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第百二話 人材確保
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「ウォルフ様、工房群っていつ頃完成して何時から稼働しますか?」
私は気になっていることを尋ねた。ウォルフ様の答えによってはお店の開店日に影響が出るからだ。
定期的に調味料や材料が入手出来なければ営業に影響が出てしまう。もちろん、なければ作ることも可能だが、全てを手作りするには時間が足りないと思う。
お店の運営は作って売るだけでは成り立たない。
事務作業や広報活動など色々やらなければならない事も有る。値段設定にしても仕入額から販売額を試算して利益を出すようにしなければならない。そこに税金額も加味する必要がある。
営業時間以外にもやらなければならないことは沢山あるのだ。そう考えると私一人で店を営むのは結構大変だ。
そう言えば前世では、私は店に集中するために経理関係は代行会社に外注するつもりだった。
この世界ではそんなシステムは無い様だからやはり私が一人でやるしかないだろう。
一応、タブレットに聞いてもそんなシステムが無かったからそれは確かだ。だからこの世界では家族経営が多いのだろう。因みにお店を一人でやっているエミュウさんとフランさんにもその辺りのことを魔通器で聞いてみたら、
「そんなの適当よぉ」
と二人とも同じことを言っていた。
え? そんなんで大丈夫なの? と思ったら、税金の徴収もそれ程厳格ではないし、普通に生活していけるのだからいいんだって。
うーん、きっとそれはエミュウさんは天才魔導具師と言われる程だし、フランさんも王都では名の知れたデザイナーで知名度が高い。二人とも収入が多い方だからそういえるのだろうな。
私の場合は報奨金やアイデア料で懐に大分余裕があるけど、いつまでもそうとは限らない。やはりお店を長く続けて行くためにはそれなりの利益が必要になる。
経費としては材料費、広告費、それに文房具類や調理器具も足りない物があるかも知れない。
文房具や調理器具に関しては創造魔法で殆ど自分で作れるだろうが消耗品に関してはいちいち自分で作って行くには時間が足りないだろうな。
まぁ、そこんところはドロシーさんに要相談だな。
ウォルフ様は工房が稼働するのは数ヶ月先になると言った。
「それでだな……工房建設とそこで働く者達の住居建設の為に今人を集めているところだ」
ああ、そうよね。それだけの工房を建設するにはヨダの町の住人だけじゃ足りないわよね。どこかから人材を確保するのは当然のことだわ。
でも、どこから? まぁ、そんなこと私が気にすることでも無いんだけどウォルト様が少し言い淀んだような気がするのは気のせい?
「ウォルフ、カリンには話しておいた方がいいと思うぞ」
そこで言葉を発したのはダンテさんだった。
ん? ダンテさんの言い方を鑑みると私にも関係のあることなんだろうか?
私は、首を傾げながらウォルフ様のその先の言葉を待った。
「実はだな……人材はパスティナ領にある難民キャンプから確保するつもりなんだ。もちろん、他の領地からも希望者は募っているが……」
「難民キャンプ……?」
私はウォルフ様の言葉を受けて考えた。
前世でもよくテレビのニュース番組で難民キャンプの様子を報道されることがあった。確か、紛争や内戦などで逃げてきた人や自然災害で家を失った人の為の一時的な避難所だったと思う。この国にも難民キャンプがあったとは……。どこかで紛争とか内戦があったのだろうか……?
その時、ハッとした。もしかして……
「クラレシア神聖王国の民の難民キャンプだ……それと……」
私の予想通り、私の……と言うよりもこの身体の出身国でドメル帝国に侵略されて滅ぼされたというクラレシア神聖王国の難民キャンプ……。
だから、ウォルフ様は言い淀んだのだろうか? それよりもクラレシアの難民ってどれくらいいるのだろうか? もしかして、その中に私のことを知っている人がいるだろうか? もしそうなら中身が違っていることに気付かれてしまうかも……でも、記憶喪失と言うことにすれば大丈夫かな?
私の中で様々な思いが渦巻いた。
「カリン……すまない……カリンにとって受け入れがたいことかも知れないが……」
私が考え込んでいると、
「ドメル帝国の難民にも働いて貰おうと思う。もちろん、クラレシアの難民とは働く場所を分けるなり配慮をするつもりだ」
え? ドメル帝国? クラレシアを侵略した国でしょ? それって大丈夫なの? まぁ、平民が直接手を下した訳では無いのだろうけど、争いのもとにならない?
「それって、大丈夫なんですか? 争いの種にならないんですか? クラレシアの人々はいくら平民で直接手を下していなくてもドメル帝国の人間だと言うだけで恨みを持っている人も多いと思うんですが」
「ああ、カリンがそう思うのも仕方が無いと思う。だが、クラレシア人はドメル帝国の民をそれ程恨んではいないようなんだ。そればかりか気の毒に思って色々手を貸しているようだと聞いた。
私はウォルフ様の言葉を聞いて驚きを隠せなかった。どういうことなのだろうか? クラレシア人にとって憎むべき敵国の民を気の毒に思うなんて。だって、ドメル帝国のせいで自分の身内を失った人だって大勢いるだろうに……。
不思議そうに考えこんだ私にウォルフ様は、ドメル帝国の現状を教えてくれた。
ドメル帝国の土地は荒れ果てて、食糧も平民達にきちんと行きわたって無いこと。
平民達には重い税が課せられていること。
平民達は普通に生活することも困難で食べる物も無いため、国を捨てる人が多いこと。
助けを求めて逃げてきた難民達はみんなやせ細って栄養失調状態であったこと。
ドメル帝国は逃げようとした国民に容赦ない懲罰をあたえること。
無事にこの国に逃げることが出来たドメル帝国の民達は正に命がけだったのだ。
そう言えば、前世でも似たような国があったわね。
それにしてもクラレシア人、人が良すぎるのではないか? まぁ、やせ細って命からがら逃げてきた人を見れば助けたいと思うのは当然のことかも知れないが。特に子供がガリガリに痩せて今にも死にそうになっているのを見れば敵味方関係無く何とかしてあげたいと思うのは普通の感覚かも知れない。
「念のため、ドメル帝国の難民には魔法で隷属契約をして貰う事にする」
ウォルフ様は考え込む私に不穏な言葉を告げた。
「え? 隷属契約? そこまでする必要あるんですか?」
私の認識が間違ってなければ、隷属って奴隷のように言いなりにさせるってことよね。
「間諜も紛れ込んでいる可能性もあるからそれは仕方が無いだろう。カリンは不快に思うかも知れないが了承して貰いたい」
ウォルフ様が頭を下げた。
「ウォ、ウォルフ様! 頭を上げて下さい、私は大丈夫です。了承するも何も私に否やはありませんから」
私は慌ててウォルフ様に懇願するのだった。
私は気になっていることを尋ねた。ウォルフ様の答えによってはお店の開店日に影響が出るからだ。
定期的に調味料や材料が入手出来なければ営業に影響が出てしまう。もちろん、なければ作ることも可能だが、全てを手作りするには時間が足りないと思う。
お店の運営は作って売るだけでは成り立たない。
事務作業や広報活動など色々やらなければならない事も有る。値段設定にしても仕入額から販売額を試算して利益を出すようにしなければならない。そこに税金額も加味する必要がある。
営業時間以外にもやらなければならないことは沢山あるのだ。そう考えると私一人で店を営むのは結構大変だ。
そう言えば前世では、私は店に集中するために経理関係は代行会社に外注するつもりだった。
この世界ではそんなシステムは無い様だからやはり私が一人でやるしかないだろう。
一応、タブレットに聞いてもそんなシステムが無かったからそれは確かだ。だからこの世界では家族経営が多いのだろう。因みにお店を一人でやっているエミュウさんとフランさんにもその辺りのことを魔通器で聞いてみたら、
「そんなの適当よぉ」
と二人とも同じことを言っていた。
え? そんなんで大丈夫なの? と思ったら、税金の徴収もそれ程厳格ではないし、普通に生活していけるのだからいいんだって。
うーん、きっとそれはエミュウさんは天才魔導具師と言われる程だし、フランさんも王都では名の知れたデザイナーで知名度が高い。二人とも収入が多い方だからそういえるのだろうな。
私の場合は報奨金やアイデア料で懐に大分余裕があるけど、いつまでもそうとは限らない。やはりお店を長く続けて行くためにはそれなりの利益が必要になる。
経費としては材料費、広告費、それに文房具類や調理器具も足りない物があるかも知れない。
文房具や調理器具に関しては創造魔法で殆ど自分で作れるだろうが消耗品に関してはいちいち自分で作って行くには時間が足りないだろうな。
まぁ、そこんところはドロシーさんに要相談だな。
ウォルフ様は工房が稼働するのは数ヶ月先になると言った。
「それでだな……工房建設とそこで働く者達の住居建設の為に今人を集めているところだ」
ああ、そうよね。それだけの工房を建設するにはヨダの町の住人だけじゃ足りないわよね。どこかから人材を確保するのは当然のことだわ。
でも、どこから? まぁ、そんなこと私が気にすることでも無いんだけどウォルト様が少し言い淀んだような気がするのは気のせい?
「ウォルフ、カリンには話しておいた方がいいと思うぞ」
そこで言葉を発したのはダンテさんだった。
ん? ダンテさんの言い方を鑑みると私にも関係のあることなんだろうか?
私は、首を傾げながらウォルフ様のその先の言葉を待った。
「実はだな……人材はパスティナ領にある難民キャンプから確保するつもりなんだ。もちろん、他の領地からも希望者は募っているが……」
「難民キャンプ……?」
私はウォルフ様の言葉を受けて考えた。
前世でもよくテレビのニュース番組で難民キャンプの様子を報道されることがあった。確か、紛争や内戦などで逃げてきた人や自然災害で家を失った人の為の一時的な避難所だったと思う。この国にも難民キャンプがあったとは……。どこかで紛争とか内戦があったのだろうか……?
その時、ハッとした。もしかして……
「クラレシア神聖王国の民の難民キャンプだ……それと……」
私の予想通り、私の……と言うよりもこの身体の出身国でドメル帝国に侵略されて滅ぼされたというクラレシア神聖王国の難民キャンプ……。
だから、ウォルフ様は言い淀んだのだろうか? それよりもクラレシアの難民ってどれくらいいるのだろうか? もしかして、その中に私のことを知っている人がいるだろうか? もしそうなら中身が違っていることに気付かれてしまうかも……でも、記憶喪失と言うことにすれば大丈夫かな?
私の中で様々な思いが渦巻いた。
「カリン……すまない……カリンにとって受け入れがたいことかも知れないが……」
私が考え込んでいると、
「ドメル帝国の難民にも働いて貰おうと思う。もちろん、クラレシアの難民とは働く場所を分けるなり配慮をするつもりだ」
え? ドメル帝国? クラレシアを侵略した国でしょ? それって大丈夫なの? まぁ、平民が直接手を下した訳では無いのだろうけど、争いのもとにならない?
「それって、大丈夫なんですか? 争いの種にならないんですか? クラレシアの人々はいくら平民で直接手を下していなくてもドメル帝国の人間だと言うだけで恨みを持っている人も多いと思うんですが」
「ああ、カリンがそう思うのも仕方が無いと思う。だが、クラレシア人はドメル帝国の民をそれ程恨んではいないようなんだ。そればかりか気の毒に思って色々手を貸しているようだと聞いた。
私はウォルフ様の言葉を聞いて驚きを隠せなかった。どういうことなのだろうか? クラレシア人にとって憎むべき敵国の民を気の毒に思うなんて。だって、ドメル帝国のせいで自分の身内を失った人だって大勢いるだろうに……。
不思議そうに考えこんだ私にウォルフ様は、ドメル帝国の現状を教えてくれた。
ドメル帝国の土地は荒れ果てて、食糧も平民達にきちんと行きわたって無いこと。
平民達には重い税が課せられていること。
平民達は普通に生活することも困難で食べる物も無いため、国を捨てる人が多いこと。
助けを求めて逃げてきた難民達はみんなやせ細って栄養失調状態であったこと。
ドメル帝国は逃げようとした国民に容赦ない懲罰をあたえること。
無事にこの国に逃げることが出来たドメル帝国の民達は正に命がけだったのだ。
そう言えば、前世でも似たような国があったわね。
それにしてもクラレシア人、人が良すぎるのではないか? まぁ、やせ細って命からがら逃げてきた人を見れば助けたいと思うのは当然のことかも知れないが。特に子供がガリガリに痩せて今にも死にそうになっているのを見れば敵味方関係無く何とかしてあげたいと思うのは普通の感覚かも知れない。
「念のため、ドメル帝国の難民には魔法で隷属契約をして貰う事にする」
ウォルフ様は考え込む私に不穏な言葉を告げた。
「え? 隷属契約? そこまでする必要あるんですか?」
私の認識が間違ってなければ、隷属って奴隷のように言いなりにさせるってことよね。
「間諜も紛れ込んでいる可能性もあるからそれは仕方が無いだろう。カリンは不快に思うかも知れないが了承して貰いたい」
ウォルフ様が頭を下げた。
「ウォ、ウォルフ様! 頭を上げて下さい、私は大丈夫です。了承するも何も私に否やはありませんから」
私は慌ててウォルフ様に懇願するのだった。
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