転生少女は異世界で理想のお店を始めたい 猫すぎる神獣と一緒に、自由気ままにがんばります!

梅丸みかん

文字の大きさ
79 / 93
連載

第百四十一話 アーニャの決意

しおりを挟む
「何て美味いんだ。飼料だと思っていた米をこんな風に食べる事ができるなんて」
「ふむ、野菜も肉もこんな料理法があるなんて!」
「このぷりぷりして周りがサクッとしているのは何だ? 白いソースがまた絶品だ!」
「それよりもこのカラッと揚げてある肉も美味しいわ」

「「「これを姫様が!!」」」
「「「姫様が料理の天才だったとは?!」」」
「「「姫様は精霊姫ではなく料理の女神様なのではないか?!」」」

 口々に料理を褒めちぎるクラレシアの民達の声は次第に私を崇める声に変わっていった。

「えっと……皆さん、私は女神様では無いのですが……でも、料理を褒めてくれて嬉しいです。私は近いうちにこの近くにあるガイストの森でお店を開くので是非皆さんも食べに来て下さいね」

 女神様でないと否定しつつちゃっかりとお店の宣伝を忘れない私。まあ、本気で女神様だなんて思ってないだろうけどそこまで料理を褒められるのは嬉しいものだ。

 私には料理を作ることくらいしか取り柄がないからね。

 チラリと目の端にちゃっかりグレンとショウがお弁当を美味しそうに食べているのを目に映しながら私はみんなの反応に満足した。

 それにしても、みんながこんなに美味しそうに食べてくれるなんて安心したわ。今回はお菓子を作るのが間に合わなかったけど、次回は何か甘い物でも作って差し入れしようかしら?

 そんなことを考えながら夢中でお弁当を食べるみんなの顔を見回していると、他の人達とは違って難しい顔をして食べるアーニャに目が止まった。

 あら? どうしたのかしら? 何か苦手な物でも入っていたかしら?

 私は疑問に思ってアーニャに声をかけるべく近づいた。

「アーニャ、どうしたの? 嫌いな物でもあった?」
「ベア……カリン様。いえいえ、カリン様もご存知の通り嫌いな食べ物などありません。もちろん全部美味しいですし、ただカリン様の料理の腕に感心していたのです」

 私はアーニャのことば「アーニャが嫌いな食べ物が無い事なんて知っていたかしら?」と疑問に思ったけど、敢えて口にはしなかった。

 それよりもさっきの顔は感心していたと言うよりも悩んでいたような顔に見えたけど気のせいかしら?

「だから、この料理はもっと世間に広めるべきです!」
 私の心配をよそに突然、アーニャが思い詰めたように大きな声を発したので私の肩がビクリと動いた。

「えっとぉ……だからお店を「それだけじゃダメです」」
 私の声に被せるように声を発しながらアーニャが立ち上がった。

 目を見開き驚きの顔でアーニャの顔に目をやると「言葉を遮ってすみません」とアーニャが我に返って謝罪した。

「あっ、あの……どういうことかしら? 私が始めるお店だけではダメと言うこと?」
「そうです。ああ、でも勘違いしないで下さい。カリン様はお好きな様にお店を始めて下さい。私は裏でサポートしますので」
「えっ? サポートって……?」

「アーニャ、もちろん私もサポートするぞ」
「俺もだ。こんな美味い料理はもっと広めるべきだ」
 強い口調でアーニャに同意するワシリーとエゴン。

 それを皮切りにどんどんサポートの声が広がって行く。

 突然のみんなの言葉に思考が追いつかない。

「私も手伝わせてください。姫様の料理はもっと他の人にも食べて貰うべきです」
「私も! こんな美味しい料理は初めてです。姫様の為なら何でもします」
「俺にもできることがあるなら何でもするぞ」
「わしもじゃ。姫様の料理をたくさんの人に食べて貰うのじゃ」
「「「私も」」」
「「「姫様の為に!!」」」
 
 私の料理を称賛する声が口々に上がった。

 こんなに喜んでくれるなんて……

「みなさん……ありがとうございます」
 私は、クラレシアの人達の言葉に胸が熱くなった。

 ああ、どうして私は……ベアトリーチェはあんなに頑なに一人で悩んでいたのだろう。

 こんなにも私を認めてくれる人達がいたというのに……

「さて、カリン様。それでは私にカリン様のお店のことを色々聞かせて下さい。それによってどうサポートしていくか計画を練りたいと思います。ここが落ち着いたらカリン様のお店に伺いたいと思いますがいいですか?」

 私が感動に浸っているとアーニャが居住まいを正して真剣な表情をした。

「ええと……それは構わないけど……計画とは?」
「もちろん、カリン様の料理を大々的に広げる計画です」

 私はアーニャの決心を固めたような顔に何も言えず受け入れることしかできなかった。

 結局、アーニャ、ワシリー、エゴンの三人が三日後に私の店に再度訪れることになったのだった。


しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

異世界でのんびり暮らしてみることにしました

松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。 https://www.alphapolis.co.jp/novel/793391534/466596284/episode/5320962 https://www.alphapolis.co.jp/novel/793391534/84576624/episode/5093144 https://www.alphapolis.co.jp/novel/793391534/786307039/episode/2285646

家ごと異世界ライフ

ねむたん
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!

料理スキルで完璧な料理が作れるようになったから、異世界を満喫します

黒木 楓
恋愛
 隣の部屋の住人というだけで、女子高生2人が行った異世界転移の儀式に私、アカネは巻き込まれてしまう。  どうやら儀式は成功したみたいで、女子高生2人は聖女や賢者といったスキルを手に入れたらしい。  巻き込まれた私のスキルは「料理」スキルだけど、それは手順を省略して完璧な料理が作れる凄いスキルだった。  転生者で1人だけ立場が悪かった私は、こき使われることを恐れてスキルの力を隠しながら過ごしていた。  そうしていたら「お前は不要だ」と言われて城から追い出されたけど――こうなったらもう、異世界を満喫するしかないでしょう。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

召喚されたら聖女が二人!? 私はお呼びじゃないようなので好きに生きます

かずきりり
ファンタジー
旧題:召喚された二人の聖女~私はお呼びじゃないようなので好きに生きます~ 【第14回ファンタジー小説大賞エントリー】 奨励賞受賞 ●聖女編● いきなり召喚された上に、ババァ発言。 挙句、偽聖女だと。 確かに女子高生の方が聖女らしいでしょう、そうでしょう。 だったら好きに生きさせてもらいます。 脱社畜! ハッピースローライフ! ご都合主義万歳! ノリで生きて何が悪い! ●勇者編● え?勇者? うん?勇者? そもそも召喚って何か知ってますか? またやらかしたのかバカ王子ー! ●魔界編● いきおくれって分かってるわー! それよりも、クロを探しに魔界へ! 魔界という場所は……とてつもなかった そしてクロはクロだった。 魔界でも見事になしてみせようスローライフ! 邪魔するなら排除します! -------------- 恋愛はスローペース 物事を組み立てる、という訓練のため三部作長編を予定しております。

異世界着ぐるみ転生

こまちゃも
ファンタジー
旧題:着ぐるみ転生 どこにでもいる、普通のOLだった。 会社と部屋を往復する毎日。趣味と言えば、十年以上続けているRPGオンラインゲーム。 ある日気が付くと、森の中だった。 誘拐?ちょっと待て、何この全身モフモフ! 自分の姿が、ゲームで使っていたアバター・・・二足歩行の巨大猫になっていた。 幸い、ゲームで培ったスキルや能力はそのまま。使っていたアイテムバッグも中身入り! 冒険者?そんな怖い事はしません! 目指せ、自給自足! *小説家になろう様でも掲載中です

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

うちの孫知りませんか?! 召喚された孫を追いかけ異世界転移。ばぁばとじぃじと探偵さんのスローライフ。

かの
ファンタジー
 孫の雷人(14歳)からテレパシーを受け取った光江(ばぁば64歳)。誘拐されたと思っていた雷人は異世界に召喚されていた。康夫(じぃじ66歳)と柏木(探偵534歳)⁈ をお供に従え、異世界へ転移。料理自慢のばぁばのスキルは胃袋を掴む事だけ。そしてじぃじのスキルは有り余る財力だけ。そんなばぁばとじぃじが、異世界で繰り広げるほのぼのスローライフ。  ばぁばとじぃじは無事異世界で孫の雷人に会えるのか⁈

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。