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第九十七話 エンサの町【海の幸を料理しよう】
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カイトさんからはブラックシュリの他にもウニ、いか、タコも頂いた。
どうやらこれらも食べる習慣が無いようだった。
怪訝な顔をするカイトさんとその仲間達を見なかったことにして、私は思いかげず手に入れた海の幸に笑顔が零れるのを抑えることが出来なかった。
カイトさんの作業が終わると、早速カイトさんの友人が営業しているというレストランを案内して貰った。
「港街レストラン」というそのまんまの名称のレストランに辿り着くと、ガッシリとした体格の男性がニコニコ笑顔で私達を迎えてくれた。
カイトさんが言うには今日は丁度レストランが休みらしく、快くレストランの厨房を使わせて貰えることになったそうだ。
折角のお休みに申し訳ないなぁと思っていたら、
「カイトが厨房を貸してくれって言うからその理由を聞いたら、今までに使ってなかった材料で料理を作ってくれるって言うじゃないか。すごく楽しみにして待っていたよ。あっ、俺の名前はピエトロ、よろしく頼むよ」
と言う感じで何かこちらが引きそうな程キラキラした瞳を向けられた。
「カリンです。今日は厨房を貸して頂けるそうでありがとうございます」
私はピエトロさんにお礼を言った。
ピエトロさんはカイトさんと同じ位の年で、何と言っても髪色と同じ焦茶色の口髭が印象的だった。
まるで付けひげの様だなぁと思ったのは内緒だ。
厨房に案内されると早速調理を始めよう。
と思ったら、
「ああ、よかったぁ、まだ始まっていないわね」
という声と共に現れた栗色の髪をお団子にしたスレンダーな女性が現れた。
20代後半くらいだろうか?
明るい緑色の瞳が好奇心に溢れている。
「おい、チビどもは?」
「お義母さん達にお願いしてきたわ。だって珍しい料理を作ってくれるんでしょ? こんな機会滅多にないからね」
「そうか、ああ、この子が珍しい料理を作ってくれる嬢ちゃんだ」
「あっ、ごめんなさいね突然。私はこの人の妻のテレサ、この人と一緒にこのレストランを切り盛りしているのよ。よろしくね。それにしても貴女が未知の料理を作ってくれるの? 若いのに料理が出来るなんて凄いのね」
「カリンです。よろしくお願いします」
ピエトロさんがテレサさんにチビどもって言っていたことを聞くと、もしかしてお二人にはお子さんがいるのかしら? しかも二人以上……
ならば子供も好きなあの料理を作ろうかしら……
そう、海老フライだ。
ブラックシュリは前世で言う車海老と同じものの様なのできっと美味しくできると思う。
私が予めお願いしていたとおり、調理台にはこれから調理するための材料が並んでいる。
先ずはタライに入ったブラックシュリを取り出した。
テレサさんが
「うぇぇぇっ……」
と顔を顰めていたけど、見た目が気持ち悪いのは同感出来るので咎められない。
ブラックシュリの殻をむいてバッドの上に並べていく。
全て殻をむいたら、まな板の上に置いて塩と片栗粉をまぶして揉み込み、水洗いする。
この下処理をしておかないと臭みが残ってしまうので重要な作業なのだ。
次に腹側に切り込みを入れ、真っ直ぐにして形を整える。
ああ、そうそう、尻尾の先に切り込みを入れて水分を取って置くのも忘れてはいけない。
これをしないと油が跳ねる原因となるのだ。
ここまで出来たら、塩胡椒をして少し時間を置く。
時間を置くことによって余計な水分が出てぷりぷりとした食感になるのだ。
私がやる作業を興味津々で食い入るように見ているカイトさん、ピエトロさん、テレサさん。
「へぇー、殻を取ってたくさんの足が無くなると何だか美味しそうに見えるわねぇ」
「そうでしょ? でも美味しそうじゃなくて、本当に美味しいんですよ。このまま少し時間を置くのでその間にタルタルソースを作りますね」
「タルタルソース?」
「はい、海老フライに付けて食べるととても美味しいのです」
「海老フライ?」
「はい、今から作る料理の名前です」
三人はそれぞれ質問をしてくるので私はそれに答えながら作業を進めた。
定番のタルタルソースはピクルスを使うが、今は無いのでキュウリ……に似た野菜に塩をまぶして水分を取る。
タマネギはみじん切りにして水に漬けておき、その間にゆで卵を作り細かくする。
以前作っておいたマヨネーズをマジックバッグから取りだし、キュウリ、タマネギ、ゆで卵を入れて混ぜる。
これでタルタルソースが完成だ。
「その白いソースは何だ?」
ピエトロさんの質問に、そう言えばこの世界にはマヨネーズが無かったことを思いだした。
「これは、マヨネーズと言って、食物油、酢、卵で作ったソースです。サラダにかけたり、料理に入れたり色々使えるんですよ」
「ほう、そんなものがあるのか? 少し味を見させて貰っていいかい?」
私はピエトロさんに、躊躇無くマヨネーズを差し出した。
一口味見をすると固まるピエトロさん。
「これは! 初めて食べたが何て美味いんだ!」
ピエトロさんの簡単な言葉に、カイトさんとテレサさんも続けて味見を所望した。
二人とも口に入れた途端固まった。
やはり、この世界でもマヨネーズの美味しさが分かるみたいだ。
下処理が済んだブラックシュリに小麦粉、卵。パン粉の順に衣をつけたら油で狐色になるまでカラッと揚げていく。
さくさくの海老フライならぬブラックシュリフライが出来上がった。
タコはカルパッチョに、ウニはそのまま半分に割ってお醤油をかけて、イカは姿焼きにしてみた。
料理が出来上がると、三人……と一匹は目を輝かせていく。
「ほぅ、見た目も匂いも美味そうだな」
ピエトロさんが感嘆の声をあげた。
「でしょう? 本当に美味しいから是非食べて見て下さい」
「ああ、もちろん頂くよ。でも俺も自慢のスープを披露しようとしよう。この店でも評判なんだ。直ぐ出来るからちょっと待ってくれよ」
そう言ってピエトロさんが棚から前世でもお馴染みの食材を取りだした。
「!!!!」
ピエトロさんが右手に持った物を指さしながらついつい声にならない声をあげた。
なんということでしょう。
魚を半身状にした茶色の物体。
どう見ても鰹節にしか見えない。
「ん? カリン、これが気になるのかい? これは俺が開発したスープの素だ。これを削ってスープを作ると美味しくできるんだ。日持ちするようにカツオという魚を燻して乾燥させたものなんだ」
ピエトロさんの説明で紛れもない鰹節だと証明された。
え? スープってもしかして鰹だしのスープ?
それにしても鰹節を開発するなんてピエトロさんってば結構凄い人なんだと私は尊敬の眼差しを向けたのだった。
どうやらこれらも食べる習慣が無いようだった。
怪訝な顔をするカイトさんとその仲間達を見なかったことにして、私は思いかげず手に入れた海の幸に笑顔が零れるのを抑えることが出来なかった。
カイトさんの作業が終わると、早速カイトさんの友人が営業しているというレストランを案内して貰った。
「港街レストラン」というそのまんまの名称のレストランに辿り着くと、ガッシリとした体格の男性がニコニコ笑顔で私達を迎えてくれた。
カイトさんが言うには今日は丁度レストランが休みらしく、快くレストランの厨房を使わせて貰えることになったそうだ。
折角のお休みに申し訳ないなぁと思っていたら、
「カイトが厨房を貸してくれって言うからその理由を聞いたら、今までに使ってなかった材料で料理を作ってくれるって言うじゃないか。すごく楽しみにして待っていたよ。あっ、俺の名前はピエトロ、よろしく頼むよ」
と言う感じで何かこちらが引きそうな程キラキラした瞳を向けられた。
「カリンです。今日は厨房を貸して頂けるそうでありがとうございます」
私はピエトロさんにお礼を言った。
ピエトロさんはカイトさんと同じ位の年で、何と言っても髪色と同じ焦茶色の口髭が印象的だった。
まるで付けひげの様だなぁと思ったのは内緒だ。
厨房に案内されると早速調理を始めよう。
と思ったら、
「ああ、よかったぁ、まだ始まっていないわね」
という声と共に現れた栗色の髪をお団子にしたスレンダーな女性が現れた。
20代後半くらいだろうか?
明るい緑色の瞳が好奇心に溢れている。
「おい、チビどもは?」
「お義母さん達にお願いしてきたわ。だって珍しい料理を作ってくれるんでしょ? こんな機会滅多にないからね」
「そうか、ああ、この子が珍しい料理を作ってくれる嬢ちゃんだ」
「あっ、ごめんなさいね突然。私はこの人の妻のテレサ、この人と一緒にこのレストランを切り盛りしているのよ。よろしくね。それにしても貴女が未知の料理を作ってくれるの? 若いのに料理が出来るなんて凄いのね」
「カリンです。よろしくお願いします」
ピエトロさんがテレサさんにチビどもって言っていたことを聞くと、もしかしてお二人にはお子さんがいるのかしら? しかも二人以上……
ならば子供も好きなあの料理を作ろうかしら……
そう、海老フライだ。
ブラックシュリは前世で言う車海老と同じものの様なのできっと美味しくできると思う。
私が予めお願いしていたとおり、調理台にはこれから調理するための材料が並んでいる。
先ずはタライに入ったブラックシュリを取り出した。
テレサさんが
「うぇぇぇっ……」
と顔を顰めていたけど、見た目が気持ち悪いのは同感出来るので咎められない。
ブラックシュリの殻をむいてバッドの上に並べていく。
全て殻をむいたら、まな板の上に置いて塩と片栗粉をまぶして揉み込み、水洗いする。
この下処理をしておかないと臭みが残ってしまうので重要な作業なのだ。
次に腹側に切り込みを入れ、真っ直ぐにして形を整える。
ああ、そうそう、尻尾の先に切り込みを入れて水分を取って置くのも忘れてはいけない。
これをしないと油が跳ねる原因となるのだ。
ここまで出来たら、塩胡椒をして少し時間を置く。
時間を置くことによって余計な水分が出てぷりぷりとした食感になるのだ。
私がやる作業を興味津々で食い入るように見ているカイトさん、ピエトロさん、テレサさん。
「へぇー、殻を取ってたくさんの足が無くなると何だか美味しそうに見えるわねぇ」
「そうでしょ? でも美味しそうじゃなくて、本当に美味しいんですよ。このまま少し時間を置くのでその間にタルタルソースを作りますね」
「タルタルソース?」
「はい、海老フライに付けて食べるととても美味しいのです」
「海老フライ?」
「はい、今から作る料理の名前です」
三人はそれぞれ質問をしてくるので私はそれに答えながら作業を進めた。
定番のタルタルソースはピクルスを使うが、今は無いのでキュウリ……に似た野菜に塩をまぶして水分を取る。
タマネギはみじん切りにして水に漬けておき、その間にゆで卵を作り細かくする。
以前作っておいたマヨネーズをマジックバッグから取りだし、キュウリ、タマネギ、ゆで卵を入れて混ぜる。
これでタルタルソースが完成だ。
「その白いソースは何だ?」
ピエトロさんの質問に、そう言えばこの世界にはマヨネーズが無かったことを思いだした。
「これは、マヨネーズと言って、食物油、酢、卵で作ったソースです。サラダにかけたり、料理に入れたり色々使えるんですよ」
「ほう、そんなものがあるのか? 少し味を見させて貰っていいかい?」
私はピエトロさんに、躊躇無くマヨネーズを差し出した。
一口味見をすると固まるピエトロさん。
「これは! 初めて食べたが何て美味いんだ!」
ピエトロさんの簡単な言葉に、カイトさんとテレサさんも続けて味見を所望した。
二人とも口に入れた途端固まった。
やはり、この世界でもマヨネーズの美味しさが分かるみたいだ。
下処理が済んだブラックシュリに小麦粉、卵。パン粉の順に衣をつけたら油で狐色になるまでカラッと揚げていく。
さくさくの海老フライならぬブラックシュリフライが出来上がった。
タコはカルパッチョに、ウニはそのまま半分に割ってお醤油をかけて、イカは姿焼きにしてみた。
料理が出来上がると、三人……と一匹は目を輝かせていく。
「ほぅ、見た目も匂いも美味そうだな」
ピエトロさんが感嘆の声をあげた。
「でしょう? 本当に美味しいから是非食べて見て下さい」
「ああ、もちろん頂くよ。でも俺も自慢のスープを披露しようとしよう。この店でも評判なんだ。直ぐ出来るからちょっと待ってくれよ」
そう言ってピエトロさんが棚から前世でもお馴染みの食材を取りだした。
「!!!!」
ピエトロさんが右手に持った物を指さしながらついつい声にならない声をあげた。
なんということでしょう。
魚を半身状にした茶色の物体。
どう見ても鰹節にしか見えない。
「ん? カリン、これが気になるのかい? これは俺が開発したスープの素だ。これを削ってスープを作ると美味しくできるんだ。日持ちするようにカツオという魚を燻して乾燥させたものなんだ」
ピエトロさんの説明で紛れもない鰹節だと証明された。
え? スープってもしかして鰹だしのスープ?
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