魔狼王(着ぐるみ)が往く!~勇者パーティーから暑苦しいと追放された着ぐるみ士の俺、世界最強のステータスに目覚めたので神獣と一緒に見返します~

八百十三

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第3章 邂逅と恐怖

第33話 着ぐるみ士、情報を探す

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 子供たちの相手をしつつ、俺たちはジャンピエロの町の中心部までやって来た。目的はもちろん、この町にある王国立冒険者ギルドの本部だ。
 南クザーロ郡支部とは比べ物にならないほどの立派な扉をくぐれば、広く、大きく、立派な内装が俺たちを出迎える。ここなら、狼の姿に戻っても天井に頭をぶつけずに済みそうだ。
 エントランスに立つ女性スタッフが、俺たちににこやかに笑いかける。

「王国立冒険者ギルド ジャンピエロ本部にようこそ。どのようなご用件ですか?」
「能力鑑定と、モンスターの出現位置情報を調べに来ました」

 彼女の言葉に、俺はシンプルに用件を話した。
 本部の建物は広い上に、様々な機能が集約されている。だからエントランスの女性スタッフに用件を伝え、「その用件でしたらこちらへ」と案内してもらうのが基本の流れだ。
 いろんな冒険者を見てきているし、一日に大量の冒険者の相手をしないとならないから、一人一人にかまけてはいられない。俺たちを前にしても、彼女たちの応対は淡々として事務的だ。

「『双子の狼ルーポジェメリ』のお二人ですね、承知しました。ホールに入って右手に鑑定ブースがございます。モンスターの出現位置情報は、二階左手の魔法看板でご確認ください」
「ありがとうございます」

 そのドライな対応に内心ありがたみを感じながら、俺とリーアは連れ立ってギルドのエントランスから中に入り、中央ホールを右手に進んだ。
 ここを正面に進めば事務手続きカウンター、正面左手には依頼受付カウンターと依頼掲示用の巨大な掲示板。右手にはアイテムの鑑定ブースと能力鑑定ブース、ホール左手にはギルド直営のショップがある。
 一階だけでもこれだけ設備があるのに、二階には魔物の出現位置を知らせる魔法看板と、特殊レアクラスに就くのに必要な講習を受けるための教室がたくさん、それと応接室やスタッフの執務室。三階にはなんと、フロアの殆どを直営の酒場が占めている。
 ヤコビニ王国全土を見ても、これだけ設備が整った冒険者ギルドの建物は他にない。まさに、本部にふさわしい様相だ。
 リーアとアンブロースが、ホールの天井に描かれた美麗なモザイクアートを見上げながら感嘆の息を吐く。

「すごいねー、オルニの町の冒険者ギルドの、何十倍も大きい!」
「ここが、この国の冒険者ギルドの本部というわけか。壮大だな」

 二人の言葉に、苦笑しながら俺はホールを歩いて行った。ここを含め、冒険者ギルドの本部には何ヶ所か行ったことがあるけれど、ヤコビニの本部は特に建物が美しいと思う。

「ヤコビニ王国のギルド本部の建物は、最新の魔法建築技術を使って建てられているからな。大陸全体で見ても綺麗な建物って、有名なんだよ」

 そんな話をしながらホールを歩いていると、本部に集っている冒険者たちの視線が俺に集まっているのを、ひしひしと感じた。あちらこちらで、どよめきの声が上がっているのも聞こえた。

「おい、あれ……」
「『着ぐるみの魔狼王』だろ? すげぇ……なんだあのレベル」

 俺たちの後方で、Aランクパーティー「狩猟者カッシアトーレ」の二人組が、恐ろしいものを見るかのような声を上げていた。彼らもヤコビニ王国では名が知られた冒険者だろうに、随分な恐れようである。
 それにしても。

「『着ぐるみの魔狼王』、か」
「貴様は既にいる三頭のフェンリルのように、ひとところに留まらぬからな。そう呼ぶより他に無かろう」
「でも、ジュリオにぴったりだね」

 なんか締まらないな、とため息をつく俺に、アンブロースとリーアが揃って俺へと笑みを向けてきた。確かに他に表しようがないが、なんだかなぁ。
 そんなこんなで、俺とリーアはそれぞれ空いている能力鑑定ブースに入り、石板の上に立つ。果たして、いつものようにステータスが表示された。

 =====
 ジュリオ・ビアジーニ(着ぐるみ士キグルミスト調教士テイマー
 年齢:21
 種族:人間ウマーノ魔狼王フェンリル
 性別:男

 レベル:258
 HP体力:70300/70300
 MP魔法力:27940/27940
 ATK攻撃力:20830(+4950)
 DEF防御力:16210

 STR筋力:18215(+5360)(+1500)
 VIT生命力:21537(+6120)
 DEX器用さ:9405(+1745)
 AGI素早さ:24017(+6970)(+850)
 INT知力:13992(+5210)
 RES抵抗力:17701(+5770)
 LUK:8081(+2900)

 スキル:
 魔獣語5、竜語4、精霊語1、魔族語4、精霊親和5、神霊親和5、炎魔法10、風魔法10、大地魔法10、光魔法10、毒無効5、麻痺無効5、混乱無効5、調教(魔獣)5、調教(神獣)5、多重契約3、魔狼王の威厳、魔王の血脈(獣)、魔狼転身、人化転身、獣神憑依、対人融和、神霊融和、環境遮断3、魔物鑑定3、人間鑑定3、道具収納5、着ぐるみ換装5、着ぐるみ洗浄
 =====

「……ん?」

 表示されたステータスを見て、俺は口角を下げた。
 別に、この人外まっしぐらなステータスに何か言いたいわけではない。スキル欄に今までなかったスキルが増えているのだ。
 俺の肩の上に乗っていたアンブロースが、身を乗り出しながら俺の頭を見る。

「どうした、ジュリオ」
「精霊語のスキルと、神霊融和のスキルが増えてる……アンブロースと契約したからか?」

 ステータス画面を消し、石板の上から降りながら、俺はアンブロースへと首を傾げつつ視線を向けた。対して彼女は自慢げに鼻を鳴らしながら、俺の着ぐるみへと顔を寄せてくる。

「それもあろうが、貴様、あの戦いの時に私の血を舐め取っただろう。私は雷獣、雷を司る生き物。神霊とも親和が深いものだからな」
「あぁ……なるほど」
「ねえねえジュリオ、あたしレベルが2上がってたよ!」

 納得する俺の後方からは、リーアが嬉しそうに声を上げながらくっついてきた。ジャンピエロに来るまでの間に魔物との戦闘も行っている。そのおかげで、リーアはレベルが上がっていたようだ。
 彼女の頭をもふもふと撫でながら、俺はもう一度首を傾げつつ足を踏み出す。

「良かったな……じゃああれか? 俺は魔物の血を舐めたり飲んだりしたら、その分だけ強化されていくってことか?」

 ホールを抜け、二階に上がる階段をのぼりながら、俺はアンブロースへと疑問を投げた。

「であろうな。フェンリルの着ぐるみではなく、貴様自身が強化されるであろう。楽しみではないか、神魔王すら凌駕出来るかもしれんぞ」
「えぇ……」

 至極あっさりと俺の言葉にうなずいた彼女に、肩を落とす俺だ。これ以上俺が人外に至ったら、いよいよ種族を人間ウマーノ以外にした方がいい気がしてくる。
 ともあれ、階段を上った先にある巨大な魔法看板を、俺たちは見上げた。ヤコビニ王国の国土と西側に面する青大海せいたいかいの一部が描かれた上に、無数の光が明滅している。この光の一つ一つが、魔物の一匹だ。

「ねえジュリオ、これがその、魔物の居場所を調べられる看板?」
「そうだぞ。ここに、ギルドが収集した魔物の情報が公開されている。ここにこうして触って、『Xランク』って言えば……」

 魔法看板に取り付けられた球体に手を触れながら告げれば、球体の表面に光が走る。その光が看板全体に広がると、光の数が一気に減った。陸地の中心部に三つ、南部の国境付近に三つ、そして北西部と東部に一つずつだ。
 陸地の中心地はすなわちここ、王都ジャンピエロ。南部の国境付近はオルニの町だ。それだけで、その魔物が誰なのかは一目瞭然だ。

「ほら、こうしてXランクの魔物の居場所が分かるってことだ」
「ふえー、すごーい」
「王都で光っているのは我々で、オルネラ山のはルングマールの一派か。なるほど……しかし、こうして見ると存外、数がいないものだな」

 看板を見上げながら、しっかり魔物判定を受けているリーアとアンブロースが目を見張る。無論、俺も魔物判定をされている一人。当然と言えば当然だ。
 だとしても、アンブロースの言葉にはいろいろと言いたいことがある。彼女の小さな額をとんと叩いた。

「そんなほいほいXランクがいてたまるかよ……とりあえず、王国内だとザンドナーイ峡谷とピコット山にいるみたいだな。このどちらかに絞って探そう」
「依頼、出てるかなー?」
「その近隣で依頼が発生していればよいのだがな」

 そう話しながら、俺は球体から手を放して一階に降りる階段に向かった。それと同時に再び、看板に無数の光が点り始める。
 Xランクの魔物がいる場所には、確実に強力な魔物が集っている。神獣種であるかどうかは別にしても、強力な魔物と従魔契約できれば、ますます心強い。
 そんなことを考えながら依頼を貼りだす掲示板に向かおうとすると、その掲示板の前からこちらを認め、駆け寄ってくる女性がいた。王国立冒険者ギルドの本部長代理、ビオンダ・ウルビーニだ。

「あ……『双子の狼ルーポジェメリ』の皆さん」
「ビオンダさん? どうしたんですか」

 困り顔で俺達に声をかけるビオンダに俺が声をかけると、彼女は視線を落としながら、言葉を選びつつ口を開いた。

「……実は、X級冒険者であるジュリオさんの実力を見込んで、少々お願いしたいことがありまして……執務室までお越しいただけますか」

 その発言に、ますます首を傾げる俺とリーア。何があったというのだろう。
 疑問を抱きながら、俺はビオンダの後について、本部長の執務室に向かうのだった。
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