10 / 50
第1章
第3話(1)豪邸へ
しおりを挟む
3
「まあ、こうして心ちゃんから直々にお招き頂いたわけだけど……」
「ふむ……」
「どうしたの?」
凛が輝に問う。
「い、いや……」
「はは~ん……」
凛が笑みを浮かべる。
「な、なんだ……?」
「輝っち、ビビっている?」
「ビ、ビビってなどいない!」
「ダメだよ~これから共に戦う仲間なんだから、そんなに吞まれちゃったら……」
「の、吞まれてなどいない! い、いや、その前に仲間って!」
「えっと地図ならもう着いているはずなんだけどな~」
「無視するな!」
輝を無視して、端末を手に凛がうろつく。
「なんだろう、この高い壁がずっと続いているな……」
「ちゃんと住所を聞いたのか?」
「聞いたよ、もちろん」
「本当か?」
「そこで嘘はつかないでしょ」
「じゃあなんだ、この壁は……」
輝は壁をポンポンと叩く。
「う~ん、ここを登るとか?」
「そんな訳ないだろう」
「壊すとか?」
「ダメだ!」
「あ~分かった、飛んで超えるとか?」
「どうやってだ⁉」
「いや、変身すればイケるんじゃない?」
「! 確かに身体能力のある程度の上昇は肌で実感していたが……」
輝が顎に手を当てる。凛がコントローラーを取り出す。
「よし、やってみよう!」
「待て! 迂回しようという発想は無いのか⁉」
輝が凛を制止する。
「だって……迂回しようにもこの壁、ずっと続いているんだよ」
凛が自らの端末に表示された地図を見せる。輝が頷く。
「む、確かに……」
「でしょ~?」
「こんな高く分厚い壁に囲まれて……どんな建物なんだ?」
「監獄とか……?」
「それなら壁の上に有刺鉄線を張り巡らさんとあきまへんな~」
歩いている凛と輝に車道から声がかかる。凛は停車したリムジンに目をやる。
「! あ、心ちゃん!」
「こんにちは~凛はん、輝はん」
リムジンの窓を開け、心が挨拶してくる。
「な、なんという車体の長いリムジン……漫画でしか見ないものだと思っていたが……」
輝がやや驚きながらリムジンの車体を見つめる。
「遅いので迎えにきましたで~」
「ご、ごめんなさい……」
「……申し訳ない」
凛と輝が頭を下げる。心が右手を左右に振る。
「いやいや、そんなん気にしいひんで……さあ、車に乗って」
リムジンのドアが開く。凛たちは戸惑いながら乗り込む。
「お、お邪魔しま~す……」
「失礼……」
「それでは参りまひょか」
「心ちゃんの家、ここから遠いの?」
「いいえ、近いどす。すぐそこどす」
「え? それらしい建物が見当たらないけど……」
凛が周囲を見回す。
「……これどす」
心が壁を指差す。
「……え?」
「この壁の内側が我が家どす」
「ええっ⁉」
「監獄へようこそ♪」
驚く凛たちに対し、心が笑顔を向ける。
「まさかこんな広大な土地一帯がお屋敷だとは……」
「か、輝っち、ビビってる?」
「お前はビビってないのか?」
「ぜ、全然ビビってないよ?」
「……本当か?」
「アタシをビビらせたら大したもんだよ」
凛の脚がぶるぶると震えている。輝が指摘する。
「……脚、思いっきり震えているぞ」
「こ、これはあれだよ、貧乏ゆすり」
「嘘つけ、余計みじめだろう⁉」
「嘘です、ビビっています……」
「まったく……」
「着きました」
リムジンが止まり、心が降りる。凛たちもそれに続く。
「……立派な門からも数分は走ったぞ……どれだけ広いんだ」
「狩りのしがいがあるね、輝っち!」
「変なことを言うな!」
「狩り?」
心が首を傾げる。
「あ……『モンスターキラー』、『モンキラ』の新作の話だよ、ね?」
「あ、ああ、そうだ……」
「それならすぐに用意出来ますが……」
「ええ?」
「親交を深めるのに一狩りするのもなかなか乙なもんどすが、その前にご招待したいところがありますので……」
「招待?」
「ええ、こちらどす……」
心に促され、凛たちは心に続く。
「り、立派なお家……廊下で生活出来そうなくらいだよ」
「頼むからそれはやめてくれ」
凛に輝が軽くツッコミを入れる。心が笑う。
「ふふっ……着きました」
「! こ、ここは……!」
広い中庭にお茶会の準備がなされていた。心が振り返って笑いかける。
「アフタヌーンティーを楽しみましょう♪」
「……お茶どころか、お風呂まで頂いてしまった……」
廊下を歩きながら、頬を上気させた輝が呟く。凛がまわりを見回す。
「いや~すごいお家だね~」
「お前、さっきからそればっかりだな……」
「……ねえ」
「なんだ?」
「お前って言うの、そろそろやめない?」
「む……」
「一晩をともにしたし、裸の付き合いもしたわけだしさ」
「誤解を招く言い回しはやめろ……」
「とにかくさ……」
「う、うむ……」
「アタシのことはリンリン、心ちゃんのことはココロンって呼んでいいからさ」
「だ、誰が呼ぶか! それに紫条院のことまでお前が勝手に決めるな!」
「え~それじゃあ、違う呼び名で呼んでみてよ~」
「うっ……り、凛……」
輝が顔を赤らめながら呟く。
「おおっ! 呼び捨て!」
「う、うるさいな!」
「わたくしのことも名前で呼んで欲しいわ~」
「うおっ⁉ こ、心⁉」
いきなり背後に現れた心に輝は驚く。心がいたずらっぽく笑う。
「ふふっ……」
「お、驚かすな……」
「ごめんなさい、さあ、お次は……」
「お次は?」
「パジャマパーティーと参りましょう♪」
「うわあい!」
心と凛たちが広い寝室に入る。
「さあ、何をしますか? オーダーメイドの枕で枕投げ? それとも恋バナ?」
「そんな高級枕投げはごめんだ。それに出会って間もないのに恋バナが盛り上がるか……」
「え~」
「輝っち、ノリ悪い~」
心と凛が揃ってプイっと唇を尖らせる。
「今後のことを相談するんじゃなかったのか?」
「輝はん、メンバー探しについては手を打ってあります」
「ほう、早いな……それでは……」
「というわけで、朝まで『モンキラ』しまひょ~」
「よっしゃ、一狩り行こうぜ!」
「いや、他にも話し合うべきことが……って、あ、朝まで⁉」
輝の驚く声が広い屋敷に響く。
「まあ、こうして心ちゃんから直々にお招き頂いたわけだけど……」
「ふむ……」
「どうしたの?」
凛が輝に問う。
「い、いや……」
「はは~ん……」
凛が笑みを浮かべる。
「な、なんだ……?」
「輝っち、ビビっている?」
「ビ、ビビってなどいない!」
「ダメだよ~これから共に戦う仲間なんだから、そんなに吞まれちゃったら……」
「の、吞まれてなどいない! い、いや、その前に仲間って!」
「えっと地図ならもう着いているはずなんだけどな~」
「無視するな!」
輝を無視して、端末を手に凛がうろつく。
「なんだろう、この高い壁がずっと続いているな……」
「ちゃんと住所を聞いたのか?」
「聞いたよ、もちろん」
「本当か?」
「そこで嘘はつかないでしょ」
「じゃあなんだ、この壁は……」
輝は壁をポンポンと叩く。
「う~ん、ここを登るとか?」
「そんな訳ないだろう」
「壊すとか?」
「ダメだ!」
「あ~分かった、飛んで超えるとか?」
「どうやってだ⁉」
「いや、変身すればイケるんじゃない?」
「! 確かに身体能力のある程度の上昇は肌で実感していたが……」
輝が顎に手を当てる。凛がコントローラーを取り出す。
「よし、やってみよう!」
「待て! 迂回しようという発想は無いのか⁉」
輝が凛を制止する。
「だって……迂回しようにもこの壁、ずっと続いているんだよ」
凛が自らの端末に表示された地図を見せる。輝が頷く。
「む、確かに……」
「でしょ~?」
「こんな高く分厚い壁に囲まれて……どんな建物なんだ?」
「監獄とか……?」
「それなら壁の上に有刺鉄線を張り巡らさんとあきまへんな~」
歩いている凛と輝に車道から声がかかる。凛は停車したリムジンに目をやる。
「! あ、心ちゃん!」
「こんにちは~凛はん、輝はん」
リムジンの窓を開け、心が挨拶してくる。
「な、なんという車体の長いリムジン……漫画でしか見ないものだと思っていたが……」
輝がやや驚きながらリムジンの車体を見つめる。
「遅いので迎えにきましたで~」
「ご、ごめんなさい……」
「……申し訳ない」
凛と輝が頭を下げる。心が右手を左右に振る。
「いやいや、そんなん気にしいひんで……さあ、車に乗って」
リムジンのドアが開く。凛たちは戸惑いながら乗り込む。
「お、お邪魔しま~す……」
「失礼……」
「それでは参りまひょか」
「心ちゃんの家、ここから遠いの?」
「いいえ、近いどす。すぐそこどす」
「え? それらしい建物が見当たらないけど……」
凛が周囲を見回す。
「……これどす」
心が壁を指差す。
「……え?」
「この壁の内側が我が家どす」
「ええっ⁉」
「監獄へようこそ♪」
驚く凛たちに対し、心が笑顔を向ける。
「まさかこんな広大な土地一帯がお屋敷だとは……」
「か、輝っち、ビビってる?」
「お前はビビってないのか?」
「ぜ、全然ビビってないよ?」
「……本当か?」
「アタシをビビらせたら大したもんだよ」
凛の脚がぶるぶると震えている。輝が指摘する。
「……脚、思いっきり震えているぞ」
「こ、これはあれだよ、貧乏ゆすり」
「嘘つけ、余計みじめだろう⁉」
「嘘です、ビビっています……」
「まったく……」
「着きました」
リムジンが止まり、心が降りる。凛たちもそれに続く。
「……立派な門からも数分は走ったぞ……どれだけ広いんだ」
「狩りのしがいがあるね、輝っち!」
「変なことを言うな!」
「狩り?」
心が首を傾げる。
「あ……『モンスターキラー』、『モンキラ』の新作の話だよ、ね?」
「あ、ああ、そうだ……」
「それならすぐに用意出来ますが……」
「ええ?」
「親交を深めるのに一狩りするのもなかなか乙なもんどすが、その前にご招待したいところがありますので……」
「招待?」
「ええ、こちらどす……」
心に促され、凛たちは心に続く。
「り、立派なお家……廊下で生活出来そうなくらいだよ」
「頼むからそれはやめてくれ」
凛に輝が軽くツッコミを入れる。心が笑う。
「ふふっ……着きました」
「! こ、ここは……!」
広い中庭にお茶会の準備がなされていた。心が振り返って笑いかける。
「アフタヌーンティーを楽しみましょう♪」
「……お茶どころか、お風呂まで頂いてしまった……」
廊下を歩きながら、頬を上気させた輝が呟く。凛がまわりを見回す。
「いや~すごいお家だね~」
「お前、さっきからそればっかりだな……」
「……ねえ」
「なんだ?」
「お前って言うの、そろそろやめない?」
「む……」
「一晩をともにしたし、裸の付き合いもしたわけだしさ」
「誤解を招く言い回しはやめろ……」
「とにかくさ……」
「う、うむ……」
「アタシのことはリンリン、心ちゃんのことはココロンって呼んでいいからさ」
「だ、誰が呼ぶか! それに紫条院のことまでお前が勝手に決めるな!」
「え~それじゃあ、違う呼び名で呼んでみてよ~」
「うっ……り、凛……」
輝が顔を赤らめながら呟く。
「おおっ! 呼び捨て!」
「う、うるさいな!」
「わたくしのことも名前で呼んで欲しいわ~」
「うおっ⁉ こ、心⁉」
いきなり背後に現れた心に輝は驚く。心がいたずらっぽく笑う。
「ふふっ……」
「お、驚かすな……」
「ごめんなさい、さあ、お次は……」
「お次は?」
「パジャマパーティーと参りましょう♪」
「うわあい!」
心と凛たちが広い寝室に入る。
「さあ、何をしますか? オーダーメイドの枕で枕投げ? それとも恋バナ?」
「そんな高級枕投げはごめんだ。それに出会って間もないのに恋バナが盛り上がるか……」
「え~」
「輝っち、ノリ悪い~」
心と凛が揃ってプイっと唇を尖らせる。
「今後のことを相談するんじゃなかったのか?」
「輝はん、メンバー探しについては手を打ってあります」
「ほう、早いな……それでは……」
「というわけで、朝まで『モンキラ』しまひょ~」
「よっしゃ、一狩り行こうぜ!」
「いや、他にも話し合うべきことが……って、あ、朝まで⁉」
輝の驚く声が広い屋敷に響く。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる