幸せの花が咲く町で

ルカ(聖夜月ルカ)

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side 香織

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 「じゃあ、行って来ます。」


……とはいえ、バス停はすぐ目の前。
バスの姿が小さく見えたのと同時に私は店を出た。



 「おかえりなさい、小太郎ちゃん!」

 「ただいま~!」

 元気にお返事をする小太郎ちゃんは本当に可愛い。
 旦那様よりは、奥様に似ている。



 「小太郎ちゃん、ママがお花がいるって言ってたから、ちょっとお店に寄ってね。」

 「は~い。」

 「どのお花が良いかなぁ…?
 小太郎ちゃんも選んでね。」



 季節の花を適当に選び、店を出ようとした時、小太郎ちゃんが立ち止まった。



 「あ、仏様のお花も買わないと……」

 「そうなの?
じゃあ、それも持っていきましょうね。」



 小太郎ちゃんの小さな手は柔らかくて温かい。
 私は、この先、子供を産むこともないだろう。
 小太郎ちゃんみたいな子供でもいたら、母さんも少しは生きがいみたいなものがあっただろうに……

そう思うと、自分の不甲斐なさに気持ちが沈んだ。



ほんの数日でも、母親のような真似事をさせてもらったこと…本当にありがたいと思った。
 出来ることならこれからもずっと、堤さんご一家とは仲良くさせていただきたいけど……そんなことをしたら、そのうち私のことがバレてしまう。
 惨めな本当の私が……
だから、お手伝いをするのは今回限り。
あとはまた、花屋の店員とお客様に戻るだけ。



 「ただいまーーー」

 鍵は預かっていたのに、小太郎ちゃんが大きな声を出したせいか、堤さんが降りて来られた。



 「申し訳ありません。
またこんなことをお願いしてしまって……」

 堤さんの顔色は、やはりまだ優れなかった。



 「いえいえ。
 私にはこんなことしか出来ませんから。」

 「迎えに行こうと思ったら、なっちゃんからさっきメールが来て、篠宮さんにお迎えは頼んであるからって書いてあったんで、びっくりしました。
 厚かましいことをお願いして、本当にすみません。」

 「……そんなことより……どうかお休みになって下さい。
あ、お腹すいてらっしゃいますか?
なにか食べられますか?」

 「いえ……大丈夫です。
では、お言葉に甘えて、横にならせていただきます。
 本当にどうもありがとうございました。」

 堤さんは、そう言って、また部屋に戻って行かれた。 
 
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