転生少女は異世界で理想のお店を始めたい 猫すぎる神獣と一緒に、自由気ままにがんばります!

梅丸みかん

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第九十八話 エンサの町【海の幸を堪能しよう】

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 鰹だしのスープは海藻を卵でとじた優しい味で懐かしさを感じた。

 この国では海藻も普通に食されているのだと知り嬉しくなったが、ピエトロさんの話では海藻はこの町だけでしか食べられないそうだ。

 理由は海藻の賞味期限が短いこと。

 収穫して3日以上経つと苦みが増して食べられなくなるそうだ。塩漬けにしたり乾燥させたり様々な保存加工を施してもどうにもならなかったらしい。

 どうやら前世で私が知っている海藻とは性質が大分異なるようだ。

 見た目はどう見ても前世でもお馴染みの海藻、見た目はワカメなのに何が違うのか謎だ。

 他の町どころかこの町の市場でも置いてないと聞いてかなりがっかりする私。

 ピエトロさんはカイトさんが漁のついでに収穫したものをその日の内に直接買い取っているそうだ。

 その事を聞いて私がどうしても譲って欲しいと懇願したら、昨日収穫したばかりの海藻をピエトロさんから貰えることになった。

 賞味期限のことを心配していたピエトロさんだが、私には時間停止魔法を付与したマジックバックがあるから大丈夫だと何とか納得してもらった。

 ピエトロさん、カイトさん、テレサさんは最初はとても驚いた表情をしていたが、絶対にそれを他で言ってはいけないと念押しされてしまった。

 そうだよね。以前にダンテさん達にもその事を言われたのにすっかり忘れていたよ。

 昔から食べ物のことに集中すると他の事が疎かになるのは私の悪い癖だ。

 とは言え、そのことを言わなければ海藻類をゲットするのは難しかったのではないのだろうか? と心の片隅では自分を正当化してしまう。

 そんなこんなで出来上がった料理を早速試食して貰う事にした。

 最初はお互いに顔を見合わせながら誰が一番に口をつけるか様子見していたが、何の躊躇もなくがつがつ食べるグレンの姿を見てみんな一斉に食べ始めた。

 さくさくの海老フライにタルタルソースをつけて食べる面々はその美味しさに驚きの声をあげていた。

 最初の戸惑いは何だったのだろうか?

『おお! この料理はカリンが作った中でもトップクラスであるな』
 とグレンも絶賛していてかなり気に入った様子だった。

 タコやいかもみんな最初は恐る恐る食べていたが、すぐにその美味しさに取り付かれたように無言で黙々と食べていた。

 特に可笑しかったのはウニをスプーンで掬って私が食べて見せた時だ。

 みんな怪訝な顔をして、私が口に入れる瞬間ゴクリと唾を飲み込んで凝視していた。

 口に入れた瞬間私の顔が緩むのを見て興味が湧いたピエトロさんが最初にチャレンジした。

 二つに割ったウニを殻付きのまま醤油を垂らして差し出すと目を瞑り、思い切って口に入れた瞬間の顔が忘れられない。

 きっとその美味しさに驚愕したのだろう。

 ピエトロさんは全身を震わせながら感動していた。

 どうやらウニはピエトロさんの琴線に触れたらしかった。

 それからピエトロさんは私の作った料理を自分のレストランで提供させて欲しいと懇願してきた。

 この料理は私が実際に考えたわけではなく前世でも定番の料理だ。

 美味しい料理がこの世界に増えるのは嬉しいし、海老……ブラックシュリを始め魚以外の食材が流通するようになる為にも多くの人にその美味しさが知れ渡るのは願っても無いことだ。

 私は快く了承し、私が知っている限りの海の幸レシピをピエトロさんに伝えることにした。

 ピエトロさんにはアイデア料を受け取って欲しいと言われたが、私はそれよりも鰹節を安く譲って貰う事にした。

 それに海藻も結構たくさん貰えることになったしね。
 この町に来たのは私に取って大きな収穫だ。

「カイトさん、たくさんの海の幸を頂きましてありがとうございます」
「カリン、こちらこそ美味しい料理を堪能させてもらって感謝するよ。またいつでも来てくれ。ブラックシュリも魚もいくらでもあげるよ」
「ありがとうございます。でも、次はちゃんと購入させて下さい」
「まぁ、カリンがそこまで言うなら仕方ないな。でも、安くさせてもらうよ」

 カイトさんの安くと言うのがどれくらいかちょっと疑問に思ったが、ここであまり拒絶するのもどうかと思うのでよろしくお願いしますと素直に言うことにした。

 ピエトロさんとテレサさんは私がヨダの町の近くでお店を開くつもりだと言ったらとても興味津々で機会があったら絶対に行きたいと言ってくれた。

 でも、小さな子供を抱えた上にレストランを営む二人にはヨダの町に来るのはそう簡単な事ではないだろう。

 私はグレンの背中に乗って数時間でこれたからいいけど通常は馬車で数日かかる距離だ。

 前世の様に電車やバスはおろか自動車だって無い世界である。馬車を所有しているのは貴族や商家などの裕福な家に限られるし、もし来るとしたら貸切馬車か乗り合い馬車に頼るしかないだろう。

 エミュウさんが開発した魔導カーが早くこの世界に普及することを願った。

 そう言えば、ウォルフ様が依頼している魔導カー工場計画はどこまで進んだのだろうか?

 やっぱり願うだけでは平民達にまで普及するのは何時になるかわからない。

 そう考えた私はこの機会に、せめてバスやタクシーなど、平民でも気軽に利用できるような移動手段を提案してみようと心に決めたのだった。

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