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ニュー
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(あぁぁ…やっぱり新しいって良いな…)
俺は、引っ越して来たばかりの家の中を見渡し、一人、にんまりと悦に入る。
つい最近出来たばかりの新築マンションは、実家とは違ってどこもかしこもぴかぴかだ。
しかも、家具や家電も新品で…
この町に住むのも当然初めてだ。
この近くの大学に通うため、俺はこの町に引っ越して来た。
俺は生まれ変わるんだ!
今までのぱっとしなかった俺とはおさらばして、もっと、こう…カリスマ性のある人間に変わるんだ。
そのためにはまず家を離れること。
だから、あれだけ必死に勉強したんだ!
こっちに来てから服も買い揃え、髪形も変えた。
中2の時からなんとなく付き合って来た夏澄とも別れてきた。
あいつとは、家が隣ってこともあって兄弟みたいに育って来てたから、別れを切り出すのは辛かったけど…
あいつは意外な程、すんなりとそれを承知してくれた。
俺が、何もかも投げ捨てて都会に行くから別れてくれって言ったら、驚きもせずに、「あ、そ。わかった…」って、それだけ言った。
もしかして、俺ってあんまり愛されてなかったのか?って思うほど、あっけなく…
本当に良くわからない奴だ。
でも、わんわん泣かれるよりはまだましか。
*
(さぁて!頑張るぞ!)
待ちに待った入学式がやって来た。
気合いを入れて玄関の扉を開けたら…そこには夏澄が立っていた。
しかも、なんだか妙に垢抜けた感じだぞ。
「お、おまえ…な、なんでこんな所に……」
「ほらほら、早く行かないと入学式に遅れるよ。」
夏澄に背中を押し出され、俺はわけがわからないまま歩き出した。
「おい、おまえ、どこまで着いて来るつもりだ?」
「着いて来る?おかしなこと言わないで。
私は今から入学式に行くんだから…」
「入学式って…おまえ、まさか……」
夏澄は意味ありげににんまりと微笑む。
な、な、なんてことだ…あの顔から察するに、夏澄の奴、俺と同じ大学に進学したんだな。
「あ、あのな…言っとくけど、俺には絶対に近付くな!
俺は都会で……」
「生まれ変わるんでしょ?はいはい、わかった、わかった。」
夏澄は俺の方を見ることもなく、そう言って、片手をひらひらと振った。
「あのさぁ、私、あんたの家の隣の部屋だから。」
「えーーーーーっっ!」
「皆には、お正月あたりには、タカの子供連れて帰って来るって言っといた。」
「な、な、な………!」
「そしたら、あんたのお母さんも『頑張って!』って言ってくれたよ。」
呆れすぎて、俺は何も言うことが出来なかった。
馬鹿なことばかり言う夏澄のことは無視して、俺は歩き続けた。
これからの新しい生活に、大きな不安を感じながら……
俺は、引っ越して来たばかりの家の中を見渡し、一人、にんまりと悦に入る。
つい最近出来たばかりの新築マンションは、実家とは違ってどこもかしこもぴかぴかだ。
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この近くの大学に通うため、俺はこの町に引っ越して来た。
俺は生まれ変わるんだ!
今までのぱっとしなかった俺とはおさらばして、もっと、こう…カリスマ性のある人間に変わるんだ。
そのためにはまず家を離れること。
だから、あれだけ必死に勉強したんだ!
こっちに来てから服も買い揃え、髪形も変えた。
中2の時からなんとなく付き合って来た夏澄とも別れてきた。
あいつとは、家が隣ってこともあって兄弟みたいに育って来てたから、別れを切り出すのは辛かったけど…
あいつは意外な程、すんなりとそれを承知してくれた。
俺が、何もかも投げ捨てて都会に行くから別れてくれって言ったら、驚きもせずに、「あ、そ。わかった…」って、それだけ言った。
もしかして、俺ってあんまり愛されてなかったのか?って思うほど、あっけなく…
本当に良くわからない奴だ。
でも、わんわん泣かれるよりはまだましか。
*
(さぁて!頑張るぞ!)
待ちに待った入学式がやって来た。
気合いを入れて玄関の扉を開けたら…そこには夏澄が立っていた。
しかも、なんだか妙に垢抜けた感じだぞ。
「お、おまえ…な、なんでこんな所に……」
「ほらほら、早く行かないと入学式に遅れるよ。」
夏澄に背中を押し出され、俺はわけがわからないまま歩き出した。
「おい、おまえ、どこまで着いて来るつもりだ?」
「着いて来る?おかしなこと言わないで。
私は今から入学式に行くんだから…」
「入学式って…おまえ、まさか……」
夏澄は意味ありげににんまりと微笑む。
な、な、なんてことだ…あの顔から察するに、夏澄の奴、俺と同じ大学に進学したんだな。
「あ、あのな…言っとくけど、俺には絶対に近付くな!
俺は都会で……」
「生まれ変わるんでしょ?はいはい、わかった、わかった。」
夏澄は俺の方を見ることもなく、そう言って、片手をひらひらと振った。
「あのさぁ、私、あんたの家の隣の部屋だから。」
「えーーーーーっっ!」
「皆には、お正月あたりには、タカの子供連れて帰って来るって言っといた。」
「な、な、な………!」
「そしたら、あんたのお母さんも『頑張って!』って言ってくれたよ。」
呆れすぎて、俺は何も言うことが出来なかった。
馬鹿なことばかり言う夏澄のことは無視して、俺は歩き続けた。
これからの新しい生活に、大きな不安を感じながら……
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