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決意
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*
「やれば出来るもんだなぁ…」
「……よく頑張ったな。」
アズラエルとトレルは、しばらく前とはまるで別の場所のようになった畑を見渡し、穏やかに微笑んだ。
養分と水分を与えられ耕された土はすっかり元気を取り戻し、そこには緑色の苗が整然と植え付けられ、作物を実らせる日を心待ちにしているように見えた。
「…トレル、今夜はいつもより上等の肉を買っておいたぞ。」
「そうか、そいつは楽しみだな。」
変わったのは畑だけではなかった。
トレルの身体には今まではなかった逞しい筋肉が付き、その顔色も日に焼け、とても健康的なものに変わっていた。
外見の変化だけではない。
最近のトレルは塞ぎこむ事もなくなり、普段からとてもよく笑うようになっていた。
*
「やっぱり良い肉は美味いな!」
「そうだな。
肉屋の主人が、めったに入らない良い肉だと自慢していただけのことはある。」
「その分、値段も高いんだろ?」
「……金のことは気にするなと言っているだろう?」
トレルは、その言葉に思わず噴き出した。
「なにがおかしい?」
「あんたはどう見ても金持ちそうには見えないからな。
それに、前から不思議に思ってたんだ。
……なんで、あんたは金に困らないんだ?」
「……つまらんことを詮索するな。」
アズラエルの顔に宿った微笑みを見て、トレルはアズラエルがその質問に答える気がないことを悟った。
「わかったよ。
ま、俺は金の出所がなんであっても気にはしないけどな。」
「君みたいな手段を使ってないことだけは確かだな。」
「なんだよ、俺みたいなって…あ……」
トレルは、アズラエルの言葉の意味を知り、照れたような笑みを浮かべる。
「身体も良くなったことだし、たまには遊びに行って来たらどうだ?
今の君なら、前以上にモテるかもしれないぞ。」
「あいにくだが、俺には他にやることがたくさんあるからな。
女と遊んでる暇はない。」
「君の言葉とは思えないな。
しかし…畑はあのように回復した。
その他に何をやろうって言うんだ?」
その質問をきっかけに、トレルは不意に食器を置いて俯いた。
「……トレル?」
「……アズラエル…俺にいろんなことを教えてほしいんだ。」
「……いろんなこと?」
アズラエルのはトレルの意図することがわからず、質問を重ねた。
トレルはそれにゆっくりと頷く。
「やれば出来るもんだなぁ…」
「……よく頑張ったな。」
アズラエルとトレルは、しばらく前とはまるで別の場所のようになった畑を見渡し、穏やかに微笑んだ。
養分と水分を与えられ耕された土はすっかり元気を取り戻し、そこには緑色の苗が整然と植え付けられ、作物を実らせる日を心待ちにしているように見えた。
「…トレル、今夜はいつもより上等の肉を買っておいたぞ。」
「そうか、そいつは楽しみだな。」
変わったのは畑だけではなかった。
トレルの身体には今まではなかった逞しい筋肉が付き、その顔色も日に焼け、とても健康的なものに変わっていた。
外見の変化だけではない。
最近のトレルは塞ぎこむ事もなくなり、普段からとてもよく笑うようになっていた。
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「やっぱり良い肉は美味いな!」
「そうだな。
肉屋の主人が、めったに入らない良い肉だと自慢していただけのことはある。」
「その分、値段も高いんだろ?」
「……金のことは気にするなと言っているだろう?」
トレルは、その言葉に思わず噴き出した。
「なにがおかしい?」
「あんたはどう見ても金持ちそうには見えないからな。
それに、前から不思議に思ってたんだ。
……なんで、あんたは金に困らないんだ?」
「……つまらんことを詮索するな。」
アズラエルの顔に宿った微笑みを見て、トレルはアズラエルがその質問に答える気がないことを悟った。
「わかったよ。
ま、俺は金の出所がなんであっても気にはしないけどな。」
「君みたいな手段を使ってないことだけは確かだな。」
「なんだよ、俺みたいなって…あ……」
トレルは、アズラエルの言葉の意味を知り、照れたような笑みを浮かべる。
「身体も良くなったことだし、たまには遊びに行って来たらどうだ?
今の君なら、前以上にモテるかもしれないぞ。」
「あいにくだが、俺には他にやることがたくさんあるからな。
女と遊んでる暇はない。」
「君の言葉とは思えないな。
しかし…畑はあのように回復した。
その他に何をやろうって言うんだ?」
その質問をきっかけに、トレルは不意に食器を置いて俯いた。
「……トレル?」
「……アズラエル…俺にいろんなことを教えてほしいんだ。」
「……いろんなこと?」
アズラエルのはトレルの意図することがわからず、質問を重ねた。
トレルはそれにゆっくりと頷く。
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