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決意

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「君もどうだ?」

 「ええ…いただきます。」

 酒を飲んだ方が、恐怖心が薄れる。
そう考え、サマンサは、差し出されたワインを一気に飲み干した。



 「ベルナールさん、もっとワインを下さい!」

 「まるで水でも飲むみたいだな…ワインはもっと味と香りを味わってゆっくりと飲まなければ…」

 差し出されたグラスに、ベルナールは優雅な仕草でワインを満たしていく。



 「サマンサ…ルークには酷い目にあったようだな。」

サマンサは、ベルナールの視線を逸らし、不意に俯いた。



 「あいつのことを、どうか許してやってほしい。
あいつは、本当はとても繊細で純粋な男なのだ。
だからこそ……あいつはあんな風に変わってしまった…」

 思いがけないベルナールの言葉に、サマンサは思わず顔を上げた。



 「ベルナールさん、それは一体どういう…」

 「君は、あいつがあんな風になった理由を聞いていないのか?」

 「それなら聞きました。
ルークは、母さんの本当の子供ではなく、父さんの連れ子だったと…
ルークはそのことがショックで…」

 「……サマンサ…そんなことで、人はそれほど変わるだろうか…?」

ベルナールのまるで独り言のような呟きに、サマンサの瞳大きく見開かれた。



 「どういうことなんですか!?
それじゃあ、ルークがあんな風になった理由は他にあると…?」

ベルナールはグラスに残ったワインを飲み干し、ゆっくりと頷く。



 「ベルナールさん、教えて下さい!
ルークがあんな風になってしまった本当の理由を…」

サマンサは食事の手を止め、まっすぐにベルナールの瞳を見据える。



 「とても辛い話だぞ…
君にはそれを受け止める覚悟があるか?」

 「あります!
 私、どんなことだって……」

 「そうか、わかった…ならば、話そう…
あいつがあんな風になってしまった本当の理由を……」



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