無能テイマーと追放されたが、無生物をテイムしたら擬人化した世界最強のヒロインたちに愛されてるので幸せです

青空あかな

文字の大きさ
7 / 41

第7話:オークがいない

しおりを挟む
『ゴブッ!』
「うおっ、ゴブリンだ!」

 ダンジョンに入るや否や、ゴブリンが飛び出してきた。
 こいつもスライムと同じ最低ランクのモンスターだ。
 背丈だって俺の膝くらいまでしかない。
 しかし、手に持った太い棍棒は叩かれたら痛そうだ。
 どうせなら小枝とか持っていてほしいな。

〔マスター、私に魔力を!〕
「よ、よし!」

 コシーを胸ポケットから出し魔力を注ぐ。
 あっという間に俺とほぼ同じ大きさまで巨大化した。

〔マスターには指一本触れさせません〕
『ギャッ!』

 コシーが飛び出し、すぐさま切り倒してくれた。

〔おケガはありませんか?〕
「うん、大丈夫だよ。ありがとう、コシー」

 お礼を言うと同時に俺は気づいた。

 ――コシーに任せっきりではダメだ。俺も頑張らないと。

『『ゴブブッ!』』

 決心したとき、ダンジョンの奥から次々とゴブリンが現れた。
 全部で3匹だ。
 きっと先ほどの仲間だろう。
 こいつらは群れで行動することが多いからな。

「クソッ、一匹倒すとどんどん出てくるな」
〔手引書に書いてあったとおりですね。マスターは少し休んでいてください。今すぐ私が……〕
「いや、ちょっと待ってkれ!」

 俺はコシーの前に出て、ゴブリンを正面から見据える。
 今の俺は丸腰ではない。
 実はグレートウルフの素材を売った金で、Bランクの上等な剣を買っておいたのだ。

〔マ、マスター?〕
「こいつらは俺が倒すよ!」

 腰に下げている剣をスラリと抜いた。
 ずっしりと剣の重みを感じる。

〔いえ、マスターのお手をわずらわせなくても私が倒しますが……〕
「いや、俺がやる。コシー、俺も強くなりたいんだよ」

 いつまでも守られていては、俺は弱いアイトのままだ。
 いくらテイムができても、俺だってモンスターを倒せるようにならないといけない。

〔マスター……なんて素晴らしいのでしょうか。わかりました、何かあったら私もすぐ戦いますから〕

 そう言うと、コシーは俺から少し離れた。
 俺はジリジリと慎重にゴブリンたちへ近寄る。
 しっかりした剣を持っているので、敵も警戒しているようだ。
 スライムの時とは一味違うぞ。

「来るならこい! 返り討ちにしてやる!」
『ゴブ!』

 ゴブリンの一体が勢いよく飛びかかってきた。
 棍棒で殴るつもりだ。
 スピードはそこそこあるものの軌道は単調で、よく見たら十分に躱せる。
 数歩引いて棍棒の一撃を避け、ゴブリンの首目がけて思いっきり剣を振り下ろした。

『ギャアッ!』

 ゴブリンの首がゴトンと地面に落ちる。
 初めてモンスターを倒せた。
 さすがはBランクの剣、切れ味抜群だ。
 俺みたいな半人前でも当たればなんとかなる。

「や、やった! 倒した!」
〔お見事です、マスター!〕

 コシーはパチパチと拍手してくれる。
 そういえば、今まで装備品を買う余裕なんてなかったな。
 ボーランたちだけで立派な装備を揃えて、俺にお金は回ってこなかった。
 買えたのはせいぜい安い衣服くらいだ。

『ゴブブッ!』

 喜びもつかの間、すぐに2匹目が飛びかかってきた。
 今度もサッと攻撃をかわし、剣で勢いよく斬りつけた。
 あっさりと2匹目のゴブリンも地面に崩れ落ちる。

「……よし!」

 俺は確かな手ごたえを感じる。
 低ランクであれば、俺でもモンスターを倒せるのだ。

〔マスターは相手の動きが良く見えていますね。素晴らしいです〕

 ボーランたちは俺を守ろうとはしなかった。
 だから、攻撃を躱したり死角に入る立ち回りは、自然とできるようになっていた。
 それが今になって活かされているのかもしれないな。

『……キィィッ!』

 勝ち目がないと感じたのだろう。
 最後のゴブリンは逃げてしまった。
 無事、勝利して一安心する。

「どうにか勝ててホッとしたよ」
〔マスターならそのうち、どんな敵でも倒せるようになりますよ〕

 俺は魔法も素晴らしい剣術も使えない。
 しかしコシーの言うように、訓練していけば少しずつ強くなれるはずだ。

「この調子でぐんぐん進むか」
〔はい!〕

 俺たちはダンジョンの地下に進む。
 コシーに出会えて、俺は自信を持てるようになった。

 ――彼女には感謝しないといけないな。

 コシーへの感謝を胸に歩を進める。
 “稲光の大迷宮”は全部で七層だ。
 ゴブリン以外のモンスターに遭遇することはなく、小一時間も歩くと第四層に着いた。

「まだオークたちは出てこないね」
〔もしかしたら、下層にたくさんいるのかもしれません〕
「乱戦になると苦労しそうだ。気をつけないと」

 未だ、肝心のオークは一匹もいない。
 やけに静かなダンジョンは不気味で、歩くにつれて緊張感が増した。
 歩きながらコシーが俺に尋ねる。

〔廃墟になったダンジョンに、モンスターが棲みつくことは良くあるのでしょうか?〕
「だいたいは入り口付近で、棲み処を作ることが多いみたいだよ。下層は前の主の痕跡があるから、そもそも近寄らないとかなんとか言われているけどね」
〔なるほど……。どうでしょうか、そろそろダンジョンのテイムを試してみては〕
「そうだね、ちょっとやってみようか」

 俺は壁に手をあて魔力を込める。
 ぐぐぐ……。
 数分魔力を込めてみたが、全く変化がなかった。

「……やっぱり、何も起きないよ。ダンジョンをテイムするなんて、さすがに出来ないんじゃないのかな?」
 
 コシーをテイムした時はただの小石だった。
 ダンジョンなんて大きな物は難しいのだろう。

〔おかしいですねぇ、とりあえずもっと下層まで行ってみましょう。下に行くほど、ダンジョンの魔力も濃くなりますから。もしかしたら、ダンジョンの核に直接魔力を込める必要があるのかもしれません〕
「なるほど……あり得る」

 ダンジョンのテイムは別に考えるとして、まずはオークを見つけないといけない。
 周囲への警戒を続けながら、俺たちはさらに下層へと進んでいった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

魔力ゼロで出来損ないと追放された俺、前世の物理学知識を魔法代わりに使ったら、天才ドワーフや魔王に懐かれて最強になっていた

黒崎隼人
ファンタジー
「お前は我が家の恥だ」――。 名門貴族の三男アレンは、魔力を持たずに生まれたというだけで家族に虐げられ、18歳の誕生日にすべてを奪われ追放された。 絶望の中、彼が死の淵で思い出したのは、物理学者として生きた前世の記憶。そして覚醒したのは、魔法とは全く異なる、世界の理そのものを操る力――【概念置換(コンセプト・シフト)】。 運動エネルギーの法則【E = 1/2mv²】で、小石は音速の弾丸と化す。 熱力学第二法則で、敵軍は絶対零度の世界に沈む。 そして、相対性理論【E = mc²】は、神をも打ち砕く一撃となる。 これは、魔力ゼロの少年が、科学という名の「本当の魔法」で理不尽な運命を覆し、心優しき仲間たちと共に、偽りの正義に支配された世界の真実を解き明かす物語。 「君の信じる常識は、本当に正しいのか?」 知的好奇心が、あなたの胸を熱くする。新時代のサイエンス・ファンタジーが、今、幕を開ける。

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜

霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!! 「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」 回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。 フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。 しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを…… 途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。 フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。 フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった…… これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である! (160話で完結予定) 元タイトル 「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」

レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない

あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

竜騎士の俺は勇者達によって無能者とされて王国から追放されました、俺にこんな事をしてきた勇者達はしっかりお返しをしてやります

しまうま弁当
ファンタジー
ホルキス王家に仕えていた竜騎士のジャンはある日大勇者クレシーと大賢者ラズバーによって追放を言い渡されたのだった。 納得できないジャンは必死に勇者クレシーに訴えたが、ジャンの意見は聞き入れられずにそのまま国外追放となってしまう。 ジャンは必ずクレシーとラズバーにこのお返しをすると誓ったのだった。 そしてジャンは国外にでるために国境の町カリーナに向かったのだが、国境の町カリーナが攻撃されてジャンも巻き込まれてしまったのだった。 竜騎士ジャンの無双活劇が今始まります。

【薬師向けスキルで世界最強!】追放された闘神の息子は、戦闘能力マイナスのゴミスキル《植物王》を究極進化させて史上最強の英雄に成り上がる!

こはるんるん
ファンタジー
「アッシュ、お前には完全に失望した。もう俺の跡目を継ぐ資格は無い。追放だ!」  主人公アッシュは、世界最強の冒険者ギルド【神喰らう蛇】のギルドマスターの息子として活躍していた。しかし、筋力のステータスが80%も低下する外れスキル【植物王(ドルイドキング)】に覚醒したことから、理不尽にも父親から追放を宣言される。  しかし、アッシュは襲われていたエルフの王女を助けたことから、史上最強の武器【世界樹の剣】を手に入れる。この剣は天界にある世界樹から作られた武器であり、『植物を支配する神スキル』【植物王】を持つアッシュにしか使いこなすことができなかった。 「エルフの王女コレットは、掟により、こ、これよりアッシュ様のつ、つつつ、妻として、お仕えさせていただきます。どうかエルフ王となり、王家にアッシュ様の血を取り入れる栄誉をお与えください!」  さらにエルフの王女から結婚して欲しい、エルフ王になって欲しいと追いかけまわされ、エルフ王国の内乱を治めることになる。さらには神獣フェンリルから忠誠を誓われる。  そんな彼の前には、父親やかつての仲間が敵として立ちはだかる。(だが【神喰らう蛇】はやがてアッシュに敗れて、あえなく没落する)  かくして、後に闘神と呼ばれることになる少年の戦いが幕を開けた……!

処理中です...