転生少女は異世界で理想のお店を始めたい 猫すぎる神獣と一緒に、自由気ままにがんばります!

梅丸みかん

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第百三十九話 幕の内弁当が完成!

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「海の虫がこんなに美味しいなんて驚きだったなぁ」

 翌日、ショウは家に来るなりうっとりとした顔で呟いた。

 うん、これは催促か? 多分催促だよね。よし、今日も手伝ってくれたお礼としてブラックシュリを使った料理をショウにご馳走することにしよう。

 今日も引き続きショウにお弁当作りの手伝いをして貰う事になっている。ショウがブラックシュリのあまりの美味しさに感銘したのは分かる。

 だが、「海の虫」と呼ぶのはいただけない。だって、虫なんて言うと食材としてはどうかと思う。言い方を修正する必要がありそうだ。

「ショウ、『海の虫』じゃなくてブラックシュリね」
 私が訂正したらショウはキョトンとしてこちらを見ていた。

「だって『海の虫』なんて言ったら食べる気にならないじゃない?」
「ああ……うん、そうだな。ブラックシュリだったな」
 私が言ったことに納得したようにショウは答えた。

 ブラックシュリ……。と言うよりも私の中では海老フライと言った方が美味しいイメージがする。ならば私の店では海老フライという料理名にして提供しようかしら……。

 この世界では「ブラックシュリ」で定着しているかも知れないがやはり、前世の記憶を持つ私からしてみれば今一ピンとこない。

 他で何と呼ばれても構わないが、私の店で出す料理は前世で呼ばれていた料理名で提供しよう。うん、そうしよう。

 私は自分の店の方針に追加するべく頭のメモに書き留めた。


  

 幕の内弁当に入れる残りのおかずをどんどん作っていく。

 時々、涎を垂らしそうな顔でジッと見つめるグレンに味見をして貰う。

『ふむ、この唐揚げは中々美味であるな』
『ほう、この肉団子も美味い』
『これなら弁当にもよかろう』

 偉そうにできたばかりの料理の感想を零すグレン。

 ショウも味見をする度に「やっぱりカリンは天才だ」と呟いている。

 私はもう面倒なので、味見という名のつまみ食いをする二人をスルーして作業をすすめた。

 グレンが満足して椅子の上で寛ぐ頃には全てのおかずが出来上がっていた。

 ショウに炊いた玄米ご飯をお弁当箱に盛ってもらい、私は橙色の紫蘇の葉で作った「ゆかり」をパラパラとその上に振りかける。

 紫蘇の葉は森の中で見つけたのだ。前世と全然色が違くて最初は気がつかなかったけど、タブレットで調べたら紫蘇だと分かった。

 まじでこの森には様々な植物が生息していると思った。他にもこの町の人が知らないハーブや香味野菜があるかも知れない。

 ご飯を盛りつけたらお皿の上に山盛りに盛られた料理達をお弁当箱に次々と並べていく。彩りよくするためにお花のクッキー型で抜き取った赤、緑、黄、橙のパプリカのピクルスで飾り付けをしてみた。

 出来映えは上々。

 このお弁当、クラレシアの民達は気に入ってくれるだろうか?

 私は期待と不安を抱えながら出来上がったお弁当に蓋をして重ねていった。

「はい、出来上がり! ショウ、手伝ってくれてありがとう。お陰で思ったよりも早くできたわ」
「いや……しかしその弁当、美味そうだな」
 作りながら味見をしていたにも関わらずショウは出来上がったお弁当を見つめている。

「ふふふっ、もちろんショウの分もあるわよ。でもそれはお土産として持って行って欲しいの。ダンテさん達の分も一緒にね」
 私は、隣の領地に行っていたマギー婆ちゃん、ロイ爺ちゃん、ラルクも帰って来ていることを聞いていたので彼らにも是非このお弁当を食べて貰いたいと思って多めに作って置いたのだ。

「ほんとうか? ありがとう、カリン」
 私の言葉にショウの瞳が輝いた。よっぽどお弁当を食べたかったらしい。試食しているから味は知っている筈なのにきっとお弁当として食べるのはまた違うのだろう。

「それで、ショウへのお礼はこっち」
 私はそう言って食品庫に入れておいたバスケットに入っている料理を取りだした。ショウが家に来る前に朝早くから作っておいたのだ。

「これは……」
「海老とアボカドのサンドイッチよ」
「海老?」
「えっと……ブラックシュリのことよ」
「おおっ!」
 ショウは私がブラックシュリと言うやいなやパァッと瞳を輝かせバスケットの中を覗いた。

 アボカドは神の庭で見つけたのだ。見た目は前世のアボカドのまんまで味も同じ。私の大好物の一つであるアボカドを見つけた時はテンション爆上がりだった。

 まあ、この世界ではアボカドという名称かどうかは分からないが……。

 私は目の端でピクリと反応するグレンに気がつき声をかける。
「もちろん、味見係のグレンにもあるわよ」
『そうか、其も自分の役割をこなさなければならぬからな』

 私の言葉を聞いてスクッと立ち上がるグレン。

 その様子にほっこりと癒されつつ私はお茶を煎れるために厨房に足を運ぶのだった。



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