弱国の転生王子は三大強国間の飛び地を神器生成スキルで世界最強領地にする~目立ちたくないのに、実は領民は強国のスパイで僕の活躍を国に報告してた

青空あかな

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第30話:グッズ

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 ルイザの一件から数日後の朝。
 飛び地にはすっかり日常が舞い戻っていた。
 彼女が鍬を持ち出そうとしたことは領民も気づいておらず、平穏そのものだ(無論、領地にいる帝国の仲間たちは、持ち出しが失敗したことを知っている)。
 そういった背景がある中、ネオンはいつも通りブリジットと一緒に家を出る。
 いつの間にか、ぐ~っと身体を伸ばすのが日課になっていた。
 背伸びを終えると、ネオンは昨日から思っていることをブリジットに話す。

「ねえ、ブリジット。野菜や魔物の素材とかがだいぶ集まってきたけど、僕たちも交易を始めた方がいいのかな」
「ええ、私も前向きに検討することをおすすめします。食材や素材が余っているのはもったいないですし、資金はあるに超したことはありません」

 飛び地や超大国がある大陸全土では、"ルクス"という通貨が用いられている。
 概ね、1ルクス=1円であり、ネオンは計算が楽でよかったと思っていた。

「そうだよねぇ……。でも、超大国とは取引するのが怖いから、旅の商人向けに考えよう。飛び地を経由する人がいるかも……いや、瘴気で汚染されているんだから来るわけないか~」
「現時点での可能性は薄いかもしれませんが、努力していれば報われるはずです」
「いずれにせよ、開拓していることは超大国にバレないようにしなきゃ。そのうち、飛び地ならではの特産品みたいな物も作らなきゃだね」

 ネオンが呟くように話すと、ブリジットの目がキラリと光った。

「特産品については、私に名案がございます」
「え、そうなの? 教えて教えて」

 ブリジットは硬く拳を握り、瞳を燃やしながら叫んだ。

「ネオン様のグッズを作るのです!」
「え」

 呆然とするネオンを置いて、ブリジットは力強く語り出す。

「飛び地と言えば、ネオン様! 故に、ネオン様のグッズを作ることを推奨します! 1/5サイズのぬいぐるみはもちろんのこと、等身大人形にクッション、抱き枕は必需品として、ネオン様のお顔を描いたシャツなどもいいですね。まずは領民の服装をネオン様デザインの衣服で統一して、行商人が来たときにすぐアピールできるようにして……!」
「あ、あの、ちょっと待って。お願いだから、ちょっと待って」
「何でしょうか、ネオン様」

 熱く語る彼女を慌てて止めた。
 この流れは非常にまずいことを、ネオンはよく知っている。

 ――ブリジットは本気でやりかねないから、ちゃんと否定しておかないと……。

 こほんっと咳払いすると、真摯な瞳で伝えた。

「僕のグッズなんか、欲しい人はいないんじゃないかな」
「いいえ、おります」
「ど、どこに……」
「ここにおります」

 ブリジットは自信満々に胸を張る。
 そのまま、練りに練り上げられた"グッズ量産計画"をプレゼンし始めた。
 
 ――ど、どうしよう、このままじゃ本当に僕のグッズが作られてしまう……。超大国に見つかったら、目をつけられること間違いなしじゃん!

 などと思っていると、ルイザがベネロープとキアラと一緒に歩いてきた。

「おはよう、ネオン。相変わらず、今日も元気そうだな」
「あっ、ルイザさん、おはようございます」
「良いところで邪魔が……こほん、おはようございます、ルイザさん」

 ネオンはグッズ作りのプレゼンが中断して、少しばかりホッとする。
 神器持ち出しの日から、ルイザとは距離感が縮んだ気がした。

「お前を見るとあたしも頑張らなきゃ、って思うんだよな」
「そうなんですか? ありがとうございます」

 ネオンは何の気もなくルイザと笑顔を交わすが、その光景を見てモヤる女性がブリジットの他にも二人いた。

((……なんか、仲良くなってない?))

 ベネロープとキアラだ。
 実はこの二人は、ルイザの鍬の顛末についてはすでに知っている。
 あの日の夜。 
 鍬を本国に届けるため領地の保管庫に行ったとき、ネオンとブリジットが家から飛び出すのを見た。
 細切れに聞いた会話から、神器が何者かに持ち出されたとわかった。
 ベネロープとキアラは、互いの存在を感知せぬままこっそりと後をつけたのだ。

((神器の"制裁"がどんな内容かわかるかもしれない……))

 死ぬより苦しいらしいが、いざとなったら自分の魔法や薬で防げると思っていた。
 実際に制裁を見るまでは……。
 巨人に踏み潰されているかのような途方もない魔力のオーラに、ルイザが押し潰されそうなのを見た。
 
(今のボクの魔法では……到底太刀打ちできない……)
(あそこまでとは……わたしの実力とは格が違いすぎます……)

 二人とも、じわりとした汗をかきながら思うことしかできなかった。
 ネオンがあっさりと解除するのを目の当たりにして、さらにレベルの違いを見せつけられた気分だ。
 ルイザはどうやら、ネオンへの感謝を示すため一人で土地を耕そうとしたらしい。
 まさか自分たちと同じ"超大国のスパイ"とは思ってもいないので、(立派な人間だ)と感じた。
 ……という背景がある二人は、今焦っていた。
 ネオンが「帝国に行ってみたい」などと言ったら自国に引き入れるのが難しくなるし、それとは別に女性としても抜け駆けされた気分だ。
 ベネロープとキアラは居ても立ってもいられず、ルイザの前に出る。

「ところでネオン君、ボクの魔法を見せてあげよう」
「畑の耕し方について、ネオンさんに質問があるのですが……」
「お、おい、何だよ。あたしが今話しているだろ」

 ――あ、あの、ちょっ……。

 ネオンが三人に囲まれてわちゃわちゃし出した瞬間、ブリジットが静かに間に入った。
 ネオンはそっと、しかし力強くブリジットの隣に回収される。
 三人が文句を言う間もなく、彼女は左手をスッ……と顔の横に構えた。

「みなさん、これを見てください」
「「そ、それは……!」」

 彼女の薬指に輝く指輪を見た瞬間、ルイザ、ベネロープ、キアラは息を呑んだ。

「ネオン様との結婚指輪でございます。つまり、ネオン様の妻は私。故に、必要以上に近寄らないでください。夫の一番近い場所にいるべきは、つ・ま、なので」
「「……ぐぎぎ」」

 ブリジットの神器を見せつけられ、スパイ三人は黙ることしかできない。
 緊迫した空気に、ネオンは冷や汗をかきながら間に入る。

「ま、まあまあ、みんなちょっと落ち着いて……」
「……ネオン様はこの者たちの味方をするのですか? 愛人は認めませんからね」
「い、いや、そういうわけじゃ……」

 ブリジットの厳しい視線がこちらに向いてしまい、ネオンがさらに冷や汗をかいていると、領地の外から甲高い声が聞こえてきた。
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