Angel's Ring

ルカ(聖夜月ルカ)

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Angel's Ring

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「あなた方も迷われたのですかな?」

老人が静かな声でそう尋ねられました。



「いえ…私達は少し違うんですが…」

「少し違う…?」

老人は眉をひそめ、怪訝な顔をされました。



「とにかく座って話しませんかな?」

私達は、ベンチに並んで腰を掛けました。



「なぁ、爺さん、ここにはあんた達しかいないのか?」

「…ええ…今は、二人だけです。」

「……そうか…」

ファビアンさんの顔が曇りました。
せっかくここまで来ましたが、アーネストさんはもうここにはいらっしゃらないようです。
それが意味することは、私達にもなんとなく想像がつきました。



「以前はもう数人いたのですが…ここを出て行ったっきり戻っては来ません…」

「戻って来ないってことは…どういうことなんだ…?」

「ここから出たものは、道に迷い、最後はどこだかわからない世界の果てに落ちこんでしまうと言われています。
深く深く真っ暗な世界の果てに落ちて潰れて死んでしまうのだと…」

私達は、老人のその言葉に何も言う事が出来ませんでした。



「あなた方も命が惜しければ、ここから出ようなんてことは考えないことです。
ここにいれば、とりあえず生きてはいられます。
食べる物も何も心配はありません。」

「あんたらはここに来て長いのか?」

「ええ…もう日にちの感覚もわからなくなってしまいましたが、かなり長いと思います。」

「そうだったのか…
実は俺達はある人を探しに来たんだが、あいにくその人はもう死んじまったようだ…
残念だが仕方のないことだ…」

「人を探しに…しかし、ここは一度入ったら、二度とは出られない森なのですぞ。」

「危険は承知の上だが、俺達には秘密兵器があるんだ。
さぁ、あんた達だけでも一緒に行こう!
必ず、外へ出られるから…」

「何を馬鹿なことを…
ここからは誰も…」

「爺さん、言っただろ?
俺達には秘密兵器があるって!」

ファビアンさんは長い紐をお爺さんに見せられました。



「これは外の世界と繋がってる。
この紐を辿っていけば、必ず出られるんだ!」

「しかし…」

「ぐずぐずしている暇はない!
さぁ、行くぜ。
坊主は、俺がおぶって行くよ。」

ファビアンさんはなぜだかとても急がれているようでした。
ファビアンさんは小さな子供をひょいと背中に乗せ、私達は、はぐれないように身体を紐で結んで歩き出しました。
紐は、三人の身体を結ぶと残りはあまり多くはありませんでした。
もっと遠い所だったら、紐が足りなくなる所でした。

どこかで紐が切れたりしていないかと、私は内心心配していたのですがそんなことはなく、私達は順調に紐を辿る事が出来ました。
お爺さんには少しきつい道程だったと思いますが、気丈にも弱音一吐かずついてこられました。
一度も休む事なく歩き続け、そして私達はついに迷路のようなあの道を通り抜けたのです。
あと少しです。
私達が入ってきたと思われる場所で、ファビアンさんは紐をくいくいと2度程引かれました。
すると、同じように外からも2度紐が引かれたのです。

「よし!出るぞ!!」 
 
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