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第百七話 パスティナ領②
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女性冒険者パーティー乾坤の戦乙女の三人はパスティナ領都ソネラの町にある冒険者ギルドを訪れていた。
「乾坤の戦乙女ですね。ギルドカードを確認しますので少々お待ち下さい」
メラニー、ベッキー、ティアの三人はそれぞれ冒険者カードを受付嬢に渡した。
「今、シルバーランク以上の冒険者への依頼がございます。タングスティン領に向かう難民達を護衛するお仕事ですが、人数が足りておりませんのでゴールドランクの乾坤の戦乙女達に是非請け負って頂きたいのですがいかがですか? それとメッセージが届いております」
「「「メッセージ?」」」
三人は口を揃えて声を発した。
メッセージ内容が書かれた用紙をベッキーが受け取るとメラニーとティアがそれを覗き込んだ。
ーー近々お店をオープンします。連絡下さい。カリン。
文字を目にすると、三人の頭の中には艶やかな藍色の髪に神秘的な瑠璃色の瞳の少女の姿が浮かんだ。
「カリンからだわ。とうとうお店をオープンするのね」
「慌ててたから連絡するの忘れてたわ。そうね、さっきのタングスティン領までの護衛の依頼受けましょう。カリンにもあの時の恩を返したいし」
「ええ、でも難民達の護衛を受けるならきっとお父様に会うことになってしまうわ。何とか説得しなくちゃ」
三人は依頼を受けると指定されたクラレシア難民キャンプの手前にある事務所へ足を向けた。難民キャンプに近づくと藍色の髪をした人々がチラホラ見えた。
「あら、藍色の髪の人が多いわね。やっぱりクラレシア人の特徴が藍色の髪だと言うのは本当だったのね」「そうね、でも藍色の髪の人を見ているとカリンちゃんを思い出すわ」
「やっぱりカリンちゃんはクラレシア人なのは間違いないわね」
ベッキーが難民キャンプを出入りする人を目で追いながら言うと、メラニーとティアが同意した。
「でもそれにしては不思議だわ。だってカリンちゃんがクラレシア人だとしたらタングスティン領までどうやって行ったの? あんな可憐な少女一人で行ける距離じゃないわ」
「そうなのよね。しかもあの森にある家も不思議なのよ。1年以上あそこを拠点にしていたのにあんな所に家が有る事なんて全然気付かなかったわ」
今更ながらよく考えると不思議な事ばかりであったことに気付いたベッキーとティアが首を傾げた。
突然現れた不思議な少女。突然現れた不思議な家。考えれば考えるほど分からない事だらけだった。あの時は、家に帰る期限が迫っていたのであまり深く考えていなかったのだが……。
メラニーは二人の話を聞いてもっともだと思うもののそれよりも気になっていることがあった。
この難民キャンプを出入りするクラレシア人から感じる魔力の質とカリンから感じた魔力の質が少し異なっているように思えたのだ。
何がどう違うのかと聞かれればハッキリとは分からない。豊富な魔法力を所持するが故の勘だとしか言えないのだが。
三人はそれぞれの疑問を抱きつつ事務所のドアを開けた。
ベッキーが冒険者ギルドで渡された依頼書を受付に持って行く。受付にいたのはパスティナ領主邸に従事する顔見知りの若い兵士だった。
「えっ? ベッキーさんですよね。あれ? また冒険者に戻るんですか? と言うことは……メラニーお嬢様?」
「あー、コルトに見つかっちゃったねぇ。まぁ想定済みだけど」
「あはは、コルト、何でここにいるの? そんなに人が足りないのかしら?」
コルトの戸惑う声にベッキーとメラニーが答えた。
「そうなんすよ。ここだけじゃなくてドメル人難民キャンプもあるから大変なんすよ。タングスティン領に行く難民の名簿を作成したり、冒険者を振り分けたり。しかも、トラブル防止の為にクラレシア人とドメル人が接触しないようにする必要があるんすよ」
平民出身のコルトは言葉遣いが馴れ馴れしいが、ベッキーもメラニーも気にしない。もちろん同じ平民であるティアも。今は冒険者としてここに来たのだからそもそも偉ぶる必要は無い。
「えっとぉ、お父様もこちらにいらっしゃるのかしら?」
メラニーは奥にいる兵士達に目をやりつつコルトに質問した。
「うーん、マーカス様はドメル人難民キャンプの方に行ってます。あちらはクラレシア人よりも色々と配慮する必要があるので……」
コルトが言葉尻を濁すように答えた。
「あら、そうなの? ではこちらを指揮しているのはどなたかしら?」
「まぁ、メラニーそんな格好でどうしたの? こんな所に来てはダメじゃない」
メラニーがコルトに向かって質問すると事務室の奥から赤髪を後ろで一つに束ねたスレンダーな女性が顔を出した。メラニーの母親スティファニーである。
スティファニーはタングスティン領主ウォルフの妹で今はパスティナ領主夫人である。魔法力が高くメラニーの特性は母親の素質を余すことなく引き継いでいることは明らかであった。
「お母様、何故ここに?」
「マーカスが忙しそうなので手伝っていたのよ。クラレシア人はみんな魔法力が高くて温厚で本当に良い方ばかりなの。色々と魔法の使い方も教えて頂いたのよ。ふふふっ」
メラニーはスティファニーの言葉を聞いて直ぐに手伝いとはタダの口実で、実はクラレシア人の魔法力に興味があったのだなと理解した。
「それよりも、貴女その格好は……」
「お母様、私もう少しの間冒険者として活躍したいの。先ほどギルドに行ったら、クラレシア人をタングスティン領まで届ける護衛の仕事の依頼があったから受けようと思うの」
「メラニー、3年間の約束の筈でしょ? それを違えると言うの?」
「ごめんなさい、お母様。でも、この依頼だけは受けさせて。それにタングスティン領にいるお友達と約束したことがあるの。帰ってきたらお見合いでも何でもするわ。だからお願い」
スティファニーはメラニーの真剣な眼差しを視て、溜息を付くと諦めたように口を開く。
「ふぅ……分かったわ。でも今回だけよ。冒険者も足りなくて困っていたの。ベッキーとティアがいるのなら大丈夫だと思うけど、何か合ったら自分の身を第一に考えるのよ。それと定期的に連絡を頂戴ね。それと、帰ってきたらお見合いをして貰うわよ。いいわね」
メラニーはステファニーの言葉を聞いて頷いたのだった。
「乾坤の戦乙女ですね。ギルドカードを確認しますので少々お待ち下さい」
メラニー、ベッキー、ティアの三人はそれぞれ冒険者カードを受付嬢に渡した。
「今、シルバーランク以上の冒険者への依頼がございます。タングスティン領に向かう難民達を護衛するお仕事ですが、人数が足りておりませんのでゴールドランクの乾坤の戦乙女達に是非請け負って頂きたいのですがいかがですか? それとメッセージが届いております」
「「「メッセージ?」」」
三人は口を揃えて声を発した。
メッセージ内容が書かれた用紙をベッキーが受け取るとメラニーとティアがそれを覗き込んだ。
ーー近々お店をオープンします。連絡下さい。カリン。
文字を目にすると、三人の頭の中には艶やかな藍色の髪に神秘的な瑠璃色の瞳の少女の姿が浮かんだ。
「カリンからだわ。とうとうお店をオープンするのね」
「慌ててたから連絡するの忘れてたわ。そうね、さっきのタングスティン領までの護衛の依頼受けましょう。カリンにもあの時の恩を返したいし」
「ええ、でも難民達の護衛を受けるならきっとお父様に会うことになってしまうわ。何とか説得しなくちゃ」
三人は依頼を受けると指定されたクラレシア難民キャンプの手前にある事務所へ足を向けた。難民キャンプに近づくと藍色の髪をした人々がチラホラ見えた。
「あら、藍色の髪の人が多いわね。やっぱりクラレシア人の特徴が藍色の髪だと言うのは本当だったのね」「そうね、でも藍色の髪の人を見ているとカリンちゃんを思い出すわ」
「やっぱりカリンちゃんはクラレシア人なのは間違いないわね」
ベッキーが難民キャンプを出入りする人を目で追いながら言うと、メラニーとティアが同意した。
「でもそれにしては不思議だわ。だってカリンちゃんがクラレシア人だとしたらタングスティン領までどうやって行ったの? あんな可憐な少女一人で行ける距離じゃないわ」
「そうなのよね。しかもあの森にある家も不思議なのよ。1年以上あそこを拠点にしていたのにあんな所に家が有る事なんて全然気付かなかったわ」
今更ながらよく考えると不思議な事ばかりであったことに気付いたベッキーとティアが首を傾げた。
突然現れた不思議な少女。突然現れた不思議な家。考えれば考えるほど分からない事だらけだった。あの時は、家に帰る期限が迫っていたのであまり深く考えていなかったのだが……。
メラニーは二人の話を聞いてもっともだと思うもののそれよりも気になっていることがあった。
この難民キャンプを出入りするクラレシア人から感じる魔力の質とカリンから感じた魔力の質が少し異なっているように思えたのだ。
何がどう違うのかと聞かれればハッキリとは分からない。豊富な魔法力を所持するが故の勘だとしか言えないのだが。
三人はそれぞれの疑問を抱きつつ事務所のドアを開けた。
ベッキーが冒険者ギルドで渡された依頼書を受付に持って行く。受付にいたのはパスティナ領主邸に従事する顔見知りの若い兵士だった。
「えっ? ベッキーさんですよね。あれ? また冒険者に戻るんですか? と言うことは……メラニーお嬢様?」
「あー、コルトに見つかっちゃったねぇ。まぁ想定済みだけど」
「あはは、コルト、何でここにいるの? そんなに人が足りないのかしら?」
コルトの戸惑う声にベッキーとメラニーが答えた。
「そうなんすよ。ここだけじゃなくてドメル人難民キャンプもあるから大変なんすよ。タングスティン領に行く難民の名簿を作成したり、冒険者を振り分けたり。しかも、トラブル防止の為にクラレシア人とドメル人が接触しないようにする必要があるんすよ」
平民出身のコルトは言葉遣いが馴れ馴れしいが、ベッキーもメラニーも気にしない。もちろん同じ平民であるティアも。今は冒険者としてここに来たのだからそもそも偉ぶる必要は無い。
「えっとぉ、お父様もこちらにいらっしゃるのかしら?」
メラニーは奥にいる兵士達に目をやりつつコルトに質問した。
「うーん、マーカス様はドメル人難民キャンプの方に行ってます。あちらはクラレシア人よりも色々と配慮する必要があるので……」
コルトが言葉尻を濁すように答えた。
「あら、そうなの? ではこちらを指揮しているのはどなたかしら?」
「まぁ、メラニーそんな格好でどうしたの? こんな所に来てはダメじゃない」
メラニーがコルトに向かって質問すると事務室の奥から赤髪を後ろで一つに束ねたスレンダーな女性が顔を出した。メラニーの母親スティファニーである。
スティファニーはタングスティン領主ウォルフの妹で今はパスティナ領主夫人である。魔法力が高くメラニーの特性は母親の素質を余すことなく引き継いでいることは明らかであった。
「お母様、何故ここに?」
「マーカスが忙しそうなので手伝っていたのよ。クラレシア人はみんな魔法力が高くて温厚で本当に良い方ばかりなの。色々と魔法の使い方も教えて頂いたのよ。ふふふっ」
メラニーはスティファニーの言葉を聞いて直ぐに手伝いとはタダの口実で、実はクラレシア人の魔法力に興味があったのだなと理解した。
「それよりも、貴女その格好は……」
「お母様、私もう少しの間冒険者として活躍したいの。先ほどギルドに行ったら、クラレシア人をタングスティン領まで届ける護衛の仕事の依頼があったから受けようと思うの」
「メラニー、3年間の約束の筈でしょ? それを違えると言うの?」
「ごめんなさい、お母様。でも、この依頼だけは受けさせて。それにタングスティン領にいるお友達と約束したことがあるの。帰ってきたらお見合いでも何でもするわ。だからお願い」
スティファニーはメラニーの真剣な眼差しを視て、溜息を付くと諦めたように口を開く。
「ふぅ……分かったわ。でも今回だけよ。冒険者も足りなくて困っていたの。ベッキーとティアがいるのなら大丈夫だと思うけど、何か合ったら自分の身を第一に考えるのよ。それと定期的に連絡を頂戴ね。それと、帰ってきたらお見合いをして貰うわよ。いいわね」
メラニーはステファニーの言葉を聞いて頷いたのだった。
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