【序章完】ヒノモトバトルロワイアル~列島十二分戦記~

阿弥陀乃トンマージ

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序章

第1話(3)豪剣使い

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「どうした?」

「境内周辺に南蛮鎧を着た兵士が沢山詰めかけております!」

「!」

 鍋釜たちが立ち上がる。鍋釜が形代に尋ねる。

「どこの兵です⁉」

「見たところ、大友部、竜勝寺、高島津の三氏がそれぞれ兵を出しているようです」

「‼」

「ははっ、お前さんたちの動き、見張られていたな」

 伊那が笑う。

「くっ……」

「ちょうどいいや、追い払ってこいよ」

「え⁉」

「いや、え⁉じゃねえって」

「そ、それは……」

 鍋釜が困惑する。伊那が首を傾げる。

「出来ねえのか?」

「しゅ、主家に弓を引くということになります……」

「九州に平穏をもたらすつもりなら、遅かれ早かれこうなっていただろうが」

「む……」

「まさか話し合いでどうにかなるだろうと思っていたのか?」

「……」

「違うよな、そんな悠長なことをしていたら、九州を統一する頃には、他の勢力の支配下になっているってオチだ」

「……!」

「そういう最悪な事態を避ける為にお前らは仕える家の、勢力の垣根を越えて協力してきたんだろう?」

「……そこまでお見通しでしたか……」

「伝説の巫女さんをなめんなよ?」

 伊那がニヤッと笑う。鍋釜が決意を固めて、浮草と南郷に呼びかける。

「お二方! 想定していたものとは大分異なった事態だが……ここで決起しよう!」

「ああ!」

「心得た!」

「御神楽さま! お力を……」

「まずお前らの力を見せてもらってからだ、アタシはスイーツを食べるのに忙しい」

「……我らだけで向かうぞ!」

 鍋釜たちが社殿を飛び出す。

「……出てきたぞ! 裏切り者たちだ!」

「おおっ、結構な数ばい……」

「まずは突破口を開くでごわす……!」

 南郷が前に走り出す!

「来たぞ! 迎えうて!」

「チェスト!」

「!」

 南郷が振り下ろした刀が鎧の兵を一撃で打ち砕く。

「チェストー!」

「ぐあっ!」

「チェスト‼」

「どあっ!」

 南郷が次々と敵兵たちを倒していく。

「愛刀『岩砕(がんさい)』を用いての一撃必殺の豪剣……敵には回したくないたい……」

 鍋釜が舌を巻く。

「くっ、あ、あの女、強すぎます!」

「一対一で挑むな、取り囲め!」

「む!」

 南郷が囲まれる。

「ふはははっ、この包囲網は破れまい!」

「吹き飛ばすだけのこと……!」

「ん⁉」

「はあっ!」

「‼」

 鍋釜が振るった刀が南郷を包囲していた敵兵たちを一斉に吹き飛ばす。

「それっ!」

「うあっ!」

「そらっ!」

「ぬあっ!」

 鍋釜がどんどんと敵兵たちを吹っ飛ばしていく。

「愛刀『風越(ふうえつ)』を用いての広範囲にわたる豪剣……あれを防ぐのは難しいばい……」

 浮草が頭をかく。

「くっ、あの男、手が付けられません!」

「ぐっ……」

「どうしますか⁉ このままでは全滅です!」

「て、撤退だ!」

「りょ、了解!」

「なに?」

 敵兵たちが散り散りになって逃げ始める。南郷が舌打ちする。

「ちっ……反旗を翻したこと、まだ知られたくはないでごわすが……」

「こうもバラバラに逃げられると厄介たい……」

「問題ないばい!」

「むむっ⁉」

「おらあっ!」

「⁉」

 浮草が素早く動き回り、さらに鋭く剣を振り、撤退する敵兵たちを斬り倒していく。

「そらあっ!」

「のあっ!」

「うらあっ!」

「ぎあっ!」

 浮草がばったばったと敵兵たちを斬り倒していく。

「愛刀『雷切(らいきり)』を用いての恐るべき速さによる豪剣……お手合わせは遠慮したいでごわすね」

 南郷が肩をすくめる。

「これで片付いたたいね……」

「そのようでごわすな」

 鍋釜の言葉に南郷が頷く。

「豪剣使いども! 調子に乗るなよ!」

「なにっ⁉」

 境内に砲弾が着弾した、南郷が浮草の顔を見る。

「浮草、これは、大友部家の……」

「ああ、大砲『国崩し』ばい。まさかここまで量産化・軽量化が進んでいたとは……」

「間髪入れず飛んでくる砲弾にはさすがのお前らでも勝ち目はあるまい!」

 敵兵の兵長の勝ち誇ったような声が聞こえてくる。

「く、くそ……」

 鍋釜が悔しそうな顔をする。

「どうした豪剣使いども、ここで終わりか?」

「! 御神楽さま!」

「ここらでアタシの出番ってわけだな?」

 伊那が満面の笑みを浮かべる。
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