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第50話:キアラの心情
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――"奇跡の薬師"。
それがユリダス皇国における、キアラの二つ名だった。
彼女が調合する薬はほとんど全ての病を治し、余命半年と宣言された皇帝の命を、すでに五年ほど延ばしている。
キアラは国内を放浪する薬師一族の長の娘だ。
彼女が幼少期に作った薬が皇帝に献上されたのを機に、一族は宮殿住まいという破格の定住地及び、宮廷薬師という社会的な地位を手に入れた。
キアラは好待遇を用意してくれた皇帝と、各地で優しく迎えてくれた皇国に感謝している。 国の発展に貢献したい気持ちが強く、"捨てられ飛び地"での任務を命じられたとき、是非にと拝命した。
飛び地で出会ったネオンに近づいたのも、当初は本国の発展のためだった。
世界のパワーバランスを確実に変える少年。
彼を取り入れた国が競争に勝つ。
だが、計画は始まる前に終わりかねなかった。
瘴気病に罹患してしまったのだ。
自分たちを侵した瘴気病は、相当に悪質だと瞬時にわかった。
(志半ばで……死んでしまう……)
そう確信したとき、ネオンが助けてくれた。
<神恵のエリクサー>は、途方もなく高度な薬だった。
自分が作ってきた物は何だったのか、そう思わされるほど……。
良い物を作るには、良い材料が必要。
薬に限った話ではない。
何かを生み出す場合の、不文律とも言える世界の常識。
それを、ネオンはいとも簡単に壊してしまった。
(ただの枯れ葉からあれほどのエリクサーが……できるものなのでしょうか……)
今まで大量の文献を読み勉強を重ねてきたが、そのような生成魔法もスキルも見たことがない。
皇帝の病気さえ、ネオンの生み出した薬で完治した。
本国から報告を受けたとき、手も心も震えが止まらなかった。
国一番の薬師である彼女でさえ、成し遂げられなかった偉業……。
それはキアラに強い衝撃と、自戒の念を与えた。
(わたくしは……まだまだ未熟者です)
ネオンがいなければ、皇帝も自分も仲間たちも確実に死んでいた。
キアラは精進が足りないことを痛感し、より一層の努力を重ねることを誓った。
もう一つ、彼女の心には強い気持ちがある。
(わたくしは……ネオンさんが……好き)
地底エルフのジャンヌに捕らえられた時、ネオンは危険も顧みず守ろうとしてくれた。
一歩間違えば、殺されていたかもしれないのに……。
自分より何歳も幼いのに、一度ならず二度も自分の命を救ってくれた。
すでにキアラの中では、特別な存在になっている。
(いつか……ネオンさんに正体を明かせる日が来ることを願って……)
キアラは大切なネオンを思い、天に祈りを捧げる。
いつの日か、正体を明かし、まっさらな自分で彼と話し、今までの感謝と自分の正直な気持ちを伝えたい。
それがユリダス皇国における、キアラの二つ名だった。
彼女が調合する薬はほとんど全ての病を治し、余命半年と宣言された皇帝の命を、すでに五年ほど延ばしている。
キアラは国内を放浪する薬師一族の長の娘だ。
彼女が幼少期に作った薬が皇帝に献上されたのを機に、一族は宮殿住まいという破格の定住地及び、宮廷薬師という社会的な地位を手に入れた。
キアラは好待遇を用意してくれた皇帝と、各地で優しく迎えてくれた皇国に感謝している。 国の発展に貢献したい気持ちが強く、"捨てられ飛び地"での任務を命じられたとき、是非にと拝命した。
飛び地で出会ったネオンに近づいたのも、当初は本国の発展のためだった。
世界のパワーバランスを確実に変える少年。
彼を取り入れた国が競争に勝つ。
だが、計画は始まる前に終わりかねなかった。
瘴気病に罹患してしまったのだ。
自分たちを侵した瘴気病は、相当に悪質だと瞬時にわかった。
(志半ばで……死んでしまう……)
そう確信したとき、ネオンが助けてくれた。
<神恵のエリクサー>は、途方もなく高度な薬だった。
自分が作ってきた物は何だったのか、そう思わされるほど……。
良い物を作るには、良い材料が必要。
薬に限った話ではない。
何かを生み出す場合の、不文律とも言える世界の常識。
それを、ネオンはいとも簡単に壊してしまった。
(ただの枯れ葉からあれほどのエリクサーが……できるものなのでしょうか……)
今まで大量の文献を読み勉強を重ねてきたが、そのような生成魔法もスキルも見たことがない。
皇帝の病気さえ、ネオンの生み出した薬で完治した。
本国から報告を受けたとき、手も心も震えが止まらなかった。
国一番の薬師である彼女でさえ、成し遂げられなかった偉業……。
それはキアラに強い衝撃と、自戒の念を与えた。
(わたくしは……まだまだ未熟者です)
ネオンがいなければ、皇帝も自分も仲間たちも確実に死んでいた。
キアラは精進が足りないことを痛感し、より一層の努力を重ねることを誓った。
もう一つ、彼女の心には強い気持ちがある。
(わたくしは……ネオンさんが……好き)
地底エルフのジャンヌに捕らえられた時、ネオンは危険も顧みず守ろうとしてくれた。
一歩間違えば、殺されていたかもしれないのに……。
自分より何歳も幼いのに、一度ならず二度も自分の命を救ってくれた。
すでにキアラの中では、特別な存在になっている。
(いつか……ネオンさんに正体を明かせる日が来ることを願って……)
キアラは大切なネオンを思い、天に祈りを捧げる。
いつの日か、正体を明かし、まっさらな自分で彼と話し、今までの感謝と自分の正直な気持ちを伝えたい。
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