弱国の転生王子は三大強国間の飛び地を神器生成スキルで世界最強領地にする~目立ちたくないのに、実は領民は強国のスパイで僕の活躍を国に報告してた

青空あかな

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第33話:国王と双子兄、大事な特権を破壊され、復讐のため飛び地に盗賊団を差し向ける①

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「ククク……今日は楽しみでたまらんな。楽しみ過ぎて、我が輩の顔は笑顔の仮面になってしまったぞ。まさしく、顔の筋肉がお祭り騒ぎだ」
「ええ、俺っちも笑いが止まりません。ははっ、笑い過ぎて死んだらどうしましょうか。そうならないよう、エドワード、つまらないシャレを言ってくれないか?」
「構わないぜ、ミカエル兄さん。それでは……空に浮かぶ雲の鳴き声は何と言うか知ってるかい? それは……モクモクさ!」
「「HAHAHA!」」

 アルバティス王国の"王の間"。
 ネオンの父親たる国王と双子兄は、朝から含み笑いをするばかりだ。
 いよいよ、"特権"を行使する日が来た。
 今か今かと待っていたら、扉が開かれた。
 使用人に引き連れられ、兎耳の獣人が一人入室する。
 "ペルジック・リベル商会"のティアナ。
 国王が圧政を敷いている獣人だ。
 ティアナは玉座の前まで歩くと、サッと膝をついた。

〔お久しぶりでございます、国王陛下、ミカエル王子、エドワード王子〕
「ああ、心底待ちくたびれたわ。今まで退屈の嵐を何度乗り越えたかわからないな。貴様も退屈の航海に出れば、我が輩の気持ちもわかるだろう」

 アルバティス王はニヤニヤとした不躾な笑みを浮かべ、ティアナを見下す。
 今日は"ペルジック・リベル商会"の謁見、及び行商の日。
 立場を利用して、いじめ抜くのが楽しみであった。
 パチンッと指を鳴らすと、使用人が大きな台車を引いてくる。
 床に並べられるのは、王国で採れたいくつものレア作物だ。


<水源ラディッシュ>
 等級:上級
 説明:水属性の魔力を含んだラディッシュ。食べると若干水属性の魔力が回復できるが、少々辛い。


<メガポテト>
 等級:上級
 説明:通常のジャガイモより3倍ほども大きい。育てるには土壌の質が極めて重要。


<閃光パンプキン>
 等級:上級
 説明:種に強い力を加えると閃光を放つかぼちゃ。実は甘いだけ。


 王国では超上級以上の作物は栽培できないし、鉱石などの素材も採掘できない。
 実質、国内最高峰の品々だった。
 アルバティス王は数多のレア作物を前に、得意気な表情でティアナを見る。
 玉座の隣に控える双子兄も似たような顔だ。
 国内で育てられるこれら上級の作物は、全てアルバティス王が管理している。
 誰に卸すかは自分の気持ち次第。
 故に、良い品を手に入れたい商会に強く出ることができたのだ。

「ほら、今回も好きなだけその懐に入れさせてやるぞ。だがな……肝に銘じろ? どれも天井知らずの価値だ。相応の金を用意すること、今ここで覚悟を決めろ」

 アルバティス王は一枚の紙を、ぞんざいにティアナに放り投げる。
 書かれていた金額はどれも、世界的な基準で考えると相場の3倍にあたる価格だ。
 ティアナは硬い表情で紙を見る。
 もっと早く取引を止めたかったが、そういうわけにもいかない。
 国内最大手の商会という立場を考えると、品揃えの良さは重要だ。
 激しい競争の中で、他商会に追い抜かれる可能性がある。
 ただ、売れない作物は腐る。
 利益が出るような価格では高すぎて誰も買わないので、売れば売るほど赤字になる。
 アルバティス王の横暴により、ティアナの商会はだいぶ経営が逼迫していた。
 だが、それも今日で終わると思うと、彼女の心は軽かった。

〔お言葉ですが、国王陛下。"ペルジック・リベル商会"は本日を以て、あなた様との取引は中止いたします〕
「「……は?」」

 ティアナの放った言葉に、アルバティス王も双子兄も気の抜けた声を出す。
 取引中止。
 それは予想外も甚だしい言葉であった。
 しばし呆然としたが、次の瞬間には肩をすくめて話し出した。

「おいおい、何を言い出すかと思ったら……下手な冗談はやめてくれ。エドワードのつまらないギャグよりひどいな。不敬罪で監獄行きにしてしまうほどだ」
〔冗談ではございませんラビ。本日を以て、"ペルジック・リベル商会"は国王陛下との取引を中止させていただきますラビ〕

 ティアナの真剣な眼差しを見て、愚かなアルバティス王はようやく冗談でないとわかった。 同時に、言いようのない強い怒りが湧く。
 
「……貴様ぁ! よくもそんな口が聞けたな! いいのか!? 我が輩がレア作物を卸さなければ、商会の売り上げは急落するぞ! 貴族どもが欲しがる作物を用意できないんだ! 瞬く間に、貴様の商会は業績が悪化するだろうなぁ! 一族に顔見せできるのかぁ!? 自治区にも圧力をかけてやろうかぁ!? ぁあぁあぁあ!?」

 "ペルジック・リベル商会"は、"兎獣人"全体の生活を支えている。
 だから、貴重な品を牛耳る自分たちが上で、こいつらは一生王国の奴隷なのだ……と、アルバティス王も双子兄もその瞬間までは思っていた。

〔問題ございませんラビ。今後、我が商会は"捨てられ飛び地"のネオン様の元で活動いたします。一族も総出で、飛び地に引っ越しいたしますラビ〕
「「……は?」」

 ティアナが淡々と言った言葉に、今度は呆然とする。

((飛び地に引っ越す……?))

 一瞬の後、アルバティス王はハッと我に返った。
 そんなことをされたら、楽しい"特権"が楽しめなくなる。
 すかさず、拒絶の弁を叫びまくった。

「それなら、レア作物をもう卸してやらん! ラディッシュもポテトもかぼちゃも全てだ! 貴様は破滅への道を休息なしに走り抜けることになるんだぞ!」
〔ご心配なく。飛び地では、神話級の作物が大量に育っていますラビから。むしろ、ずっと良い商品を取り揃えることができますラビ〕
「神……話、級……だと?」

 衝撃で言葉が切れる。
 この世で最も位が高く、極めて貴重な等級だ。
 自分は未だ見たことさえなく、王国内では秘術で召喚できる魔神しか存在しない。

(神話級の作物が……飛び地で……?)

 当初、ティアナの話は嘘かと思った。
 だが、彼女が澄んだ瞳のまま、鞄からいくつもの輝く作物を出した瞬間、真だと実感させられた。

〔こちらがみな、"捨てられ飛び地"でネオン様が栽培した神話級の作物でございます〕
「「なっ……!」」

 ティアナの前に置かれた作物が纏うオーラは、今まで見たどんな作物や素材より輝き、首を垂れたくなるほど圧倒的だ。
 アルバティス王は双子兄とともにしばし打ちのめされていたが、すぐに意識を取り戻した。

「……おい、直ちに鑑定魔導具を持ってこい! 一分一秒たりとも無駄にするな! これは極めて重要な事案だ! 共通認識を持て!」

 これはきっと、ティアナが苦し紛れについた嘘に過ぎない。
 そう思って、使用人に鑑定させるが……。

「ほ、本当に神話級だと!?」
〔だから、そう言っていますラビ〕

 正真正銘、神話級だった。
 その事実が示すのは……。

「王国より飛び地が栄えているだとぉ!?」
〔そういうことになりますラビね〕

 怒りで拳が震える。
 現在の王国の国力では、神話級の作物など栽培できるはずもない。
 無能と追い出したはずのネオンにあっさり追い抜かされたことに、途方もない憤りを感じ、先ほどまで、たかが上級の作物で得意げになっていたことが猛烈に恥ずかしくなった
 自分の知らないところで、いったい何が起こっているのか。
 理由は不明だが、ネオンに負け……。

「認めんぞおおおお! 我が輩がネオンに負けたなど、信じられるかああ! おい、ティアナ! お前が飛び地に拠点を移すというなら、商会の品を即刻輸入品扱いにして関税をかけてやる! 10%や20%ではないぞ、50%だ! 我が輩こそ、この王国の絶対権力タリフマンだ!」
〔構いませんラビ。今後は三大超大国に販路を拡大してもいいので〕
「ぐっ……!」
〔もちろん、引っ越しと拠点の移転については、ネオン殿にも一筆書いてもらいましたラビ〕
「なんだと!? 見せろ! あいつが書いたという紙を、我が輩に今すぐ見せろ! この我が輩に!」

 ティアナが懐から紙を取り出すと、アルバティス王は乱暴に奪い取る。
 ネオンの直筆の手紙であり、正式な効力のある文書だった。
 ふるふると手が震える中、ティアナは貴重な作物をさっさと仕舞う。

〔それでは、失礼しますラビ。引っ越しの準備がありますので……〕
「ま、待て! 待たんか! その足を止めろ! こっちを見ろ! だから、足を前に出すなと言っている!」

 アルバティス王は叫ぶが、ティアナは気にせず"王の間"から立ち去ってしまった。
 双子兄とともに、ぽつんと残される。
 
「「ち、父上、どうされるので……?」」

 そう尋ねられた瞬間、アルバティス王は叫んだ。

「……飛び地を襲撃するぞ! 飛び地ともども、ネオンを完全に殺して存在を消してやる! 飛び地に残るは、我が輩が振り下ろした怒りの鉄槌の痕跡だけだ!」
「「そうだそうだ! ネオンを殺しましょう! 我々の勝利の雄叫びを飛び地に轟かせるんです!」」

 さっそく地下の"転送の間"まで行こうとする双子兄を、アルバティス王は止める。

「まぁ、待て。我が輩たちが手を汚すまでもない。わかるか? 汚れ仕事は自分でやるものではないだろう」
「「……と、仰いますと?」」

 ネオンの襲撃と同時に、現在のとある厄介事を解消できるちょうどいい方法があった。
 つくづく、自分は天才だと思う。

「今すぐ、"夜鴉の翼"に連絡しろ! あいつらに襲わせるのだ!」

 その組織の名を聞いた瞬間に、双子兄はニヤ~ッと、不敵な笑みを浮かべる。
 アルバティス王は使用人に指示を出し、来客が来るのを待った。
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