Angel's Ring

Angel's Ring

２０

「坊主、この小人が見えるのか？」

アッシュは、ファビアンさんのその問いには答えず、母親の顔を見ました。



「アッシュ、本当のことを言えば良いんですよ。
お母さんのことは心配しなくて良いのですよ。」

私はアッシュにそう声をかけました。
アッシュは少し迷っているようでしたが、やがて、ゆっくりと頷きました。



「あそこに三人の小人さんがいる。」

「アッシュ！またそんなことを…！」

「あんたは黙ってな！
おい、坊主、おまえには小人が見えるんだな？
じゃあ、どんな小人がいるか言ってみな！」

「……お爺さんの小人さん。
白いお髭で杖を持ってて、そっくりな三人の小人さんだよ。」

アッシュにはやはり三賢者の姿がはっきりと見えているようです。



「おぉ…」

「わしらの姿が見える人間がまだおったんか…」

「嬉しいのぅ…」

三賢者は、その言葉に感動しているようでした。



「小人さん、本当にごめんね。」

「いいや、良いんじゃ。」

「誤解だったんじゃ。」

「わしらの方こそすまんかったな。」

テイリー様は、洞窟に向かって何か短い呪文のようなものをおっしゃいました。
そして、三賢者が揃ってアッシュの傍へ歩いて行かれました。



「ありがとう、アッシュ…」

「小人さん…」

魔法の壁がなくなり、三賢者とアッシュは順番に握手を交わされました。
町の人達は、小首をかしげながら、その様子を不思議そうに見てらっしゃいます。



「それでは、今から皆さんを元の世界に戻します。」

「あ、ナイリー殿、その前に町の呪文を…」

「おぉ、そうでしたな。」

その言葉が言い終わるかどうかの瞬間、ナイリー様の姿が消え、またすぐに現れました。



「これでもう大丈夫じゃ。
では、アッシュ、後ろに下がって…」

「はい。」

アッシュが、元の場所に戻ると、三賢者はアッシュに向かって微笑みながら手を振り、そしてまた短い呪文を唱えられました。
次の瞬間、洞窟にいた人達は一人残らずいなくなっていたのです。