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1巻
1-3
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◇◆◇
一階の厨房は、前世で開店準備をしていた店舗にあったものと見た感じ変わらないようだ。店のカウンターを挟んでシステムキッチンに作業台がある。
でも材料がないから何も作れない。
「まずはなんか食べないといけないわね……この家の周りに木の実とか果実とかないかしら?」
別にそんなにお腹が空いているわけではない。今は興奮状態だからなのか、グレンが出してくれた命の泉の水のお陰なのか分からないが。
だからといって何も食べないわけにはいかない。この身体が飢餓状態であることに変わりはないのだから。
悩んでいると不意にグレンが私の目の前に浮かんだ。
『案ずるな。神の庭に行けば果実を手に入れることができる。まずはそこへ行くといいだろう』
「神の庭?」
私はグレンの言葉の意味を掴めず首を傾げた。
『そう、神の庭だ。こっちだ、付いてくるがよい』
なんだか知らないが、グレンが促すので私はその後を黙って付いていく。
グレンが向かったのは、休憩室の奥にあるさっき下りてきたばかりの螺旋階段だった。その螺旋階段の脇を通り過ぎ、奥の壁の前で止まった。
『さあ、この壁に手のひらを当て魔力を流すのだ』
私はグレンの言うままに壁に手のひらを当て目を瞑って集中してから魔力を流した。
すると、魔法陣の光が浮き上がり、今まで何もなかった壁に突然白い扉が現れた。
「こっ、これは……」
私はあまりの驚きに声を失った。
『さぁ、その扉を開けてみるがよい』
グレンの声を受けて私はそっと取っ手を回し、戸を開けた。すると下に続く階段が現れた。
「地下室?」
グレンは私の問いに頷くと、階段を軽やかに下りていく。私は一瞬躊躇したが、思い切ってグレンの後に付いていった。
階段を下りた突き当たりには銀色の扉があり、心なしか光を帯びているように見えた。
『さあ、この扉に再び手のひらを当てるのだ』
さっきと同じようにグレンに促されるまま、扉に手のひらを当てた。
すると、眩しいほどに扉が光り、目の前には言葉では言い表せないほど美しい景色が広がっていた。
風光明媚。その言葉が真っ先に頭に浮かんだ。
学生の頃、こんな四文字熟語使う時あるのかな? と疑問に思いながら勉強してたけど、あったわ、今。そんなことを思いながら現実とはかけ離れた景色をじっくり眺める。
色とりどりの花々が咲き乱れ、木々には様々な果実が生っている。太陽は見当たらないのに水色の空からは淡い光が差し、空気がキラキラ輝いているようだ。
信じられない。本当に信じられない。私は暫く声を出すことも忘れて、その風景に見とれてしまった。あまりにも美しく清浄さも感じるその景色は天国だと言われても不思議ではない。
「えっ? ここって地下室だよね?」
ついつい辺りを見回す私。
『神の庭の一部をここに繋げたのだ』
私の言葉を受けたグレンが答えてくれたのだが、私はあまりのことにすぐに意味を捉えることができなかった。
「えっ? 神の庭? だから何それ?」
『其方の食生活を補うためにラシフィーヌ様が用意されたのだ。この場所にはラシフィーヌ様が地球を参考に再現した果実が実っている。とはいえ、あくまでも地球のものをそのまま持ってこられるわけではない。アスティアーテに現存しているもので代用しているに過ぎない。それでも、神の庭で育っているだけで味も栄養価も格段によいのだが』
グレンの言葉を聞いた私は、周辺を見回した。木々には様々な色を纏った果実が風景を彩っている。
『とりあえず、目に留まった果実を食すがよい。カリンに足りない栄養を補ってくれるだろう。それに身体を回復させる効果もあるのだ。因みにこの場所は他の人間が踏み入ることはできない。ラシフィーヌ様の加護を持つ其方だけがここに立ち入ることを許されたのだ。もちろん、神獣である某はいつでもここに来ることができるのは言うまでもないがな』
なんかそれってとってもすごいことのような気がする。身体を回復させるって、これはそうそう世に出してはいけない食べ物かもしれない。
でも、今は深く考えずありがたく果実をいただくことにしよう。私の身体は死から蘇ったばかりなのだ。身体の回復は私にとって最重要事項だ。
そう結論づけて神の庭に一歩踏み出そうとしたが、ふと気づいた。
「あっ、でも私、室内履きのままだわ」
『心配するでない。そのままでよい。神の庭では汚れることはないからな』
グレンの言葉に安心して神の庭に足を踏み入れた。
木に生っている様々な果実。前世で馴染みのある形のものからちょっと似ているけど僅かに違うものなど様々な種類の果実が生る木を眺めていく。
『これなどどうだ?』
グレンがそう言って口にくわえて運んできたのは、赤く熟したプラムのような果実だった。口元に持っていくと甘い香りがする。私はそれにかぶりつき口に含んだ。瑞々しく甘酸っぱい味が口の中に広がった。
「美味しい!」
私はそう言うとあっという間にその果実を食べきってしまった。そこでふと、気づいた。
「あれ? この果物、種がなかった」
『ああ、神の庭の植物は枯れることもないし、果実をもいでもすぐに同じ場所に同じ果実が生るからな。種は必要ないのだ』
「なるほど~」
増やさなくてもなくなることがないのなら、そりゃあ種は必要ないよね。私は妙に納得しながら木々の間を縫うように歩を進めた。
少し行くと開けた場所があり、そこには小さな白い石造りのガゼボが周りの景色に調和するように存在していた。
様々な色を成す果実の木に囲まれているそのガゼボの中には、白い丸テーブルと可愛らしい椅子が備え付けてあった。私は近づくと早速その椅子に腰かけた。
『暫し待たれよ』
グレンはそう私に声をかけると、足早に木々の中を駆け巡り、色とりどりの果実をどんどんガゼボの中の白い丸テーブルに置いていった。
「すごい! 見たこともない果物がたくさんあるのね」
私はこんもりと盛られたうちの一つ、手のひらに乗るほどの楕円形の黄色い果実を取り、香りを嗅いでみた。仄かに甘い香りに覚えがあるような気がして、思わずそのまま一口囓ってみた。
「やっぱり思った通りの味だわ! これも美味しい!」
口の中に広がる甘みは前世で食べたバナナに似ているが、若干スッキリとした後味だ。それでももったりした食感と香りはバナナそっくりである。
神の庭の果実であるせいか、皮ごと食べてもなんの問題もなく美味しく食べられた。
最後にオレンジ色の小さなリンゴのような果実を食べると、元々小さな身体の私はすっかりお腹いっぱいになってしまった。
充分に果実を堪能した私は、もう一度周りの景色を見回した。天国のような自然に溢れたこの景色、収穫してもすぐに生る果実、本当に神の庭に相応しいといえるこの場所をラシフィーヌ様が私に提供してくれたことに感謝した。
「グレン、ごめんね。せっかくたくさん取ってきてくれたのに、もうお腹いっぱいで食べられないわ。でも、残したら勿体ないわね……」
『心配無用だ。時間停止機能がある食品庫に保管すれば問題ない』
ションボリする私にグレンがとんでもないことを告げた。
「えっ? 時間停止機能?」
グレンが言うには、パントリーにあった食品庫には時間停止機能が付いているらしい。そこに食品を入れておけば、入れた時の状態のまま食品を永遠に保存できるというのだ。
つまり、採れたての果物は採れたてのままに、作りたての料理は作りたてのままに保存できるそうだ。
そうか、あの食品庫はただの食品庫ではなかったのね。
それにしても家の中が広すぎると感じるのは気のせいだろうか。いや、広すぎるから不満があるわけではない。でも、最初に見たこの家の外観を思い出すと、家の中がこんなに広いのはおかしいのだ。
いや、そもそも神の庭があること自体おかしいのだが。
しかし、それを除いたとしても広すぎるのではないだろうか?
グレンにその疑問を問うた。
「ねぇ、ちょっと疑問なんだけど。この家の中って外観よりもなんかとても広い感じがするんだけど……」
『それはそうだろう。ラシフィーヌ様がこの家を創造する際、空間拡張機能を施しておるからな』
「え? そんなこともできるの? さすが女神様!」
今さらながらにラシフィーヌ様のすごさを実感した。
――――ラシフィーヌ様、重ね重ねありがとうございます。胡散臭いとか思ってごめんなさい。
私は心の中でラシフィーヌ様にお礼と謝罪を述べながら、グレンを伴って多すぎる果物と共に厨房へと向かった。
因みに果物は持ちきれないので魔法で浮かせて運んでいる。
魔法……便利すぎる。
◇◆◇
「平皿、スープ皿、コップがそれぞれ一個ずつあるわね……これもラシフィーヌ様作よねぇ……」
パントリーの棚を一段ずつ確認していると、目の前の棚の上に黒くて平べったい板のような物が置いてあることに気づいた。
スマホの倍くらいの大きさで角が少し丸くなっている。片手で簡単に持ち上げられ、とても軽い。棚に置かれていた時は黒く見えたのに、手で持つと若干透き通って見えた。
「なんだろう? これ……」
『それは情報を得るための魔導具だ』
「えっ? 魔導具? もしかしてスマホみたいな物?」
『まぁ、似ていると言えば似ているかもしれんが、通信機能は付いていない。その板に魔力を流し、知りたいことを心の中で唱えれば教えてくれるのだ。アスティアーテの情報も地球の情報も得ることができるぞ。地球に関しては某が五千年ほど調査した故、情報量は十分であろう』
私が小首を傾げて疑問を投げかけると、グレンがすぐに教えてくれた。
それよりも、グレンが五千年も前から地球に来ていたことに驚いた。地球のことを私より知っているんだろうな。特に私、歴史が苦手だったし……
でも、このタブレットみたいな魔導具があれば情報を取得できるから問題ないわね。
さて、それでは早速タブレットに聞いてみよう。
まずは……
――私が今いる場所はなんていう国かしら?
私は一番気になっていることをその魔導具に向かって心の中で唱えた。
ティディアール王国。人口三千万人。人口、面積共全世界第三位。
「へぇ~、私ってばかなりの大国に転生したのね」
――私がいるこの森について教えて、そうね、場所とか名称があれば。
ティディアール王国の王都グレサリアから南へ馬車で五日、タングステン領の東、ヨダの町の近くにある森でガイストの森と呼ばれている。
「なるほど、なるほど。ということは、ここから一番近い町がヨダの町ということね。王都から結構離れた場所のようだから、それほど大きな町でもないのかしら? 色々落ち着いたら行ってみよーっと! それにしても地図まで表示されるなんて至れり尽くせりね」
私は、タブレットみたいな魔導具を見つめ口角を上げた。
さらに、色々この世界やこの国のことについて調べた。そのお陰でこの世界やこの国の基礎知識が備わったのではないかと思う。
この世界には大きく分けて三つの大陸がある。その中でも最も大きな大陸、テネシン大陸にある国がこのティディアール王国だ。ティディアール王国はこのテネシン大陸では二番目に大きな国だ。
では、この世界で最も大きな国はというと、大陸一つが一つの国として存在するテルル連邦国である。テルル連邦国には様々な人種が居住しているらしい。
前世で言えばアメリカ合衆国がそれに当たるのではないだろうか? と勝手に想像してしまった。
この世界の国々は基本的に封建国家である。つまり、権力を中心に主従関係が構成された政治により統治されている。王族の下には貴族が傅き、その下には平民が傅く。
う~ん、封建制かぁ~。これって前世の歴史を鑑みるとそのうち廃れるのでは? まぁ、この世界は前世よりも大分遅れているようだし、魔法もあるようだからそうとは限らないのかしら……?
封建制とはいえ上に立つ者が賢王であれば国民は幸せに暮らせるのだろうけど……ここに来たばかりでまだこの国がよい国かどうかは分からない。
まあ、少しずつ知ればいいか。時間はたっぷりあるのだから……
小説や映画では横柄な王族や貴族のことが描かれていたりしたけど、いるんだろうなぁ、そういう人たち。
地図を見る限りこの場所は王都から結構離れているみたいだから、そうそう関わることはないだろうけど、権力者に近づくと碌なことにならないような気がする。あまり関わらないようにしよーっと!
この世界では目立たず、まったりとした日常を過ごそうと決心した瞬間だった。
で、この世界で生きていくために肝心なこと、お金についても調べてみた。
この国の貨幣は、銅貨、銀貨、金貨、白金貨、黒金貨の五種類である。
銅貨一枚が百ロンで日本円換算で百円である。つまり、ロンと円は通貨単位名が違うだけで同じ価値のようだ。銀貨一枚が千ロン、金貨一枚が一万ロン、白金貨一枚が十万ロン、黒金貨一枚が百万ロンの価値がある。
そして、一般庶民の一月の生活費は約五万ロン、つまり日本円で五万円だ。
因みに、この世界ではどの国でも貨幣価値は同じのようだ。ただし、作られた国によってコインに施されている絵柄が違う。
で、ここで重要な問題がある。今、私にはお金がない。神の庭に果物があるから飢え死にすることはないだろうが、それだけでは料理することができない。つまり、せっかく女神様からいただいたお店をオープンすることができないのだ。
何か売れる物はないだろうか? そう思って寝室へ行って家捜しすることにした。女神様からいただいた物だけど売ってもいいよね?
寝室に入り、まずはタンスの中身からチェックする。
「ん? あれ? さっきこんな物あったっけ?」
私はタンスの上に置いてある木でできた熊らしき頭が付いている円柱の置物を手に取った。熊の頭はリアルすぎてなんだか可愛くない。高さは二十センチメートルくらいある。持ち上げる時にジャラッと音がした。中に何か入っているみたいだ。
「中が空洞になっているのかなぁ? どうやって開けるのだろう?」
私がおもむろに熊の頭を引っ張ると、ポコッという音と共に簡単に取れてしまった。中には銀色のコインがいくつも入っていた。
「えっ? お金? なんで?」
暫し固まったが、前世の記憶が蘇ってきた。
そういえば、前世では五百円玉貯金をしていた。プラスチックの熊の貯金箱に。もしかして、それを、この世界バージョンで女神様が再現してくれたのだろうか?
『それは前世のカリンの部屋にあった物を参考に再現した物だとラシフィーヌ様が言っていたぞ。お金も必要だろうからとな』
なるほど、やっぱり思った通りだった。
それにしてもこの熊の貯金箱は適当すぎやしないかい? 全然可愛くない。前世で北の方に旅行に行った時に木彫りの熊の置物があったけど、なんだかそれに似ているような気がする。
こんな物誰が買うのかねぇ? とその時は思っていたけどまさか私が似たような物を手にするとは……
はぁ……。それにしてもこの貯金箱、私が前世で持っていた熊の貯金箱を模倣した物ではないよね。だって私が持っていた貯金箱は前世でも有名な可愛い熊のキャラクターだったのだから……
女神様の趣味ってどうなってんの?
などど些か失礼なことを考えながら、ハッとした。
いやいや、肝心なのは貯金箱ではなくて中身だ。前世では確か、二十万円くらいはあったと思う。だとしたら、この中にも同じくらいの金額が入っているのかもしれない。
そう考えて、コインを全て出して数えてみた。金貨が二十枚に銀貨が五枚で、全部で二十五枚。ということは、二十万五千ロン、日本円で二十万と五千円だ。
これで買い物ができる! 私が胸の前で手を合わせ、ラシフィーヌ様に感謝の言葉を述べたのは言うまでもない。
第三話 精霊の森
チュチュッ……チュチュチュチュッ…………
朝の訪れを告げるような軽やかな小鳥の声が微かに木々の中に響き渡り、心地よい目覚めを促す。
次第に温かくふかふかしたベッドの感触が身体に伝わってきた。少しずつ覚醒するとカーテンの隙間から漏れる淡い光が薄く開いた瞼の奥に届いた。
クリーム色の天井には丸いライトが浮かんでいるが、光は灯っていない。暗くなって明かりが必要な場合はこのライトに向かって魔力を放出すると明かりが点くようになっている。前世の照明と同じ機能だ。
今部屋を薄く照らすのは、カーテンから漏れている明かりのみだった。
「ここは……」
無意識に呟き、今の状況を思い出した。そうだ、私この世界に転生してきたんだった。
あれからなんだか疲れて眠ってしまったのだ。ベッドのシーツもかけ布団もとても手触りがよくてマットレスもふかふかしている。その気持ちよさのお陰でしっかり熟睡したようだ。
ベッドの上では、グレンが立ち上がり背伸びをしながら欠伸をしている。こうしているとまるで本当の猫のようだ。
「ふふっ……グレンって神獣なのに眠るのね」
『今は、物体化しているため眠ることができるのだ。眠るのは気持ちのよいものだな』
私の言葉にグレンがベッドから下りながら答えた。
洗面所に行き顔を洗い身支度を整える。
ふと、鏡に映る自分を見て気づいた。
「あれ? 昨日より随分顔色がよくなっている」
頬がふっくらして艶もよく、パッチリした瑠璃色の瞳は昨日よりも澄んでいて美しい。
藍色の髪の毛もサラサラして艶があるようだ。身体を見回すと骨と皮だけだった手足も、昨日よりは肉付きがよくなっているように感じる。
「うそでしょう? すっごい身体が回復しているんだけど!」
『ふむ、それは当然だと言えるな。命の泉の水を飲み、神の庭の果実を食すればそうなるに決まっている』
「えっ? 決まっているの? これってものすごくやばくない?」
グレンのその言葉に私は慄いた。
グレンは何気なく言っているが、これって普通のことじゃないよね。でもまぁ、この世界のことはまだよく知らないし今は深く考えなくていいかぁ。
元来、ことなかれ主義の私はスルーすることにした。
さて、今日はこの家の周辺を探索したいと思う。とはいえ、この家は森の入り口付近に位置する。森の入り口付近だけど危険な動物がいないとはいえない。
前世の平和な日本でさえ田舎に行くと熊の被害があったくらいだ。この世界ではどんな危険があるのか分からない。
そう考えると外に出るのはちょっと怖い。
「ねぇグレン、今日は森の中を探索したいと思うんだけど、この付近に危険な動物とかいる?」
『この家の周りにはそれほど強い動物はいないが、森の奥には魔獣がおるな。だが心配には及ばない。結界がある故。それに某よりも強い魔獣はこの世界にはおらぬからな。某の傍にも近寄ることはないであろう』
やっぱり魔獣っているんだ。さすが異世界。でも、グレンより強い魔獣はいないって、やっぱり神獣だから格が違うってことかしら?
「なら大丈夫ね。グレン、今日は森を探索するわよ」
『あい分かった』
今日は最初に着ていたシンプルな薄紫のワンピースを着て外に出ようと思う。魔導洗濯乾燥機で洗濯して汚れは落ちた。破れた場所は魔法で修復したから問題なく着られそうだ。
こうしてみると肌触りがよいので割と高価な生地を使っているのかもしれない。
女郎蜘蛛の糸で作った真っ白な服はこの世界では浮いてしまうかもしれない。万が一誰かに出会った時に訝しがられても嫌だからね。
着替えると昨日残っていた果実を食品庫から出して朝食を取ることにした。
店内にあるカウンター席に座り、お皿に載った果実を一つ手に持ってジッと眺めた。
一階の厨房は、前世で開店準備をしていた店舗にあったものと見た感じ変わらないようだ。店のカウンターを挟んでシステムキッチンに作業台がある。
でも材料がないから何も作れない。
「まずはなんか食べないといけないわね……この家の周りに木の実とか果実とかないかしら?」
別にそんなにお腹が空いているわけではない。今は興奮状態だからなのか、グレンが出してくれた命の泉の水のお陰なのか分からないが。
だからといって何も食べないわけにはいかない。この身体が飢餓状態であることに変わりはないのだから。
悩んでいると不意にグレンが私の目の前に浮かんだ。
『案ずるな。神の庭に行けば果実を手に入れることができる。まずはそこへ行くといいだろう』
「神の庭?」
私はグレンの言葉の意味を掴めず首を傾げた。
『そう、神の庭だ。こっちだ、付いてくるがよい』
なんだか知らないが、グレンが促すので私はその後を黙って付いていく。
グレンが向かったのは、休憩室の奥にあるさっき下りてきたばかりの螺旋階段だった。その螺旋階段の脇を通り過ぎ、奥の壁の前で止まった。
『さあ、この壁に手のひらを当て魔力を流すのだ』
私はグレンの言うままに壁に手のひらを当て目を瞑って集中してから魔力を流した。
すると、魔法陣の光が浮き上がり、今まで何もなかった壁に突然白い扉が現れた。
「こっ、これは……」
私はあまりの驚きに声を失った。
『さぁ、その扉を開けてみるがよい』
グレンの声を受けて私はそっと取っ手を回し、戸を開けた。すると下に続く階段が現れた。
「地下室?」
グレンは私の問いに頷くと、階段を軽やかに下りていく。私は一瞬躊躇したが、思い切ってグレンの後に付いていった。
階段を下りた突き当たりには銀色の扉があり、心なしか光を帯びているように見えた。
『さあ、この扉に再び手のひらを当てるのだ』
さっきと同じようにグレンに促されるまま、扉に手のひらを当てた。
すると、眩しいほどに扉が光り、目の前には言葉では言い表せないほど美しい景色が広がっていた。
風光明媚。その言葉が真っ先に頭に浮かんだ。
学生の頃、こんな四文字熟語使う時あるのかな? と疑問に思いながら勉強してたけど、あったわ、今。そんなことを思いながら現実とはかけ離れた景色をじっくり眺める。
色とりどりの花々が咲き乱れ、木々には様々な果実が生っている。太陽は見当たらないのに水色の空からは淡い光が差し、空気がキラキラ輝いているようだ。
信じられない。本当に信じられない。私は暫く声を出すことも忘れて、その風景に見とれてしまった。あまりにも美しく清浄さも感じるその景色は天国だと言われても不思議ではない。
「えっ? ここって地下室だよね?」
ついつい辺りを見回す私。
『神の庭の一部をここに繋げたのだ』
私の言葉を受けたグレンが答えてくれたのだが、私はあまりのことにすぐに意味を捉えることができなかった。
「えっ? 神の庭? だから何それ?」
『其方の食生活を補うためにラシフィーヌ様が用意されたのだ。この場所にはラシフィーヌ様が地球を参考に再現した果実が実っている。とはいえ、あくまでも地球のものをそのまま持ってこられるわけではない。アスティアーテに現存しているもので代用しているに過ぎない。それでも、神の庭で育っているだけで味も栄養価も格段によいのだが』
グレンの言葉を聞いた私は、周辺を見回した。木々には様々な色を纏った果実が風景を彩っている。
『とりあえず、目に留まった果実を食すがよい。カリンに足りない栄養を補ってくれるだろう。それに身体を回復させる効果もあるのだ。因みにこの場所は他の人間が踏み入ることはできない。ラシフィーヌ様の加護を持つ其方だけがここに立ち入ることを許されたのだ。もちろん、神獣である某はいつでもここに来ることができるのは言うまでもないがな』
なんかそれってとってもすごいことのような気がする。身体を回復させるって、これはそうそう世に出してはいけない食べ物かもしれない。
でも、今は深く考えずありがたく果実をいただくことにしよう。私の身体は死から蘇ったばかりなのだ。身体の回復は私にとって最重要事項だ。
そう結論づけて神の庭に一歩踏み出そうとしたが、ふと気づいた。
「あっ、でも私、室内履きのままだわ」
『心配するでない。そのままでよい。神の庭では汚れることはないからな』
グレンの言葉に安心して神の庭に足を踏み入れた。
木に生っている様々な果実。前世で馴染みのある形のものからちょっと似ているけど僅かに違うものなど様々な種類の果実が生る木を眺めていく。
『これなどどうだ?』
グレンがそう言って口にくわえて運んできたのは、赤く熟したプラムのような果実だった。口元に持っていくと甘い香りがする。私はそれにかぶりつき口に含んだ。瑞々しく甘酸っぱい味が口の中に広がった。
「美味しい!」
私はそう言うとあっという間にその果実を食べきってしまった。そこでふと、気づいた。
「あれ? この果物、種がなかった」
『ああ、神の庭の植物は枯れることもないし、果実をもいでもすぐに同じ場所に同じ果実が生るからな。種は必要ないのだ』
「なるほど~」
増やさなくてもなくなることがないのなら、そりゃあ種は必要ないよね。私は妙に納得しながら木々の間を縫うように歩を進めた。
少し行くと開けた場所があり、そこには小さな白い石造りのガゼボが周りの景色に調和するように存在していた。
様々な色を成す果実の木に囲まれているそのガゼボの中には、白い丸テーブルと可愛らしい椅子が備え付けてあった。私は近づくと早速その椅子に腰かけた。
『暫し待たれよ』
グレンはそう私に声をかけると、足早に木々の中を駆け巡り、色とりどりの果実をどんどんガゼボの中の白い丸テーブルに置いていった。
「すごい! 見たこともない果物がたくさんあるのね」
私はこんもりと盛られたうちの一つ、手のひらに乗るほどの楕円形の黄色い果実を取り、香りを嗅いでみた。仄かに甘い香りに覚えがあるような気がして、思わずそのまま一口囓ってみた。
「やっぱり思った通りの味だわ! これも美味しい!」
口の中に広がる甘みは前世で食べたバナナに似ているが、若干スッキリとした後味だ。それでももったりした食感と香りはバナナそっくりである。
神の庭の果実であるせいか、皮ごと食べてもなんの問題もなく美味しく食べられた。
最後にオレンジ色の小さなリンゴのような果実を食べると、元々小さな身体の私はすっかりお腹いっぱいになってしまった。
充分に果実を堪能した私は、もう一度周りの景色を見回した。天国のような自然に溢れたこの景色、収穫してもすぐに生る果実、本当に神の庭に相応しいといえるこの場所をラシフィーヌ様が私に提供してくれたことに感謝した。
「グレン、ごめんね。せっかくたくさん取ってきてくれたのに、もうお腹いっぱいで食べられないわ。でも、残したら勿体ないわね……」
『心配無用だ。時間停止機能がある食品庫に保管すれば問題ない』
ションボリする私にグレンがとんでもないことを告げた。
「えっ? 時間停止機能?」
グレンが言うには、パントリーにあった食品庫には時間停止機能が付いているらしい。そこに食品を入れておけば、入れた時の状態のまま食品を永遠に保存できるというのだ。
つまり、採れたての果物は採れたてのままに、作りたての料理は作りたてのままに保存できるそうだ。
そうか、あの食品庫はただの食品庫ではなかったのね。
それにしても家の中が広すぎると感じるのは気のせいだろうか。いや、広すぎるから不満があるわけではない。でも、最初に見たこの家の外観を思い出すと、家の中がこんなに広いのはおかしいのだ。
いや、そもそも神の庭があること自体おかしいのだが。
しかし、それを除いたとしても広すぎるのではないだろうか?
グレンにその疑問を問うた。
「ねぇ、ちょっと疑問なんだけど。この家の中って外観よりもなんかとても広い感じがするんだけど……」
『それはそうだろう。ラシフィーヌ様がこの家を創造する際、空間拡張機能を施しておるからな』
「え? そんなこともできるの? さすが女神様!」
今さらながらにラシフィーヌ様のすごさを実感した。
――――ラシフィーヌ様、重ね重ねありがとうございます。胡散臭いとか思ってごめんなさい。
私は心の中でラシフィーヌ様にお礼と謝罪を述べながら、グレンを伴って多すぎる果物と共に厨房へと向かった。
因みに果物は持ちきれないので魔法で浮かせて運んでいる。
魔法……便利すぎる。
◇◆◇
「平皿、スープ皿、コップがそれぞれ一個ずつあるわね……これもラシフィーヌ様作よねぇ……」
パントリーの棚を一段ずつ確認していると、目の前の棚の上に黒くて平べったい板のような物が置いてあることに気づいた。
スマホの倍くらいの大きさで角が少し丸くなっている。片手で簡単に持ち上げられ、とても軽い。棚に置かれていた時は黒く見えたのに、手で持つと若干透き通って見えた。
「なんだろう? これ……」
『それは情報を得るための魔導具だ』
「えっ? 魔導具? もしかしてスマホみたいな物?」
『まぁ、似ていると言えば似ているかもしれんが、通信機能は付いていない。その板に魔力を流し、知りたいことを心の中で唱えれば教えてくれるのだ。アスティアーテの情報も地球の情報も得ることができるぞ。地球に関しては某が五千年ほど調査した故、情報量は十分であろう』
私が小首を傾げて疑問を投げかけると、グレンがすぐに教えてくれた。
それよりも、グレンが五千年も前から地球に来ていたことに驚いた。地球のことを私より知っているんだろうな。特に私、歴史が苦手だったし……
でも、このタブレットみたいな魔導具があれば情報を取得できるから問題ないわね。
さて、それでは早速タブレットに聞いてみよう。
まずは……
――私が今いる場所はなんていう国かしら?
私は一番気になっていることをその魔導具に向かって心の中で唱えた。
ティディアール王国。人口三千万人。人口、面積共全世界第三位。
「へぇ~、私ってばかなりの大国に転生したのね」
――私がいるこの森について教えて、そうね、場所とか名称があれば。
ティディアール王国の王都グレサリアから南へ馬車で五日、タングステン領の東、ヨダの町の近くにある森でガイストの森と呼ばれている。
「なるほど、なるほど。ということは、ここから一番近い町がヨダの町ということね。王都から結構離れた場所のようだから、それほど大きな町でもないのかしら? 色々落ち着いたら行ってみよーっと! それにしても地図まで表示されるなんて至れり尽くせりね」
私は、タブレットみたいな魔導具を見つめ口角を上げた。
さらに、色々この世界やこの国のことについて調べた。そのお陰でこの世界やこの国の基礎知識が備わったのではないかと思う。
この世界には大きく分けて三つの大陸がある。その中でも最も大きな大陸、テネシン大陸にある国がこのティディアール王国だ。ティディアール王国はこのテネシン大陸では二番目に大きな国だ。
では、この世界で最も大きな国はというと、大陸一つが一つの国として存在するテルル連邦国である。テルル連邦国には様々な人種が居住しているらしい。
前世で言えばアメリカ合衆国がそれに当たるのではないだろうか? と勝手に想像してしまった。
この世界の国々は基本的に封建国家である。つまり、権力を中心に主従関係が構成された政治により統治されている。王族の下には貴族が傅き、その下には平民が傅く。
う~ん、封建制かぁ~。これって前世の歴史を鑑みるとそのうち廃れるのでは? まぁ、この世界は前世よりも大分遅れているようだし、魔法もあるようだからそうとは限らないのかしら……?
封建制とはいえ上に立つ者が賢王であれば国民は幸せに暮らせるのだろうけど……ここに来たばかりでまだこの国がよい国かどうかは分からない。
まあ、少しずつ知ればいいか。時間はたっぷりあるのだから……
小説や映画では横柄な王族や貴族のことが描かれていたりしたけど、いるんだろうなぁ、そういう人たち。
地図を見る限りこの場所は王都から結構離れているみたいだから、そうそう関わることはないだろうけど、権力者に近づくと碌なことにならないような気がする。あまり関わらないようにしよーっと!
この世界では目立たず、まったりとした日常を過ごそうと決心した瞬間だった。
で、この世界で生きていくために肝心なこと、お金についても調べてみた。
この国の貨幣は、銅貨、銀貨、金貨、白金貨、黒金貨の五種類である。
銅貨一枚が百ロンで日本円換算で百円である。つまり、ロンと円は通貨単位名が違うだけで同じ価値のようだ。銀貨一枚が千ロン、金貨一枚が一万ロン、白金貨一枚が十万ロン、黒金貨一枚が百万ロンの価値がある。
そして、一般庶民の一月の生活費は約五万ロン、つまり日本円で五万円だ。
因みに、この世界ではどの国でも貨幣価値は同じのようだ。ただし、作られた国によってコインに施されている絵柄が違う。
で、ここで重要な問題がある。今、私にはお金がない。神の庭に果物があるから飢え死にすることはないだろうが、それだけでは料理することができない。つまり、せっかく女神様からいただいたお店をオープンすることができないのだ。
何か売れる物はないだろうか? そう思って寝室へ行って家捜しすることにした。女神様からいただいた物だけど売ってもいいよね?
寝室に入り、まずはタンスの中身からチェックする。
「ん? あれ? さっきこんな物あったっけ?」
私はタンスの上に置いてある木でできた熊らしき頭が付いている円柱の置物を手に取った。熊の頭はリアルすぎてなんだか可愛くない。高さは二十センチメートルくらいある。持ち上げる時にジャラッと音がした。中に何か入っているみたいだ。
「中が空洞になっているのかなぁ? どうやって開けるのだろう?」
私がおもむろに熊の頭を引っ張ると、ポコッという音と共に簡単に取れてしまった。中には銀色のコインがいくつも入っていた。
「えっ? お金? なんで?」
暫し固まったが、前世の記憶が蘇ってきた。
そういえば、前世では五百円玉貯金をしていた。プラスチックの熊の貯金箱に。もしかして、それを、この世界バージョンで女神様が再現してくれたのだろうか?
『それは前世のカリンの部屋にあった物を参考に再現した物だとラシフィーヌ様が言っていたぞ。お金も必要だろうからとな』
なるほど、やっぱり思った通りだった。
それにしてもこの熊の貯金箱は適当すぎやしないかい? 全然可愛くない。前世で北の方に旅行に行った時に木彫りの熊の置物があったけど、なんだかそれに似ているような気がする。
こんな物誰が買うのかねぇ? とその時は思っていたけどまさか私が似たような物を手にするとは……
はぁ……。それにしてもこの貯金箱、私が前世で持っていた熊の貯金箱を模倣した物ではないよね。だって私が持っていた貯金箱は前世でも有名な可愛い熊のキャラクターだったのだから……
女神様の趣味ってどうなってんの?
などど些か失礼なことを考えながら、ハッとした。
いやいや、肝心なのは貯金箱ではなくて中身だ。前世では確か、二十万円くらいはあったと思う。だとしたら、この中にも同じくらいの金額が入っているのかもしれない。
そう考えて、コインを全て出して数えてみた。金貨が二十枚に銀貨が五枚で、全部で二十五枚。ということは、二十万五千ロン、日本円で二十万と五千円だ。
これで買い物ができる! 私が胸の前で手を合わせ、ラシフィーヌ様に感謝の言葉を述べたのは言うまでもない。
第三話 精霊の森
チュチュッ……チュチュチュチュッ…………
朝の訪れを告げるような軽やかな小鳥の声が微かに木々の中に響き渡り、心地よい目覚めを促す。
次第に温かくふかふかしたベッドの感触が身体に伝わってきた。少しずつ覚醒するとカーテンの隙間から漏れる淡い光が薄く開いた瞼の奥に届いた。
クリーム色の天井には丸いライトが浮かんでいるが、光は灯っていない。暗くなって明かりが必要な場合はこのライトに向かって魔力を放出すると明かりが点くようになっている。前世の照明と同じ機能だ。
今部屋を薄く照らすのは、カーテンから漏れている明かりのみだった。
「ここは……」
無意識に呟き、今の状況を思い出した。そうだ、私この世界に転生してきたんだった。
あれからなんだか疲れて眠ってしまったのだ。ベッドのシーツもかけ布団もとても手触りがよくてマットレスもふかふかしている。その気持ちよさのお陰でしっかり熟睡したようだ。
ベッドの上では、グレンが立ち上がり背伸びをしながら欠伸をしている。こうしているとまるで本当の猫のようだ。
「ふふっ……グレンって神獣なのに眠るのね」
『今は、物体化しているため眠ることができるのだ。眠るのは気持ちのよいものだな』
私の言葉にグレンがベッドから下りながら答えた。
洗面所に行き顔を洗い身支度を整える。
ふと、鏡に映る自分を見て気づいた。
「あれ? 昨日より随分顔色がよくなっている」
頬がふっくらして艶もよく、パッチリした瑠璃色の瞳は昨日よりも澄んでいて美しい。
藍色の髪の毛もサラサラして艶があるようだ。身体を見回すと骨と皮だけだった手足も、昨日よりは肉付きがよくなっているように感じる。
「うそでしょう? すっごい身体が回復しているんだけど!」
『ふむ、それは当然だと言えるな。命の泉の水を飲み、神の庭の果実を食すればそうなるに決まっている』
「えっ? 決まっているの? これってものすごくやばくない?」
グレンのその言葉に私は慄いた。
グレンは何気なく言っているが、これって普通のことじゃないよね。でもまぁ、この世界のことはまだよく知らないし今は深く考えなくていいかぁ。
元来、ことなかれ主義の私はスルーすることにした。
さて、今日はこの家の周辺を探索したいと思う。とはいえ、この家は森の入り口付近に位置する。森の入り口付近だけど危険な動物がいないとはいえない。
前世の平和な日本でさえ田舎に行くと熊の被害があったくらいだ。この世界ではどんな危険があるのか分からない。
そう考えると外に出るのはちょっと怖い。
「ねぇグレン、今日は森の中を探索したいと思うんだけど、この付近に危険な動物とかいる?」
『この家の周りにはそれほど強い動物はいないが、森の奥には魔獣がおるな。だが心配には及ばない。結界がある故。それに某よりも強い魔獣はこの世界にはおらぬからな。某の傍にも近寄ることはないであろう』
やっぱり魔獣っているんだ。さすが異世界。でも、グレンより強い魔獣はいないって、やっぱり神獣だから格が違うってことかしら?
「なら大丈夫ね。グレン、今日は森を探索するわよ」
『あい分かった』
今日は最初に着ていたシンプルな薄紫のワンピースを着て外に出ようと思う。魔導洗濯乾燥機で洗濯して汚れは落ちた。破れた場所は魔法で修復したから問題なく着られそうだ。
こうしてみると肌触りがよいので割と高価な生地を使っているのかもしれない。
女郎蜘蛛の糸で作った真っ白な服はこの世界では浮いてしまうかもしれない。万が一誰かに出会った時に訝しがられても嫌だからね。
着替えると昨日残っていた果実を食品庫から出して朝食を取ることにした。
店内にあるカウンター席に座り、お皿に載った果実を一つ手に持ってジッと眺めた。
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