【第1章完】ゲツアサ!~インディーズ戦隊、メジャーへの道~

阿弥陀乃トンマージ

文字の大きさ
45 / 50
第1章

第11話(4)月曜朝の戦い(ただし早朝)

しおりを挟む
                  ♢

「おいっ! なんで全員集合していないんだ⁉ お前ら二人だけとはどういうことだ⁉」

 喫茶店近くのグラウンドで命が輝と躍に問う。

「ええっと……」

 輝が後頭部を抑える。

「たるんでいるんじゃないのか⁉」

「それについては否定しませんが……」

「まったく……どういうことなんだ⁉」

「そんなん答えは簡単ですよ……」

 躍が口を開く。

「なんだ?」

「……朝早すぎますって!」

「そうか?」

 命が腕を組んで首を捻る。

「そうですって! 今何時やと思っているんですか⁉」

 命が時計を確認する。

「……4時だな」

「人によってはまだ深夜!」

 躍が声を上げる。命も負けじと声を上げる。

「仕方がないだろう!」

「何が仕方ないんですか⁉」

「お前ら全員の都合がつくのが、月曜日の朝しかないのだから!」

「そ、それは……」

「それともなにか⁉ 個別にトレーニングするか⁉ 別にそれでも構わんぞ⁉」

「マ、マンツーマンはちょっと嫌やな……」

 躍が小声で呟く。

「おはよう……」

「おはようさん……」

「お、おはようございます……」

 そこに秀と心と凛が寝ぼけ眼のままグラウンドに現れる。命が頷く。

「よし、全員揃ったな! それではトレーニングを始めるぞ!」

「あ、あの! ウチらはeスポーツなんですよ……? 体がキツいのはちょっと……」

 躍が恐る恐る確認する。命が再度頷く。

「分かっている! ちゃんとそれ用にメニューを組んだ! まずは『仁狼』だ!」

「朝から頭使うやつはキツいっす! おっ! 警報や! それじゃあ出動してきます!」

 五人はこれ幸いとグラウンドを後にする。

「ふははっ!」

 公園で怪人が派手に暴れている。

「そこまでだ!」

「んんっ⁉」

 怪人が暴れているところにエレクトロニックフォースが駆け付ける。

「お、お前は……!」

 グレーが怪人を見て驚く。

「ふん……」

「エビ怪人の……復活怪人!」

「えっ⁉」

 シアンの意外な言葉にエビ怪人が面食らう。

「あら? 違った?」

 シアンが首を捻る。

「なんでそこまで再生怪人をかたくなに避けるんだ……」

 オレンジが呆れ気味に呟く。

「ま、まあいい! 来ると思っていたぞ、エレクトロニックフォース!」

「へえ、わたくしらがお目当てどすか?」

 パープルが不思議そうに首を傾げる。

「この時間帯ならば貴様らが高確率で出動してくると思ったからな!」

「! げ、月曜日の朝にした甲斐があった……!」

 シアンが目の辺りを抑える。

「何を目頭熱くしとんねん!」

 ブラウンが声を上げる。シアンがそれにすかさず反応する。

「アタシたちの認知度が上がってきたんだよ⁉ これを喜ばないで何を喜ぶの⁉」

「お、おう……」

 シアンにブラウンが気圧される。

「そっちで勝手に盛り上がるな! 貴様らを倒す!」

 エビ怪人が公園の噴水に入り、そこでぴちぴちと飛び跳ねる。すると、水滴が銃弾のような鋭さでエレクトロニックフォースに襲いかかる。シアンが驚く。

「うわっ⁉」

 エレクトロニックフォースはなんとかそれをかわす。物陰に隠れてオレンジが呟く。

「まさかあのような攻撃をしてくるとはな……」

「なかなかに厄介どすなあ……」

 パープルが顎をさすりながら呟く。

「以前は戦闘員に戦わせていたが、単体でもやるね。なるほど、パワーアップしている……」

 グレーが腕を組んで頷く。

「どないするんや⁉ 容易には近づけんで⁉」

 ブラウンが皆に声をかける。

「まあ、それでも戦いようはあるさ……皆、こっちの物陰に来てくれ!」

 グレーが手を空に掲げる。大きい武器が降ってくる。五人は集まった物陰でそれを受け止める。シアンがグレーに尋ねる。

「グレー! これは⁉」

「弓矢さ!」

「弓矢⁉」

「そうだ! 皆、弓の部分を持って、上の方に向けてくれ!」

「こ、こう⁉」

「良いぞ! ボクが矢を引っ張る! ……それっ!」

「ぐあっ⁉」

 シアンが矢を離す。弓から放たれた矢が山なりの軌道を描いて、エビ怪人に突き刺さる。エビ怪人は倒れて地面に転がる。グレーが腰に両手を当てる。

「これが『エレクトロニックアロー』さ……」

「物陰から山なりに放たれたら、意外と反応するのは難しいな……」

 オレンジが頷く。

「ぬおおっ!」 

 エビ怪人が咆哮とともに巨大化した。シアンが声をかける。

「よし! 皆、エレクトロニックインパクト出撃だよ!」

 五人が合体したエレクトロニックインパクトに乗り込む。エビ怪人がさらに咆哮する。

「ぬおおおっ!」

「ふむ、いつもより派手に飛び跳ねてますなあ……」

「いつもを知っとんのかい」

 パープルの呟きにブラウンが突っ込みを入れる。

「グレー! お願い出来るかな⁉」

「任せておいてくれたまえ!」

 シアンの指示を受け、グレーが左腕を操作し、腰部から鞭を取り出す。

「⁉」

「ちょっと大人しくしたまえ!」

「ぬおおおおっ⁉」

 エレクトロニックインパクトが鞭を振るい、エビ怪人に当てる。攻撃を食らったエビ怪人が仰向けに倒れて爆散する。

「やったあ! 決まった! 『インパクトブレイク』!」

「ざっとこんなものさ……」

 ガッツポーズを取るシアンと対照的にグレーがクールに振る舞う。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

処理中です...