Angel's Ring

ルカ(聖夜月ルカ)

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Angel's Ring

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 「すみません!
今夜一晩お世話になりたいのですが…お部屋は空いてますか?」

「はいはい、お一人様お泊りですね。
大丈夫ですよ。」

「いえ…それが…
実は、もう一人連れがいるのですが…」

「お連れ様が?
お連れ様は後で来られるのですか?」

「あの…その…
実は、連れというのはファビアンさんとおっしゃる方なんですが…」

「ファビアン?!
ま…まさか…あの疫病神のファビアンじゃないだろうね?!」

「や…疫病神ですか?
確かに、ご本人もご自分のことを運が悪いとおっしゃってましたが…」

「冗談じゃないよ!
あいつが来たら、宿にどんな災難がふりかかるかわかったもんじゃない。
あんただけなら良いけど、あいつはだめ!」

「そうおっしゃらずに、どうかよろしくお願いします!
実は、私はものすごく運が良いのです。
ですから、私が一緒だったらファビアンさんが泊まられても何事も起こりませんから!」

「そんなこと信じられるもんか!
あんたもあんなのと付き合わない方が良いよ。
絶対によくない事が起きるんだから!」

「いえ、本当に大丈夫ですから、どうかよろしくお願いします!」

「ダメだったらダメだって!!」

ご主人は、実にはっきりとした声でそう言われました。



「店先で騒がしいね!一体、何を言ってるんだい。」



「あ…!!あなたは…!」

「おや、あなたはさっきの…」

店の奥から出て来られたのは、先程のご婦人だったのです。



「母さん、この人を知ってるのかい?」

「さっき話しただろう?
わざわざ診療所までおぶって連れて行ってくれた人がいたって…それが、この人なんだよ。
先程は、本当にお世話になりました。
足の骨にひびが入ってたそうなんですよ。
あのまま放置してたら、悪くなる所でした。」

「そうでしたか…
早くに治療してもらえて良かったですね。」

「これもすべてがあなたのおかげです。
ところで、なにをもめてたんですか?」

私は、今までのいきさつをご婦人に話しました。



「そういうことでしたか…」

ご婦人は、一点をみつめ、じっと考えこんでいらっしゃいましたが、しばらくしてからぽつりと呟かれました。



「わかりました。
お泊りいただきましょう…」

「えっ!母さん、正気なのかい?
この人の連れは、あの疫病神のファビアンなんだよ!」

「でも、この人には世話になったし…それに、ご本人もおっしゃってるじゃないか。
すごく運が良い人なんだって。
疫病神のファビアンとこの天使様のような方が一緒だとどうなるのか…興味あるじゃないか!」

「そんな、母さん…」

息子さんは気が進まないようでしたが、お母様のおかげで泊めてもらえることになりました。



「ありがとうございます!
では、私、ファビアンさんを呼んで来ます!」

「あの…ちょっと…」

「は…?何でしょうか?」

息子さんに呼び止められ振り返ると、息子さんは私の耳に顔を寄せ、小さな声で囁かれました。



「…すみませんが、ここにファビアンが泊まってるということを知られると、他のお客様が出ていかれるかもしれないので、裏口からこっそり入って来て下さいね!」

「わかりました。」

私も小さな声で答え、そしてファビアンさんを迎えに町に飛び出しました。 
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