恋のキューピッドは怪獣でした！

お仕事の始まりはベリーエキサイティング！

２７

史郎さんは、何も言わなかった。
 何も言わないってことは、問題ないってことだよね？
 当の史郎さんはいつもと同じようなカジュアルな格好だった。
 若いから、これで良いんだよね。



 「……良い天気で良かったな。」

 「そ、そうですね。」

 電車で史郎さんと並んで座った。
すぐ傍に史郎さんがいることが、なんとなく気恥ずかしい。



 「平日だけど、きっとけっこう混んでると思うんだ。
レギラには熱狂的なファンが多いし。」

 「そ、そうなんですね。」

 史郎さんがいろいろ話しかけてくれるのに、私は変に緊張してしまって、つまらない返事しか出来ず、会話をぶった切ってしまう。
そのことに気付いたら、ますます焦ってしまって、余計にちゃんと話せなくなる。



いつもならこんなことにはならないのに…
食事の時は、もっと自然に会話出来るのに、今日は、一体、どうしたっていうんだ、私！？



やっぱり、史郎さんとの距離が近すぎるからだよね。
いつもは、向かい合ってはいるものの、それなりに距離がある。
テーブルもけっこう大きいからね。
なのに、今は密着するくらいの距離だもの。
そりゃあ、照れるよ。
いや、恋愛感情ではないけれど、史郎さんはイケメンだから、変に緊張してしまうんだよね。
 近いから、深呼吸さえ出来ない。
 結局、イベントの最寄駅に着くまで、なんとなく気まずい雰囲気が続いてしまった。