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side 瑠威

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「そういえば、かおり…なんで、昨日は打ち上げ来なかったんだ?」

 「え?あ、あぁ…もしかしたら、レコード会社の人が来るんじゃないかって思って…」

 「なんだ…そんなこと、気にしてたのか。
あの人たちは楽屋に来た後、すぐに帰ったのに…」

 「そうだったの…」

あの日、かおりが帰った理由がはっきりして、俺はちょっと安心した。



 「かおり…それと、結婚のことだけど…
何も心配はいらないから。
 予定通りだからな。」

 「そう…わかった。」

なんだか気のない返事だった。



 「それで…さっきの話なんだけど…
式はどこでしようか?」

 「……瑠威。
どうしてそういうものにこだわるの?
 良いじゃない。仲間内で適当にやれば…」




 『適当にやれば』

それは、かおりが言う言葉にしては、なにかおかしな気がした。
かおりは、俺達の結婚をそんなに軽いものに考えているのか?
かおりの性格からしても、何か腑に落ちない。



 (……もしかして……)



かおりは若いうちに両親を亡くしている。
 親しい親せきもほとんどいないって言っていた。
それに、俺が両親には何も言わずに結婚しようとしていることを気付いてるんじゃないだろうか?
 式には、どうせ、親しい仲間しか来ない…それで、ちょっと拗ねて…



そりゃあ、わかるよな。
 普通なら、結婚が決まったら親に紹介するのが当たり前だ。
だけど、俺はそんなこと一言も言ってないし。
かおりは、俺が親とは断絶状態だってことも知ってる。
 望結が何か言ったのかもしれないし…



そうだ、かおりは何もかもわかってるんだ…
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