幸せの花が咲く町で

ルカ(聖夜月ルカ)

文字の大きさ
187 / 308
side 優一

しおりを挟む




ベッドに横になっても、その晩はなかなか寝付けなかった。



なっちゃんはああ言ってくれたけど、本当に大丈夫なんだろうか?
僕は別にどんな風に思われても構わない。
ただ、僕のせいで、小太郎が傷付くことだけが心配だった。



もしも、僕がこんな風にダメな人間じゃなかったら……
あのまんま、仕事に打ち込んでいたら、なっちゃん達はどうなっていただろう?
なっちゃんは、あの頃、小太郎を保育園に預けて働いてるって言ってた。
あのゴミ屋敷で、二人はあのまま外食やお弁当を食べて暮らしてたのかな。
それに比べたら、今の暮らしの方がやっぱりまだ良いようには思える。



どの家庭にもいろんな事情があって……
だから、なっちゃんの言う通り、何も気にしなくて良いのかもしれない。



だけど……
子供には他人の家の事情を思いやることなんて出来ない。
皆と少し違うということだけで、いじめの標的にされるらしい。



小太郎も来年は小学校に入学だ。
ゆっくりと考えている時間はない。



(バイトでも始めようか……)



考えるのは簡単だけど、本当に出来るかどうかはわからない。
そして、そのことがまた僕の気分を滅入らせた。



焦っちゃいけない……

でも、急がなきゃ……


相反する気持ちがせめぎ合う。



(あぁ、どうすりゃ良いんだろ……)



ふとそんな時、篠宮さんの顔が頭に浮かんだ。



相談したらきっと親身になって考えてくれるだろうな……
篠宮さんなら何て言うだろう?



そんなことを考えた時、篠宮さんのあの笑顔がえみがえった。
愛する子供に向けられたあの笑顔が……



篠宮さんには、家庭があるんだ。
僕なんかに入り込めるはずのない強い絆で結ばれた家庭が……



僕は、篠宮さんにとってただの花屋のお客。
そうでなくとも、僕みたいに弱いダメな男を相手にする人なんてどこにもいない……



(だめだな…また病んでる……)



僕は無理に瞳を閉じた。
それでも少しも眠くならなかったけど固く閉じた瞼を開くことはしなかった。
 押し寄せる焦りと不安に唇を噛みしめ、真っ暗な闇の中でまんじりともせず、僕は次の日の夜明けを迎えた。

 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました

結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】 今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。 「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」 そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。 そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。 けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。 その真意を知った時、私は―。 ※暫く鬱展開が続きます ※他サイトでも投稿中

お飾り王妃の死後~王の後悔~

ましゅぺちーの
恋愛
ウィルベルト王国の王レオンと王妃フランチェスカは白い結婚である。 王が愛するのは愛妾であるフレイアただ一人。 ウィルベルト王国では周知の事実だった。 しかしある日王妃フランチェスカが自ら命を絶ってしまう。 最後に王宛てに残された手紙を読み王は後悔に苛まれる。 小説家になろう様にも投稿しています。

お飾りの侯爵夫人

悠木矢彩
恋愛
今宵もあの方は帰ってきてくださらない… フリーアイコン あままつ様のを使用させて頂いています。

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

15年目のホンネ ~今も愛していると言えますか?~

深冬 芽以
恋愛
 交際2年、結婚15年の柚葉《ゆずは》と和輝《かずき》。  2人の子供に恵まれて、どこにでもある普通の家族の普通の毎日を過ごしていた。  愚痴は言い切れないほどあるけれど、それなりに幸せ……のはずだった。 「その時計、気に入ってるのね」 「ああ、初ボーナスで買ったから思い出深くて」 『お揃いで』ね?  夫は知らない。  私が知っていることを。  結婚指輪はしないのに、その時計はつけるのね?  私の名前は呼ばないのに、あの女の名前は呼ぶのね?  今も私を好きですか?  後悔していませんか?  私は今もあなたが好きです。  だから、ずっと、後悔しているの……。  妻になり、強くなった。  母になり、逞しくなった。  だけど、傷つかないわけじゃない。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

届かぬ温もり

HARUKA
恋愛
夫には忘れられない人がいた。それを知りながら、私は彼のそばにいたかった。愛することで自分を捨て、夫の隣にいることを選んだ私。だけど、その恋に答えはなかった。すべてを失いかけた私が選んだのは、彼から離れ、自分自身の人生を取り戻す道だった····· ◆◇◆◇◆◇◆ 読んでくださり感謝いたします。 すべてフィクションです。不快に思われた方は読むのを止めて下さい。 ゆっくり更新していきます。 誤字脱字も見つけ次第直していきます。 よろしくお願いします。

処理中です...