とある使用人の日記

かーにゅ

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28日目

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「ぴぇぇぇん!!」
わがまま柚琉様、まだ続いてた。
「柚琉様、声を枯らしてしまいますよ。喉が痛いでしょう?」
「ぅ…ふぅ…ふぇ」
水を飲んで一瞬だけ落ち着いたのにまた涙が零れた。
「あなた何かいい案はありませんか。以前も泣いている柚琉様を泣き止ませたじゃないですか」
「いや…頼ってもらえるのは有難いっすけど無理っす」
俺の力じゃどうにもならん。
「そんなあっさりと…」
「いーやー!!はなしてっ!!はなしてぇ!!」
ん?
思わずそちらの方向を見ると数メートル先で柚琉様が使用人に捕まっていた。
「…柚琉様、逃げ出さないでください。ちゃんと旦那様は約束してくださったじゃないですか」
「ちがうもんっ!!ほたるくんのおうちにいきたいだけだもん!!」
「ですから訪問はまた今度に、とそういう話だったでしょう?」
「やだっ!!いーくーのー!!あそぶのっ!!」
「ダメです」
お友達と遊びたいのに出るなと言われて駄々こね中か。
「…樹さん。ちょっと俺に任せてくれませんか?」
「あなたに?」
めちゃくちゃ嫌な顔すんなよ。
「…柚琉様、電話しませんか?」
「でん…っく…わ?」
「はい」
電話して本人からまた今度って言われれば納得するだろ。
見たり聞くよりも実際に聞いた方がいい。
「…する」
「ではそのような涙声では蛍様も上手く聞き取れないかもしれませんね」
「なき…っく…ふぇぇん!!」
泣きやめないから泣いた?
…悪化したな。
「泣いている間は電話しませんからね」
「ふぇ…とま…っく…とまんないんだもん!!」
「…はいはい。少し寝て落ち着いてから電話しましょうか」
「ふぇぇん…」
抱きしめてぽんぽんと背中を叩くとすぐに寝息が聞こえてきた。
「…凄いですね」
「小さい子の扱いなら慣れてますから」
真っ白な夏休みの宿題とケーキを見せて終わったらこれやるとか言うと猛スピードで終わらせるし。
ハサミと籠見せて野菜の収穫終わったらその野菜で美味い飯作ってやる、収穫しないなら飯抜きだって言ったり?
…虐待じゃない。
対価だよ。
労働の対価として美味いケーキや飯をやる。
「…小さい子」
「弟がたくさんいるんでね。Ωもいますよ」
「燐よりも頼り…にはならないか。燐の方が自衛も柚琉様を守ることも出来るし」
何をぅ!?
俺だって自衛道具ぐらい持ってるんだからな!!
スプレーだけだけど!!
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