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第49話:ジャンヌの心情
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ジャンヌが地底エルフの主となってから、もう千年以上が過ぎた。
それは同時に、彼女たちが地上から地下に移住してからの時間も千年以上であることを意味する。
元々、現在の"捨てられ飛び地"周囲では、人間同士の小競り合いが多かった。
徐々に大規模な戦争の気配が色濃くなり、地底エルフは自然の洞窟を元に、避難シェルターの建設を始めた。
想定通り戦争は起きてしまい、現在の飛び地は悪質な瘴気で汚染されたのだ。
怒りを感じる暇もなかった。
地底から様子を窺っていたが、戦争の終結までおよそ十年を要した。
人間たちが消えた後、地上に撒かれた瘴気を見て、ジャンヌたち地底エルフは絶望した。
――"浄化は不可能"。
土地を守れなかった悔しさと苦しみは今でも覚えている。
当初は一時的に地底に避難し、毒性が減弱してから地上に戻る算段だった。
ところが、予想に反して瘴気は弱まらなかった。
(まさか、千年も避難し続けるとは思わなかったが……)
地上から持ち込んだ作物や、地底に棲む魔物を捕まえたりして暮らした。
地底エルフは長期間断食することで、魔力の質を高めることができるし、水も地底湖で確保できた。
食糧の問題はなかった。
洞窟の天井部分には魔法で人工の太陽を構築し、少しでも地上と同じ環境になるように努力した。
それでも、ただひたすらに本物の太陽が恋しかった。
仲間と地上に帰ることを誓い合う日々を送る中、ほんの十日ほど前に瘴気の減弱が観測された。
人間の存在は未だ感じられたので、武装して地上に侵攻した。
ようやく、太陽の下で暮らせると思って。
そして……ネオンに出会った。
本人から聞いたが、"捨てられ飛び地"の領主として王国から追放されたらしい。
しかも驚くこと、彼は歴とした王子だった。
ジャンヌはずいぶんと威厳があると思っていたが、それを聞いて納得した。
ネオンは追放されるまで、一度も来たことさえなかったとも言っていた。
それはつまり、地底エルフのように土地に愛着がないということだ。
瘴気に汚染され尽くした土地など見捨て、周辺の豊かな国に亡命してしまえばいいのに。
(じゃが……ネオンは逃げなかった)
国の王子ならば、いくら弱小と言えども悪い待遇ではないはずだ。
監視などもされていないならばなおさらだろう。
そのような状況にも拘わらず、ネオンは懸命に領地の開拓を進めた。
今では、千年前の瘴気に汚染される前より豊かになっている。
(ネオンこそ、妾の太陽なのじゃ)
土地を略奪しようとした自分たちを許し、共に住むことを承諾してくれた。
領主かつ王子でありながら、決して威張ろうともしない。
人格者とは彼のような人物を言うのだろうと、ジャンヌは感じた。
爽やかな風に靡く木々と草花、吹き抜ける青い空、そして力強く輝く太陽。
千年間待ち望んだ光景がここにある。
仲間の地底エルフもみな、喜びの涙が止まらない。
ジャンヌは自分たちの可能性を広げてくれたネオンが、心の中で特別な存在となりつつあった。
『妾は……ネオンともっと仲良くなる!』
そう強く決心した。
まだLIKEの方が強いが、いずれ濃いLOVEとなるのはまたこの先のお話。
それは同時に、彼女たちが地上から地下に移住してからの時間も千年以上であることを意味する。
元々、現在の"捨てられ飛び地"周囲では、人間同士の小競り合いが多かった。
徐々に大規模な戦争の気配が色濃くなり、地底エルフは自然の洞窟を元に、避難シェルターの建設を始めた。
想定通り戦争は起きてしまい、現在の飛び地は悪質な瘴気で汚染されたのだ。
怒りを感じる暇もなかった。
地底から様子を窺っていたが、戦争の終結までおよそ十年を要した。
人間たちが消えた後、地上に撒かれた瘴気を見て、ジャンヌたち地底エルフは絶望した。
――"浄化は不可能"。
土地を守れなかった悔しさと苦しみは今でも覚えている。
当初は一時的に地底に避難し、毒性が減弱してから地上に戻る算段だった。
ところが、予想に反して瘴気は弱まらなかった。
(まさか、千年も避難し続けるとは思わなかったが……)
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地底エルフは長期間断食することで、魔力の質を高めることができるし、水も地底湖で確保できた。
食糧の問題はなかった。
洞窟の天井部分には魔法で人工の太陽を構築し、少しでも地上と同じ環境になるように努力した。
それでも、ただひたすらに本物の太陽が恋しかった。
仲間と地上に帰ることを誓い合う日々を送る中、ほんの十日ほど前に瘴気の減弱が観測された。
人間の存在は未だ感じられたので、武装して地上に侵攻した。
ようやく、太陽の下で暮らせると思って。
そして……ネオンに出会った。
本人から聞いたが、"捨てられ飛び地"の領主として王国から追放されたらしい。
しかも驚くこと、彼は歴とした王子だった。
ジャンヌはずいぶんと威厳があると思っていたが、それを聞いて納得した。
ネオンは追放されるまで、一度も来たことさえなかったとも言っていた。
それはつまり、地底エルフのように土地に愛着がないということだ。
瘴気に汚染され尽くした土地など見捨て、周辺の豊かな国に亡命してしまえばいいのに。
(じゃが……ネオンは逃げなかった)
国の王子ならば、いくら弱小と言えども悪い待遇ではないはずだ。
監視などもされていないならばなおさらだろう。
そのような状況にも拘わらず、ネオンは懸命に領地の開拓を進めた。
今では、千年前の瘴気に汚染される前より豊かになっている。
(ネオンこそ、妾の太陽なのじゃ)
土地を略奪しようとした自分たちを許し、共に住むことを承諾してくれた。
領主かつ王子でありながら、決して威張ろうともしない。
人格者とは彼のような人物を言うのだろうと、ジャンヌは感じた。
爽やかな風に靡く木々と草花、吹き抜ける青い空、そして力強く輝く太陽。
千年間待ち望んだ光景がここにある。
仲間の地底エルフもみな、喜びの涙が止まらない。
ジャンヌは自分たちの可能性を広げてくれたネオンが、心の中で特別な存在となりつつあった。
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