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第36話:侵入者②
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「……うっ……ここは……」
目を開けたら白い天井が見えた。
身体はふかふかの毛布にくるまれている。
私はお部屋のベッドに寝ていた。
「目が覚めたかい、キュリティ。ああ、良かった。アンタが倒れたと聞いてすっ飛んできたよ」
「オ……オールドさん……」
ベッドの脇にはオールドさんがいた。
心配そうな顔で私の手を握っている。
「侵入者を見つけたんだって? 大変な目に遭っちまったねぇ。でも、そいつはもう監獄に入れられたから安心しなね」
「それならよかったです。私もさすがにビックリしました」
「なかなか手練れの魔術師だったみたいでね。屋敷の警備をすり抜けちまったのさ」
このお屋敷には一流の衛兵や魔術師が集まっている。
それをかいくぐるくらいだから、やはり力のある人物だったのだろう。
「アンタには疲れが溜まっていたんだろうね。アタシも気づけなくてごめんよ」
オールドさんはいるけど、バーチュさんはいなかった。
「あの、バーチュさんはどちらですか? 助けてくれたお礼をまだちゃんと言えていないんです」
「アンタが目を覚ましたら、すぐにディア坊主を呼びに行ったよ」
オールドさんが話し終わるや否や、お部屋の前がドタバタした。
「キュリティ、大丈夫か!?」
勢い良く扉が開きディアボロ様が入ってきた。
走ってきたようで、ゼイゼイハアハアと息切れしている。
ベッドに座っている私を見ると、すぐにホッとしたような顔になった。
「良かった……大丈夫なようだな」
「ディアボロ様、ご心配をおかけして申し訳ありませんでした。ただ疲れで倒れてしまっただけですので大丈夫です」
「キュリティが謝る必要はまったくない。しかし……あってはならないことだ。君には多大な心配と迷惑をかけてしまったな。申し訳ない」
ディアボロ様は頭を抱えて深刻な顔をしている。
その様子から、心の底から私の身を案じてくれたのだとわかった。
「ディア坊主、とりあえず座りなさんな。キュリティは大丈夫だよ。疲労が溜まっていただけさ」
「ああ、座らせてもらおう。……取り調べの結果、侵入者は隣国の密偵だったようだ。相当の術士らしい。屋敷にも手練れの警備隊が集まっているが、彼らを欺けるほどの腕前だからな」
「いったい何が目的だったのでしょう」
あのとき捕まえられて幸運だった。
野放しにしたら何をするかわからない。
「まだ調べているが、おそらく私を暗殺するために情報を集めていたんだろう」
「えっ!? ディアボロ様の暗殺なんて……」
「ヒュージニア帝国の周りは、政情が安定しているとは言い難い。だから、私の命を狙う者も少なからずいるんだ。警備をもっと厳重にするよう伝えてきたから、もう大丈夫だろうとは思うが」
ディアボロ様を殺そうとしていたのか……。
やっぱり、密偵たちが考えることは怖い。
取り逃していたらと思うと、恐怖でぶるっと体が震えるようだった。
「ディアボロ様がご無事でよかったです」
「これもキュリティのおかげだ。手練れの魔術師を見破るなんて、君はすごい力を持っているな。屋敷にとっても欠かせない人間だ」
「でも、捕まえてくれたのはバーチュさんです……そういえば、バーチュさんはどちらにいらっしゃるのですか? ちゃんとお礼を言いたいのですが」
「彼女は密偵を捕まえたときの状況を話しに行っている。時期に戻るだろう。彼女に会ったら伝えておく」
ああ、そうか。
大事な目撃者だもんね。
そして、ディアボロ様は立ち上がった。
「念のため、今日はバーチュに夜通し見張りと護衛を頼んでおいた。君のことは何があっても絶対に守るから安心しなさい」
「アタシもしばらくは、この屋敷で寝泊まりするよ。こう見えても意外と力が強いんだ」
「ありがとうございます。とても心強いです」
ベッドに横たわると、すぐに瞼が重くなってきた。
あんなことがあったわけだけど、不思議と怖い気持ちはない。
オールドさんがいれば、バーチュさんがいれば……いや、それよりも……。
――ディアボロ様がいれば全然怖くない。
安心した気持ちで夢の世界に誘われていった。
目を開けたら白い天井が見えた。
身体はふかふかの毛布にくるまれている。
私はお部屋のベッドに寝ていた。
「目が覚めたかい、キュリティ。ああ、良かった。アンタが倒れたと聞いてすっ飛んできたよ」
「オ……オールドさん……」
ベッドの脇にはオールドさんがいた。
心配そうな顔で私の手を握っている。
「侵入者を見つけたんだって? 大変な目に遭っちまったねぇ。でも、そいつはもう監獄に入れられたから安心しなね」
「それならよかったです。私もさすがにビックリしました」
「なかなか手練れの魔術師だったみたいでね。屋敷の警備をすり抜けちまったのさ」
このお屋敷には一流の衛兵や魔術師が集まっている。
それをかいくぐるくらいだから、やはり力のある人物だったのだろう。
「アンタには疲れが溜まっていたんだろうね。アタシも気づけなくてごめんよ」
オールドさんはいるけど、バーチュさんはいなかった。
「あの、バーチュさんはどちらですか? 助けてくれたお礼をまだちゃんと言えていないんです」
「アンタが目を覚ましたら、すぐにディア坊主を呼びに行ったよ」
オールドさんが話し終わるや否や、お部屋の前がドタバタした。
「キュリティ、大丈夫か!?」
勢い良く扉が開きディアボロ様が入ってきた。
走ってきたようで、ゼイゼイハアハアと息切れしている。
ベッドに座っている私を見ると、すぐにホッとしたような顔になった。
「良かった……大丈夫なようだな」
「ディアボロ様、ご心配をおかけして申し訳ありませんでした。ただ疲れで倒れてしまっただけですので大丈夫です」
「キュリティが謝る必要はまったくない。しかし……あってはならないことだ。君には多大な心配と迷惑をかけてしまったな。申し訳ない」
ディアボロ様は頭を抱えて深刻な顔をしている。
その様子から、心の底から私の身を案じてくれたのだとわかった。
「ディア坊主、とりあえず座りなさんな。キュリティは大丈夫だよ。疲労が溜まっていただけさ」
「ああ、座らせてもらおう。……取り調べの結果、侵入者は隣国の密偵だったようだ。相当の術士らしい。屋敷にも手練れの警備隊が集まっているが、彼らを欺けるほどの腕前だからな」
「いったい何が目的だったのでしょう」
あのとき捕まえられて幸運だった。
野放しにしたら何をするかわからない。
「まだ調べているが、おそらく私を暗殺するために情報を集めていたんだろう」
「えっ!? ディアボロ様の暗殺なんて……」
「ヒュージニア帝国の周りは、政情が安定しているとは言い難い。だから、私の命を狙う者も少なからずいるんだ。警備をもっと厳重にするよう伝えてきたから、もう大丈夫だろうとは思うが」
ディアボロ様を殺そうとしていたのか……。
やっぱり、密偵たちが考えることは怖い。
取り逃していたらと思うと、恐怖でぶるっと体が震えるようだった。
「ディアボロ様がご無事でよかったです」
「これもキュリティのおかげだ。手練れの魔術師を見破るなんて、君はすごい力を持っているな。屋敷にとっても欠かせない人間だ」
「でも、捕まえてくれたのはバーチュさんです……そういえば、バーチュさんはどちらにいらっしゃるのですか? ちゃんとお礼を言いたいのですが」
「彼女は密偵を捕まえたときの状況を話しに行っている。時期に戻るだろう。彼女に会ったら伝えておく」
ああ、そうか。
大事な目撃者だもんね。
そして、ディアボロ様は立ち上がった。
「念のため、今日はバーチュに夜通し見張りと護衛を頼んでおいた。君のことは何があっても絶対に守るから安心しなさい」
「アタシもしばらくは、この屋敷で寝泊まりするよ。こう見えても意外と力が強いんだ」
「ありがとうございます。とても心強いです」
ベッドに横たわると、すぐに瞼が重くなってきた。
あんなことがあったわけだけど、不思議と怖い気持ちはない。
オールドさんがいれば、バーチュさんがいれば……いや、それよりも……。
――ディアボロ様がいれば全然怖くない。
安心した気持ちで夢の世界に誘われていった。
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