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揺れる心
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「あの~…」
背中から聞こえて来た低い声…
はっとして振り向くと、そこには背の高い着流し姿のあの人が立っていて……
「あ…あ……」
「すみません。ちょっと通してもらえますか?」
「は、は、はいっ!」
あの人は、けっこう重そうな袋を地面に置いて、扉の鍵をくるくると回した。
「待ってて下さったんですか?」
「え?そ、そ、そんなこと…」
(どうして、私が待ってたってわかったの?)
私は卒倒寸前だった。
びっくりしすぎて、何を言ってるのかもわからない。
横顔しかみたことなかったあの人を正面から見て、しかも、その姿は着流しで、その上、ついに会話まで交わして……
「さぁ、どうぞ。」
「は、はいっ!」
私は促されるままに本屋に入り…そして、ようやく理解した。
待ってたっていうのは、あの人を待ってたっていうわけではなくて、お店が開くのを待ってたってことだったんだって。
そう、つまり、私が勝手に一目惚れしたことなんて、バレてない。
落ち着いて考えれば、それはすぐにわかることだった。
それにしても、どうして着流し?
しかも、あまりにも似合ってる…
まるで、一昔前の人みたい…一昔前の作家とか…そんな雰囲気だ。
あ、そういえば、この間、あの人は何を着ていたんだろう?
そんなことも私は全く覚えてなかった。
「いつもこのくらいの時間は買い物に行くんですよ。」
「え?」
あの人は袋を手に私の前を歩き、まるで独り言みたいにそう言った。
「一日中座ってると、身体に悪いでしょう?
ですから、毎日隣町の市場に買い物に行くんです。
ここからゆっくり歩くと、4~50分かかるんですよ。
往復で10000歩弱…一日にそれだけ歩いたら大丈夫ですよね?」
「え…あ、は、はいっ!
多分……」
なんてつまらない返事だろう。
自分で自分がいやになった。
せっかくの会話のチャンスなのに、なんてつまらない…
「きょ、今日は何か良いものありましたか?」
ついさっきのつまらない会話を挽回しようとして、私はさらにしょーもないことを口走っていた。
「あそこはいつでも安くて新鮮なものが多いですからね。
今日は綺麗な桃を買って来ました。」
そういえば、さっきから良い香りがしてると思ったら、桃の香りだ。
「そ、それは良かったです。」
背中から聞こえて来た低い声…
はっとして振り向くと、そこには背の高い着流し姿のあの人が立っていて……
「あ…あ……」
「すみません。ちょっと通してもらえますか?」
「は、は、はいっ!」
あの人は、けっこう重そうな袋を地面に置いて、扉の鍵をくるくると回した。
「待ってて下さったんですか?」
「え?そ、そ、そんなこと…」
(どうして、私が待ってたってわかったの?)
私は卒倒寸前だった。
びっくりしすぎて、何を言ってるのかもわからない。
横顔しかみたことなかったあの人を正面から見て、しかも、その姿は着流しで、その上、ついに会話まで交わして……
「さぁ、どうぞ。」
「は、はいっ!」
私は促されるままに本屋に入り…そして、ようやく理解した。
待ってたっていうのは、あの人を待ってたっていうわけではなくて、お店が開くのを待ってたってことだったんだって。
そう、つまり、私が勝手に一目惚れしたことなんて、バレてない。
落ち着いて考えれば、それはすぐにわかることだった。
それにしても、どうして着流し?
しかも、あまりにも似合ってる…
まるで、一昔前の人みたい…一昔前の作家とか…そんな雰囲気だ。
あ、そういえば、この間、あの人は何を着ていたんだろう?
そんなことも私は全く覚えてなかった。
「いつもこのくらいの時間は買い物に行くんですよ。」
「え?」
あの人は袋を手に私の前を歩き、まるで独り言みたいにそう言った。
「一日中座ってると、身体に悪いでしょう?
ですから、毎日隣町の市場に買い物に行くんです。
ここからゆっくり歩くと、4~50分かかるんですよ。
往復で10000歩弱…一日にそれだけ歩いたら大丈夫ですよね?」
「え…あ、は、はいっ!
多分……」
なんてつまらない返事だろう。
自分で自分がいやになった。
せっかくの会話のチャンスなのに、なんてつまらない…
「きょ、今日は何か良いものありましたか?」
ついさっきのつまらない会話を挽回しようとして、私はさらにしょーもないことを口走っていた。
「あそこはいつでも安くて新鮮なものが多いですからね。
今日は綺麗な桃を買って来ました。」
そういえば、さっきから良い香りがしてると思ったら、桃の香りだ。
「そ、それは良かったです。」
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