【第1章完】ゲツアサ!~インディーズ戦隊、メジャーへの道~

阿弥陀乃トンマージ

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第1章

第6話(3)ポーズを付ける

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「次の議題ってなんやったっけ?」

「今の口上を踏まえてのポーズですね」

「ああ、ポーズか……」

「演出プランも含めて考えていこうかと……」

「演出プランね……」

 彩が顎をさする。

「先ほどと同じ順番でいいですか?」

「ええんちゃう、ほな、グレー」

「はい。こうやって、両手を広げます」

 秀が大きく両手を広げる。

「両手か」

「ええ、君たち……ファンの皆を包み込みようなイメージです」

「それも悪くないけど、右手を胸に当てて、左手だけ広げるのはどうや?」

「動きが小さくないですか?」

「口上が勢いあるからバランスを取るねん」

「なるほど……」

「はいはい、ウチ、ええですか?」

「ブラウン、行ってみようか」

「やっぱりバク宙は入れたいですね~」

「出来んの? 自分?」

「ええ」

「でもな……」

「あきまへんか?」

「チビッ子が真似出来ない、真似したら危ないポーズはちょっとな……」

「ああ……」

「チアダンスをアレンジして、軽くステップ踏むのはどうや?」

「まあ、それでもいいですね」

「ほな、パープル……」

「口上がじゃんけんどすから、『最初はグー』というのを入れて……」

「おお、ええやん。ちょっとやってみいや」

「はい、『最初はグー! あら、ええ時計付けてはりますなあ?』」

 心が首を傾げる。

「余計な一言入れんな! それって『早よ帰りなはれ』って意味やろ⁉」

「あら、分かりました? 京都人らしさをアピールしよかなと思って……」

「そういうアピールはええから!」

 彩が声を上げる。

「敵さんに早よ帰ってもらおうという意味も込めたんどすが……」

「ちょっと遠回し過ぎんねん……ほな、オレンジ」

「口上を言った後、銃を構える感じですかね……」

「ああ、なるほど……」

「どうでしょうか?」

「ええんちゃうんか?」

「ありがとうございます」

「それじゃあ、シアン」

「う~ん……」

 凛が腕を組んで考え込む。

「お、悩んどるな」

「ここが思案のしどころです……」

「上手いこと言わんでもええねん」

「……やっぱりアレですね」

「アレ?」

 彩が首を傾げる。

「格闘ゲームが好きなので……」

「ああ、せやったな」

「こう……技を繰り出すのはどうでしょう?」

「まあ、ええんちゃうん?」

「では、左ジャブを二発続けて、右のアッパーカット……体を低くして、左足で相手の足を払って、体勢を崩したところをすかさず右のかかと落としで……」

「ちょ、ちょっと待て! 何をしようとしとんねん!」

「え? コンボですけど……」

「チビッ子が真似出来へんやろ、誰がガチのコンボやれ言うたんや」

「でも……」

「無難にワンツーパンチとか、回し蹴りとかでええやろ」

「そうですか?」

「そうや」

「地味じゃないですかね?」

「まあ、その辺はエフェクトでどうにでもなるわ~」

 心が口を開く。凛が尋ねる。

「心ちゃん、予算とか大丈夫?」

「その辺も心配せんでええどす」

「実家が太いのは強いな……」

 彩が笑みを浮かべる。

「それじゃあさ、ドーンとバックを爆発させたい!」

「それはマストやな」

「派手な感じが出て良いね」

 凛の言葉に躍と秀が頷く。

「いやいや、ちょっと待てや……」

「え?」

「そういうのは届け出とかせえへんと面倒やねん……」

「届け出とかあるのか……」

 彩の言葉に輝が腕を組んで呟く。

「ああ、その辺の面倒な申請は全部、うちの家の者がやってくれはるから……」

 心が微笑む。

「それじゃあ……!」

 凛が彩を見る。

「……まあ、諸々の許可が下りて、予算の心配が無いっちゅうんならええんちゃうんか……どこでも好きなように爆発させて……」

「やったあ!」

「許可が下りればどこでも良いのか……」

 万歳する凛の横で輝が困惑する。

「ただ、そういう演出とかに予算をかけ過ぎるのはアレやで、もっと考えないとアカンことがあるやろ?」

「考えないといけないことですか?」

「ああ、シアンは徒手空拳でええとして、ブラウンになんか固定の武器持たせんと。キャラ被ってもうてるで。なにか考えんと……」

「う~ん……」

 凛が首を傾げる。躍が困惑する。

「いや、それは別に急いで決めんでも……」

「う~ん、土を掴んで投げるとかかな?」

「泥臭過ぎるやろ!」

「ミサイルランチャーなら手配できるどすが……それを背中に担いで……」

「なんで手配出来んねん! 重そうやん! ウチの軽快さが失われるから!」

「小回りのきくナイフとかどうだ? 相手の心の臓を抉り取れるような……」

「自分、言うこと怖いねん! 人に何させようとしとんねん!」

 躍が秀、心、輝の提案にツッコミを入れる。

「地雷とかどうかな⁉」

「どうかなちゃうがな! 何を地雷原でタップダンスさせようとしてんねん!」

 凛の突拍子もない提案を、躍が一蹴する。
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