深淵に眠る十字架 The second

ルカ(聖夜月ルカ)

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決意

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「そうだ…瞬間移動や変化…その他の悪魔の能力を使えるようになりたいんだ。
 俺は、悪魔になったというのに、そういう力がまだなにも使えない。」

 「トレル…今のままでは不満なのか?
 確かに、君は悪魔になった。
 君の身体は老いを忘れてしまったから同じ場所に長くはいられない。
だが…人間らしく生きることは出来る筈だ。
 今のように畑を耕し、暗くなったら眠る…
悪魔と関わることなく、ごく平凡な人の暮らしを続けてはどうだ?」

トレルを諭すように静かに語るアズラエルに、トレルはゆっくりと首を振った。



 「残念ながら、そうするつもりはない。
 俺は悪魔だ。
もう人に戻る事は出来ない。
……俺はその事実を受け入れたい。」

 「……そうか。
では、これからは人との関わりをなくし、悪魔として生きていきたいというのだな。」

 「……まぁ、そういうことだ。
 以前も少しあんたに教えてもらったが、全くうまく出来なかった。
だが、今度はもっと真剣にやる!
 俺はどうしても…どうしても悪魔の力を使いこなせるようになりたいんだ…!」

そう言ったトレルの顔には、恐ろしい程の気迫がこもり、アズラエルはいやな胸騒ぎを覚えた。



 「……トレル…
何を考えている?
 君は、何のためにそれほど悪魔の力に執着するんだ…!?」

 声を荒げたアズラエルにも、トレルは少しも動じず何も答えなかった。



 「トレル!答えろ!」

いつもは冷静なアズラエルが苛立ち、テーブルを叩く。



 「……アズラエル…
何を興奮している?
 何を畏れているんだ?
……俺は、これから悪魔として生きていくんだぞ。
そうこうしてるうちには好きな女も出来るかもしれん。
なのに、悪魔としての力を何も持っていないのでは、みっともなくて好きだとも言えないじゃないか…」

そう言って微笑むトレルの顔は少年のように無邪気なもので、アズラエルはほっと胸を撫で下ろした。



 「……そういうことだったか。
すまない…
そういうことなら、私も協力しよう。
ただ、以前にも言ったが、教えようとして教えられるものではないんだ。
だが、出来る限りの協力はする。」

 「ありがとう、アズラエル。よろしく頼むよ。
……あ、せっかくの良い肉が冷めちまったな。」

 「焼きなおそうか?」

 「いや、これで良い。
 俺は、生に近い方が好きだからな。」

そう言うと、トレルは大きな肉の塊を頬張り、その姿にアズラエルは静かに微笑んだ。

 
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