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第一章
第6話(3)負けず嫌い
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「くっ……」
「さあさあ、どうする?」
「ど、どうもこうもないわい!」
「まあ、攻めるしかないよね~♪」
「油断するなよ……」
「これは余裕だって~」
「舐めるな!」
「ふふん~」
「それっ!」
「……」
「そらっ!」
「………」
「ふん!」
「…………」
「むん!」
「……………」
竜子の攻め手を央美がことごとく受けてみせる。
「む、むう……」
「おや、手が止まったね~」
「ちっ……」
「もうお手上げかな~」
「じゃ、じゃから……」
「ん?」
「舐めるなと言っておるじゃろうが!」
「………………」
「ぐっ……」
「この辺の指しまわしは既に知っているよ~」
「く、くそっ……」
「そんな汚い言葉を使うもんじゃないよ~」
「ふ、ふん……!」
「それも汚いね~」
「そ、そういう意味ではないわ!」
竜子が思わず声を上げる。
「ふふっ……」
「むうっ……」
「そんなものかな~?」
(なんだかどこに指しても無駄なような気がしてきた……何と言えば良いのか……まるで丸裸にされているような……)
「ふっ……」
(こ、これがデータを集めた結果ということなのか……?)
「戸惑っているね~」
「!」
「指し手に迷いが見られるよ~」
「ぬうっ……」
「さあさあ、どうする?」
(くっ、遊ばれているな……)
竜子が唇を噛む。
「悔しがっているね~」
(元々の力量差というのも多少は存在するんじゃろう……それは単純に棋歴の差からくるものか……経験の差というものはなんとも埋めがたいものがある……それに加えて、こやつはワシのデータをしっかりと集めてきている……)
「少し黙ろうかな……」
(これはどうにもならんのか……!)
「…………………」
「……!」
「おっ?」
「………!」
「んん?」
「…………!」
「これは……」
「……………!」
「なるほどね……」
「………………!」
「それならば……!」
「あっ……!」
竜子が額を抑える。
「定跡を無視した手を矢継ぎ早に指すというのはなかなか面白いアイデアだね……でも、ちょっとヤケになり過ぎかな~ある程度のベースというものがないと、そういう意表を突く手も活きてはこないものだよ~」
「……十分に対応することが出来ると」
「そういうこと~♪」
「うぐう……」
竜子が天を仰ぐ。
「あらら?」
央美が首を捻る。
「くう……」
「もしかして……」
「…………………」
「もう打つ手なしって感じかな?」
央美が問う。
「……………………」
「長い沈黙ってことは……」
「………………………」
「イコール……」
「…………………………」
「肯定ってことだね♪」
央美がいたずらっぽく笑みを浮かべる。
「……………………………」
「まあ、こんなものかな……」
央美がため息をつく。
「………………………………」
「それじゃあそろそろ決めさせてもらおうかな♪」
央美が前のめりになる。
「………………………………」
「……とは言っても、なにか手を指してくれないと、こちらも指し様がないんだよね~」
央美がわざとらしく小首を傾げる。
「……ふん‼」
「長考したわりには……平凡な一手だね」
「ちいっ……」
「さて……!」
「むっ!」
「……‼」
「むむっ!」
「………‼」
「むむむっ!」
「…………‼」
「むむむむっ!」
「……………‼」
「むむむむむっ!」
攻勢に転じた央美に対し、竜子は防戦一方になる。
「唸っても状況は好転したりしないよ~?」
央美が笑い交じりに呟く。
「む、むう……」
竜子がうなだれる。
「う~ん、そろそろ決めさせてもらいたいんだけれど……」
「……素直に応じるわけがないじゃろう」
竜子が顔をわずかに上げて央美を睨む。
「ははっ、そりゃあそうだよね~」
「…………………………」
(闘志はまだ失っていないようだ……ここまできて心が完全には折れていない……これは厄介だね……だからこそ……ここで叩いておくべき相手だ……!)
央美が心の中で自らの考えをまとめる。
「…………!」
(! へえ、そういう手も指せるんだ……油断大敵とはよく言ったもんだね……さすがは竜の子……危うく嚙みつかれちゃうところだったよ……)
「…………………………」
「……焦らずに……じっくりと追い詰める」
央美はポツリと呟いて手を指す。
「おおう……!」
竜子は呻き声を上げる。竜子にとっては痛恨の一手に近いものである。
「ふふふっ……」
央美が思わず笑みをこぼす。
「むんっ!」
「おっと!」
竜子の反撃を央美が慌てず受け流す。
「くうっ……」
(驚いたな……この期に及んでまだ抗ってくるとは……この子はここからが怖いな……しっかりと仕留めにかかろう……)
竜子が続いて反撃する。
「………………‼」
「それは無駄な足掻き……」
「…………………‼」
「駒のただ捨てだよ……」
「……………………‼」
「う~ん……」
「………………………‼」
「良いことを教えてあげよう……」
「…………………………‼」
「将棋というものは……」
「……………………………‼」
「負け方も大事なんだよ?」
「⁉」
反撃をことごとく受け流した央美が再び強烈な一手を指す。竜子が驚く。
(ふふっ……随分と素直な反応だね……)
「ぬうん!」
(へえ、それも凌ぐか……しかし、土俵際で随分と粘るもんだね……)
「むうん!」
(ここまで来たら普通は諦めるものなんだけどな……棋歴の短さで切り上げ具合が分かららないのかな……? いいや、これは違うかな……)
「ううん!」
竜子が歯を食いしばって指す。
(これはあれだ……)
「くうん!」
(大の負けず嫌いが発動しているんだ……! 面倒だな……!)
央美が顔をしかめる。
「さあさあ、どうする?」
「ど、どうもこうもないわい!」
「まあ、攻めるしかないよね~♪」
「油断するなよ……」
「これは余裕だって~」
「舐めるな!」
「ふふん~」
「それっ!」
「……」
「そらっ!」
「………」
「ふん!」
「…………」
「むん!」
「……………」
竜子の攻め手を央美がことごとく受けてみせる。
「む、むう……」
「おや、手が止まったね~」
「ちっ……」
「もうお手上げかな~」
「じゃ、じゃから……」
「ん?」
「舐めるなと言っておるじゃろうが!」
「………………」
「ぐっ……」
「この辺の指しまわしは既に知っているよ~」
「く、くそっ……」
「そんな汚い言葉を使うもんじゃないよ~」
「ふ、ふん……!」
「それも汚いね~」
「そ、そういう意味ではないわ!」
竜子が思わず声を上げる。
「ふふっ……」
「むうっ……」
「そんなものかな~?」
(なんだかどこに指しても無駄なような気がしてきた……何と言えば良いのか……まるで丸裸にされているような……)
「ふっ……」
(こ、これがデータを集めた結果ということなのか……?)
「戸惑っているね~」
「!」
「指し手に迷いが見られるよ~」
「ぬうっ……」
「さあさあ、どうする?」
(くっ、遊ばれているな……)
竜子が唇を噛む。
「悔しがっているね~」
(元々の力量差というのも多少は存在するんじゃろう……それは単純に棋歴の差からくるものか……経験の差というものはなんとも埋めがたいものがある……それに加えて、こやつはワシのデータをしっかりと集めてきている……)
「少し黙ろうかな……」
(これはどうにもならんのか……!)
「…………………」
「……!」
「おっ?」
「………!」
「んん?」
「…………!」
「これは……」
「……………!」
「なるほどね……」
「………………!」
「それならば……!」
「あっ……!」
竜子が額を抑える。
「定跡を無視した手を矢継ぎ早に指すというのはなかなか面白いアイデアだね……でも、ちょっとヤケになり過ぎかな~ある程度のベースというものがないと、そういう意表を突く手も活きてはこないものだよ~」
「……十分に対応することが出来ると」
「そういうこと~♪」
「うぐう……」
竜子が天を仰ぐ。
「あらら?」
央美が首を捻る。
「くう……」
「もしかして……」
「…………………」
「もう打つ手なしって感じかな?」
央美が問う。
「……………………」
「長い沈黙ってことは……」
「………………………」
「イコール……」
「…………………………」
「肯定ってことだね♪」
央美がいたずらっぽく笑みを浮かべる。
「……………………………」
「まあ、こんなものかな……」
央美がため息をつく。
「………………………………」
「それじゃあそろそろ決めさせてもらおうかな♪」
央美が前のめりになる。
「………………………………」
「……とは言っても、なにか手を指してくれないと、こちらも指し様がないんだよね~」
央美がわざとらしく小首を傾げる。
「……ふん‼」
「長考したわりには……平凡な一手だね」
「ちいっ……」
「さて……!」
「むっ!」
「……‼」
「むむっ!」
「………‼」
「むむむっ!」
「…………‼」
「むむむむっ!」
「……………‼」
「むむむむむっ!」
攻勢に転じた央美に対し、竜子は防戦一方になる。
「唸っても状況は好転したりしないよ~?」
央美が笑い交じりに呟く。
「む、むう……」
竜子がうなだれる。
「う~ん、そろそろ決めさせてもらいたいんだけれど……」
「……素直に応じるわけがないじゃろう」
竜子が顔をわずかに上げて央美を睨む。
「ははっ、そりゃあそうだよね~」
「…………………………」
(闘志はまだ失っていないようだ……ここまできて心が完全には折れていない……これは厄介だね……だからこそ……ここで叩いておくべき相手だ……!)
央美が心の中で自らの考えをまとめる。
「…………!」
(! へえ、そういう手も指せるんだ……油断大敵とはよく言ったもんだね……さすがは竜の子……危うく嚙みつかれちゃうところだったよ……)
「…………………………」
「……焦らずに……じっくりと追い詰める」
央美はポツリと呟いて手を指す。
「おおう……!」
竜子は呻き声を上げる。竜子にとっては痛恨の一手に近いものである。
「ふふふっ……」
央美が思わず笑みをこぼす。
「むんっ!」
「おっと!」
竜子の反撃を央美が慌てず受け流す。
「くうっ……」
(驚いたな……この期に及んでまだ抗ってくるとは……この子はここからが怖いな……しっかりと仕留めにかかろう……)
竜子が続いて反撃する。
「………………‼」
「それは無駄な足掻き……」
「…………………‼」
「駒のただ捨てだよ……」
「……………………‼」
「う~ん……」
「………………………‼」
「良いことを教えてあげよう……」
「…………………………‼」
「将棋というものは……」
「……………………………‼」
「負け方も大事なんだよ?」
「⁉」
反撃をことごとく受け流した央美が再び強烈な一手を指す。竜子が驚く。
(ふふっ……随分と素直な反応だね……)
「ぬうん!」
(へえ、それも凌ぐか……しかし、土俵際で随分と粘るもんだね……)
「むうん!」
(ここまで来たら普通は諦めるものなんだけどな……棋歴の短さで切り上げ具合が分かららないのかな……? いいや、これは違うかな……)
「ううん!」
竜子が歯を食いしばって指す。
(これはあれだ……)
「くうん!」
(大の負けず嫌いが発動しているんだ……! 面倒だな……!)
央美が顔をしかめる。
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