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side カンナ
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確かに、上るのは辛かった。
階段を上るわけだから、疲れるのは当然だけど、疲れの度合いが普段より激しいような気がする。
降りて来る人もちらほらいる。
途中で諦めたのか、頂上まで登って来たのかはわからないけど…
しばらく歩くと、なにやら騒がしい声が聞こえた。
泣いてるような声もする。
「なんだろうな?」
気になりながら進んで行くと、なんだか少し明るくなって来て、急に拓けた場所に出た。
窓があり、中央には小さな祭壇のようなものがあった。
アルバートさんが途中まで行こうって言ったのは、きっとここの事なんだと思った。
頂上まで行けない人は、ここで祈りを捧げるんだろう。
騒がしかったのは、華奢なおばあさんの声だった。
「後生です!お願いします!」
おばあさんは、頭を地べたにこすりつけるようにして泣いている。
「どうなさったんですか?」
声を掛けたアルバートさんに、おばあさんは顔を上げた。
「お願いします!どうか、私を頂上へ連れて行って下さい。
連れて行って下さるだけで良いのです。
あとは、そこに放っておいて下されば…」
アルバートさんは、困ったような顔をしていた。
「お願いです!末の息子が、重い病気にかかっているのです。
まだ40になったばかりで、子供もまだ小さいんです。
今、死ぬわけにはいかないんです。
ですから、どうか私を頂上へ連れて行って下さい。
ハヴェルの神に、直接お願いしたいのです。」
おばあさんは、赤い目から涙を流しながら、心痛な面持ちでそう言った。
アルバートさんはなにかをじっと考えているようで……
階段を上るわけだから、疲れるのは当然だけど、疲れの度合いが普段より激しいような気がする。
降りて来る人もちらほらいる。
途中で諦めたのか、頂上まで登って来たのかはわからないけど…
しばらく歩くと、なにやら騒がしい声が聞こえた。
泣いてるような声もする。
「なんだろうな?」
気になりながら進んで行くと、なんだか少し明るくなって来て、急に拓けた場所に出た。
窓があり、中央には小さな祭壇のようなものがあった。
アルバートさんが途中まで行こうって言ったのは、きっとここの事なんだと思った。
頂上まで行けない人は、ここで祈りを捧げるんだろう。
騒がしかったのは、華奢なおばあさんの声だった。
「後生です!お願いします!」
おばあさんは、頭を地べたにこすりつけるようにして泣いている。
「どうなさったんですか?」
声を掛けたアルバートさんに、おばあさんは顔を上げた。
「お願いします!どうか、私を頂上へ連れて行って下さい。
連れて行って下さるだけで良いのです。
あとは、そこに放っておいて下されば…」
アルバートさんは、困ったような顔をしていた。
「お願いです!末の息子が、重い病気にかかっているのです。
まだ40になったばかりで、子供もまだ小さいんです。
今、死ぬわけにはいかないんです。
ですから、どうか私を頂上へ連れて行って下さい。
ハヴェルの神に、直接お願いしたいのです。」
おばあさんは、赤い目から涙を流しながら、心痛な面持ちでそう言った。
アルバートさんはなにかをじっと考えているようで……
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