76 / 93
連載
第百三十八話 幕の内弁当を作ろう!
しおりを挟む
エンサの町から帰ると私は他の材料を入手した。幸い、必要な肉と野菜はヨダの町で揃えることができた。
以前、ショウがせっせと私に貢いでくれていたクランリー農場の農作物を食品庫にたくさんストックしていたお蔭もある。
さて、いよいよ幕の内弁当作りを始めたいと思う。
今日は朝早くからショウが手伝いに来てくれた。
楽しみで仕方がないと言うように瞳をキラキラさせたエプロン姿のお料理男子が私の隣に立っている。
そんなに料理を作るのが好きなのだろうか?
うん、たぶん、出来た料理を食べるのが好きなんだよね。カウンターからキラキラした瞳で覗いている白猫のように。
幕の内弁当のメニューは前世でも定番のものにしようと思う。
海老フライ……この世界ではブラックシュリフライ、鶏の唐揚げ、肉団子、ポテトサラダ、金平ゴボウ、野菜の煮物、漬け物……でいいかな?
先ずは野菜の皮をむいていく。以前よりもスムーズに皮をむくショウに感心した。
よくよく聞いてみると「いつでもカリンの手伝いが出来る様に練習した」とのことだ。
もしもし、ショウさん? 貴方の本業は冒険者でしたよね。
とついつい突っ込みたくなったが、喜々として野菜の皮をむくショウを見て何も言えなくなった。
楽しそうだからまあいいか。
皮をむいたジャガイモと人参を魔導レンジでチンしているうちにタマネギをスライスして水にさらし、キュウリは薄い輪切りにして塩をまぶしておく。
柔らかくなったジャガイモをショウに潰して貰い、私は人参とハムを小さく切ってショウが潰したジャガイモに入れ、塩胡椒とマヨネーズで混ぜた。
これでポテトサラダが完成だ。
味見をしたそうにしているグレンとショウに小さなお皿に盛ってあげると二人とも満足そうに頷いて顔を綻ばせている。
「カリン、後はどうするんだ?」
味見が終わるとショウが私に尋ねた。
「あっ、じゃあこのブラックシュリの殻をむいてくれる?」
そう言ったらショウは
「ウェッ……」
と言いながら黙って作業を始めた。
「なぁ、カリン。本当にコレ食うの?」
なんて最初は言っていたショウだったが
「食うも何もショウはもう既にピエトロさんのレストランで食べたじゃない」
と言う私の言葉を聞いてブラックシュリフライの正体を思い出したのか「おお、これがあれになるのか」と作業する手が早まった。
私はショウが殻をむいたブラックシュリに次々と下処理を施していく。前世の海老とすっかり同じなので迷わずに処理することが出来る。
細い串を背中に刺し、抉る様に背わたを取ったら、火を通したときに丸まらないように腹の部分に切り込みを入れてブチブチと伸ばしていく。
尻尾の先を切り落としてから塩胡椒で下味を付けてから小麦粉、卵、パン粉の順に衣をまぶす。
ブラックシュリンプの殻をむき終わったショウも私の指示通りに嬉しそうに衣をまぶしている。
どんどん衣をつけた物を油で揚げていくと、作業台の上にはあっという間にブラックシュリフライの山盛りができた。
「じゃあ、次にタルタルソース作るわよ」
私はブラックシュリフライを揚げている間に茹でておいた卵をショウに渡して殻をむいて貰うように渡した。
何の為の卵か説明するとショウは
「へぇ、あの白いソースに使うんだぁ」
と瞳をキラキラさせて喜々として卵の殻をむきだした。
私はその様子にショウがピエトロさんのレストランで食べたブラックシュリフライにかかっていたタルタルソースをとても気に入っていたことを思い出した。
そんな事を想いながら私はマヨネーズを作る為に卵をかき混ぜる。
男子、好きだよねぇ。タルタルソース。
今度、鶏南蛮でも作ろうかしら?
ショウが嬉しそうに食べる様子を想像すると自然と顔が緩んでくる。
ブラックシュリフライの調理が終わるともう夕飯の時間だったので、海老フライ定食ならぬブラックシュリフライ定食を今日の夕食として食べた。
もちろん、ショウもグレンも喜々として食べ、あっという間に完食した。
千切りキャベツの脇にポテトサラダを添えて揚げたてのブラックシュリフライに、それにご飯と味噌汁を付けたら私が前世で働いていた洋食レストランの海老フライセットを思い出した。
あのレストランは洋食レストランなのにセットメニューには必ず味噌汁が付いていた。でも、却ってそれが評判になって繁盛していたように思う。
私のお店にも洋食と和食をうまく融合させて提供しようかしら? そもそもこの世界では洋食とか和食とかの概念がないので特に違和感をもたれることはないだろう。
以前、ショウがせっせと私に貢いでくれていたクランリー農場の農作物を食品庫にたくさんストックしていたお蔭もある。
さて、いよいよ幕の内弁当作りを始めたいと思う。
今日は朝早くからショウが手伝いに来てくれた。
楽しみで仕方がないと言うように瞳をキラキラさせたエプロン姿のお料理男子が私の隣に立っている。
そんなに料理を作るのが好きなのだろうか?
うん、たぶん、出来た料理を食べるのが好きなんだよね。カウンターからキラキラした瞳で覗いている白猫のように。
幕の内弁当のメニューは前世でも定番のものにしようと思う。
海老フライ……この世界ではブラックシュリフライ、鶏の唐揚げ、肉団子、ポテトサラダ、金平ゴボウ、野菜の煮物、漬け物……でいいかな?
先ずは野菜の皮をむいていく。以前よりもスムーズに皮をむくショウに感心した。
よくよく聞いてみると「いつでもカリンの手伝いが出来る様に練習した」とのことだ。
もしもし、ショウさん? 貴方の本業は冒険者でしたよね。
とついつい突っ込みたくなったが、喜々として野菜の皮をむくショウを見て何も言えなくなった。
楽しそうだからまあいいか。
皮をむいたジャガイモと人参を魔導レンジでチンしているうちにタマネギをスライスして水にさらし、キュウリは薄い輪切りにして塩をまぶしておく。
柔らかくなったジャガイモをショウに潰して貰い、私は人参とハムを小さく切ってショウが潰したジャガイモに入れ、塩胡椒とマヨネーズで混ぜた。
これでポテトサラダが完成だ。
味見をしたそうにしているグレンとショウに小さなお皿に盛ってあげると二人とも満足そうに頷いて顔を綻ばせている。
「カリン、後はどうするんだ?」
味見が終わるとショウが私に尋ねた。
「あっ、じゃあこのブラックシュリの殻をむいてくれる?」
そう言ったらショウは
「ウェッ……」
と言いながら黙って作業を始めた。
「なぁ、カリン。本当にコレ食うの?」
なんて最初は言っていたショウだったが
「食うも何もショウはもう既にピエトロさんのレストランで食べたじゃない」
と言う私の言葉を聞いてブラックシュリフライの正体を思い出したのか「おお、これがあれになるのか」と作業する手が早まった。
私はショウが殻をむいたブラックシュリに次々と下処理を施していく。前世の海老とすっかり同じなので迷わずに処理することが出来る。
細い串を背中に刺し、抉る様に背わたを取ったら、火を通したときに丸まらないように腹の部分に切り込みを入れてブチブチと伸ばしていく。
尻尾の先を切り落としてから塩胡椒で下味を付けてから小麦粉、卵、パン粉の順に衣をまぶす。
ブラックシュリンプの殻をむき終わったショウも私の指示通りに嬉しそうに衣をまぶしている。
どんどん衣をつけた物を油で揚げていくと、作業台の上にはあっという間にブラックシュリフライの山盛りができた。
「じゃあ、次にタルタルソース作るわよ」
私はブラックシュリフライを揚げている間に茹でておいた卵をショウに渡して殻をむいて貰うように渡した。
何の為の卵か説明するとショウは
「へぇ、あの白いソースに使うんだぁ」
と瞳をキラキラさせて喜々として卵の殻をむきだした。
私はその様子にショウがピエトロさんのレストランで食べたブラックシュリフライにかかっていたタルタルソースをとても気に入っていたことを思い出した。
そんな事を想いながら私はマヨネーズを作る為に卵をかき混ぜる。
男子、好きだよねぇ。タルタルソース。
今度、鶏南蛮でも作ろうかしら?
ショウが嬉しそうに食べる様子を想像すると自然と顔が緩んでくる。
ブラックシュリフライの調理が終わるともう夕飯の時間だったので、海老フライ定食ならぬブラックシュリフライ定食を今日の夕食として食べた。
もちろん、ショウもグレンも喜々として食べ、あっという間に完食した。
千切りキャベツの脇にポテトサラダを添えて揚げたてのブラックシュリフライに、それにご飯と味噌汁を付けたら私が前世で働いていた洋食レストランの海老フライセットを思い出した。
あのレストランは洋食レストランなのにセットメニューには必ず味噌汁が付いていた。でも、却ってそれが評判になって繁盛していたように思う。
私のお店にも洋食と和食をうまく融合させて提供しようかしら? そもそもこの世界では洋食とか和食とかの概念がないので特に違和感をもたれることはないだろう。
590
あなたにおすすめの小説
異世界でのんびり暮らしてみることにしました
松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/793391534/466596284/episode/5320962
https://www.alphapolis.co.jp/novel/793391534/84576624/episode/5093144
https://www.alphapolis.co.jp/novel/793391534/786307039/episode/2285646
家ごと異世界ライフ
ねむたん
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!
料理スキルで完璧な料理が作れるようになったから、異世界を満喫します
黒木 楓
恋愛
隣の部屋の住人というだけで、女子高生2人が行った異世界転移の儀式に私、アカネは巻き込まれてしまう。
どうやら儀式は成功したみたいで、女子高生2人は聖女や賢者といったスキルを手に入れたらしい。
巻き込まれた私のスキルは「料理」スキルだけど、それは手順を省略して完璧な料理が作れる凄いスキルだった。
転生者で1人だけ立場が悪かった私は、こき使われることを恐れてスキルの力を隠しながら過ごしていた。
そうしていたら「お前は不要だ」と言われて城から追い出されたけど――こうなったらもう、異世界を満喫するしかないでしょう。
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
召喚されたら聖女が二人!? 私はお呼びじゃないようなので好きに生きます
かずきりり
ファンタジー
旧題:召喚された二人の聖女~私はお呼びじゃないようなので好きに生きます~
【第14回ファンタジー小説大賞エントリー】
奨励賞受賞
●聖女編●
いきなり召喚された上に、ババァ発言。
挙句、偽聖女だと。
確かに女子高生の方が聖女らしいでしょう、そうでしょう。
だったら好きに生きさせてもらいます。
脱社畜!
ハッピースローライフ!
ご都合主義万歳!
ノリで生きて何が悪い!
●勇者編●
え?勇者?
うん?勇者?
そもそも召喚って何か知ってますか?
またやらかしたのかバカ王子ー!
●魔界編●
いきおくれって分かってるわー!
それよりも、クロを探しに魔界へ!
魔界という場所は……とてつもなかった
そしてクロはクロだった。
魔界でも見事になしてみせようスローライフ!
邪魔するなら排除します!
--------------
恋愛はスローペース
物事を組み立てる、という訓練のため三部作長編を予定しております。
異世界着ぐるみ転生
こまちゃも
ファンタジー
旧題:着ぐるみ転生
どこにでもいる、普通のOLだった。
会社と部屋を往復する毎日。趣味と言えば、十年以上続けているRPGオンラインゲーム。
ある日気が付くと、森の中だった。
誘拐?ちょっと待て、何この全身モフモフ!
自分の姿が、ゲームで使っていたアバター・・・二足歩行の巨大猫になっていた。
幸い、ゲームで培ったスキルや能力はそのまま。使っていたアイテムバッグも中身入り!
冒険者?そんな怖い事はしません!
目指せ、自給自足!
*小説家になろう様でも掲載中です
猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める
遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】
猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。
そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。
まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。
うちの孫知りませんか?! 召喚された孫を追いかけ異世界転移。ばぁばとじぃじと探偵さんのスローライフ。
かの
ファンタジー
孫の雷人(14歳)からテレパシーを受け取った光江(ばぁば64歳)。誘拐されたと思っていた雷人は異世界に召喚されていた。康夫(じぃじ66歳)と柏木(探偵534歳)⁈ をお供に従え、異世界へ転移。料理自慢のばぁばのスキルは胃袋を掴む事だけ。そしてじぃじのスキルは有り余る財力だけ。そんなばぁばとじぃじが、異世界で繰り広げるほのぼのスローライフ。
ばぁばとじぃじは無事異世界で孫の雷人に会えるのか⁈
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。