転生少女は異世界で理想のお店を始めたい 猫すぎる神獣と一緒に、自由気ままにがんばります!

梅丸みかん

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第百三話 聖域とは?

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 昨日、クランリー農場に持っていったお土産の海の幸料理は大好評だった。海老フライ……この世界ではブラックシュリフライか……もその後に披露したペスカトーレもタコのカルパッチョも受け入れてくれた。

 これならばお店を開いたとき、メニューに加えても大丈夫かも知れない。

 それよりもあの話し合いの中で胸に引っかかることがあった。その時は平静を保っていたが、何となく胸がザワザワした。この身体に眠る記憶を刺激するかのように……。


 クラレシア神聖王国……私……と言うか、この身体の持ち主の出身国。

 自室のベッドで考え込む私。ウォルフ様が言っていた事が頭から離れない。クラレシア人とドメル人を労働者として受け入れると言っていたことだ。

 クラレシア国民の特徴は私と同じ藍色の髪だと言う。
 まるで前世の日本人の様に単一民族国家なのね。まあ、日本人は黒髪に焦げ茶色の瞳だったけど。
 あれ? 瞳の色はみんな私と同じ瑠璃色なのかしら? 鏡で見ると深い海を想像させるこの色は神秘的で美しい。

 みんなこんな綺麗な色をしているのかしら? 自分の瞳の色を自分で綺麗なんて言うとナルシストっぽいけど、前世の自分の姿を知っているせいか客観的に見てしまう。

 そうだ、クラレシアについて少しタブレットに聞いてみようかな。

 ーークラレシア神聖王国人の特徴
   藍色の髪、瞳の色は若干の違いはあるが殆どの者は灰色ーー

 ん? 瞳の色は殆どの者は灰色? 私の瞳は瑠璃色だけど……
 うーん、そう言えば日本人でも黒い瞳とは限らなかったわよね。少し茶色っぽい人もいたし、もっと薄くてヘーゼルやアンバー色の人もいたっけ。私の場合は日本人で最も多い焦げ茶色だったけどね。

 だから、瑠璃色の瞳の人も他にもいるかも知れないし、もしかしたら他国人とのハーフかクォーターかも知れない。

 じゃあ、ドメル帝国人の特徴はどんな感じなのかしら? 

 ーードメル帝国人の特徴
   全体的に色素が薄い者が多い

 と言うことは、前世で言うと北欧人みたいな感じかしら? 北欧って言えば前世ではインテリアが人気だったわね。私もあのシンプルなのに洗練された色使いが好きでプライベートルームは北欧グッズが多かったわね。ああ、今はそんな事を考えている場合じゃなかったわ。

 えっと、何だっけ? ああ、そうそうドメル帝国人についてよね。  
 
 生活難でやせ細って自国から逃げてきたって言っていたけど……それに、クラレシア神聖王国を滅ぼしたと言うのなら戦争に勝利したと言うことでしょ?それなのに生活難ってどういうこと?

 うーん、分からないことばかりだわ。

「ねぇ、グレン。どうしてドメル帝国の民はそんなに生活に困っているの?」

『それは当然のことである。ドメル帝国は聖域であるクラレシア神聖王国に侵略したのだからな。精霊王の怒りに触れたのだからな』

 ん? クラレシア神聖王国って聖域なの? 精霊王……? 
 グレンの言葉に疑問が湧いた。

「え? クラレシア神聖王国って聖域なの? そもそも聖域ってどういうこと?」

『聖域とは精霊界と人間界を繋ぐ精霊樹を守るために存在する土地である』
「精霊樹……?」
 どうしよう、グレンの言っている事がよくわからない。グレンはいつも私の質問には答えてくれるけどそれ以上の説明はしてくれない。まるで余計なことを教えたくないように。

「えーと、因みにだけど精霊樹が無くなっちゃたらどうなるの?」
『精霊樹が消滅すえばこの世界から精霊はいなくなり自然の恵みも消滅するのだ』

 え? 自然の恵みって水や植物とかでそれがなければ動物はおろか人間だって生きていけないわよね。つまりこの世界そのものが消滅するってこと? え? それってやばくない? ドメル帝国って何てことしてくれるのよ! あっ、でもこの家の裏にある泉には精霊がいたから精霊樹はまだ消滅していないってことよね。

 何だろう? 気になるのにこれ以上踏み込んではいけないような気がする。身体の奥から湧いてくる拒否反応は更なる疑問を投げかける事が出来なかった。

 きっとグレンに尋ねれば教えてくれるのだろうと思う。でも……

「ああ、もう!」
 深く考えるのが得意ではない私は得も言われぬ不安を払拭するように声を出した。グレンはそんな私をじっと見ている。だけど何かを言うわけではない。

 ただ私を見守るようにその眼差しは優しい。そんなグレンを見て守られていることを実感し安心した。

 兎に角、考えても仕方が無い。気持ちを切り替えて前に進もう。今の私にはそれしかできることはないのだから。

 私はベッドから起き上がり、これまで手に入れた食材を元に他にも色々と料理を作ろうと厨房に向かった。前世から悩みやストレスが溜まると一心不乱に料理に没頭していたのだ。

 厨房の調理台に食材を並べたところでポケットに入れていた魔通器が鳴った。手に取ってみると青いボタンが点滅していた。ショウからの連絡だ。

「カリン、元気か? 今いいかな?」
「ショウ、私は元気よ。ショウも元気そうね。仕事は順調なの?」
 私はショウの元気そうな声を聞いて安堵した。

「ああ、でもこれからちょっと忙しくなるから暫く連絡できないと思う。でも必ず帰るから待ってて欲しい」
「もちろん、待ってるわ。無理しないように頑張ってね」

 そんな夫婦のような会話をした後、私は電話じゃなくて……魔通器を切ったのだった。
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