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第75話:超大国たちの反応5③
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~ユリダス皇国の場合~
帝国と連邦が"捨てられ飛び地"訪問の準備を進める中、皇国もまた同じように諸々の準備を進めていた。
皇帝のバルトラスとその孫娘ラヴィニアは、宮殿の一角にある準備室にいる。
目の前に鎮座する黒檀の高価なロングテーブルには、数え切れないほどの宝物が並ぶ。
大作曲家エーリヒの交響曲第七番の初版本、古代遺跡から発掘された神話時代を記す壁画、種々の宝石で彩られた特製のバングルなどなど……。
いずれも、国を代表する財宝たちだ。
国内外から大金を積まれての譲渡依頼は、今まで何回断ってきたかわからない。
ただ、ネオンのためならば譲ってもよかった……いや、譲りたかった。
部下達には明朝出発することを伝え、バルトラスとラヴィニアは"皇帝の間"に戻る。
玉座の奥の壁に飾られた国王と王妃の絵を前に、二人は静かに佇む。
「……この子らも一緒に行けたらよかったんじゃがな……」
「うん……」
ラヴィニアの両親は何年も前に事故死していた。
他に兄妹もいないので、年老いたバルトラスしか身内がいない。
だから、早く好きな人が見つかって、互いに支え合ってほしいと思っていた。
ラヴィニアは意を決した表情で話す。
「お爺様……将来結婚するなら……ネオンがいい……」
「おおっ!」
孫娘の言葉に、祖父は歓喜の声を上げる。
まだ十歳だが、ゆくゆくは国を導いていかねばならない。
その空気を感じ取ってか、国内の有力貴族からも少しずつ婚約の話が来ている。
数多くの候補者と比べても、ネオンは間違いなく最もよい婚約相手であった。
バルトラスは大事な孫娘の結婚が、嬉しくも寂しい。
それでも、喜びを伝えるため拳を大きく突き上げた。
「ネオン少年と結婚じゃー! 二人で幸せになるんじゃよー!」
「ありがとう、お爺様……!」
ユリダス皇国においても、ネオンはラヴィニアの夫になってしまうのであった。
□□□
次の日の早朝。
宮殿の前には、馬車の一団が集合していた。
ネオンへの土産と護衛部隊の集団だ。
みな、"捨てられ飛び地"のことを聞いて、興味が大変に惹かれている。
早くこの目で確かめたくてしょうがなかった。
バルトラスは士気の高さを感じながら、彼らの前に立つ。
腹に力を込め、老人とは思えないほどの良く通る声で話し出す。
「……いよいよ、アルバティス領"捨てられ飛び地"に、我らが参上する日が来た。瘴気にまみれた土地を必死に開拓するネオン少年に敬意を表し、感謝の意を直接伝えたい。みなにも、この旅は全力で取り組んでほしい」
「「我が全身全霊を恩君に!」」
重い銀色の車体に金色の装飾は、皇族の専用馬車であることを示す。
ユリダス皇国で、最も格式の高い車輌であった。
椅子がふかふかのキャビンで、バルトラスは明るい声で宣言する。
「結婚相手が見つかってよかったのぉ。これでワシも安心じゃ」
「待ってて、ネオン……私の……未来の旦那様……」
これまた皇国の馬車も、ネオンが待つ"捨てられ飛び地"へとひた走る。
◆◆◆
エルストメルガ帝国、カカフ連邦、ユリダス皇国。
世界を代表する三大超大国は、いずれもネオンを引き込みに動き出し、飛び地に伝令の特別な従魔を放った。
彼らが同時に動き出すのは、長い歴史を見ても初めての事象である。
各国家元首の頭の中はネオンのことでいっぱいであり、娘たちの頭の中もネオンのことでいっぱいだ。
かくして、各国家元首とその娘たちは、まったく同じタイミングで"捨てられ飛び地"を訪れるのであった。
帝国と連邦が"捨てられ飛び地"訪問の準備を進める中、皇国もまた同じように諸々の準備を進めていた。
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目の前に鎮座する黒檀の高価なロングテーブルには、数え切れないほどの宝物が並ぶ。
大作曲家エーリヒの交響曲第七番の初版本、古代遺跡から発掘された神話時代を記す壁画、種々の宝石で彩られた特製のバングルなどなど……。
いずれも、国を代表する財宝たちだ。
国内外から大金を積まれての譲渡依頼は、今まで何回断ってきたかわからない。
ただ、ネオンのためならば譲ってもよかった……いや、譲りたかった。
部下達には明朝出発することを伝え、バルトラスとラヴィニアは"皇帝の間"に戻る。
玉座の奥の壁に飾られた国王と王妃の絵を前に、二人は静かに佇む。
「……この子らも一緒に行けたらよかったんじゃがな……」
「うん……」
ラヴィニアの両親は何年も前に事故死していた。
他に兄妹もいないので、年老いたバルトラスしか身内がいない。
だから、早く好きな人が見つかって、互いに支え合ってほしいと思っていた。
ラヴィニアは意を決した表情で話す。
「お爺様……将来結婚するなら……ネオンがいい……」
「おおっ!」
孫娘の言葉に、祖父は歓喜の声を上げる。
まだ十歳だが、ゆくゆくは国を導いていかねばならない。
その空気を感じ取ってか、国内の有力貴族からも少しずつ婚約の話が来ている。
数多くの候補者と比べても、ネオンは間違いなく最もよい婚約相手であった。
バルトラスは大事な孫娘の結婚が、嬉しくも寂しい。
それでも、喜びを伝えるため拳を大きく突き上げた。
「ネオン少年と結婚じゃー! 二人で幸せになるんじゃよー!」
「ありがとう、お爺様……!」
ユリダス皇国においても、ネオンはラヴィニアの夫になってしまうのであった。
□□□
次の日の早朝。
宮殿の前には、馬車の一団が集合していた。
ネオンへの土産と護衛部隊の集団だ。
みな、"捨てられ飛び地"のことを聞いて、興味が大変に惹かれている。
早くこの目で確かめたくてしょうがなかった。
バルトラスは士気の高さを感じながら、彼らの前に立つ。
腹に力を込め、老人とは思えないほどの良く通る声で話し出す。
「……いよいよ、アルバティス領"捨てられ飛び地"に、我らが参上する日が来た。瘴気にまみれた土地を必死に開拓するネオン少年に敬意を表し、感謝の意を直接伝えたい。みなにも、この旅は全力で取り組んでほしい」
「「我が全身全霊を恩君に!」」
重い銀色の車体に金色の装飾は、皇族の専用馬車であることを示す。
ユリダス皇国で、最も格式の高い車輌であった。
椅子がふかふかのキャビンで、バルトラスは明るい声で宣言する。
「結婚相手が見つかってよかったのぉ。これでワシも安心じゃ」
「待ってて、ネオン……私の……未来の旦那様……」
これまた皇国の馬車も、ネオンが待つ"捨てられ飛び地"へとひた走る。
◆◆◆
エルストメルガ帝国、カカフ連邦、ユリダス皇国。
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彼らが同時に動き出すのは、長い歴史を見ても初めての事象である。
各国家元首の頭の中はネオンのことでいっぱいであり、娘たちの頭の中もネオンのことでいっぱいだ。
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