人、お菓子と紅茶を楽しみながら談笑する人、カウンター席で店員さんと話をする人、中には僕らと同じくらいの歳の人もいて勉強をしていた。そんな雰囲気に少しほっとしながら二人席の場所に座った。まだ零はいなかった。
メニューを眺めて少しすると聞き慣れた声がした。
『ご注文はお決まりですか?お客様?』
と少しからかうような声色で微笑みながら零が僕らに声をかけてきた。メニューから目を逸らし零の方を見た僕らは一瞬固まってしまった。何故なら喫茶店の制服に身を包んだ零がなんというか綺麗と言うよりもかっこよかったからだ。いつも下ろしている綺麗な黒髪を上で一つにくくり、カジュアルなスーツのような制服は零にとても良く似合っていた。リボンじゃなくネクタイという所が更にかっこよさを際立たせていた。
『?どうかしましたか?』
という零の声で我に返った僕らはコーヒーのセットと紅茶のセットを頼んだ。
『かしこまりました。少々お待ち下さい。』
と少し微笑みながら言う零に僕は心臓を鷲掴みにされたような感覚がした。零がお店の奥に行った瞬間に僕らは向かい合い喫茶店の制服姿の零の感想を言い合った。
『花ちゃんどうしよう。零がかっこよすぎて僕男として自信なくなってきた。』
と僕が言うと
『零ちゃんに勝つのは無理だよ。諦めよ。』
と花ちゃんがバッサリ切り捨てた。若干落ち込む僕を気にすることなく花ちゃんは続けた。
『そんなことより零ちゃんかっこよすぎじゃない?惚れるかと思った。零ちゃん男だったら絶対惚れてるよ。いや、零ちゃんなら女でもいいかな…。』
後半ちょっと怪しげなことが聞こえたけど聞かなかったことにして僕は零の向かったお店の奥を眺めていた。すると零が出てきて目が合った。零はキョトンと首をかしげながら僕らが注文したものを運んできた。もうそろそろ僕の心臓が持たない気がしてきた。
僕らの席まで来た零は
『お待たせしました。コーヒーのセットと紅茶のセットです。』
とテーブルに置いてくれた。僕らの前にいい香りのするコーヒーと紅茶、美味しそうなケーキが並んだ。僕らが目を輝かせていると
『ご注文は以上でお揃いででしょうか?では、ごゆっくり。』
と嬉しそうな顔をしながら零は言いカウンターへ向かった。穏やかな雰囲気が流れていた。
...でも、長くは続かなかった。
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