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仮面と精霊
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ご案内しますの言葉とともに、仮面の精霊ジーンはユナ達の方を向きながらフワリと浮き上がって何処かへと誘います。
その後を二人は追いますが、足元は白い霧で見えず足場もぬるりと濡れていて滑りそうです。しかし、宙を浮くジーンにはまるで関係がないため
彼はお構いなしに進んでいってしまいます。
ですので、二人は小走りで追わざるおえませんでした。
そこで、シンはユナが遅れるのははぐれては困るといい、断るユナを無視して彼をおぶさりました。
内心ユナはそこまでしなくてもと思いつつ、追い付けない自身にげんなりとしていました。
……やっぱり体力が無さすぎるからみんなに迷惑かけちゃう……。もっと鍛えないと。じゃないと、リーンゼィルさんにもだけど、荷物扱いされる。
そんな事をユナが思っていることなど、露ほどにも考えることなくシンはジーンを追います。シンとして別に荷物扱いしているわけではなく、一度はぐれてしまったユナをまた見失いたく無いためなのですが、ユナには通じていないようです。
それにシンにとっては今、目の前を進む精霊が被っているピエロの仮面の口から生えさせた意味のない長い赤い舌が気になってしかたなかいようです。
「………あの仮面の舌は意味があるんだろうか?」
シンの言うように、ピエロの口から出ている舌は風に揺れてピロピロしてこちらを煽っているかのようです。猫が居れば間違いなく飛びかかっているでしょう。
「うーん、意味はないんじゃない?」
「まぁ、そうだよな。それにしても見た目が本当にひどいな。ジーンとやらの光で目の穴が光ってるから、暗闇でみたらきっと失神するやついるぞ」
「それは思う!でもあれを外すとジーンさんの声が聞こえなくなっちゃうし」
「それは、わかってはいるんだがなぁ」
シンはため息をつきます。
「うーん。そうだ。それならさ。ねぇ!ジーンさん」
『なんでしょうユナ様』
ジーンは、止まることなく仮面の舌はピロピロしたままです。
「ジーンさんじゃなくてシンがそのお面被るとどうなるの?」
「え?俺が被るの?」
思ってもいなかったことだったのでシンはほんの少し目を見開きます。まぁ表情が殆んど変わらないままですが。おぶさったユナを見ますが、ユナはにっこりと微笑むだけでした。
「だって僕は聞こえるし、話せるもん。シンが着けたら他のジーンさんやパーラさんが見えるかもしれないよ」
「それは、そうだが……」
シンは今一度仮面を見つめます。
子どもを喜ばす筈の仮面。
その面に開いた穴からはジーンの放つ光が出ていて、まるでこちらを喰らうために待ち構えてるバケモノにしかみえません。
ジーンの動きに合わせて揺れるのでその表情は、微笑んでいるのではなく、ニタリと歪んで笑っているように見えてシンは今度こそげんなりとした顔になりました。
そんなシンに構うことなくジーンは、一度止まってゆらゆらと揺れます。
『なるほど、それは試したことがございませんでした。何せ我らは人間とお会いするのが数百年ぶりにございますので、試す機会もございませんでしたので』
「そうなんだ、ねぇ、その数百年前にきた人ってどんな人だったの?」
『そうでございますね。光の神の御子様の連れられた利発なお子でございましたね』
「御子様。……それってナギのこと?」
「そうでございます。よくご存知でございますね」
「ナギ?今度は誰だ?」
「白い髪の女の人だよ。神様について色々教えてくれたし、あんまりよくわかんなかったけどこの赤い髪についても教えてくれたかな」
「ふーん。白い髪の御子様ねぇ」
「それより、ねぇ、早く試してみようよ」
『そうでございますね。私も気になります』
そういうと、ジーンはそっと面を外しシンに渡しました。
フワフワと浮く不気味な面をシンは嫌そうな顔で受け取り、嫌そうな顔で装着しました
「どう?」
『どうですか?』
「!!!!??聞こえるし見えるっていうか!
なんだここ!!おい!白い靄で見えなかった思ってたのに!」
『え!?シン!どうしたの?』
『おお、この辺りも見えておられますか?』
「お前!そんな姿だったのか!!オッサンだと思ってたのに!!」
『え?そうでございますか?』
「ねぇ!どうなってるの?」
「みない方がいい。くそ、これなら着けなかった方が良かったぞ」
『ふふ、あなたは随分とその仮面と相性が良いのでしょうね。本来見えなくても良いものまで見せてくれているようです。さぁ、湯殿までもう少しです。頑張ってくださいませ』
「シン?」
「着いたら話すよ。だから、ユナ。俺から絶対に離れるなよ」
そう言ってシンは、ジーンの案内する道をひたすら歩きつづけるのでした。
その後を二人は追いますが、足元は白い霧で見えず足場もぬるりと濡れていて滑りそうです。しかし、宙を浮くジーンにはまるで関係がないため
彼はお構いなしに進んでいってしまいます。
ですので、二人は小走りで追わざるおえませんでした。
そこで、シンはユナが遅れるのははぐれては困るといい、断るユナを無視して彼をおぶさりました。
内心ユナはそこまでしなくてもと思いつつ、追い付けない自身にげんなりとしていました。
……やっぱり体力が無さすぎるからみんなに迷惑かけちゃう……。もっと鍛えないと。じゃないと、リーンゼィルさんにもだけど、荷物扱いされる。
そんな事をユナが思っていることなど、露ほどにも考えることなくシンはジーンを追います。シンとして別に荷物扱いしているわけではなく、一度はぐれてしまったユナをまた見失いたく無いためなのですが、ユナには通じていないようです。
それにシンにとっては今、目の前を進む精霊が被っているピエロの仮面の口から生えさせた意味のない長い赤い舌が気になってしかたなかいようです。
「………あの仮面の舌は意味があるんだろうか?」
シンの言うように、ピエロの口から出ている舌は風に揺れてピロピロしてこちらを煽っているかのようです。猫が居れば間違いなく飛びかかっているでしょう。
「うーん、意味はないんじゃない?」
「まぁ、そうだよな。それにしても見た目が本当にひどいな。ジーンとやらの光で目の穴が光ってるから、暗闇でみたらきっと失神するやついるぞ」
「それは思う!でもあれを外すとジーンさんの声が聞こえなくなっちゃうし」
「それは、わかってはいるんだがなぁ」
シンはため息をつきます。
「うーん。そうだ。それならさ。ねぇ!ジーンさん」
『なんでしょうユナ様』
ジーンは、止まることなく仮面の舌はピロピロしたままです。
「ジーンさんじゃなくてシンがそのお面被るとどうなるの?」
「え?俺が被るの?」
思ってもいなかったことだったのでシンはほんの少し目を見開きます。まぁ表情が殆んど変わらないままですが。おぶさったユナを見ますが、ユナはにっこりと微笑むだけでした。
「だって僕は聞こえるし、話せるもん。シンが着けたら他のジーンさんやパーラさんが見えるかもしれないよ」
「それは、そうだが……」
シンは今一度仮面を見つめます。
子どもを喜ばす筈の仮面。
その面に開いた穴からはジーンの放つ光が出ていて、まるでこちらを喰らうために待ち構えてるバケモノにしかみえません。
ジーンの動きに合わせて揺れるのでその表情は、微笑んでいるのではなく、ニタリと歪んで笑っているように見えてシンは今度こそげんなりとした顔になりました。
そんなシンに構うことなくジーンは、一度止まってゆらゆらと揺れます。
『なるほど、それは試したことがございませんでした。何せ我らは人間とお会いするのが数百年ぶりにございますので、試す機会もございませんでしたので』
「そうなんだ、ねぇ、その数百年前にきた人ってどんな人だったの?」
『そうでございますね。光の神の御子様の連れられた利発なお子でございましたね』
「御子様。……それってナギのこと?」
「そうでございます。よくご存知でございますね」
「ナギ?今度は誰だ?」
「白い髪の女の人だよ。神様について色々教えてくれたし、あんまりよくわかんなかったけどこの赤い髪についても教えてくれたかな」
「ふーん。白い髪の御子様ねぇ」
「それより、ねぇ、早く試してみようよ」
『そうでございますね。私も気になります』
そういうと、ジーンはそっと面を外しシンに渡しました。
フワフワと浮く不気味な面をシンは嫌そうな顔で受け取り、嫌そうな顔で装着しました
「どう?」
『どうですか?』
「!!!!??聞こえるし見えるっていうか!
なんだここ!!おい!白い靄で見えなかった思ってたのに!」
『え!?シン!どうしたの?』
『おお、この辺りも見えておられますか?』
「お前!そんな姿だったのか!!オッサンだと思ってたのに!!」
『え?そうでございますか?』
「ねぇ!どうなってるの?」
「みない方がいい。くそ、これなら着けなかった方が良かったぞ」
『ふふ、あなたは随分とその仮面と相性が良いのでしょうね。本来見えなくても良いものまで見せてくれているようです。さぁ、湯殿までもう少しです。頑張ってくださいませ』
「シン?」
「着いたら話すよ。だから、ユナ。俺から絶対に離れるなよ」
そう言ってシンは、ジーンの案内する道をひたすら歩きつづけるのでした。
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