横顔の君

ルカ(聖夜月ルカ)

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揺れる心

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 (……どうしたんだろう?)


 決死の想いで古本屋に向かったというのに、その扉は昨日と同じく固く閉ざされたままだった。



そのことが妙に心に引っ掛かった。
 二日も休むなんて、そんなのおかしい…
もしかして、体調でも崩されたんじゃないだろうか…?
あの時はそんなに具合が悪そうって感じには見えなかったから、多分、風邪か何か…



(……それとも、なんらかの事故?)



なんの気なしのありふれた想像…
階段から足を踏み外してちょっと捻挫したくらいなら良いけど、でも、そのくらいなら店には出て来られるんじゃないだろうか?
あの人は本がすごく好きそうだったし…ここに来れば好きな本が読めるんだから、そう、きっと来るはず…



(でも、お店を休んでるってことは……)



そんなことを思ったら急に不安が大きくなった。
まさかとは思うけど…交通事故?
それも大けがとか…或いはもっと酷くて…



怖ろしい想像に、私の背中にいやな汗が流れた。



まさか…そんなことない!
でも、世の中では毎日凄惨な事故が起きている…


だけど、あの人に限って…
誰の身にも起きうるのが、突発的な事故ってものだ…



私の中で相対する考えがせめぎ合う。



どうしよう?万一、そんなことになったら…
ものすごく久しぶりに好きになった人が、言葉さえ交わさないうちにいなくなってしまったら…



ただの想像だというのに、たまらない気持ちになった。
 誰か、あの人のことを知ってる人はいないだろうか?
あの人と親しい人は…
でも、このあたりは商店街でもなんでもなくて、古本屋さんは住宅地にぽつんと建っている。
ご近所の人なら知ってるかもしれないけど、突然、訪問してそんなことを聞くなんて、どう考えてもおかしい。
だけど、知りたい…あの人のことが…
こんな気持ちのまま、じっとしてるなんて拷問にも等しい。



 (どうしよう?)



なす術もなく、私がその場に立ち尽くしてる時のことだった。
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