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第百四十二話 お礼のお礼
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「久しぶりに森に食材を探しに行こうかしら? 最近家の中に籠りきりだったし……」
「うん、それはいいね。」
私が何気なく口にした提案に直ぐに同意するショウ。
今日もショウは朝早くから家に来ている。しかも一緒に朝食を食べている。
野菜たっぷりのお味噌汁と玄米ご飯の上に刻んで炒めたベーコンと目玉焼きをのせた丼飯だ。手抜き感があるが意外とこれが美味しいのだ。
ベーコンは、先日ヨダの町にお弁当の食材の買い出しに行ったときにゼフィロ爺さんのお肉屋さんで手に入れた。ゼフィロ爺さんは相変わらず新商品の開発に余念がなかった。
私が店で買い物をしたらゼフィロ爺さんは他に何かアイデアがないか聞いて来た。実はベーコンのことも以前私がこんなのあれば良いなぁと何気なく話していたのが切っ掛けで作ったらしい。
だからアイデア料としてタダでたくさん貰ってしまった。
今回は「生ハム」や「チーズ入りソーセージ」のことを伝えてきたので近い将来新商品としてお店に並ぶかも知れない。
楽しみだ。
「これ美味いね。やっぱりカリンは天才だなぁ」
相変わらずショウの感想はワンパターンだが、それでも幸せそうに食べている顔にまた作ってあげたいと思ってしまう私は単純だ。
この人冒険者家業はどうしたんだ? と以前まで思っていたが、今はもういっその事私の店の従業員として雇ってしまおうかしらと考えるようになった。
「蜂蜜がもうないのよねぇ……」
『なに? 蜂蜜とはあの甘くてトロッとしたパンケーキにかけていたヤツか? それは大変ではないか?』
お茶の準備をしながらポツリと零した私の声に大げさに反応するグレン。この世の終わりみたいな顔をしている。
そう言えばグレンはやけに蜂蜜を気に入っていたわね。
「グレン、そんなにショックを受けなくて大丈夫よ。かわりにメープルシロップを採りに行こうと思うの」
「『メープルシロップ?』」
ショウとグレンが私の言葉に一緒に首を傾げた。
あら……なんか可愛いわね。
同じ反応にほっこりする私。
「そう、メープルシロップ。この森の奥、赤松の群生の手前にあるメルプの木の樹液のことよ。風味も甘い味も蜂蜜に負けないくらい美味しいのよ」
メルプの木の樹液の味を実際に確かめたことはないけど、以前検索したタブレット情報によると前世のメープルシロップだと言うので間違いないだろう。
いつか絶対採りに行こうと思っていたのだ。
私の説明でショウとグレンの瞳がキラキラと輝いた。
『よし、それでは行こう。今すぐ行こう』
「もちろん俺も行って手伝うよ」
二人がすっくと立ち上がり家を出ようとするのを私は慌てて呼び止める。
「ちょっと待って、先ずはお茶を飲んで少し休んでから行きましょう。メルプの木は逃げないわ」
今丁度入れたばかりのハーブティーをテーブルの上に置くと、二人は再び椅子に腰掛けた。
直ぐに取り出しやすいように樹液を採取するための道具を一カ所に集めておく。
ガラスでできた大きめの瓶。木に穴を開けるための手動ドリル。穴に差すための金属ホース。
いつかメールシロップを採取するときの為に創造魔法で製作していたものだ。
「それをどうするんだ?」
私がせっせと調理台の上に並べるのを見てショウが尋ねた。
「もちろん、メープルシロップを採取するための道具よ」
私の答えに「なるほど」とショウは腕を組んで言ったけど多分分かっていないと思う。
何はともあれ、私達はメルプの木に向けて家を後にした。
雪は降らないけど、今は前世で言えば冬に当たる季節だけあって風が冷たい。
セレンさんが羊毛を編んで作ってくれた大きめのショールに身を包んで行くことにした。
いつも美味しいお土産をくれるお礼だとショウが今朝持って来てくれたのだ。何と、お揃いの手袋まである。
ありがたい。
ポカポカとセレンさんの温かさを感じるショールは前世の母と今世の母を思い出し思わず涙が滲みそうになった。
メープルシロップを採取したら美味しいスイーツでも作ってまたお礼のお礼をショウに持って行ってもらおうか……うううん、自分で届けよう。
心の籠もった贈り物のお礼はちゃんと自分の口から伝えたいから。
「うん、それはいいね。」
私が何気なく口にした提案に直ぐに同意するショウ。
今日もショウは朝早くから家に来ている。しかも一緒に朝食を食べている。
野菜たっぷりのお味噌汁と玄米ご飯の上に刻んで炒めたベーコンと目玉焼きをのせた丼飯だ。手抜き感があるが意外とこれが美味しいのだ。
ベーコンは、先日ヨダの町にお弁当の食材の買い出しに行ったときにゼフィロ爺さんのお肉屋さんで手に入れた。ゼフィロ爺さんは相変わらず新商品の開発に余念がなかった。
私が店で買い物をしたらゼフィロ爺さんは他に何かアイデアがないか聞いて来た。実はベーコンのことも以前私がこんなのあれば良いなぁと何気なく話していたのが切っ掛けで作ったらしい。
だからアイデア料としてタダでたくさん貰ってしまった。
今回は「生ハム」や「チーズ入りソーセージ」のことを伝えてきたので近い将来新商品としてお店に並ぶかも知れない。
楽しみだ。
「これ美味いね。やっぱりカリンは天才だなぁ」
相変わらずショウの感想はワンパターンだが、それでも幸せそうに食べている顔にまた作ってあげたいと思ってしまう私は単純だ。
この人冒険者家業はどうしたんだ? と以前まで思っていたが、今はもういっその事私の店の従業員として雇ってしまおうかしらと考えるようになった。
「蜂蜜がもうないのよねぇ……」
『なに? 蜂蜜とはあの甘くてトロッとしたパンケーキにかけていたヤツか? それは大変ではないか?』
お茶の準備をしながらポツリと零した私の声に大げさに反応するグレン。この世の終わりみたいな顔をしている。
そう言えばグレンはやけに蜂蜜を気に入っていたわね。
「グレン、そんなにショックを受けなくて大丈夫よ。かわりにメープルシロップを採りに行こうと思うの」
「『メープルシロップ?』」
ショウとグレンが私の言葉に一緒に首を傾げた。
あら……なんか可愛いわね。
同じ反応にほっこりする私。
「そう、メープルシロップ。この森の奥、赤松の群生の手前にあるメルプの木の樹液のことよ。風味も甘い味も蜂蜜に負けないくらい美味しいのよ」
メルプの木の樹液の味を実際に確かめたことはないけど、以前検索したタブレット情報によると前世のメープルシロップだと言うので間違いないだろう。
いつか絶対採りに行こうと思っていたのだ。
私の説明でショウとグレンの瞳がキラキラと輝いた。
『よし、それでは行こう。今すぐ行こう』
「もちろん俺も行って手伝うよ」
二人がすっくと立ち上がり家を出ようとするのを私は慌てて呼び止める。
「ちょっと待って、先ずはお茶を飲んで少し休んでから行きましょう。メルプの木は逃げないわ」
今丁度入れたばかりのハーブティーをテーブルの上に置くと、二人は再び椅子に腰掛けた。
直ぐに取り出しやすいように樹液を採取するための道具を一カ所に集めておく。
ガラスでできた大きめの瓶。木に穴を開けるための手動ドリル。穴に差すための金属ホース。
いつかメールシロップを採取するときの為に創造魔法で製作していたものだ。
「それをどうするんだ?」
私がせっせと調理台の上に並べるのを見てショウが尋ねた。
「もちろん、メープルシロップを採取するための道具よ」
私の答えに「なるほど」とショウは腕を組んで言ったけど多分分かっていないと思う。
何はともあれ、私達はメルプの木に向けて家を後にした。
雪は降らないけど、今は前世で言えば冬に当たる季節だけあって風が冷たい。
セレンさんが羊毛を編んで作ってくれた大きめのショールに身を包んで行くことにした。
いつも美味しいお土産をくれるお礼だとショウが今朝持って来てくれたのだ。何と、お揃いの手袋まである。
ありがたい。
ポカポカとセレンさんの温かさを感じるショールは前世の母と今世の母を思い出し思わず涙が滲みそうになった。
メープルシロップを採取したら美味しいスイーツでも作ってまたお礼のお礼をショウに持って行ってもらおうか……うううん、自分で届けよう。
心の籠もった贈り物のお礼はちゃんと自分の口から伝えたいから。
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