君とボクの交われない交差点 ~始まりを求める僕と終わりを求める君~

d

文字の大きさ
17 / 43

誘い

しおりを挟む
ユナは美しい音色にぱちぱちと拍手をし、ナギは弾き語りが終わるとユナに微笑みました。

「さて、こんな感じだけど聞き取りにくいところとかはなかったかな?」

頭を勢いよく横に振ります。

「初めて全部聴けました!」

初めての音楽に、ユナは興奮が覚めていないようです。

「ふふ、それなら良かった。
さてと、そろそろボクに慣れてくれたろう?元の姿に戻るね」

そう言ってナギは人の形から元の光の玉に戻り、ユナの周りをくるり回ります。それから、ユナの様子を見て

「あれ?もう驚かないね」

からかうようにユナの周りを回ってみせました。

「…」

ユナは目を見開いて口をはくはくと動かしています。でも、声がでてません。

「あぁ、体力が削れてて叫べないだけみたいだね。
大丈夫?」

ユナは頭を縦にゆっくり動かしました。
まるで、油の挿されていない古いロボットのような動きです。

「……は、はい、もう大丈夫です。
光の玉が人になるなんて夢かと思ってたから」

―――正直、今も怖いんだけど、それは黙っておこう。

そんな考えないようにユナは、頑張って表情を隠そうとしていますが、表情には現れていて、ナギは内心笑いだしそうになっているのを必死で堪えていました。

「へぇ、そうなんだ。
人からこの姿になるのはそんなに驚くんだね。ふふ。
僕も勉強になったよ。」

「よ…、良かったんでしょうか?それ?
あっ、そういえば、えっと、ねぇ、ナギさん」

「ん?ナギでいいよ。なぁに?」

彼女はユナの頭の辺りでくるくる回って遊んでいます。


「あなたは、一体何者なんですか?」

ユナは少し、後退しながらナギに本当に聞いてもいいのか迷っている表情で問いかけます。その言葉に一度ナギは動きを止めると、

「うーん、そうだねぇ。
何て言うのが良いかなぁ?」

光の玉の姿なので、とても分かりにくいですが、ユナにはナギが小首を傾げているように見えました。
あれでもない、これでもないとナギは悩んでいましたが、

「そうだなぁ。うーん。神様の子だと面白くないし実際あんまりいいことないしなぁ、うーん、道先案内人?ってところかな?」

「…え?あ?えぇっと、よく分からないですけど、案内人ですか?」

「いや、多分こっいかな。 光の神のお使いってところ。君、ちっちゃいしお使いならわかるでしょ?」

「お、お使い………ナギは神様から何かたのまれているの?」

「うん、君を神様の所にまで案内するよう言われているんだ」
「え?なんで?僕を?」

「それに関してはボクには決定権はないからなぁ。
言えることは君は光の神様に選ばれたんだよ」

ユナは、よりいっそう首を傾げました。

「え?光の神様って?」

「さっき言ったろう?」

「もしかして、さっきのお伽噺の神様?」

「うん、そう神様」

「えーっと、なんで僕?」

「え?なんで?って。
さぁ??君が良かったから?じゃない」

「?がついてますぅ! でも、何の用があってボクなんかを?」

ほんの少しだけ期待したような声でユナは問いました。
しかし、

「それはわからないよ。彼のすることは大体ろくでもないから」

ナギはきっぱりと答えました。

「え?神様なのに?」 

「うん、そう」



「えっと、神様の所への連れてかれるのだから………、僕まさか地獄に導かれるとか???
なんちゃって、はは」

乾いた笑いをユナは浮かべます。

「そう」

「え?」

「そうだよ。地獄なんて生ぬるい。
煉獄へ導きにきたのさ。よくわかったね」

ナギはキラキラと輝きながら僕にそう言ってのけた。
それは、何故だか彼女がとても恐ろしいものにユナは感じました。


「それは僕が、村の人達の言うように、やっぱり神様の忌子だから……?」

…それとも、本当に僕が叔父殺しの犯人だったのだろうか?

「君が忌み子なのは確かだよ。 
その髪には、ボクどころか光の神だって本当は近づきたくないくらいのなにかなのは確かだね。

だけど、語弊があるようだけれど、僕が言いたいのは、天に召されてからのことをいってるんじゃあないよ」

「え?ちがうの?」


「違うさ。君。その髪に潜む魔物を追い出したくないかい?」

「そんなこと、できるの?」

「ふふ、だから、光の神は自分の領地まで君を連れて来るようボクに仰せ付けたのさ。
だから、僕はこれから君をこの大樹の上にある神殿に案内する。 」

「え?神様の所に行くんでしょ?どうしてそんな所に行かないといけないの…、?」

「神様の元に行くには手順がいるんだよ。
そしてそれは、死んで地獄にいく よりも生ぬるい」

「…、この大樹の何処かにその神殿があるの?」

「あぁ、勿論あるよ。
君が、本当にニーチェを封じている者か試す試験のようなものさ。
そのために君は大樹の精霊である一角と戦わなければならない。
お母さんのためにも…、ね?」

「戦う?僕が?」
「当然だろう?他に誰がいるのさ?」

「え、?あっうん。
でも、僕にはアンジェのような格闘術はないし、リノのように玉を調合してもパチンコを使うこともできない。
シンのようにボーガンだって使えやしない…、」

「君は武器や戦う技術がないと、戦えないと、本気でそう思ってる?」

「え?うん。」

「ふふ、だけど、君には力があるじゃない」

「………ボクにはなんにもないよ」

「ふふ、わからないかな?なら、僕が教えてあげるよ」

そっと、ナギは、ユナに囁きかけました。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

処理中です...