48 / 115
第48話:一緒に住みましょう
しおりを挟む
しばらく領地を案内した後、ジャンヌはほぅっ……とため息をついた。
未だ発展を続ける領地を眺めてから、ネオンを真剣な表情で見る。
『ネオンよ。妾はお前を誤解しておった。あれほど強力な瘴気を、こんなに浄化してくれていたんじゃな。地底エルフにとって、土地は命。恩人とも言える人間を殺そうとするなんて、妾たちは大変な愚か者じゃ』
「いえ、もう気にしないでください」
『……ありがとうのぉ。お前は優しい人間じゃ』
ネオンの優しさに心が温かくなった後、ジャンヌは"捨てられ飛び地"の歴史を話し出した。
『あれはたしか……もう千年前じゃった。妾たちは元々、この土地で平和に暮らしていたんじゃよ。じゃが、人間同士の戦争が起きての。ヤツらが撒き散らした瘴気は互いに混じり合い、著しく毒性を増した。いつかまた暮らせることを願って、真下にある地下洞窟に移住したんじゃ』
「そんな歴史があったのですか……」
アルバティス王国や三大超大国に、"捨てられ飛び地"の詳細な歴史は伝わっていない。
正確には、長い年月で情報が風化してしまったのだ。
ジャンヌは悔しげな表情で言葉を続ける。
『妾は……妾たちは……また太陽の下で暮らしたかっただけなんじゃ……。それなのに、妾は話を聞こうともせず、お主らを襲ってしまった。謝っても謝りきれん。そこの薬師的な女も怖い思いをさせて悪かったな。どうか許してくれ』
「いえ、わたくしは大丈夫です。怪我もしていませんし。むしろ、怪我をしないように加減してくれたのですよね」
ジャンヌたち地底エルフは、本当は優しい。
キアラも含め、この場の誰もがそう思っていた。
ネオンはブリジットと顔を見合わせる。
互いに無言で頷き合うと、ジャンヌに手を差し伸べた。
「もしよかったら……この土地で僕たちと一緒に暮らしませんか?
ネオンの言葉は、ジャンヌの心にすとんと落ちた。
(妾たちも……ここで……? この緑豊かな土地で、太陽の下で暮らせる……?)
周りを見渡すと、木々や草花が爽やかな風に揺れ、空には白くて力強い太陽が昇る。
目に映るどれもが、彼女と地底エルフたちの心に明るい光となって差し込まれた。
(地底に退避する前……いや、千年前よりずっと豊かになっている。まさしく、地底で思い描いていた……ユートピアそのものじゃ)
喜びがじわじわと、彼女の胸にあふれる。
ふと、ネオンは何かに気づいたように言った。
「……あっ、すみません。元々はジャンヌさんたちの土地でしたよね。だったら、領主も……」
『いや、結局のところ、妾たちは瘴気の浄化から逃げたんじゃ。懸命に努力すれば、対策が見つかったかもしれんのに。じゃから、この土地は……豊かにしてくれたこの土地は、ネオンが統治するべきなんじゃ。妾たちも住まわせてくれたら……嬉しいのぉ』
「ジャンヌさん……」
ネオンはこほんっと軽く咳払いし、右手をそっと差し出した。
「では、改めて……僕たちと一緒に住みませんか?」
ジャンヌは握手仕返すと、仲間の地底エルフたちとともに笑顔で叫んだ。
『『絶対住むー!』』
「ありがとうございます! これからよろしくお願いしますね!」
『こちらこそじゃー!』
わあああ!という大歓声が領地を包む。
地底エルフはみな笑顔で互いに喜びを分かち合う。
もちろん、ルイザやベネロープ、そしてキアラたち元からいる領民もそうだ。
ネオンは温かい目で彼女らを見守る中、隣を見るとブリジットの冷たい視線に気づいてしまった。
研ぎ澄まされたナイフのような視線。
――え……。もしかして、本当は嫌だった?
ごくりと唾を飲み込み、彼女に尋ねる。
「ど、どうしたの……そんなに凍てついた目でジャンヌさんたちを見て……。視線だけで切れちゃいそうだよ」
「……なぜ、こうも女性が多く集まるのでしょうかね」
「え! な、なんでだろうねぇ。僕には何とも……」
「ネオン様の魅力が世界に伝わり、領地が発展するのは私の目的でございますが、女性が増え過ぎるのはあまり好ましくないのであってですね……」
ネオンは不機嫌なブリジットを懸命に宥める。
何はともあれ、ジャンヌたち地底エルフが"捨てられ飛び地"の新たな領民となった。
未だ発展を続ける領地を眺めてから、ネオンを真剣な表情で見る。
『ネオンよ。妾はお前を誤解しておった。あれほど強力な瘴気を、こんなに浄化してくれていたんじゃな。地底エルフにとって、土地は命。恩人とも言える人間を殺そうとするなんて、妾たちは大変な愚か者じゃ』
「いえ、もう気にしないでください」
『……ありがとうのぉ。お前は優しい人間じゃ』
ネオンの優しさに心が温かくなった後、ジャンヌは"捨てられ飛び地"の歴史を話し出した。
『あれはたしか……もう千年前じゃった。妾たちは元々、この土地で平和に暮らしていたんじゃよ。じゃが、人間同士の戦争が起きての。ヤツらが撒き散らした瘴気は互いに混じり合い、著しく毒性を増した。いつかまた暮らせることを願って、真下にある地下洞窟に移住したんじゃ』
「そんな歴史があったのですか……」
アルバティス王国や三大超大国に、"捨てられ飛び地"の詳細な歴史は伝わっていない。
正確には、長い年月で情報が風化してしまったのだ。
ジャンヌは悔しげな表情で言葉を続ける。
『妾は……妾たちは……また太陽の下で暮らしたかっただけなんじゃ……。それなのに、妾は話を聞こうともせず、お主らを襲ってしまった。謝っても謝りきれん。そこの薬師的な女も怖い思いをさせて悪かったな。どうか許してくれ』
「いえ、わたくしは大丈夫です。怪我もしていませんし。むしろ、怪我をしないように加減してくれたのですよね」
ジャンヌたち地底エルフは、本当は優しい。
キアラも含め、この場の誰もがそう思っていた。
ネオンはブリジットと顔を見合わせる。
互いに無言で頷き合うと、ジャンヌに手を差し伸べた。
「もしよかったら……この土地で僕たちと一緒に暮らしませんか?
ネオンの言葉は、ジャンヌの心にすとんと落ちた。
(妾たちも……ここで……? この緑豊かな土地で、太陽の下で暮らせる……?)
周りを見渡すと、木々や草花が爽やかな風に揺れ、空には白くて力強い太陽が昇る。
目に映るどれもが、彼女と地底エルフたちの心に明るい光となって差し込まれた。
(地底に退避する前……いや、千年前よりずっと豊かになっている。まさしく、地底で思い描いていた……ユートピアそのものじゃ)
喜びがじわじわと、彼女の胸にあふれる。
ふと、ネオンは何かに気づいたように言った。
「……あっ、すみません。元々はジャンヌさんたちの土地でしたよね。だったら、領主も……」
『いや、結局のところ、妾たちは瘴気の浄化から逃げたんじゃ。懸命に努力すれば、対策が見つかったかもしれんのに。じゃから、この土地は……豊かにしてくれたこの土地は、ネオンが統治するべきなんじゃ。妾たちも住まわせてくれたら……嬉しいのぉ』
「ジャンヌさん……」
ネオンはこほんっと軽く咳払いし、右手をそっと差し出した。
「では、改めて……僕たちと一緒に住みませんか?」
ジャンヌは握手仕返すと、仲間の地底エルフたちとともに笑顔で叫んだ。
『『絶対住むー!』』
「ありがとうございます! これからよろしくお願いしますね!」
『こちらこそじゃー!』
わあああ!という大歓声が領地を包む。
地底エルフはみな笑顔で互いに喜びを分かち合う。
もちろん、ルイザやベネロープ、そしてキアラたち元からいる領民もそうだ。
ネオンは温かい目で彼女らを見守る中、隣を見るとブリジットの冷たい視線に気づいてしまった。
研ぎ澄まされたナイフのような視線。
――え……。もしかして、本当は嫌だった?
ごくりと唾を飲み込み、彼女に尋ねる。
「ど、どうしたの……そんなに凍てついた目でジャンヌさんたちを見て……。視線だけで切れちゃいそうだよ」
「……なぜ、こうも女性が多く集まるのでしょうかね」
「え! な、なんでだろうねぇ。僕には何とも……」
「ネオン様の魅力が世界に伝わり、領地が発展するのは私の目的でございますが、女性が増え過ぎるのはあまり好ましくないのであってですね……」
ネオンは不機嫌なブリジットを懸命に宥める。
何はともあれ、ジャンヌたち地底エルフが"捨てられ飛び地"の新たな領民となった。
63
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
転生先は上位貴族で土属性のスキルを手に入れ雑魚扱いだったものの職業は最強だった英雄異世界転生譚
熊虎屋
ファンタジー
現世で一度死んでしまったバスケットボール最強中学生の主人公「神崎 凪」は異世界転生をして上位貴族となったが魔法が土属性というハズレ属性に。
しかし職業は最強!?
自分なりの生活を楽しもうとするがいつの間にか世界の英雄に!?
ハズレ属性と最強の職業で英雄となった異世界転生譚。
Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
戦国転生・内政英雄譚 ― 豊臣秀長の息子として天下を創る
丸三(まるぞう)
ファンタジー
戦国時代に転生した先は、豊臣秀吉の弟にして名宰相――豊臣秀長の息子だった。
現代では中世近世史を研究する大学講師。
史実では、秀長は早逝し、豊臣政権は崩壊、徳川の時代と鎖国が訪れる。
ならば変える。
剣でも戦でもない。
政治と制度、国家設計によって。
秀長を生かし、秀吉を支え、徳川の台頭を防ぎ、
戦国の終わりを「戦勝」ではなく「国家の完成」にする。
これは、武将ではなく制度設計者として天下を取る男の物語。
戦国転生×内政改革×豊臣政権完成譚。
(2月15日記)
連載をより良い形で続けるため、更新頻度を週5回とさせていただきます。
一話ごとの完成度を高めてお届けしますので、今後ともよろしくお願いいたします。
(当面、月、水、金、土、日の更新)
【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】
【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】
~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~
ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。
学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。
何か実力を隠す特別な理由があるのか。
いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。
そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。
貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。
オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。
世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな!
※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる